スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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ネメシス種とは一体どういう存在であるのか。

数度の交戦を経ても分からないことだらけです。

ある意味中型種よりも更にタチが悪い相手。

とにかく斃しづらいことが、非常に厄介なのです。





死の神の本質
序、検証


グレイローカスト・ネメシスの変形の過程の映像が流れている。最初はザトウムシのようになり、それから飛び立った。

 

飛び立った後は、巨大なグレイローカストの姿に似ていて。

 

そしてその戦闘スタイルは、まさに爆撃機だった。凄まじい火力に、ずっと生きた心地がしなかった。

 

ともかく、である。

 

あたいは、皆と一緒にそれを見てから、感想を言い合うのを聞く。

 

この間、呉美少佐は中佐に昇進。

 

あたいはもうしばらくしたら中尉に昇進らしい。これは人事のバランスだとかで、よく分からない。

 

給金は上がるかも知れないけれど。

 

はっきりいって今生活に困っていないし、お金なんてあっても使い路がない。

 

今の時代は基礎生活は出来るように補助がされているけれど、贅沢品なんかは殆ど残っていない。

 

文化遺産も悉くシャドウは破壊し尽くしたからだ。

 

おかしな話で、シャドウ戦役の前には、カルトの原理主義者やら、エコ思想を拗らせた連中やらが似たような事をしていたらしい。

 

人間が作り出した歴史的に価値がある存在の一つである文化遺産なのに。

 

人間が積極的に破壊して回っていたそうだ。

 

文化遺産でないレベルの文化に関しても、「気にくわない」という理由でこの世から排除しようとしたりする連中もたくさんいた。

 

シャドウと人間は同じなのではないか。

 

あたいはそう思ってしまう事が、時々ある。

 

「グレイローカスト・ネメシスは最初、まったく正体が分からないほど体が崩れていました。 偵察にあたっていたスカウトも、元がなんだか分からないと言っていたほどです」

 

そうナジャルータ博士が説明する。

 

此処には畑中博士とナジャルータ博士、それに麟博士もいる。呉美中佐は此処にはいないが、哨戒任務中だからだ。

 

畑中中将は病院。

 

一時退院は出来ても、基本的に今後は病院生活だそうである。

 

まあ、それは仕方が無いだろう。

 

あの体では、本来外に出ることさえ許されないのだろうから。

 

いずれにしても、あたいでは。

 

この面子の中では、意見なんていうのは厳しい。

 

「妙な話ねえ。 シャドウは個の意識が薄いようだと思っていたのだけれど、ひょっとしてそれだけではなく、個の概念も薄いのかしら」

 

「ノワールの発言を見返す限り、「私達」という一人称を使っていますし、その可能性は高いと思います」

 

「それにしても体まで崩れるなんて。 やはり死というのは精神の死なのでしょうか」

 

まったく違う言葉を口にした麟博士だが、AIがそう翻訳する。

 

とにかく意味不明な言葉の羅列だったのに、それがこうなるのは本当に凄い。

 

麟博士に説明して貰ったのだけれど、言葉にする脳の機能が一部おかしくなっているらしいのだ。

 

それでAIがその辺りの法則性から、喋りたい事を翻訳してくれている。

 

それだけで、どれだけ有り難いか分からないと。

 

まあそうだろうな、とだけ思う。

 

「それに、ついに中型種への攻撃を防ごうという行動まで見られましたね」

 

「確かに。 それに……ノワールの発言からして、ひょっとしてシャドウには何かしらの統率者の他には、中型と大型、それに小型しかおらず、しかもそれぞれは正確には種ですら無いのかも知れないですね」

 

「だとすると、必要に応じて姿を変えているだけかしら」

 

「興味深い説です」

 

難しい話をしている。

 

あたいは病院から出て来てから、万全とはいかないけれど、もうそろそろ大丈夫だろうと思う。

 

ただし、畑中中将のようにならないように。

 

出来るだけ無理をするなとも言われている。

 

それはあたいも分かっているけれど。

 

誰かが無理をしなければ、シャドウを止められっこない。

 

実際グレイローカスト・ネメシスには、あたいだけでは絶対に勝ち目なんかなかっただろう。

 

「中型種の支援行動が前回の戦闘では見られました。 ただこれには、飛騨少尉の的確な敵前回頭と、戦地を濃尾に押し戻した行動もあったかと思います」

 

「え、えっと、小官ですか」

 

「飛騨少尉ですよ。 いい判断でしたね」

 

「い、いえ、光栄です」

 

話を急に振られて恐縮するばかりである。

 

あたいは中型に支援されなければ死んでいた程度の実力だし。あの程度の判断をした程度で褒められると悲しくなる。

 

もっと冷静に立ち回らないと。

 

シャドウに助けられるなんて、とんでもないことだとあたいは思うし。

 

何より最後の段階でグレイローカスト・ネメシスが倒れた後。

 

その気なら八つ裂きに出来るのを、中型達は無視して、逃げるのを見逃してくれた。あれは相手の気分次第だったのかも知れないと思うと、ぞっとするばかりだ。

 

あたいが恐縮しているのを見て、茶を三池さんが出してくれる。

 

皆礼を言って、わいわいとクッキーを食べ始める。

 

どうしても味が悪い茶と違って、こっちは美味しい。

 

基礎的な作物は今でも作れるし。

 

シャドウ戦役後にいわゆる近代農場が実際に動くようになり、地下空間で無人の畑と田んぼで、作物が取れるようになったのだ。

 

それらの作物は完璧に管理されている事もあり大変においしい。

 

会議が終わったらしく、広瀬大将がテレビ会議で参加してくる。

 

ちょっと背筋が伸びる気分だ。

 

「一つ決まったことがあるので、連絡だけしておきます」

 

「伺います」

 

「ネメシス誘導弾の使用に関する承諾がおりました。 ただし、即座に弾丸を精製出来るわけではない事、何より大がかりなシステムになる事もあります。 今後、移動式にはこだわらない方向で運用する事に決まりました」

 

「ふむ、そうするといっそミサイルに搭載しますか? いや、ミサイルだとブライトイーグルがEMPを打ち込んで来かねませんね」

 

畑中博士に、広瀬大将が頷く。

 

そこで、完全に埃を被っていた大型の臼砲を用いるという。

 

これはシャドウ相手に大口径弾を試そうという計画があり、実際に少数が生産されたらしいのだが。

 

シャドウにはそもそも質量兵器が通じないと言う結論が出た事もある。

 

小型は質量兵器で斃せるケースもあるが、小型相手でもこんな大型大砲では意味が無いとGDFも結論。

 

現在各国に十数門、神戸にも三門があるという。ただ大半は整備が必須。神戸のも、一門は徹底的なメンテナンスが必須の状態だそうだ。つまり事実上今使えるのは二門である。

 

これについては鋳つぶしても良いのでは無いかと話が上がっていたらしいが。今回、これを利用する事に決めたとか。

 

「誘導弾を搭載して曲射するだけであったら、問題なく必要な精度で発射できます。 狙った地点の半径五m以内に着弾させられるので、十分に誘導効果は期待出来ると思われます」

 

「射程距離に関してはいま此方で確認しました。 これならば、少なくとも現在確保している安全圏内を守るには十分ですね」

 

「うえ……」

 

あたいは思わずぼやく。

 

最大距離まで届かせる場合、弾丸が成層圏近くまで上がって。其処から落ちるのか。もはや迫撃砲の領域を超越している。

 

風なんかの影響とかもあるだろうから、半径五mのブレが出るのだろうが。

 

確かにこれは小型シャドウにはまるで通じなくとも、ネメシス種を誘引するには十分だろうと思う。

 

ましてやシャドウの領域にぶち込む事ができれば、シャドウが勝手に環境を修復するだろう。

 

問題はそれをシャドウが迎撃しないか、だが。

 

それについては、弾道を低くするくらいしか対策があたいには思いつかない。

 

ただ近代の迫撃砲は、曲射の弾道を自動計算して、着弾想定地点にあわせて勝手に動くらしい。

 

あくまで携帯用のではなく、車両に搭載するような大型迫撃砲の話ではあるのだけれども。

 

それなら、恐らく大丈夫だろうとは思う。

 

ただ、思わず声が出るほどばかでかい砲弾だ。

 

世界大戦の時に使われた、列車砲とか言う変態兵器についての授業を思い出してしまう。

 

あれは実戦ではほとんど使い物にならなかったという話だ。浪漫砲の現実である。

 

要塞というものがほぼ実戦で使い物にならなくなり、要塞を破壊するために作られた巨大砲を運搬するという思想そのものが意味を為さなくなり。

 

更には制空権の登場により、そもそも動きが鈍い列車砲は破壊され放題の的と化してしまったからだ。

 

今回はそれらの全てを考えず、単に静的目標に誘導弾を届かせれば良いだけなので、これが使えると。

 

いや、なんというか。

 

これを考えて作ったアホは、まさかこれがちゃんと利用されるなんて考えてもいなかったんだろうなと思って。

 

あたいはちょっと遠くを見る目になってしまった。

 

「無用の長物を使えるように出来るのは良い事ではありますね。 幸いこれは維持に金は掛からなかったでしょうが」

 

「今から整備して、使えるようになるのは二週間ほど後になります。 それまでにネメシス種が出ない事を祈るしかありませんね」

 

「分かりました。 とりあえず、会議は締めます」

 

皆、それぞれ会議から離れる。

 

あたいは訓練するか、と思って立ち上がりかけたが、ナジャルータ博士が皆に目配せをしている。

 

これはひょっとして。

 

ノワールと名乗る、シャドウの親玉からの連絡かも知れなかった。

 

 

 

ナジャルータ博士のもとに、ノワールがメールを送ってきた。

 

相変わらず揶揄するような内容だった。

 

「新しいパイロット、調べた所によると飛騨咲楽というのだね。 とても優秀で驚いたよ。 まさかあれだけ大胆な誘引策を使ってくるとはね」

 

「そのような事よりも。 ネメシス種が増えているのはどういうことでしょうか」

 

「私達は元から死んで行っていた。 たまたまさ。 二つの死が重なったのは」

 

「貴方にとって死とはなんですか。 私達の定義とは違いますよね」

 

「有機生命体の定義とは違うかな。 ただ、貴方たちもそろそろ分かってきているのではないのかな。 君達の抵抗が、私達の死を招いた。 しばらくはこれは続くだろうね」

 

やはりか。

 

超世王セイバージャッジメントの出現による反転攻勢が、シャドウに小さくないダメージを与えていた。

 

その仮説は正しそうだ。

 

ただ、スタンドアロンのシステムにまで入り込んでくる可能性があるシャドウである。

 

迂闊な事は言えない。

 

監視カメラなどで音声を拾われたり。

 

或いは支援AI等が思考を読むケースもある。

 

流石に具体的な専門的思考をAIが読むことは難しいが。シャドウが手を入れたらどうなるかは分からない。

 

三池さんが、偽物では無いと合図を送ってくる。

 

まあそうだろう。

 

ノワールのしゃべり方はだいたい分かっている。メールについては、転送もしている状態だ。

 

「飛騨少尉を助けてくれたことは礼を言います」

 

「それには及ばないよ。 あの優れた個体を助けたのは、私達のためでもあるのだから」

 

「……ネメシスの出現はやはり想定外なのでは」

 

「うーん、ちょっと違うのだけれどね。 まあそれについてはいい。 それよりも、これからについてだ」

 

ノワールが話を切り替えてきた。

 

この間、共闘を正式に持ち込んできた。

 

それを考えると、非常に厳しい状態だと言える。

 

ともかく、である。

 

軽く深呼吸して、それでこれから話を進めて行かなければならない。

 

「この間君達の街の一つを壊滅させたように、死んだ私達は元々の性質のうち、人間の駆除を優先する傾向がある。 あれは処理する前に最後の一撃を、人間への最大被害という形で出した訳だ。 そして死んだ私達は、少しずつ学習している」

 

「死んだ存在が学習……?」

 

「死の定義が有機生命体とは違うというのは貴方が言った通りだと、私達は認めたではないか」

 

「いや、それにしてもあまりにも不可解な言葉なのでね」

 

想定通りとは言え。

 

まさか本当に学習していたのか。

 

いや、だとするとだ。

 

ネメシス化する小型種が、日本に多く出ているのも納得出来る。

 

今、世界最大の都市である神戸を潰す。

 

それがネメシスにとっての優先事項。

 

人間への最大被害には、もっとも効率的だからだ。そしてネメシス種は、今後も日本に優先的に現れる事を意味してもいるだろう。

 

「環境へのダメージを、死んだ私達は考慮しない。 そこでだ。 此方からもう一つだけ譲歩しよう」

 

「内容にもよります」

 

「ああ、其方に一切損は無い話だよ。 死んだ私達を対処する間は、基本的に行動を黙認する。 まあ内容次第だね。 例えば核兵器を撃ち込んでくるような行動は、流石に即応させて貰うけれど」

 

「分かりました。 それは此方にとっても好都合です」

 

飛騨少尉がグレイローカスト・ネメシスを斃した時。

 

シャドウ側の領域にいたが、中型種は攻撃しなかった。

 

そして今の会話でも分かったが。

 

明らかにシャドウも、ネメシス種を持て余している。

 

中型以上のタフネスを持ち、シャドウがやってきた環境の回復を滅茶苦茶にする存在でもある。

 

それは確かに、手を焼くかも知れない。

 

実際問題、ラムセスの均衡で起きた大規模地震攻撃については、津波まで引き起こしかけたのだ。

 

どれだけの被害が出たか、分からない程である。

 

「それでは頑張ってくれたまえ。 私達は私達で、対策を練ることにするよ」

 

「そうですか」

 

メールのやりとりが止まった。

 

それにしても、色々不愉快なものいいだが。しかし、不愉快かどうかで判断して良い問題ではない。

 

それこそ相手は地盤を粉々に砕いたり、地震を起こして大損害を引き起こしても平気な顔をしている相手だ。

 

今までのシャドウは、ある意味人間を始末して、地球の環境を回復させるだけの存在であったから。

 

まだ対処はしやすかったのかも知れない。

 

実際シャドウ戦役後の四半世紀は、シャドウ側からは基本的に手を出してはこなかったのだから。

 

すぐに市川代表からメールが届く。

 

GDFの最高幹部だけで、今の事について話し合うという。

 

まあ、それが適切だろう。

 

ただ、さっき会議が終わったばかりなのだが。

 

急ぎではないだろうし、休憩を入れたいくらいなのだが。そうも行かないだろう。ともかく、やるしかない。

 

広瀬大将も即座に会議に引き戻されたようだ。

 

それにしてもろくでもないタイミングで連絡をしてくるなノワールの奴。

 

そう思って、げっそりする。

 

話の内容についてメールの内容が展開されると、即座に広瀬大将が提案した。

 

「これは好機ですね。 誘導弾をシャドウの領域側に打ち込んでも全く問題にならないと思います」

 

「中々過激ですな」

 

「そもそも中型シャドウ相手には通用しないものです。 恐らく小型も斃せないでしょう。 シャドウによる環境修復速度から考えると、この誘導弾によるダメージ程度は黙認できる範囲の筈です」

 

苦言を呈する嵐山さん。

 

やがて、市川代表が言う。

 

「広瀬大将。 それでは相手側の提案に沿って、更にドクトリンの調整をお願いしますよ」

 

「分かりました」

 

「それでは、私の方から各国代表へとこの内容は展開しておきます。 まあ、相手側の譲歩を立て続けに引き出せている。 それだけで充分としましょうか」

 

市川代表と広瀬大将の間には火花が散っているが、表向きは連携はしている。まあ、実際それがしっかり連携として機能している。

 

政治としてはそれで十分。

 

感情にまかせて国政を左右するような輩と。

 

阿諛追従でのし上がるような人間がいる状況。

 

その方が余程異常でダメだ。

 

ナジャルータ博士は、とにかく仲が悪い二人を見てひやひやはするが。犬猿の仲は昔からだし。

 

仕事としてもきちんと出来ているのも立派だ。

 

だから何も言うことはない。

 

会議も終わり、それでやっと休める。

 

問題はここからだ。

 

ネメシス型が二体同時に出現。

 

極めて危険な事態が発生している事に代わりは無いし。相変わらず危なげなく勝つ事は一度も出来ていない。

 

それである以上、今後も楽に戦いを進められるわけがない。

 

まだまだデータを集めなければならないし。

 

ノワールの発言についても分析をしていかなければならない。

 

何よりも、ネメシスの発生のメカニズムが謎だらけのままだ。次に出現した時の被害を抑えるために。

 

どうにかそのパターンを発見しなければまずいだろう。

 

此方から仕掛けていた時は、まだ楽だったんだなと思い知らされる。

 

実際問題、戦場を選ぶ事も、準備をすることも出来ていたのだ。

 

しかし、ネメシスが突発的に出るようになってから。

 

戦況は一気に悪化した。

 

このままだと、飛騨咲楽少尉に何かあった場合、取り返しがつかない事が起きかねない。もう代わりはいないのだ。

 

今の時点で既に探し始めているが。

 

畑中中将と飛騨少尉に共通しているものが見つからず。

 

人間学などの専門家も、頭を抱えているという。

 

適性についても、実際に触らせてみないと分からないと言う話である。それもあって、次世代のパイロットの選出は難航していた。

 

「ナジャルータ博士」

 

顔を上げると、三池さんだ。

 

誰か連れている。

 

一瞬思い出せなかったが、思い出した。確か、以前水面上昇が起きていると発覚したとき招集した学者の一人である。

 

既に中年の男性で、恐らくシャドウ戦役を経験している年齢だ。

 

敬礼して、それで話を聞く。

 

わざわざ京都工場まで来たと言う事は、大事な用事があるのだろう。

 

そして、その用事について聞かされて、思わず黙り込む。もし本当だとすると、かなり面倒な事になるかも知れない。

 

ネメシスが出現する条件の仮説。

 

もしそれが本当だったら。

 

もはや、人間に打つ手はなかった。







死の概念からしてシャドウは人と異なっています。

ネメシスは文字通り死したシャドウの小型種なのです。

そしてそれはシャドウの行動原理からの逸脱も意味しています。



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