スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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シャドウそのものであるノワールが、飛騨咲楽さんに目をつけます。

まああれだけの活躍をしているのだから当然とは言えますね。

正式に畑中菜々美さんの後継者だと認めたと言う事です。






黒が見た未来
序、邂逅する黒と新星


病院で目を覚まして、どうにか勝ったことを悟る。もし負けていたら、あたいは今頃あの世だ。

 

その場合は地獄だろうなとも思う。

 

昔は死ぬとなんか特典とかもらって都合がいい世界に転生して接待をひたすらして貰えるとかいう思想があったらしいが。

 

何を食ったら自分がそんな事をしてもらえる存在だと思い込めるのか、あたいにははっきりいって分からない。

 

あたいはそんな大した事はしてきていないし。

 

死ねばそれで終わり。

 

あの世があっても、普通に扱われるだけ。

 

大半の人間がそうだろう。

 

だから、まあ生きていたかと。病室で思うだけだった。

 

今回も熱によるダメージが主。

 

熱中症寸前まで行っていたようだが、どうにか耐えた。

 

熱中症は恐ろしい病気で、重度のものになると脳が萎縮したりの被害が出る。高熱で脳がゆでられるようなもので。

 

文字通りの意味なので、まず助からない。助かっても廃人確定だ。

 

それを思うと、あたいは運が良かったのだ。

 

医師にくどくど怒られる。

 

分かってはいるが。

 

怒るのが仕事なのだから、甘んじて受け入れる。

 

褒めて伸ばすという仕組みを取る場合もあるのだが。此処では、怒られないといけないだろう。

 

それから、リハビリについて聞く。

 

出来れば非人道的なロボットには乗らないで欲しいと医師には言われたのだが。それは流石にそうもいかない。

 

幸い超世王セイバージャッジメントは、昔のアニメに出て来たような命を食ったり燃やしたりして活動するロボットではない。

 

腕が良ければ、被害は減らせるはず。

 

あたいに対しても、周囲にも。

 

だから、あたいが頑張るしかない。

 

どうも三池さんはあたいのモチベ管理に気を揉んでいるようだけれど。その辺は、あたいは大丈夫だ。

 

少なくともシャドウとの戦いを投げ出すつもりは無い。

 

やっと、自分が出来る事が見つかった。

 

だったら、それをやるだけだ。

 

他に誰も出来る人がいないものなのだ。

 

生きる価値と言っても良いだろう。

 

それなのに、やらない理由がないのだから。

 

ともかくリハビリについて聞いて、それからリハビリを始める。淡々とやっていく。

 

肌などにダメージを受けていて、歩くのが最初は大変だった。だが、若い事もあって、回復は早い。

 

とにかく回復もさっさと済ませたいが。

 

焦るわけにもいかないのだ。

 

病院で黙々と過ごしていると、三池さんが見舞いに来た。お菓子を差し入れてくれるので助かる。

 

ちなみに医師と相談して、ちゃんと食べて良いものを持って来てくれている。

 

あたいの場合は内臓とかに問題を抱えてしまっている訳ではないから、大概のものは大丈夫だが。

 

「今回の戦いが評価され、大尉に昇進決定です。 京都工場に戻ったら、お給料が増えます」

 

「ありがとうございます。 でも正直、お金なんて使い路がないですけど」

 

「今の時代、経済は人間の手を離れていますからね」

 

「まったく……」

 

苦笑い。

 

昔はギャンブルやら投資やらに狂って財産を溶かしてしまう人が幾らでもいたらしいのだが。

 

今の時代は、その手の悪辣な先物取引の類は、少なくとも神戸ではなくなっている。

 

また、ホバーが各地の都市や国をどうにかつなげられるようになったとはいえ。

 

それでも過去のような人間の行き来は出来なくなっており。

 

いわゆる国際犯罪組織というものは、完全に過去の存在に墜ち果てた。

 

あたいは髪を伸ばしていて。それを切る気は無いけれど。

 

特にそれ以外拘りもないし。

 

服だって着られればなんでもいいくらいの考えでいるから。

 

とにかくお金なんて殆ど使わない。

 

兵士として服が支給されて、良かったと思ったくらいである。

 

公式の場でこれを着ていればいいというものの上。

 

極めて頑丈で。

 

壊れても再支給されるのだから。

 

他にも幾つか話をしていると、メールが来る。

 

誰だろうと思ったが。

 

内容を見て、思わず口をつぐんだ。

 

送り元、ノワール。

 

それを見せると、三池さんが顔色を変えた。即座に持ち込んでいた小型の端末を操作し始める。

 

そして頷かれる。

 

この反応。

 

どうやら本物らしい。

 

「君が現在の超世王セイバージャッジメントのパイロットだね、飛騨咲楽。 私達はノワール。 もう名前は聞いているかな」

 

「未来から来た化け物だろ」

 

「はっはっは、まあ君達の視点からすればそうなるね。 だが私達からすれば、君達はエゴのまま世界を焼き滅ぼした化け物だ。 主は君達のせいで苦労して、寿命を縮めて、それで死んだ」

 

「小官に何の用」

 

相手はノワール。

 

出来るだけ刺激するな。

 

可能な限り情報を引き出せ。

 

そう、三池さんが言ってくる。

 

分かっている。三池さんは、極めて重要な事態だと言って、看護師も追い出した。今はそういうレベルの状況だ。

 

「君は前のパイロットである畑中菜々美とはまた違う。 それでいながら、急速に成長している。 興味を持った。 今の時点で、私達が興味を持っているのは、精確な分析が出来る上に、私達の正体をある程度当てて見せたナジャルータ博士と。 現役で超世王セイバージャッジメントを操作できる君だ」

 

「そう、ありがとう。 それと戦闘時、たまにアシストしてくれて助かるよ」

 

「おや、罵声ばかり浴びせるのではないのだね。 礼は受け取っておこう」

 

礼、か。

 

シャドウに対して礼をいうのも不思議な話だ。

 

このやりとり自体、まずいかも知れない。

 

主戦派だのの頭に花畑が出来ている連中がこの内容を見たら、そのままクーデターだとか。あたいの命を狙って来かねない。

 

だけれども、だ。

 

そういうのをどうにかしないと、多分人類に未来は無い。

 

それでも、慎重にならなければならないのが、非常に面倒くさい。

 

あたいの言葉で返さないと、ノワールは会話に応じないだろう。三池さんはいう。頷いて、ない頭を絞って、会話を続ける。

 

「ネメシスはいついなくなるの?」

 

「それは此方でも分からない。 私達は全知全能には程遠いのでね。 全知全能なんてものは、君達の妄想の専売特許だよ」

 

「謙虚なのか馬鹿にしているのか」

 

「ははは、両方だ」

 

ちょっと腹立つが。

 

それはそれとして、返しにはウィットがあるなとは思った。

 

幾つかやりとりをする。

 

やはり前回の対応力を見て、シャドウそのものだろうノワールは感心したらしい。それに、やりとりをみて、あたいのモチベが落ちていないことも察したのだろう。結構褒めてくる。

 

あまり褒められた経験はないので。ちょっと落ち着かない。

 

とりあえず、冷静に返事をしないと。

 

「少しは其方でもネメシスを抑えられない?」

 

「それは厳しい。 私達でも最善はつくしている。 ネメシスと化した死んだ私達は、急激に学習し能力も高めている。 これは臨界点に達するまでは続く。 臨界点は幸いそう遠くは無い筈だ」

 

「臨界点……」

 

「学習したノイズの究極の集約点だ。 君達人間が世界にまき散らしてきた負の全てを集約した存在が、そう遠くないうちに現れるだろう。 ただ現れる場所は、大まかにしか制御出来ない。 私達でもある程度は戦力を集めて対処するが、既にネメシスとなった死んだ私達は、私達への攻撃もある程度行うようになっている。 あらゆる手段を講じてはいるが、抑え込むのは不可能だ」

 

そうか、やはりまだ強くなるのか。

 

そして臨界点というのがあって。

 

それさえ超えれば。

 

「時間の感覚が違うとどうにもならないから、大まかに教えてくれない? もうすぐっていつくらい? 百年後とか?」

 

「そこまで先ではないさ。 私達は人間の文明をコントロール下におくまでにそれほど時間は掛からなかっただろう。 具体的には分からないが、それでも君達の感覚で数年以内だろう。 どれだけ遅くてもだ」

 

「後数年……」

 

そうなると、色々とまずい。

 

たとえばあたいは絶対にこれでやられるわけにはいかなくなった。

 

数年で臨界点とも言えるとんでもなく強いネメシスが出る。それも、遅くても数年で、である。

 

もしもあたいがやられた場合は。

 

後続のパイロットなんぞ存在しようがない。

 

その時は、恐らく神戸どころの被害では済まないだろう。

 

当初は、大型種のシャドウを斃せば戦いは終わるのでは無いかと言う話がされていたとあたいは聞いている。

 

しかし実際には、大型種よりもある意味遙かに厄介な相手が立ちふさがろうとしているし。

 

それに仮に勝ったとしても。

 

ネメシス無き後、人間とシャドウが上手くやっていけるのだろうか。

 

あたいにはとてもそうは思えない。

 

活動家だのが勇ましい事ばかり言っているのを見る。

 

会議でも、国家の代表レベルが、シャドウを皆殺しにして撃ち払えとか、出来もしないことばかり言っているようだ。

 

まだ、これだけ力の差を見せつけられても。

 

それでもなおそのように振る舞うのが人間だ。

 

あたいもちょっとノワールと話してみて分かった。性格は悪いかも知れないが、はっきりいって人間より遙かにマシである。

 

きっとそれは。

 

あたいも含むと思う。

 

「時に飛騨咲楽。 君は自分がどういう存在の子孫か知っているか?」

 

「いや、ろくでなしの子供だろう事は分かってるけれど」

 

「そうか。 では八十人以上殺したシリアルキラーの子孫であることは知らないのだな」

 

「え……」

 

そうだったのか。

 

ろくでなしとは思っていたが、正直ろくでなしの次元が違った。

 

口を思わず押さえる。

 

それほどのカス野郎が親だったのか。

 

父母のどっちがそれだったのかはどうでもいい。ただ、それであたいに、先祖に対する敬意は一瞬で消えた。

 

敬意を持つべき親なんてものは早々はいない。

 

それは分かっていたが。

 

今からあたいにとって、親は敵だ。

 

「それをあたいに言ったのは何故?」

 

「今の時代は、プライバシーだので親の素性を隠すようだからね。 君はある程度は知っていたようだが、それでもこの真実は知らなかったのだな」

 

「……知っても別にそこまで驚かないかな。 むしろすっきりした。 あたいはあたいだ。 親の道具でもなんでもない。 一人の人間だし、自分の意思でこれからも戦う。 死んでも親のところに帰るとか、そんなことはどうでもいい。 あたいの人生を悔いなく送らせて貰うよ」

 

これは本心だ。

 

それを見て、しばらくノワールは黙っていたが。

 

やがて、返信を一つだけ寄越した。

 

「理解した。 先祖信仰と君は無縁なようだ。 いずれにしても次にネメシスが現れるまでに、体を治しておくのだね」

 

それっきり、会話は止んだ。

 

ベッドに座り込んで、嘆息する。

 

三池さんが、彼方此方に転送していたようだが。

 

こっちを心配そうに見る。

 

あたいは苦笑いしていた。

 

「親が本物のカスだった事はそれほど小官は衝撃をうけていないです。 むしろそんな奴の下で育たなかったことを、今は良かったと思っています」

 

「そうですか。 ……あまり言う事はありませんが、ただ体をしっかり治してください。 お菓子はおいていきます」

 

「ありがとうございます」

 

本当に助かる。

 

看護師が来て、色々不機嫌そうに話を聞かれたが。とりあえず詳しい話はせずに、適当に誤魔化した。

 

それからリハビリに入る。

 

今回もさっさと退院して。それで、超世王セイバージャッジメントをもっと使いこなせるように、鍛えるだけだ。

 

 

 

ノワールからのメールの内容を見て、ナジャルータ博士はそうかと呟いていた。

 

後数年が勝負。

 

だとすれば、恐らくはそれで今後の人類の命運が決まる。

 

それが分かっただけで十分。

 

ここからは長期戦ではなく、短期決戦に切り替えていかなければならないが。それはそれとして、目標が出来た。

 

その後、シャドウとの決戦を望む人間は絶対に出てくる。

 

それらを抑え込むのは市川代表の仕事であって、学者であるナジャルータ博士の仕事ではない。

 

畑中博士と、丁度来ていた畑中中将とも話をする。

 

畑中博士は、むしろ腕組みして唸った。

 

「まだ力が上がるとなると、斬魔剣Ⅲでも足りないかも知れないわねえ」

 

「姉貴、熱量をもっと継続的に爆発的に与える工夫は何か無いのか? 今までの戦闘を見ていると、あの子でもいずれ限界が来るぞ。 私と同じような目にあわせるのはできるだけ避けたい」

 

「そう言われても、こればかりはねえ」

 

「一つ提案があります」

 

畑中姉妹に、軽く話しておく。

 

やはり対熱をどうするかが課題だ。そこで、広瀬大将と相談して、何かしらの手を打つべきではないのか。

 

あの排熱。

 

それ自体がネメシスの討伐を極めて困難にしている。

 

勿論機械というのは性能を上げれば上げるほど、機嫌を取るのが難しくなるのは事実なのだが。

 

このままだと、いずれ限界が来る。

 

「真面目な話、パワーパックやコアシステムを守るので今の時点では精一杯なのよねえ。 そもそもネメシスは、本来人間が斃せる相手じゃない。 超世王セイバージャッジメントに乗っていたとしてもね。 それを創意工夫で誤魔化している状態だから、これ以上は厳しいわ」

 

「それは分かりますが、数年が仮に8年だったとして。 もしもそれだけの期間戦闘が続く場合、飛騨中尉の体は恐らくもたないかと思います」

 

「同感だ。 私より若くして退役かも知れない」

 

「うーん、それでもいい方法はどうにも思い当たらないのだけれど」

 

装甲の間に真空の部分を作るなどして、熱伝達を出来るだけ抑える工夫は今の時点でも行っているらしい。

 

だが何しろ盾役だ。

 

ネメシスの激しい攻撃を回避しながらの厳しい近接戦をしなければならない状態である。それはそういった工夫も機能しなくなる。

 

更には冗長性の確保だって厳しい。

 

激しい戦闘の中では、それらすら絶対たり得ない。

 

勿論飛騨中尉の操作技術がまだ足りないというのもあるのだが。

 

それでもネメシス種と戦闘出来ているだけで上出来も上出来。

 

回避時に装甲などを一部やられるのは、もはやそういうものだとして考えて行くしかないのだ。

 

「もともと敵の攻撃をまともに受けたら一発で終わりなのは変わっていないのよ。 だから火力を上げるしかないのだけれど、現状の出力だとこれ以上は厳しいのよねえ」

 

「核融合炉を小型化して積み込めませんか」

 

「出来ないとは言わないけれど、やるには数世代掛かるかな」

 

「そうですよね……」

 

核融合炉には放射線を膨大に放出するという問題がある。このため、分厚く鉛で覆わなければならない。

 

戦車なんかに積み込んだら、乗る人間は被爆して助からない。

 

そういう点では、まだ核分裂炉の方が現実的だが。

 

核分裂炉は膨大な放射性廃棄物を出す上、一度火を入れたら基本的にとめる事が出来ないという問題点がある。

 

それもあって。

 

どちらも、少なくとも超世王セイバージャッジメントに乗せるのは厳しい。

 

「いずれにしても、斬魔剣Ⅲの更なる改修を進めておくわ。 前回の件で、幾つか問題点が見つかったから、それを直せばもう少し性能を上げられると思うわ」

 

「お願いします。 飛騨中尉も、このままだときっと倒れてしまいます」

 

「後継者も簡単には見つからないだろうしな」

 

「……」

 

それで話は終わる。

 

畑中中将は、松葉杖で車いすまで戻り。それで病院に戻っていった。立って長話ですら医師が怒ると苦笑いしていたが。

 

あれだけ無茶を続けたのだ。

 

立つ事ができるだけでも奇蹟に近いだろう。

 

ネメシスとの戦闘でのノウハウを命がけで蓄積してくれたのだ。

 

今でも英雄である。

 

ナジャルータ博士は畑中中将を見送ると。

 

自身も研究室に篭もる。

 

人間の悪い部分の影響をもろに受けたのがネメシスだとして。更に進歩を続けるにしても。

 

それにはいずれ限界が来る。

 

相手の能力推移から、それがいつか割り出せれば。

 

或いはある程度の戦略を立て。

 

戦闘での負担を減らせるかも知れない。

 

少し麟博士にも手伝って貰う。

 

それぞれ得意分野を分担して、分析と解析を行う。

 

それにしても、十世代でも生ぬるいほどの技術差だが。あれだけの差がつくには、寂れきった未来では、どれくらいの時間が掛かったのだろう。

 

それとも、何かしら根本的に勘違いがあるのだろうか。

 

そもそも熱が何故弱点になるのか、斃すとどうして熱ごと消えてしまうのかはまだまったく分かってもいない。

 

様々な学者が解析して、頭を抱えている問題であって。もしもそれを解析できれば。

 

いや、解析できても、簡単には斃せないか。

 

溜息が出る。

 

シャドウを打倒するのは無理だ。共存するにしても、ネメシスを斃してから。いずれにしても、課題が多すぎて。

 

やはり、抑えようにも、溜息は出るばかりだった。

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