スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
新武器登場回です。
ついに斬魔剣の最終形態が登場します。
ロマン武器を固めて作って見ました。
勿論相手の性質上、一撃必殺とは行きませんが。今までの斬魔剣の全ての集合体の改良型です。
これは難しい。
あたいはシミュレーションマシンで使って見て、そういう感想を抱いていた。
提示された新兵器は、斬魔剣Ⅲ。
現時点での最終改良型の斬魔剣になるらしい。
これはこれとして、投擲型の斬魔剣はまだまだ使うそうだ。斬魔クナイに至っては、微調整をしつつ、デチューンモデルへの配備を進めるという。
もっとも、それでも扱いが難しいらしく。
扱う兵士達からは、不評がまだ絶えないらしいのだが。
ともかく、灼熱サウナ状態からのシミュレーションマシンから出て、体をゆっくりと冷やす。
熱耐性はだいぶついてきたと思う。
面白い事に日焼けをしているわけではないので、別に肌は焼けていない。それでいながら体が南国対策仕様になっているのだから面白い。
ただ、シャドウ戦役前の日本では、あの灼熱サウナ状態の外気温が続く日が珍しくなかったらしく。
それを考えると、今はまだマシなのかも知れないとさえ思う。
休憩を入れた後、スポーツドリンクを口に含む。
トイレを済ませて、もう1丁訓練と行こうとしたとき。
アラームが鳴っていた。
来たか。
すぐに超世王セイバージャッジメントの方へ。あたいの方は、すぐにでも出られる。
「飛騨咲楽中尉、即座に出られます!」
「よし。 一応コンディションチェックを。 その間に敵についての情報を説明します」
「イエッサ!」
三池さんも、こう言うときには顔つきが変わる。
基本的に発明しかしない畑中博士とその助手である麟博士。シャドウの専門家であっても戦士では無いナジャルータ博士には任せられない。
だから出立前の指導は、この人がしてくれる。
ネメシス種が現れたのは、九州。
ちょっと遠いが、まだ本格的な交戦が始まっていない。
九州へは既に物理的な橋が作られており、そのまま超世王セイバージャッジメントで渡る事が出来る。
40式やアレキサンドロスⅢで渡る事を想定している橋だ。
ただ、超世王セイバージャッジメントも直線距離だと少し不安が残る。ただ、やる事はやっていると三池さんが補足してくれる。
「現時点で、九州への超世王セイバージャッジメントが直接使える直通路が整備されています。 これは表向き鹿児島への直通路として復旧したものですが、実際には戦車部隊を通すためのものです。 これであれば、ネメシスが暴れ出す前に現地にたどり着ける筈です」
「すごい。 ありがとうございます!」
「整備完了! オールグリーン!」
整備のおっちゃん達が声を張り上げる。
あたいはそのまま超世王セイバージャッジメントに乗り込む。
これから蒸し風呂で死ぬ思いをする事に対する恐怖はない。
ただ、やるべき事をやるだけだ。
機器類をチェックした後、誘導に従って京都工場を出立する。途中で呉美中佐達が合流してくる。
今回は試験的に、支援車両を三機でやるそうだ。
これについては理由があって、盾役であたいが敵の攻撃を引きつけられるというのが大きい。
呉美中佐はジャスティスビーム改を装備したデチューンモデル。
他の二機は斬魔クナイを装備している。
これらの機体は先に出立し、四国の途中くらいで合流する筈だ。舗装道路に乗って、速度が上がる。
これは、悪くない感じだ。
舗装道路を超世王セイバージャッジメントで行くのは殆ど経験がないのだが、土の上を走るのよりも明確に速度が出るし安定している。
ただ舗装道路は維持にコストが掛かるし。
何よりも、環境負荷も小さくないだろう。
シャドウとの火種にならないといいのだけれど。
そんな風に思いながら、神戸の街に入る。既に誘導がされていて、邪魔に入ってくる人はいない。
罵声を飛ばしている奴はいるかも知れないが。
それは少なくとも、あたいの目には入らなかった。
神戸も地上部分はあくまで僅か。
こういう地下都市でも高層ビルでもなんでもそうだが、高い所にいる奴が偉いみたいな風潮が昔はあったようだが。
今では、地上には住居の類はない。
シャドウの攻撃、ネメシスの攻撃で真っ先に敵の攻撃を受けるのが明らかすぎるというのも理由としてあるのだが。
まあ経済がAIの統制下におかれ。
人間の手を離れたのが大きいのだろう。
神戸を抜けて、淡路島への橋に入る。そのまま一気に進む。
海にイエローサーペントがいる。
昔はあれを必死に駆逐していたのだが、ホバーでの輸送船が主体になってから、戦う理由が無くなった。
昔ながらの大型タンカーに固執する人間はそれでもいたらしいが。
ホバーがイエローサーペントに本当に攻撃されない様子を見て、それで宗旨替えをせざるを得なかったらしい。
同じように、航空機も飛べるようになれば、もう少しはマシになるのだろうが。
それはもう、シャドウと相談しながらやっていくしかないのだろう。
淡路島を抜けて、四国への道路に入る。
先に出立していた呉美中佐から連絡が入る。四国の西端辺りで合流することになるそうだ。
昔はたくさん舗装道路を車が走っていたらしいが。今はそれもない。
だからあたいは、渋滞というのは見た事がない。
移動手段としての車がほぼ使われなくなり、乗るのもジープくらい。
そういう状況が続いたからなのだろう。
「ネメシスが南下を開始!」
「ネメシスのもとの小型種は!」
「現在情報を分析中! これは……元はブルーカイマンです! ただし、大きく元と形状が変わっています!」
「……了解。 想定の範囲内です」
呉美中佐がこたえている。
元々ネメシス種は原形を留めないくらい形が変わる事が多い。
それもあって、驚く事は無い。
問題はその先だ。
「敵の能力などは」
「現在中型種が攻撃を加えているようですが、まだ遠くて詳しくはわかりません」
「距離を取りつつ観察を。 とにかく無理をしないようにしてください」
「分かりました!」
見えてきた。
呉美中佐達の機体だ。
追いついて、編隊を組む。超世王セイバージャッジメントが最前衛で問題はない。そのまま進む。
その間も、戦況の報告が入る。
阿蘇山をブルーカイマン・ネメシスが通過。
こいつ、最初は佐賀辺りで出現したらしい。今は鹿児島を狙っているのだろうか。
いや、本当にそうか。
ネメシス種は人間の弱点を的確についてくる傾向がある。
シャドウ以上に、人間への「殺意」が高いのだ。
本当に、万以上の人がいるとはいえ、まだまだ中規模港湾都市の段階に過ぎない鹿児島を狙うだろうか。
嫌な予感がする。
「呉美中佐」
「どうしました、飛騨中尉」
「本当にネメシスは鹿児島狙いでしょうか」
「……続けてください」
ネメシス種は、人間への殺意が高い。実際に効果がある地点への攻撃を狙ってくる。前回は京都工場と神戸を直に狙って失敗した。
だとすると。
「海を経由して、神戸を狙ってくる可能性は」
「!」
呉美中佐が考え込む。
あたいは軍事の専門家じゃない。正確に言うと、超世王セイバージャッジメントの操作に特化している一パイロットである。催眠教育で軍事学については当然頭に叩き込んではあるが。
それが基本的に机上論であって。
最終的には現場での柔軟な運用がある程度ものをいう。
つまりは軍才が決め手になっている事は分かっている。
呉美中佐は現場指揮官である。
広瀬大将と連絡して、何か話しているようだ。あたいの話が、ノイズでは無くしっかりとした作戦遂行の助けになればいいのだけれど。
「結論が出ました。 予定進路を変更。 ブルーカイマン・ネメシスの現在の進行ルートを東側から回り込みます」
「それでは鹿児島が危険にさらされるのでは」
「相手に超世王セイバージャッジメントの存在をアピールします。 それである程度気を引きます」
元々のルートだと、鹿児島を守る形で相手の進路に立ちふさがり。熱線が鹿児島に直撃しないように盾役のあたいが誘導する形にするはずだった。
だがそれを東側から回り込むことで、海路を相手が使うことを封じる。
九州に入る。
戦闘は続いているようで、アトミックピルバグが参戦したようだ。
あの畑中中将でも大苦戦させられた相手だ。
ネメシスの出現時、殆どネメシスを完封する様子まで見られていたようだが。今は、厳しいか。
ともかく急ぐ。
舗装道路が終わり、山道を行く。
速度が落ちるが、ここからはいつ攻撃が飛んできてもおかしくないだろう。とにかく何があっても、即座に備えられるようにする。
見えてきた。
山を這いずってこっちに進んできているその姿は。
機敏に口と尾を用いて人間を殺傷するブルーカイマンと違い、なんというか。
「ミズオオトカゲ……?」
コモドオオトカゲを除くと、最大級の大きさのオオトカゲの一つ。かなり気性はあらく、生態系の最前線にいた種だ。
それが、這いずるようにして進んでくる。
中型種が併走して、火力掃射をしている。面白いのは、アトミックピルバグを背中に乗せて、グリーンモアが移動している事だ。
確かにアトミックピルバグは速度が弱点だったはず。
超火力の代わりに機動力を犠牲にしていた筈だが。それもこう言う形であれば補えると言う訳か。
ただアトミックピルバグは、恐らく器用にあたいの攻撃を見分けられるほど迎撃の精度が良くないはず。
そのまま、海に移動されると困る。立ちふさがるように移動を続ける。
熱線。
察知された。
山道で足を取られるが、それでも回避。凄まじい音を無限軌道が上げ、腐葉土をまき上げながら加速。
熱線が掠めて、中空を貫く。
瞬時にプラズマ化した空気が、連鎖爆発していた。
「やっぱりまずいです! 海路で神戸に向かうつもりですあいつ!」
「アトミックピルバグに飽和攻撃をされているのに、なんてタフな!」
「海に入れると大惨事になります! それまでに止めてください!」
広瀬大将の指示。
誘導弾が既に準備されている。
ブルーカイマン・ネメシスの動きは速く、どうみても時速300㎞は出ている。これは小型種の限界を軽く超えている。
巨大な体格だから高速を出しやすいというのは確かにあるのだろうが。
それにしても凄まじい速度だ。
また熱線。
奴は口からというよりも、鼻先から熱線を放ってきている。ミズオオトカゲの姿を模していても、あまりそれは性能と関係がないのだろう。
掠める。
だが、回避。
大丈夫、まだいける。
ただ、気になる事がある。追いすがっている中型種の猛攻を受けるばかり。抵抗している様子が無い。
それは、いきなりのことだった。
思わず後退。
反射的な行動だったが、それがなかったら多分助からなかったと思う。
炸裂した熱量が、辺りを一瞬で焼き尽くしていた。
水爆でも直撃したかのような有様だ。
純粋な熱量が、まとめてぶっ放されたのだと分かる。
一瞬の高熱では、中型種は殺せない。
だが、今のは。
モニタが回復する。機体は横転を免れた。だが、三機ついてきていたデチューンモデルは。
一機が斜面を滑落し、下で横転していた。
「三原機、擱座!」
「脱出は可能ですか?」
「問題ありません! 付属のバイクを用います!」
「了解! 安全圏まで離れてください!」
呉美中佐の指示で、即座に脱出を開始する。ダメージを確認。山を壁にしていたのに、なんという凄まじい衝撃か。
一瞬、世界から光が消え。
音を自動的に遮断してくれる機能がなかったら、鼓膜が消し飛んで、気絶ではすまなかっただろう。
爆心地に、二回り小さくなったブルーカイマン・ネメシスが見える。
広瀬大将から通信が入った。
「映像を解析しました。 ブルーカイマン・ネメシスは恐らく体の一部を熱量ごと吹き飛ばしたようです」
「む、無茶苦茶な……」
「いえ、内部のダメージは極めて軽微なようです。 これは最初から、熱量を蓄積して周囲をまとめて追い払うためのデコイを纏っていたと見て良いでしょう」
冷静に状況を説明する広瀬大将。
それは、まずい。
奴の本体にまるでダメージが入っていないと言う事だ。
しかも、今ので周囲にいる中型種は吹っ飛んだ。特にアトミックピルバグは、形状もあって遠くに飛ばされたようである。
中型種はこの程度で死ぬような存在ではないが。
戻ってくるまで、まともな攻撃は通らないと見て良い。
だが、相手の大きさ。
今まで見たネメシス種よりずっと小さい。ひょっとしたら、超世王セイバージャッジメントとデチューンモデルだけで、やれるかも知れない。
ぐっとアクセル踏んで前進。
そのまま、一気に距離を詰める。
それにしてもトカゲっぽい姿になったのは何故だ。尻尾を自切するトカゲは多いが、確かミズオオトカゲはそういう事はしないはずだが。
此方を視認したブルーカイマン・ネメシス。
腕を振り下ろしてくる。
回避。
斜面直撃。反撃はまだだ。機体が揺れるが、奴の気を引きながら、斜面を降る。また一撃。顎で食いついてくる。回避。また回避。凄まじい連撃だが、どうにか対応できる。走る速度は凄まじいが。
今までこの超世王セイバージャッジメントには、様々な中型種シャドウとの戦闘経験が蓄積されている。
その中にはあのストライプタイガーやグリーンモアのものもある。
超音速の相手ともやりあっているのだ。
このくらいの速度だったら。
使いこなせている今は、どうにかできる。
それでも何度かかする。
かするたびに、吹っ飛ばされそうになる。
其処で、ジャスティスビーム改が奴に巻き付く。斬魔クナイでの射撃も開始される。鬱陶しそうに振り払おうとするブルーカイマン・ネメシスの横っ腹に、立て続けにプラズマ球が炸裂した。
いち早く戻って来たキャノンレオンが砲列を組んだのだ。
ただ、海がもう近い。
海に入られた場合何がまずいのか。
それは高温によるダメージを与えにくくなる。
それに、シャドウとしても、イエローサーペントは衝撃波を操作する事ができても、熱操作はたしかできないはず。
ブルーカイマン・ネメシスを止める手段が無いのだ。
とにかく回避。
ブルーカイマン・ネメシスが、プラズマ球を連射するキャノンレオンに対して、尻尾を振るう。
尻尾が千切れて、それがキャノンレオン達の至近で炸裂。また凄まじい爆発を引き起こしていた。
本当に環境を滅茶苦茶にして、それをまるで顧みない。
シャドウの戦闘とは全く違う。
人間を殺すため。
そしてそれを邪魔する中型種を排除するため。
そのためには何もかも手段を選ばない。
そもそも「死んでいる」からかどうかは分からないが、体を斬り捨てるような真似までしている。
だが、これ以上の構造弱体化は不可能の筈だ。
いきなり、ブルーカイマン・ネメシスが跳ぶ。
巨体が凄まじい勢いで跳んで、必死に全機で回避。あたいを狙って来たんじゃない。というか、デチューンモデルさえ狙っていない。
海へ向かって移動しただけだ。
そのまま着地と同時に、辺りの大地が揺れる。
尻尾を失って現在六十mほどまでサイズは縮んでいるが。
それでもその巨体だ。
だが、山崩れさえ利用して、あたいは逆落としを掛ける。
そして、今こそ。
使う時だ。
接近してきたあたいを無視して、ブルーカイマン・ネメシスが行こうとする。だが、行かせない。
投擲型斬魔剣を叩き込む。そして、そのまま加速。
追いついてきた別のキャノンレオンも攻撃を開始。
恐らく、体の切り取りはもう出来なくなったのだ。
放熱を開始するブルーカイマン・ネメシス。
ここで、誘導弾が着弾するが。
見向きもしない。
恐らく理由は、近くに海があるからだ。這って、それに進もうとするブルーカイマン・ネメシス。
いや、海だけが理由か。
これは恐らくだが、誘導弾に対して学習している。いや、それだけじゃない。そもそも熱量が足りていないんだ。
「誘導弾、効果無し!」
「攻撃続行! 中型種と連携して、更に攻撃を叩き込んでください!」
「イエッサ!」
「くそ、化け物と連携なんて……!」
斬魔クナイを搭載しているデチューンモデルに乗っている兵士が悪態をつく。気持ちはわかるが、あいつを海に逃がしたら終わりだ。神戸を直に狙われて、そのまま破壊しつくされる。
そうなったら、再建どころじゃない。
人類は終わりだ。
多数のキャノンレオンからの直撃弾を受けて、圧搾プラズマで迎撃しようとするブルーカイマン・ネメシス。
だが。
その時、ついに懐に飛び込んだあたいは、それを振るう。
斬魔剣Ⅲ。
斬魔剣Ⅱと、シャイニングパイルバンカーを組み合わせ。
更にはブレードの部分を回転式にした事により、チェーンソーのように更に効率的に超高熱をたたき込めるようにしたものだ。
凄まじい勢いで、刃がブルーカイマン・ネメシスの足に食い込む。火花が散り、見る間に奴の体が赤熱していく。
悲鳴が聞こえる。
やっぱり体を小さくしたのが致命的だったのだ。それに此奴の体、細くてはっきりいって重厚さが足りない。
踏みつぶそうとしてくるが、そこで呉美中佐がファインプレイ。横切るようにしながら、ジャスティスビーム改のワイヤーを切りつつ、奴の正面に陰陽バリアを叩き込む。視界を一瞬でも防げばいい。
視界なんか普通シャドウにはないが。
ネメシス種はどうもその辺りがある節がある。
戦闘では、そういった様子が今まで見えていた。
鬱陶しそうに陰陽バリアをはがしつつ、あたいを探すブルーカイマン・ネメシスだが。あたいはその時、逆側の足に貼り付いて。更に斬魔剣Ⅲを叩き込む。超高熱のチェーンソーが、奴を一気に切る。
熱量が上がっていく。
ブルーカイマン・ネメシスが、不意に全ての足を地面から離した。胴体で、ボディプレスに来る。
回避。
だが、機体が激しく揺れる。
斬魔クナイを打ち込んでいたデチューンモデルが、今の余波をもろに喰らって、斬魔クナイを外した。流れ弾が跳んでいったので、ひやりとしたが。中型にはあたらなかったようだ。
やはりダメージの蓄積が速い。
ただ海もすぐ其処だ。
やはりルートを変えて良かった。ともかく奴にとどめを刺さないと。逃がしたら、とんでもないことになる。
立ち上がるブルーカイマン・ネメシス。
動きは鈍くなってきているが、それでもかなりまずい。
更に斬り付けにいく。
その瞬間、首を不自然な形にねじ曲げて、熱線を放ってくる。それも地面に向けて。回避して直撃は避けるが、凄まじい衝撃波に機体が浮きかける。
まずい。下手をすると擱座する。
着地。
同時に受け身を取って、ダメージを最大限減らす。
本能的にバックを入れたが、そうしなければ続いての追撃で踏みつぶされるところだった。
凄まじい熱。一気にコックピットが暑くなる。
冷房が効いてくれているが、さっきの自爆の装甲ダメージもあるのだろう。やっぱり耐えられないレベルまで温度が上昇してきている。
斬魔剣Ⅲを使って、更に一撃を入れに行く。
相手も動きが鈍っている。
汗が跳ぶ。
あたいは叫びながら、突貫。
其処で、さっきの熱線で、地面がえぐれていることに気づき。あわててカーブを切る。だが、それでも。
機体が、横転しかける。
ぐっと歯を噛む。
更にとどめとばかりに、ブルーカイマン・ネメシスが足を振るって来る。
だが、その瞬間。
呉美中佐機が、超世王セイバージャッジメントの横に滑り込み、横転を無理矢理機体で防ぐ。
更には、ブルーカイマン・ネメシスに体当たりしたのはウォールボアだ。
がっと、激しいぶつかり合いの瞬間。
機体が立て直し、地面に叩き付けられ。それでも、あたいは受け身を取って、一気に前進させる。
礼を言うのは後だ。
後一撃ぶち込んで、とどめを刺す。
ブルーカイマン・ネメシスが、口をかっと開く。
既に体が溶けかかり。
あの不愉快な輩のがなり声みたいな悲鳴が響きはじめている。断末魔だ。だから、最後の抵抗に出て来ている。
ブルーカイマン・ネメシスはもう神戸を狙うのをやめた。
代わりに超世王セイバージャッジメントを潰しに来ている。
だけれども。
この斬魔剣Ⅲは、普通に使うだけじゃない。
そのまま、相手に向けて最高速で進みながら、射出。
斬魔剣Ⅲは投擲と同時に。
その熱量を相手の口の中で炸裂させ、圧縮プラズマを全部叩き込んでいた。
だが、同時にブルーカイマン・ネメシスも爆発する。
凄まじい衝撃と音に翻弄され、更に放出された熱は耐えられる限度を超えた。
意識が飛ぶ。
そのまま闇の中で、これは死んだかも知れないとあたいは思った。
戦闘終了。
超世王セイバージャッジメントのデチューンモデルのコックピットから這いだした呉美中佐は、外の空気を吸って安堵。
どうにか死なないで済む範囲。それどころか、急激に涼しくなっている。
既にレッカーは呼んである。
超世王セイバージャッジメントは今回も酷い有様だ。そして今回は、参戦した四機がいずれも酷い被害を受けている。
それでも勝てた。
飛騨中尉のファインプレイだ。良く気付いた。広瀬大将の判断も速かった。もしもあのブルーカイマン・ネメシスを海に逃がしていたら。
それこそ取り返しがつかない結果を生んでいただろう。
何度か深呼吸して、冷静に周囲を見る。
此処はシャドウの領域のかなり奥深くで、本来だったら八つ裂きにされる。だけれども、戦闘後撤退するまでシャドウは待ってくれる。
それでも中型種がじっと撤退を見ている。
連中が意識を共有しているのであれば。
時々連絡してくるノワールというのも、今丁度見ているのかも知れない。
レッカー用の牽引車両が来た。
既に超世王セイバージャッジメントのコックピットを開けて、飛騨中尉の無事は確認している。
いや、意識を失っているし、致命傷は無いだけ。
今回も凄まじい猛攻をいなして、必死に盾役をしてくれた。特に今回は、今までのネメシス種が全くやってこなかったトカゲの尻尾切りなんて事をしてきたのに。それでも対応できた。
畑中中将は総合力が優れていたが。
この子は勘が働くタイプだ。
そして戦争は才能に依存する。
恐らく、天性の戦争に関する才能持ち。だからこそ、強いのだろう。それでも時々助けないと危ない。
それが、畑中中将との違いではあった。
救急車も怖れずにつけて、負傷者を回収していく。大丈夫。命に別状がない事は、バイタルをチェックして調べてある。
呉美中佐が乗っていたデチューンモデルは、どうにか自走できる。逆に言うと、どうにかのレベルまでダメージを受けていた。
安全圏まで抜けるが、その間じっと中型種が此方を見ていた。
装備を使い切った状態だ。
襲われたら確定で死ぬ。
そう思うとぞっとしないが。
それでも今回も連携出来た。
そもそも中型種には、畑中中将でもない限り、余程相性が良い専用の装備でもつけていないと勝てない。
これは実際に中型種を斃した経験がある呉美中佐だから言える事で。
今でも、畑中中将のように立ち回るのは無理だ。
帰路、舗装道路に乗った頃、広瀬大将から連絡が入る。
どうにか動いている自動走行システムを起動して、軽く話をする。
「現場での飛騨中尉の判断はとても見事ですね。 ただどうしても畑中中将よりも危なっかしく感じます」
「それもあるので、小官が基本的に支援をしています。 今回も数度、危ない場面がありました」
「苦労を掛けます」
「いえ、これで勝てるのなら安いです」
一応戻った後、呉美中佐も病院で診察を受けるように言われている。
受け身は大丈夫だが、酷い高熱の中で戦ったのだ。一緒にいたもう二人は、熱にやられて完全に伸びている。
自身が兵士として高い評価を受けていることを呉美中佐は知っている。
この特別に頑丈な体。
噂に聞く強化人間計画の被害者を除くと、恐らく兵士としては最高の素材。
だからこそ。
呉美中佐は自身を大事にしなければならない。
こんな時代なのだから、それは余計にだ。
「それで、今回のネメシスはどうでした」
「もはや手に負えない段階まで強くなっています。 畑中中将であっても苦戦は免れなかったと思います」
「明確な弱点まで補ってきていることを考えると、その意見は妥当ですね」
「はい。 創意工夫がアトミックピルバグ戦で限界を迎えてしまったように、このままでは……」
幸いネメシスはいずれ数が尽きるという話だが。
それは一体いつになるのか。
百年後とか言われたら、もはや人間は対応できないだろう。それが出来るような体力が、人間の文明に残されていないからだ。
四国を抜けながら、他にも幾つか打ち合わせをする。
冷房の強化については、幾つか案が出ていて。それを導入するらしい。今の段階だと、どうしてもダメージを受けることが前提になる。
冷房を高性能にすると、それだけデリケートにもなる。
機械というのは性能が上がるほどデリケートになる傾向があって、冷房でもあのネメシス種の熱を中和できる程のものとなると、どうしても戦闘での激しい衝撃には耐えられないだろう。
畑中博士が毎回苦労しながら調整してくれている。
それでどうにか生き残れているが。
このまま負担が続くと、飛騨中尉は畑中中将の二の舞になる。
それは避けなければいけなかった。
あれほど出来る後継者なんて、そうそう見つからないし。
そもそも遺伝子に起因するわけでもないようなので、クローンを作った所で同じように乗れるとは限らないだろう。
本当に超世王セイバージャッジメントはどうすれば誰でも乗れるようになるのか。
呉美中佐が出来るのなら、代わりに乗りたい。
飛騨中尉みたいなまだ子供を乗せて、あんな過酷な戦いをさせては絶対にいけないのだ。本来は。
神戸に到着。
不愉快なプラカードをぶら下げている活動家が少数いるが、警備ロボットに抑え込まれている。
意味を為さないわめき声を上げているが。あれがインテリの慣れの果てだと誰が信じられるだろう。
無視して京都工場へ向かう。
今日は、勝ちだ。
後はネメシス種がいなくなるまで勝ち続ければ。
とにかく、今は。本当にノワールが言う通り、ネメシス種がいずれ尽きることを、信じるしか手が無かった。
更に狡猾さを増していくネメシス……!
それでも今回勝ったのは、飛騨咲楽さんと、超世王セイバージャッジメント。それに、斬魔剣Ⅲでした。