スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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完全に軛から外れ始めているネメシス種。

また戦いの時が来ました。

とにかくどんなことをしてくるかまったく分からない相手です。

しかもその超高熱に対する方法が殆どありません。

つまり、激甚な被害を我慢しながら倒すしか無いのです。






3、暴走するネメシス

工場で昼休憩中に、警報が鳴る。

 

ネメシスだ。

 

すぐに出されていたクッキーを胃に放り込むと、茶を飲み干し。ついでにトイレに走り込む。出撃前にトイレにはいっておく。

 

これは鉄則だ。

 

そして、トイレから出ると、急いで超世王セイバージャッジメントに歩きながら、話を聞く。

 

既に新兵器の訓練はした。

 

というか、訓練があまり必要ない兵器なので、使う時の立ち回りについて訓練をしただけだが。

 

「小型種の離散、ネメシス出現の兆候です!」

 

「場所は」

 

「京都北方! 若狭です!」

 

「近いですね。 好都合とも、まずいとも言えますが」

 

三池さんがぼやく。

 

あたいはすぐに超世王セイバージャッジメントに乗り込み。コックピット内から通信。いつでも出られる、と。

 

すぐに呉美中佐が合流してくるらしい。

 

それを待って出撃、ということだった。

 

頷くと、コンディションを確認。トイレは行っておいた。備品なども確認しておく。恐らくは問題ないだろう。

 

この間のシルバースネーク・ネメシスは百数十㎞の超長距離射撃を行って来た。姫路の辺りから、神戸を直に狙える距離だった。

 

若狭に出るネメシスも、それと同じ可能性が高い。

 

コンディションのチェックをしていると、呉美中佐達が来たと言う話。すぐに出て、合流する。

 

今回もあたいが盾役だ。

 

それで、今回は幾つかの装備を持って来ている。

 

基本的に対シャドウ用の装備……中型種に効くものは、ネメシスにも効く。ただそのタフネスは中型種以上。

 

それに、中型種を排除する動きまで見せ始めた今。

 

ネメシスがどのように暴走するか、まったく分からない。

 

三機編成で出立。

 

今回は呉美中佐がジャスティスビーム改。

 

もう一人来ている人が、斬魔クナイを装備しているデチューンモデルを用いる。

 

この組み合わせの方が良いのでは無いか、という考えだそうである。

 

ただ斬魔クナイはかなり操作が難しいはず。

 

大丈夫なのだろうかと少し心配になったが、乗っている人は以前ランスタートルをデチューンモデルで倒した事がある人らしい。

 

デチューンモデルの乗り手としてはベテランの中のベテランだ。

 

だったら、安心して良いだろう。

 

現地に向かう。

 

若狭はもともとシャドウが重点的に固めていた地域であり、恐らくネメシスは猛攻に晒されている筈。

 

中型種だけで斃してくれればいいのだが。

 

まあ、そうもいかないだろう。

 

「誘導弾、準備開始!」

 

「臼砲のコンディションは」

 

「三番砲が幾つかエラーを出しています! 一番砲、二番砲は問題ありません!」

 

「三番砲のエラーの状況を確認、出来るなら修理! 一番砲、二番砲は射撃に向けて準備!」

 

液体窒素を作るのは難しく無いが。

 

ネメシスの気を引けるほどの量を作るのはちょっと手間だ。

 

それに、臼砲はもともと大艦巨砲主義の残骸か亡霊みたいな兵器である。エラーが出るのも、仕方が無いのかも知れない。

 

ともかくだ。

 

あたいは現地に急ぐ。

 

ネメシスとやりあったら酷い目にあうのは確定だが。

 

それは別にいやじゃない。

 

何もできないまま、嬲り殺しにされるほうがよっぽど嫌だ。だからあたいは前線に赴く。

 

相手は人でもない。

 

シャドウですらない。

 

ただ暴れるだけの破壊神格。

 

破壊の痕に何かを産み出すわけでもない。

 

そういう意味では、神話的な破壊神とすら違っているといえる。

 

だから、斃す。

 

シャドウですら、倒す事に全力を挙げる存在だ。それを思うと、あたいが戸惑っていたら。

 

それだけ被害が出るし。

 

戸惑った瞬間に、蒸発させられるかも知れない。あたいはそんなのは嫌だ。それだけの理由でも。

 

戦うには充分だ。

 

前線に急ぐ。ただ、急ぎすぎないようにする。

 

やはり斬魔クナイを装備した機体が少し遅れている。あくまであたいは盾役だ。中型種や呉美中佐、それにもう一人のアタッカーが主役。

 

フィニッシュムーブを決められるかも知れないが。

 

それはあくまで結果論である。

 

「呉美中佐、速度はこれで問題ありませんか」

 

「問題ありません。 前回の教訓を生かせていますね」

 

「ありがとうございます。 それでネメシス種は……」

 

「此方スカウト41! ネメシス種、形を為していますが……これは……?」

 

また変な形になっているのか。

 

映像が来る。

 

それはなんというか、巨大な八足の、態勢が低い巨体だ。

 

ロボットなどは実際には二足歩行よりも、多足の方が安定する。いっそ足がない方が良いほどだ。

 

例えば、円筒形のものが現在は家庭用などで主要に使われていて。あたいもその観点では世話になっている。

 

動物も同じで、四つ足の動物は二足歩行の人間とは基本的な出力が違う。

 

態勢が低いというのは、それだけ安定している事を意味している。

 

実際問題、百足などをひっくり返すのは至難の業だ。

 

ただし足が多ければいいというわけではない。足が多すぎればそれはそれで複雑な制御が難しくもなる。

 

その筈だが。

 

「映像を分析。 元はクリーナーのようです」

 

「分かりました。 標的はクリーナー・ネメシス。 中型種の様子は」

 

「既に攻撃を開始していますが……これは!」

 

キャノンレオンが囲んでプラズマ砲を浴びせているが、巨大な足が振り下ろされる。キャノンレオンが、踏みつぶされていた。

 

勿論物理的な衝撃で中型種は殺せないが、頭を押さえ込まれて砲撃が出来なくなっている。

 

更にその抑え込んだキャノンレオンを、別の個体に放り投げてもろともに吹っ飛ばすクリーナー・ネメシス。

 

完全に中型種に意図的に攻撃をしている。

 

ネメシスはどんどん暴走している。

 

まずいなとあたいは呟く。

 

このままだと、本当に手をつけられなくなる。

 

勿論、この程度で中型種は死なないことも想定しての攻撃だろう。まるで法律の隙間を縫って悪さをする詐欺師のようだ。

 

悪知恵ばっかり働くこのやり口。

 

まるで人間。

 

あたいはぐっと歯を噛む。

 

あたいがろくでもない輩の血を引いているらしいことは知っている。何と無しに調べて見て、その状況証拠が幾つも出て来たのだから確定だ。もしも四半世紀前に生まれていたら、きっとろくでもない人生を送っただろう事も、である。

 

だけれども、今は違う。

 

少しでも進歩しているのなら。

 

それに沿って少しでも進歩したものを、あたいは守らなければならない。

 

急ぎすぎないように、敵に接近する。

 

山で戦闘しているクリーナー・ネメシスは、近付こうとしたランスタートルを、熱線砲で押し返した。

 

確かランスタートルは熱攻撃に中型種の中ではかなり弱いはず。

 

それも恐らく、学習した上で攻撃していると見て良い。

 

ただ、中型もやられっぱなしではない。

 

そのまま何体かのスプライトタイガーがタックルを掛け、山からクリーナー・ネメシスを転がり落とす。

 

勿論それで倒れるような相手ではない。

 

斜面をずり落ちていく間にも、キャノンレオン数体が飽和攻撃を続けるが。

 

不意に、それらが吹っ飛んでいた。

 

遠くへ吹っ飛ばされるキャノンレオン達。

 

まるで子供が人形を放り投げたようだ。

 

あれも全長二十mくらいはあるのに。

 

距離があるのに、あの強烈な弾き返し。間違いない。少し前に、ホワイトピーコック・ネメシスが。

 

スコットランドの近くで使った技だ。

 

飽和攻撃の弾幕がどうしても薄くなる。それは奴の寿命を延ばすことにつながる。

 

勿論キャノンレオンはすぐに戻ってきて攻撃を再開するが、どうしても固まって行動は出来ない。

 

弾幕は結果として薄くなる。

 

平然と山を下りてきたクリーナー・ネメシス。熱を帯びてきているが、まだ余裕がある。そして、明らかに。

 

京都工場の方を向く。

 

「誘導弾は!」

 

「まだネメシス種のダメージがそれほど蓄積していません! 効果は薄いと思われます!」

 

「まずい! 京都工場の避難は!」

 

「人的避難は終わっています! ただ、もしも何かしらの遠距離攻撃を受けた場合、設備は……!」

 

勿論人命最優先だが、今の時代は物資も極めて枯渇していることを忘れてはならない。京都工場は超世王セイバージャッジメントの整備を行っている場所で、もしも破壊された場合。

 

再建の手間は、信じられないほどのものとなる。

 

その場合、クリーナーがでた時に、対応できなくなることを意味する。

 

あたいは、とっさに。

 

スピーカーを使って、クリーナー・ネメシスに呼びかける。まだ距離はあるが、やるしかない。

 

「そこのクリーナーの慣れの果て! 超世王セイバージャッジメントが相手だ! それとも怖くてこっちも見られないか!」

 

さて、言葉が通じると良いが。

 

速度を更に上げる。

 

今はもう仕方が無い。

 

呉美中佐にも、後から来て欲しいとだけ言う。とにかく、今は一秒が惜しいのである。速度を上げて、おとりになる。

 

それしか、敵の攻撃を逸らす手段が無い。

 

クリーナー・ネメシスは動きをぴたりと止めた。

 

キャノンレオンの攻撃を、例のプラズマ爆破らしいので相殺。

 

あれ、どのネメシスも出来るのか。

 

いずれにしても、今の状態では、斃すのにどれだけ時間が掛かるか分からない。少なくとも、中型種の攻撃を主体的に防御するようになったネメシスは、極めて危険だ。少しでも気を反らす。

 

そうしないと。

 

加速。

 

こっちを見るクリーナー・ネメシス。そして、体を細めた。

 

来る。

 

とっさに急カーブ。

 

次の瞬間、超世王セイバージャッジメントが、とんでもない暴風に晒されていた。瞬時にアラートが鳴る。エラーも。

 

機体はそれほど激しく吹っ飛ぶことはなかった。

 

受け身も取ったが、取れなくても致命打にはならなかったと思う。

 

なんだ今の。

 

映像が来る。

 

超世王セイバージャッジメントの左側を何かが抉ったのは事実だ。だが、それで左側のカメラが壊れてしまった。

 

呉美中佐が映像を送ってきたのだ。

 

それは、クリーナー・ネメシスが。何かを伸ばしてきた映像が映り込んでいた。

 

クリーナーは人間やその創造物を例外なく溶かす小型種だ。

 

そうして殆どの街が消えた。

 

原子炉ですら、クリーナーの手に掛かると何事も無かったかのように消え去り。

 

シャドウ戦役前に問題視されていた大量の廃棄物も、クリーナーが通った跡は何も残されていなかった。

 

恐らくそれだ。

 

つまり、あれの直撃を受けていたら。

 

ひとたまりも無かった。

 

左側の装甲がかなりやられている。

 

まずい。

 

現状、超世王セイバージャッジメントの装甲は、耐熱仕様も兼ねている。更に冷房の性能は上げてくれているようだが、それでもこれは。

 

戦闘は長引かせられない。

 

クリーナー・ネメシスに、驟雨の如くプラズマが叩き込まれる。中型種達によるものだ。少しずつ熱が蓄積してきている。

 

反撃しようとするクリーナー・ネメシス。

 

だが、あたいが。

 

その時には、懐に飛び込んでいた。

 

斬魔剣Ⅱを一閃し、足の一本を傷つける。足を止めての切りつけ。超高熱を注ぎ込む。凄まじい音を上げるクリーナー・ネメシス。この細い足だ。何本あったとしても、やっぱりダメージになる。

 

飽和攻撃の厄介な所は、対応がしづらい事だ。

 

だが、クリーナー・ネメシスは。

 

学習している最大の脅威である、超世王セイバージャッジメントを潰す最優先目標と判断したようだった。

 

そのまま、多数の足を立て続けに振り下ろしてくる。

 

即座に機動。バック、スピン、ウィリー。あらゆる技術を駆使して回避。だが、至近を掠める度に、機体が吹っ飛びそうになる。

 

分かっている。

 

まだそれでも、奴は本気じゃない。

 

今回搭載してきている新兵器も、まだ使い路がない。鬱陶しいと思っているだけで、それほど危険な相手とみていないのだ。

 

不意にクリーナー・ネメシスが溶ける。

 

クリーナーとしての普段の姿に戻ろうとしている。まずい。総力で逃げる。予想通り、超世王セイバージャッジメントを包み込もうとしてくる。

 

もしも触られたら終わりだ。最大限の速度でさがる。

 

その時、やっと呉美中佐達が追いついてきた。

 

斬魔クナイが立て続けに突き刺さる。

 

ジャスティスビームがクリーナー・ネメシスに巻き付く。凄まじい高熱。やっとダメージが入り始める。

 

がっと飛びかかってくるクリーナー・ネメシス。これは回避できないか。

 

だが、その時。

 

やりたい放題にされていたランスタートルが、頭上から突撃を敢行。更にランスまで起爆させた。

 

人工物ではないものに、クリーナーの能力は通らない。

 

それもあって、ばちゃんとはじけるようにクリーナー・ネメシスが体を崩す。悲鳴を上げてもがく。

 

効いてきている。

 

だが。

 

再び、今度はウニみたいな形態に形を変える。

 

即座に離れたのは、勘からだ。

 

そして、周囲が、爆発していた。

 

全方位の敵に対する一斉攻撃。

 

デチューンモデルへも容赦なし。

 

しかも使ったのは、中型種を吹き飛ばしたあの収束プラズマと見て良いだろう。普通だったら、それで終わりだが。

 

爆発を突き破って、超世王セイバージャッジメントが奴の至近に躍り出る。

 

お遊びは。

 

ここまでだ。

 

今のを防いだのは、一種のリアクティブアーマーである。収束したプラズマの爆発が、指向性を持つのを見た事で。

 

その指向性を逸らせば良い。

 

同じように超高圧プラズマをぶつけて、それを相殺までは出来なくとも、威力を別方向に指向させる。

 

名付けて……ええとなんだったか。アークリアクティブアーマーだったか。アークという単語の意味はよく分からないが、きっと凄いリアクティブアーマーなのだろう。爆発反応装甲というよりもどっちかというと自動撃墜システムに近い気がするのだけれども。そういうのは畑中博士に突っ込んでも無駄だ。

 

斬魔剣Ⅱを突撃用に前に倒し、そのままウニ状に体を変えたクリーナー・ネメシスに突貫。

 

更にシャイニングパイルバンカーもおまけだ。

 

まとめて熱量を叩き込む。

 

クリーナー・ネメシスも短時間で体を切り替えた弊害が出ているのか、すぐに対応できず。

 

苦しそうに体を蠢かせながら、元に戻そうとするが。

 

戻って来たキャノンレオン達が一斉攻撃。更にグリーンモアも突撃して、その嘴を突き刺した。

 

熱量を叩き込まれ。悲鳴を上げるクリーナー・ネメシス。

 

いいぞ、効いている。

 

呉美中佐は、サブウェポンとして装備してきた投擲型斬魔剣を発射。

 

さっきの形態変化で吹き飛ばされたジャスティスビームの代わりにはならないにしても。

 

それでもダメージにはなる。

 

もう一機は明らかに距離を取りすぎてしまい、今あわてながら間合いを計り直している。

 

ただでさえ斬魔クナイは扱いが難しいと聞く。責めるわけにもいかない。

 

形勢逆転。

 

形状を次々変えた強敵だが、そのまま押し切る。

 

それに、弱点もわかった。

 

クリーナー・ネメシスは恐らくだが、形態変化の際に体力みたいなのを消耗しているとみていい。

 

実際、形態変化をした直後の大技をいなすと、大きな隙が出来ている。

 

そして、其処に。

 

誘導弾発射の連絡。

 

よし。

 

誘導弾が着弾。明らかにクリーナー・ネメシスの注意が其方に向く。だが、そのままでは終わらない。

 

腐ってもネメシス種だ。

 

熱線砲。こっちを狙って来てる。即座にさがる。それに、一気にコックピットの温度が上がってきた。

 

左側の装甲をやられているからだ。

 

冷房の性能が上がっても、相殺しきれない。しかも此奴を斃さない限り、どんどん温度は上がり続ける。

 

放たれる熱線が、京都の山をバターみたいに抉り、溶かす。

 

あたいは間一髪回避するが、熱線が引き起こした爆発に機体が激しく揺動。受け身を取ったが、それでも骨が軋む音がした。

 

ガガっと、凄まじい音を立てながら、超世王セイバージャッジメントが弾き飛ばされる。これでもMBTよりも重量があるのに、シャドウの戦闘の前では殆ど子供向けの車の玩具だ。

 

それでも、なんとかやるしかない。

 

汗がダラダラ出る。

 

トイレに行きたくなるのがこう言うときの常だ。どうしてもそれは仕方が無いが、トイレなんか漏らすしかない。コックピットもそれ前提の作りになっている。戦闘に集中。今のダメージで、更に暑くなった。訓練しているのに、気が遠くなりそう。

 

人間が耐えられる温度、G等には限界がある。

 

これはもう、サウナなどで我慢できる温度とかではない。

 

サウナもそもそも「整う」とかいう謎の言葉が作られたらしいが、医学的には不健康の極みであり。

 

使って健康になどならない。

 

だが、今は健康のために高熱に晒されているのではない。

 

ともかく、やるしかない。

 

ぐっと、熱いレバーを押し込む。

 

エラーが出ている。

 

斬魔剣Ⅱ、ダメだ。今ので多分壊れた。シャイニングパイルバンカー、行ける。それに、投擲用斬魔剣。こっちもいける。

 

可能な限り全速力で、冷気に突っ込むクリーナー・ネメシスに追走。更には、斬魔剣投擲型を叩き込む。

 

悲鳴が更に大きくなる。

 

それで、気付く。

 

どこかで聞いたことのあるこの声。

 

顔を歪めた活動家の男が、わめき散らしていた声。

 

人間が自分は正しいと信じ込んで、ただ周囲に怒りとヒステリーをぶつけるだけの、おぞましい行動。

 

そういうときに、わめき散らす言葉にもなっていない言葉。

 

それに、似ている。

 

熱い。目に汗が。だが、顔を振って、汗を飛ばす。視界がにじむ。だが、それくらいでどうこうしていたら、死ぬ。

 

負けたら死ぬ。

 

だから、勝って生き残るしかない。

 

コックピットの温度が危険域に。

 

冷房が凄まじい音を立てているが、とてもではないがこの灼熱を相殺しきれない。一気に突貫。

 

二発目の誘導弾にくいついたクリーナー・ネメシスが。上空に立て続けに熱線を発射。雲が消し飛ぶ。

 

だが、それで相殺しきれるほどの弱い熱量じゃない。

 

相手の動きを読んで、近接。

 

そして、シャイニングパイルバンカーを叩き込む。

 

最後の出力で、ありったけの高圧プラズマを打ち込む。

 

それで、クリーナー・ネメシスが、凄まじい悲鳴を上げた。

 

いや、やっぱり。

 

これは喚けば相手が引いてくれると学習したクズの、恫喝の声、そのものだ。これはひょっとして悲鳴でも断末魔でもなくて、ただ喚くだけでなんとかしてきた図体ばかりでかいカス野郎の声なのではないか。

 

ぐっと歯を噛む。

 

そんなもので。

 

引いてたまるか。

 

機体ごとぶつかっていく。キャノンレオンのプラズマが連発して炸裂していく中、斬魔クナイがまとめて突き刺さる。

 

追いついてきた支援機によるものだ。

 

上空に向けて、凄まじい熱線を放とうするクリーナー・ネメシス。まだ生への執着が染みついている。あれだけの放熱をさせたら、まだ此奴は倒れない。

 

だが、その時。

 

動きを先読みしたかのように、三発目の誘導弾が着弾。

 

至近。

 

一瞬クリーナー・ネメシスの動きが止まり。

 

それが致命傷になった。

 

ぐっとアクセルを踏み込んで、更にパイルバンカーを……注射器だけど。それを突き刺す。あまりの高温に、パイルバンカーも、機体の前面装甲も融解するが、それだけの熱を同時に与えてもいるのだ。

 

最後、やっぱり聞こえた。

 

チンピラががなる声だ。

 

自分でも何を言っているか理解出来ていない声。

 

活動家やらチンピラやらがわめき散らして、それで相手が引いてくれると思っている声。

 

クズの声。

 

あたいには正しいかどうか理論的には分からない。

 

ただ、それはどうにも、間違いが無い気がした。

 

 

 

撤退する。今回もかなり危なかった。コックピット内の温度は前回の戦闘以上だったようで、すぐに病院行き。

 

ただ、その搬送中。

 

あたいは伝えておかなければならないことがあった。

 

付き添ってくれている呉美中佐に、先に話をしておく。

 

あのネメシスの断末魔。

 

聞き覚えがあると。

 

「中型種の断末魔とは違う感じでしたか?」

 

「それは聞き比べてみないとなんとも。 ただ、ネメシス種の断末魔は、それで間違いないと思います」

 

「……分かりました。 私からナジャルータ博士と畑中博士、亜純博士に話をしておきます」

 

「お願いします。 あくまで小官がそう思っただけです。 熱が酷くて頭が朦朧として、それでそう聞こえただけかも知れません。 一度思い込むとそう考えてしまうという悪癖が人間にはあるとも聞きます。 だから、参考程度にお願いします」

 

呉美中佐なら信頼出来る。

 

それで、後は病院で処置を受けた。

 

やっぱり肌の状態があまりよくないと医者の先生には言われた。まあそれもそうだろうとは思う。

 

一応対熱用のクリームは塗り込んできたのだけれども、それでも抑えるのは限度があるのだ。

 

それに、である。

 

瞬間的に高熱を受けても。

 

それを防げるのと。

 

長時間高熱を受けて。

 

それに耐えられるかは別の話である。

 

たとえば中型種シャドウの致命傷になるのが同じような……あっちは数万度という単位ではあるのだが。

 

超高熱の長時間攻撃であるように。

 

皮肉だが、ネメシス種もそれは同じか。

 

とりあえず手当てを受けて、リネンに変えて。全身あれこれ処置をされて。検査もする。

 

寝てしまっていいと言われたが、そうもいかない。

 

素っ裸のまま色々されるよりは、自分でやった方が良い。

 

それにこれでも、短時間で高熱に耐えられるようになってきているらしい。

 

恐らくは訓練が少しずつ効果を示しているのだと思う。

 

ただ、医師にはもう少し戦闘環境をどうにかしろとも言われた。

 

いくら耐えられるようになっても限度がある。

 

このままだと、畑中中将みたいに若くして再起不能になるとも。

 

それは、いやだな。

 

まだ後続の目星すらない。

 

それに、ネメシス種との戦闘は恐らくこれからが佳境になると見て良いだろう。連中はどんどん複雑化、強大化している。

 

それを思うと、あたいが足踏みしている訳にはいかないのだ。

 

とりあえず処置も終わって、検査も終わり。

 

お薬も塗って貰って、それで横になって。

 

それで、気が抜けたのだろう。

 

眠って、それで起きる。

 

まだ若いからだろう。やっぱり翌日には目が覚めていた。そして目が覚めると、アドレナリンが切れたからだろう。

 

体中がとても痛い。

 

ただ、それでもまだまだやらなければならない。

 

体の彼方此方、包帯を巻かれている。

 

皮膚の状態が悪かった場所だ。

 

軍の携帯端末を手にとって、連絡をメールで入れる。相手は呉美中佐だ。例の件を話してくれたか。

 

それについてだが、どうやらレポートまで出してくれたそうだ。

 

ありがたい。

 

それから程なくして、ナジャルータ博士から連絡が来る。

 

内容も翻訳用のAIが訳してくれる。

 

シャドウ戦役前くらいのAIの自動翻訳は文字通り話にならないレベルだったらしいのだが、現在ではほぼ完璧である。

 

読むのにまるで支障はなかった。

 

「非常に面白い説です。 退院するまでに、今までの中型種シャドウの断末魔を確認して、それで同じであるかどうかの確認をしてください。 ただ、今は体を治すことが最優先ですので、あくまで出来る時間にやってください」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「最終的に確認が取れたらレポートを書いて貰うことになりますが、それは勤務内に時間を設けます。 繰り返しますが、体を先に治してください。 それが今の任務です」

 

有り難い話だ。

 

ともかく、医者の先生の話を聞いて、体を治そう。

 

それにしてもだ。

 

ネメシス種が活動家やら反社やらがわめき散らすような事と同じがなり声を上げていたのは、なんでなのだろう。

 

あたいは今の時代だからそれなりに学はあるけれど、どうしても思考能力という観点ではどうしても周囲に劣るものがある。

 

戦闘での思考と。

 

論理的思考。

 

それに知識。

 

これらは全て別で、全てを兼ね備えている人間はそうそういないと言われている。

 

あたいは戦闘での思考はわりと出来る方。

 

今の時代だから、催眠教育で知識についてはばっちり頭に叩き込んではある。

 

だが論理的思考があまり良くないので、こればっかりは頭が良い人に考えて貰うしかないだろう。

 

それに、頭が良い人も、戦闘での思考が同じように出来るかどうかは話が別である筈で。

 

そういう点でも、別に負い目を感じることは無い。

 

とにかく寝る。

 

今は寝る事で、回復を促進させる。

 

起きたら病院食を食べて、まずは包帯を取る所からだ。

 

医者の先生からは、多分二週間ほどで出られると言う話だから、その間にベストにまでコンディションを回復させておきたい。

 

全てはそれからである。

 

ネメシス種はいつ現れてもおかしくない。

 

だから最悪、病院から出撃する事も考えなければならない。

 

ただし、焦るのは悪手だ。

 

あたいも、優先事項については、理解出来ているつもりだ。








ネメシスの正体が更に明らかになっていきます。

飛騨咲楽さんの聞き取った音声は、決してまやかしではないのです。


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