スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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4、災厄

飛騨中尉の復帰を聞いて、内心で舌打ちした市川は、すぐに会議を開く。

 

市川は飛騨中尉の事をあまり好ましく思っていない。

 

もう少し超世王セイバージャッジメントの汎用性を高められると思っていた。実際畑中中将とはだいぶ性格からして違うし、それで少しはシャドウ、もしくはネメシスに対して、効率的な組織戦を挑めるようになるかも知れないと考えていたのだ。

 

だが、これまでに三体のネメシス種を斃した飛騨中尉の戦いは、余人が真似できるものではなく。

 

やはり「どうして扱えるのかが分からない」としか言いようがなく。

 

回されているデータを解析しても、再現性は皆無。

 

これでは、超世王セイバージャッジメントの量産を仮にやったとしても。乗せるパイロットがいない。

 

元々小型種に接近されても、対処が遅れれば即座にやられる程度の兵器である。

 

それがあれだけの戦果を出せているのは、乗っている人間がまともな人間とは全く違うからだ。

 

それは今後も、パイロットになれる人間をひたすらに尊重しなければならない事を意味している。

 

市川としては、あまり好ましくない事だった。

 

それに、飛騨中尉は調べて見たが、極端にエゴが少なく、掴めるような人格的な隙もなかった。

 

市川は不真面目である事を自認しているが。

 

だからこそ、こういう相手は本当に心の底から嫌っていた。

 

自分とは絶対にわかり合えないからだ。

 

しかも、それでいながら排除も出来ない。

 

市川はエゴイストではあるが、今の状態で飛騨中尉を冷遇でもしたらどうなるかくらいの計算は出来ている。

 

だからこそ、怒りも募り。

 

更に嫌いになるのだ。

 

ともかく会議で、新しいドクトリンについての説明をする。

 

当面兵士は治安維持に回してほしい事も。

 

それはそれとして、再び攻勢に出る目処がついたときのために、広瀬ドクトリンでの訓練も続けさせる。

 

丁度良い機会だ。

 

世界中で殺戮をばらまき続けたカラシニコフを初めとする、旧世代の兵器に対して、役立たずのレッテルをこの段階で貼っておく。

 

それで、今後は色々とやりやすくなる。

 

各地の国や街には、神戸のやり方のモデルを輸出しているが。

 

それでも治安が悪い街では、未だにギャングが牛耳ったりしているケースも多いのである。

 

それらの治安が悪い場所でも、別に住民がその状態を好ましいと思っている訳ではない。

 

そこで、シャドウの前には腕力も武器も無意味だというのを徹底的に叩き込んでいく事で。

 

そもそも人間が持っていた無意味な全能感を排除していく。

 

それで、多少は治安も良くなるはずである。

 

会議を淡々と終える。

 

嵐山が資料を片付ける。

 

嵐山と市川は互いに嫌いあっている。それでも互いに能力を認めているので、それできちんと仕事はできている。

 

これでも、感情で相手の価値を決めつけたり。

 

イエスマンで周りを固めて、裸の王様になっていたシャドウ戦役前の企業重役みたいなアホとは違うつもりだ。

 

ただ、イエスマンで周りを固めて、それで良い気分になりたいという誘惑についても理解出来る。

 

しかしながら、市川はある程度頭が回るので。

 

それをやるのがアホで。

 

アホになるつもりはない、というだけだ。

 

嵐山が部屋を出ると、一人になる。

 

一人になると、とても落ち着いた。

 

何もかも忘れて、椅子でぼんやりとする。

 

何もかも手に入れた。市川は現在、至尊の座についている。その気になれば、采配をわざとミスして、人間を絶滅させることも可能だ。

 

天津原みたいな無能と違って成果も出している。

 

だから、このまま私腹を肥やしたり。

 

手当たり次第に女を侍らせることだって出来るだろう。

 

だが、私腹を肥やすことにまるで意味を見いだせない。

 

今の時代、私服なんて肥やしたところで、使い路がないのだ。

 

女も同じ。

 

手当たり次第に女を侍らせても、病気をうつされたり、下手すると暗殺される可能性すらある。

 

市川も周りから恨みを買っている自覚はある。

 

ボディーガードのチームも編成しているが、其奴らですら市川を快く思っていない事は知っている。

 

孤独な王様。

 

それが今の市川の実態だった。

 

それに、もしもシャドウがその気になったら、市川の玉座なんて秒で崩壊する。それも分かっているから。

 

こういう風に、時々虚無感に包まれるのだ。

 

ひたすらにケツを叩かれて、泣きながらただ言われるままに仕事をしていた天津原は、どんな気持ちでこの席に着いていたのだろう。

 

まあ鬱病になって病院で治療を受け、余生を過ごしている様子からしてもだいたいは見当がつく。

 

地獄の戦乱で知られる五胡十六国時代にいたある皇帝は。

 

生まれ変わっても二度と皇帝はやりたくないと言い残した記録があるが。

 

それについては、概ね気持ちがわかるようになって来た。

 

強い野心を持って生まれて。

 

エゴを満たす事に興味があって。

 

周りから嫌われながらも、ついに能力だけでトップを勝ち取った。

 

あの英雄広瀬大将に対して、下剋上だってした。

 

その時は本当に嬉しくて、これ以上もないほどの昂奮を覚えたものだが。

 

それも収まってしまうと。

 

これほど空虚なものなのかと、呆れてしまう。

 

野心とは何なのだろうと自問自答していると、連絡が来た。舌打ちする。広瀬大将からだった。

 

液体窒素を作る為のプラントの強化予算についてだ。

 

液体窒素なんかそんな大したものではないのだが、今回は短時間で大量に作る為の設備の話であり。

 

それも世界各地に同じものを輸出するための予算についてである。

 

実際問題、ネメシス種に誘導弾が極めて有効であることは今回の戦闘でよく分かったのである。

 

予算については、考えなければならない。

 

弾薬を補充する予算についても出している中、更に追加予算だが。

 

使いもしない、使い路もないミサイルなどを削れば出るか。

 

すぐに予算を出すと機械的に返して、仕事を淡々とする。

 

必要だから。

 

必要な仕事ができるし、する。

 

そう割切って動ける自分の事も。

 

市川は嫌いになりはじめていた。

 

 

 

(続)







市川さんは切れる男ではあるのですが、難しい奴です。

それに実際下剋上を果たして上に立ってみれば、あまりにもつまらない光景が拡がっていた。

それはモチベをごっそりそぐのに充分であったのです。

もう少し周りが有能な人間達だったら。

シャドウ相手に、その後はネメシス相手に団結できるくらいの能力があったら。

少しは市川さんも変わったのかも知れませんね。




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