スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
ネメシスとの戦闘で苦慮しているのはシャドウも同じです。
ついにGDFの会議にノワールが姿を見せます。
そのくらい厳しい状況が来ている。
そういうことなのです。
会議を終えようとした市川が、締めを行おうとした瞬間。
モニタに何か良く分からないものが映り込んでいた。
怪訝そうな声が上がる。
嵐山が即座に状態をチェックしろとテレビ会議のシステムを管理している者に言うが、分からないらしい。
それはヒマラヤの一角にいるようだ。
大きさは大型種のシャドウくらい。
つまり数十mはある。
人とも四つ足の獣とも違う。
ネメシス戦で、これまでスリープ状態においていた大型種を起こすという話は既に聞いている。
ノワールとしても本気でネメシスを駆逐するという意欲があるということだ。
だが、それの実体はまだ見ていない。
こいつがそうなのだろうか。
いや、だとしても、何故テレビ会議のモニタに映り込む。代表達のモニタにも映っているようだ。
「なんだこの映像は」
「ハッカーの悪戯か?」
「GDFの会議に割り込めるハッカーなんて、今の時代は存在しませんよ。 皆さん落ち着いて。 現在状況を究明中です」
「その必要はないよ」
不意に声がする。
その声も、側にあるマイクからだ。
声は異常に穏やかだ。
この声は何処かで聞いたが、恐らくなんとかゆらぎとかいう、人間を安心させる波長のものではあるまいか。
だが、ぞくりとする。
あまりにも強烈な猫なで声で、それで心が持って行かれそうだからだ。
「な、誰だ!」
「今、このGDFの会議に割り込ませて貰っている。 代表の皆には、それぞれの言語で話しかけているよ」
「……!」
「私達はノワール。 君達がシャドウというものだ」
やはりか。
ついに来たと言うわけだ。
即座に専門家達に連絡。
出来るだけデータを取っておきたい。
恐らくヒマラヤの何処かしらの山に腰掛けているらしい大型種は、そのどの生物とも似ていない姿で、ゆったりと動いている。
少なくとも人間の嫌悪感とか好感とか。
そういったものを考慮するつもりは無さそうである。
「き、貴様がシャドウ達の首魁か!」
「死ね悪魔!」
「皆落ち着いて。 今までメールなどでは連絡を取ってきた相手だ。 ともかく、落ち着いて話を聞こう」
「くそっ!」
代表達は敵意剥き出しだ。
まあシャドウ戦役時代の地獄を経験している年齢の者も多い。それは敵意が溢れるのも仕方が無いかも知れないが。
ネメシス種の駆逐で、シャドウが協力してくれなければ、とっくに人類は破滅している。
何より、ネメシス種が出現したのは人間のせいだ。
ネメシス種は破壊力も大きく、しかもシャドウと違って環境に対するダメージなど一切考慮しない。
古くに人間がそうであったように。
人間という存在の最悪の後継者こそネメシスだ。
ネメシスは人間の映し鏡そのものであり、その凶暴性を形にした存在そのものだと言える。
だからこそ。
斃すのに、シャドウと連携しなければならない。ただ、どうしてこんな面倒な会議に姿を見せたのか。
GDFの会議が猿山も同じであることは、電子機器を全て覗いている可能性が高いノワールだったら。
知っていて当然だと思っていたのだが。
「落ち着いたかな?」
「用件を聞こう」
横を一瞥。
あわてて駆けつけてきた三池が、頷いている。どうやら本物で間違いないらしい。つまり、ノワールが連絡してきていると言う事だ。
しかも今回は音声まで発しているが。
恐らく音声に関しては、合成しているものだそうである。
シャドウは断末魔の悲鳴を上げることがあったが、ネメシス種以外のシャドウは、いずれも人間とも動物とも似ても似つかない悲鳴を上げていた。
ネメシス種は人間の威嚇だのなんだのに近い声だった。
これを考えると、ネメシス種にとって音はそれほど重要な存在ではない。
更にソニックブームを自在に操作する種が多い事を考えると。
その技術を自在に応用して、好きなように音を作り出せるとみていい。
今、GDFの代表全員の母国語で同時に話しかけているようだが。その程度の芸当は朝飯前なのだろう。
「君達がネメシスと呼ぶ寿命を迎えた私達は、先鋭化を続けている。 先日出現したネメシスは、大型種の攻撃にもかなりの時間耐え抜いた」
「いいざまだ!」
「そのまま殺し合え」
「ヤジは止めろ。 今、絶対に勝てない相手が話しかけている。 君達は自分が安全な場所にいるとでも思っているのか? シャドウにしてみれば、今の人類の生存圏など、二時間もあれば全て更地に出来るんだぞ! 核兵器すら通じない相手だ! それを忘れたのか!」
いい加減に頭に来たので、雷喝を入れる。
市川が時々激しい声でこう言う事をいうのを知っている連中は、それで悔しそうに黙り込む。
事実シャドウが救援してくれなければ、ネメシス種はとっくに神戸でさえ滅ぼしているのだ。
今、シャドウにけんか腰になるのは、愚策中の愚策だ。
「ふむ、続けよう。 ネメシス種については、もう少し強くなると見て良いだろう。 最終的に落ち着くのは数年以内。 それまでにまだまだ強くなり続けるネメシスとの戦闘が続く。 それで相応の予算を、君達が超世王セイバージャッジメントと呼んでいる兵器に投入してくれたまえ。 そうしなければとても対応は出来ないだろう」
「してはいるが、それでも限界なのだ」
「資源でも足りないのかな」
「おかげさまでね」
再生エネルギーだのエコエネルギーだの言われていたものは、悉くが使い物にならなかった。
それが現実だ。
結局現在の電力は原子力で補われているし。
一番確実なのは石油だ。
特に電気自動車の類は、今では一つも存在していない。
リサイクルどころか、安全に処理するのがほぼ不可能なリチウム電池を用いていたのが原因で。
今の時代、そんな代物を用いるわけにもいかないのである。
結局原子力と石油。
これだけしか信用できないという状況である。
核融合炉も全ての都市におかれているわけではない。
場所によっては核分裂炉、それどころか火力発電が現役である。
石油を精製する技術が実用化したのはシャドウ戦役前だった。ただしその普及はいわゆる石油メジャーに普及が邪魔され続けていた。
だが現状ではその石油メジャーがまとめてシャドウに吹き飛ばされたこともある。
特に日本では神戸の一部で大量に石油を製造して、各地にホバーで輸出している。それによって、火力発電で必死に命をつないでいる人間は多いのだ。
過去とは真逆の状況である。
ともかくそんな状態なのだ。
資源は何から何まで足りていない。
ある程度自前で生産出来る物資もある。
リサイクルは、昔とは違って本気で取り組んでおり、腐った業者の財源になどなっていない。
それでも全体的に物資が足りていない。
ましてやネメシス戦では、毎回超世王セイバージャッジメントが全損するレベルの被害を受けているのだ。
それも当然である。
「よし、良いだろう。 少し資源をお裾分けしておこうか」
「はあ」
「指定する座標から人を遠ざけるように。 其処に、レアメタルを初めとして、超世王セイバージャッジメントに用いられている資源を配置する。 ただし、配置する過程で私達が動く。 邪魔をすれば当然排除せざるを得ない」
「巫山戯るな! 貴様等がまとめて出ていけば良いだけ……」
まだ喚く代表に、北米大統領が黙れと一喝。
不平そうに黙り込む其奴は放っておく。
いずれにしても、資源をシャドウが恵んでくれるというわけか。
各地で人間が滅茶苦茶にした環境を元に戻しているシャドウである。多少の物資なんか、融通は簡単なのかも知れない。
指定座標は、濃尾の一角。
何度かネメシスとの激戦が行われた土地で、人間側の領域にあるので、環境の回復がされていない。
しかも小山のような規模だ。
これは、ネメシスを斃すためには、シャドウの施しまで受けなければならないということか。
そう思うと、市川もちょっと頭には来るが。
今は頭に来る来ないで判断して良い状況では無い。
「物資の目録については、電子データで送っておく。 もしも着服した場合は、相応の制裁を加える。 それについては、一切容赦しない。 私達も、君達と直に話してみて理解出来たが、君達はまだ被害者面をしているようだね。 君達こそ、地球を滅茶苦茶にし、未来を全て奪った加害者だ。 君達はそのままでは確定で全滅していた。 私達は判断し、五千万人を生かした。 だが、君達の技術を全て回収した今、いつでも滅ぼす事は可能だ。 滅ぼしたあと、クローン技術で再生して再教育すればいい。 ただそれだけだということを忘れないように」
通信をノワールが切る。
また誰かが何か喚こうとしたが、テレビ会議の向こうで取り押さえられたようだった。
溜息が出る。
たしかにノワールがいうだけの事はある。
GDFの会議ですらこれだ。
そして、ノワールがこれだけの膳立てをして来たというのは。
状況がそれだけまずい事を意味もしていた。
「市川代表! 貴方は悪魔にあのような言いたい放題を言わせていていいのか! 相手は世界を滅ぼした悪魔だぞ!」
「悪魔悪魔というが、悪魔にもっとも近い存在は人間だよ。 シャドウが現れる前、世界大戦が既に始まっていたという話もあるが、あれは概ね事実だ。 そのまま核戦争に発展する可能性もあった。 シャドウは既に未来の平行世界から来た可能性が高い事は以前話をした。 そしてこの世界の人間は、シャドウがいうように、その世界を滅ぼした悪魔と大して変わらなかったのだろう」
「貴様、神を冒涜するか! 我等は神に万物の霊長と認められし存在だ!」
「だったらもっとましな文明を構築できただろう。 ともかく、これから物資の提供を見届け、それを超世王セイバージャッジメントの構築に振り分けるように対応をするので、会議は此処までとする。 ノワールは本気だ。 物資を横領したりしようとしたら、確定で街の一つや二つ、国の一つや二つ、まとめて更地に出来るだろう。 どれだけ頭が花畑でも、シャドウ相手にまともに勝てるなどと思っていまいな?」
そう告げると、誰もが悔しそうに黙る。
勝てると思い込んでいるアホは、主戦派がクーデター祭を起こしたときにあらかた表舞台から消えた。
まだいるかも知れないが、それも世界的な規模での反撃を行えばと言う条件がつけばである。
まさか一都市だけで自殺的な攻撃をして、シャドウを駆逐出来るとか思っていないだろう。
そういうのがまだ権力中枢にいるとは、流石に市川も考えたくなかった。
会議を終える。
嵐山に手配をさせる。
これが昔だったら。マスコミがある事無い事騒ぎ立てたのだろうなと思って、市川は苦笑いする。
マスコミはシャドウ戦役後、復興はしていない。
シャドウ戦役前でも誰も相手にしていなかった。
今更マスコミなんぞ復興する社会のリソースも存在していない。
SNSでかわされる議論の質が高いとは市川だって思っていない。
ただ、マスコミと同レベルだ。
だったら、有料のマスコミなんぞいらない。それだけの話である。ましてや己の主観を事実と思い込み、客観なんていらないと考えるようなメディアなど不要だ。
さて、忙しくなるぞ。
栄養ドリンクを手配して、それから広瀬大将と会談を持つ。
出来ればあまり面と向かっては話したくない相手だが。
ここからは、連携が必須だ。
広瀬大将が、即座に工兵部隊とともに現地に出向くと、小型種のシャドウがなにやら作業をしていて。
見る間に小山が出来上がっていくところだった。
多数の小型種が作業をしているが、雑多なように見えて、出来ていく小山は非常に高速で仕上がっていく。
それだけじゃあない。
いずれの小型種も、互いの邪魔をしていない。
クリーナー、ブラックウルフ、ホワイトピーコック、ブルーカイマン、グレイローカスト、色々いるが。
いずれの小型種も、どれも雑多に動いているように見えるのに。
それぞれが完璧に、自分の仕事をしているようで。
まるで作業に淀みが無かった。
警戒する工兵部隊に、もう少しさがるように指示。
今回民間の業者は呼んでいない。
物資をちょろまかしでもしたら滅ぼす。
そうノワールの威しがあったからだ。
しかもその威しは、確定で実施されるとみていい。
シャドウは、人間を未だに信用などしていない。実際会議でも、普通に恫喝を混ぜてきていた。
この期に及んで罵声を浴びせてくる。
挙げ句自身を万物の霊長と妄想している。
そんな人間のくだらなさは、直に見る事で確認出来ただろうし。
何よりも普段から電子機器を全部覗いているのなら、そのバカさ加減は人間よりよっぽど理解しているのだろうから。
小型種が積み上げていく物資は、どこから出ているのか分からない。
ただ、水の総量を増やす事ができるくらいなのだ。
レアメタルやらも、同じように増やす事ができても全く不思議ではない。
兵士達には、絶対に手出ししないように指示。
指定された地点に作られた小山は、更に大きくなっていく。
「広瀬大将」
「嵐山さんですか。 どうしました」
「現場の状況を、広瀬大将の口からお聞きしたく」
「……シャドウは非常に誠実に約束を履行しています。 嘘をつかないという観点では、シャドウは信用できますね。 ネメシス種がルールの穴を突いてばかりいるのとは正反対かと」
あまりこういうことを言いたくないが。
やはりネメシスは人間の映し鏡なのだ。
シャドウは愚直に行動しているし、言ったことを完璧に守っている。
そういう種族だからこそ、嘘ばかりついて、卑劣な事を平然と続ける人間には好意など抱きようがないのだろう。
シャドウ戦役前の時代。
真面目な人間、優しい人間は、バカの代名詞とされ。
カモとして搾取されるだけだった。
そういう話は広瀬大将も聞いている。まあ事実だろう。文字通り最果ての時代で、人心荒廃極まっていたのだから。
今は神戸などで行っている催眠教育で、それも緩和されつつあるが。
人間が全てまっとうになるまで、どれくらいの時間が掛かるのだろう。
それに会議でノワールが恫喝していたように。
もしも改善の見込みがないなら、人間全部一度滅ぼして。クローンか何かで再生して。それから再教育するのも手かも知れない。
滅びた悲惨な未来からシャドウが来て。
人間がその直接原因を作ったのに、まだ全く反省する気配もないのを知れば。
当然そういった選択肢も出てくる筈だ。
広瀬大将も、クーデター騒ぎの時のあまりにも愚かな連中の行動には、本当に愛想が尽き掛けていた。
それもあるから、ノワールの言葉もわかるのである。
「分かりました。 此方ではある程度の情報統制と、それと民間の関与を封殺しておきます。 貴方の直下の部隊だけで、物資の回収は行ってください」
「承知しました」
「他の国では、暴動を起こそうという動きが出ているようです。 大量の物資がシャドウから提供されたという話が拡がり始めている様子で。 シャドウ憎しもあるのでしょうが。 あまり良い生活状態にない人間が、理由をつけて暴れようとしているのでしょうね」
「海兵隊の派遣を望むなら調整します」
それだけ話して、通話を切る。
嵐山は百戦錬磨の老獪な人間だ。
敢えて今のを伝えてくれたのだろう。
指揮車両から監視を続けながら、海兵隊と連絡もとっておく。
いい加減人間相手の鎮圧作業は嫌だという雰囲気もあったが。シャドウ相手に効きもしない兵器を放つよりはマシ。
秩序が瓦解しそうになっている都市をどうにかして。
破綻を防げる。
それならば、海兵隊の最低限の誇りは守れる。
そう説明すれば、うごいてはくれる。
ただ、市民に銃を向けるのかと、難色を示す兵士も多いようだが。
そういった海兵隊員は若い世代だ。
彼等の母国である北米では、なんどもなんども大規模な暴動が起き。暴動を主導していたのは市民だったが。
彼等は略奪強盗殺人なんでも行い、全く彼等と関係無い者達まで、自分を正義だと信じて踏みにじった。
それだけ北米の社会に無理があったという事でもあるのだが。
それでも、無辜の市民なんてのは幻想である。
広瀬大将もそれは事実として知っている。
「広瀬大将! シャドウが……!」
「引いていきますね。 しばらく様子を見ます。 完全に撤退したのを確認後、物資を京都工場に移します。 京都工場は」
「現在資材置き場などを急いで拡張中。 警備用の部隊も、既に着任しています」
「よし。 ノワールが嘘をつくとは考えにくく、あの山はレアメタルや銅、鉄などの物資の塊と見て良いでしょう。 少しでも零さないように、慎重に掘り崩して回収します。 作業の準備に取りかかってください」
兵士達が動く。
40式戦車の改良型であるブルドーザーやシャベルカーなども配置されている。
アレキサンドロスⅢも配備されているが、それの改良型はあまりない。そもそもMBTそのものが土木作業には過剰なパワーがあるので、40式戦車のうち型式が古く戦場から引退した機体でこういった工作車両は十分なのだ。
やがてシャドウが完全に撤退したのを確認。
というか、濃尾の方でシャドウがいわゆる人文字みたいな形でOKという文字まで作っていた。
溜息が出る。
シャドウにしても、散々超世王セイバージャッジメントと戦って多くが斃されたのに、それをまるで恨んでいない。
集合意識存在だとすれば、多少末端が倒れたくらいではなんでもないのかも知れないのだろうが。
それにしても人間とはあらゆる点で違い過ぎる。
これが人間だったら、何十世代も恨みが残るだろうに。
とにかく、物資の回収を開始だ。
トラックも軍用のものを用いる。確実に物資を運んで行く。
広瀬大将がその作業に目を光らせる。
第二師団が中心だが、規模が規模なので、第一、第三師団にも、信頼性が高い部隊を出して貰う。
超世王セイバージャッジメントの強化改造のため。
そう言い聞かせて、僅かな物資でも取りこぼしがないようにする。
自衛隊は殆どシャドウ戦役で滅びてしまったが。
練度の高さ、士気の高さは引き継がれている。
それだけは良いことなのかも知れない。
物資を順番に運んで行く。
監視用に一応第五師団も出して貰う。
雨が降り始めた。
作業を急がせる。
もしもレアメタルを直に積んでいったのだとすると、雨で有害物質が流れ出すかも知れない。
合羽を被って、直に指揮を取る広瀬大将を見て、兵士達も気合いが入る。そして、予定されていた五時間弱で、作業が終わった。
恐らく、ほぼ完璧に回収出来たはずだ。
この辺りは再生もあまり出来ていない。
ネメシスとの戦闘で激しく傷ついた土地は、シャドウの領域では毎回回復しているが。人間が領域にした土地では、復活の兆しも見えない。
今では野生動物も、ネメシスのいる領域の方が暮らしやすいと認識しているのだろう。どんどん自主的に其方に移っているようだ。
人間が積極的に環境の回復をしない限り、これらの土地はどうにもならない。
或いは、だが。
ネメシスをどうにかした後、シャドウと講和条約を結んで、環境の回復、保全を頼むしかないだろう。
それもまた揉めるだろうな。
そう思うと、色々と溜息が出る。
一通り作業が終わったので、皆撤収させる。
帰路で畑中博士から連絡。回収した物資を今調べているところらしいが、世界経済がひっくり返る(シャドウ戦役前とは比較にならない程規模が縮小しているが)レベルのレアメタルや稀少物資の山であるらしい。
それを超世王セイバージャッジメントに全て使って良いのであれば。
更に色々と工夫が出来るということだった。
それについては、畑中博士に任せる。
あの人だったら、ネメシス対策に、幾らでも手腕を振るってくれるはず。後は。
宿舎に戻ると、疲労が溜まっていることを家事ロボットに指摘される。
マッサージをしようかというので、好きにさせる。
横になってぼんやりしていると、連絡。
今度はチベットの辺りでネメシスが出たようだ。あの辺りも完全に無人地帯である。それもあって、こちらでは手を出さなくていい。
一応、戦闘の経過は知っておく必要がある。
映像を見ていると、あのテレビ会議に出てきたのが出張っているが分かった。
チベットの辺りは、インドにある幾つかの都市から観測が出来る。
空を飛んできたあの大型種ににた姿は、文字通りネメシスを抑え込むと。大量の中型種とともに、熱量を叩き込み続ける。
あれでは自分もダメージを受けるのではないのか。
そう思ったが、多分ダメージなんてなんとも思っていないのだろう。
そもそも集合意識存在だとすれば。
大型種だろうと失った所で痛痒にも感じないのだろうから。
二時間弱でネメシスが斃れた。
大型種はかなり赤熱していたが、斃れるほどではないという。
むしろ赤熱したまま平然と立っているその姿は、神話に出てくる滅びの巨人の様だと。現地の民を恐怖させているようだった。
あの様子だと、大型種はネメシス以上にタフだと見て良さそうだ。
それに。
大型種に対して、ネメシスは恐らくこれで学習した。次は何か対策をしてくるかも知れない。
ノワールもそれは理解しているだろう。
だとすると。
思ったよりも、ネメシスとの決着は、近いのかも知れなかった。