天下の大宰相・呉鳳明伝   作:後世の歴史家

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論功行賞の主演俳優・呉鳳明

 

 

 

 開封への行政機構の移転に伴って、新たに建築された宰相府の離殿を駆け回る文官達が焦燥も露わに叫びます。

 

 

「やはり無いッ! 何処にも無いぞ!!」

 

「隅から隅まで探したのか貴様等ァ!! 流石にまったく無いなどあり得ないだろうがッ!!」

 

「なんだとォ!? 小官達を侮るつもりか貴様はッッ!!」

 

「そうともっ! 宰相府の建設に携わった我らが探して回ったというのに、疑うとは何事かァ!!」

 

「そうだッ! 宰相閣下が御婦人と逢引きするために用意させた隠し部屋まで調べたが、本当に何も無かったのだぞ……!!」

 

「き、貴様……孫の蕭何もおるのに、言ってはならんコトを……」

 

「大丈夫ですよ。お祖父様が無類の女好きであることは、母からきっちり教わってますから」

 

「ち、違うのだ蕭何!! あ、アレは大王様のご趣味に合わせて仕方なく……」

 

 

 そんな秘密も暴露されてしまった文官の戦場を一望して、貴重な助っ人外国人として活躍した韓の公子は呆然と呟きました。

 

 

「……で、では本当に終わったのか?」

 

「はい、韓非様」

 

 

 答えたのは、上座で書類の束を整理する鳳明でした。

 

 

「こちらでも確認しました。僕が提出した設計図にも、皆さんが決済した書類にも、すべて宰相閣下の判が押されています」

 

 

 シンッと静まり返った文官達の戦場で、遅れてやって来た実感とともに呉鳳明が高らかと宣言します。

 

 

「お疲れ様でした。これをもって開封への遷都が完了したことを正式にお伝えします」

 

「うォオオオオオオオオッ! よくぞやり遂げた貴様等ァアアアアアアッッ!!」

 

「『鳳明様万歳ッ!! 鳳明様万歳ッ!! 鳳明様万歳ッッ!!』」

 

 

 途端に始まる万歳三唱など可愛いものです。

 

 まだ12歳になったばかりの鳳明は、津波のように押し寄せた文官たちに担ぎ上げられ、甲子園優勝校の胴上げ投手のように何回も宙を舞いました。

 

 号泣してそれに参加していることを自覚した韓非もまた、底知れぬ喜びを噛み締めるように奥歯を軋ませます。

 

 

 ──本当に、なんという充実した時間だったのだろうか。

 

 吃音を理由に幼少期から韓の王宮にて軽んじられてきた自分がこんなにも充実した、生の実感を得られるなんて──。

 

 

 血尿が出ない日はなかった。それこそ共に師事する荀子の下で、机を並べて張り合った李斯の重圧に晒された時のように。

 

 毎日気絶するまで仕事した。その内、いつの間にか他の文官達と同じように気絶しながら仕事が出来るようになった。

 

 毎日毎日、鳳明謹製の栄養剤と甘菓子を胃袋に流し込み、何度吐いても机に齧り付き……あれ? 何やらあまりいい記憶ではないような気も……?

 

 

 鳳明の胴上げが終わっても呆然と立ち尽くす韓非でしたが、その哀愁を漂わせる草臥れた背中が気さくに叩かれます。

 

 

「やあ。どもども。長らくお疲れさまでした、韓非さん」

 

「お? おお、これは蕭何殿」

 

「やだなあ。ボクのことはもっと気軽に呼び捨てにしてくれって何度もお願いしてるのに、どうして聞いてくれないんですか?」

 

「……そうもいかん。優れた者に敬意を示すのは当然だし、君は宰相の蕭阿殿ご自慢の孫だ。軽々しくは扱えん」

 

「あらら、その辺は変わりませんね。ボクとしては鳳明様のように、もっと適当にしたらいいと思うんですが……あっ。いつまでも庶民感覚が全然抜けないあの人と一緒にしたら、さすがに失礼か」

 

 

 あまりの言い草に吹き出した韓非がようやくの笑顔を取り戻しました。

 

 

 ──この鳳明より年下の文官の名前は蕭何(しょうか)

 

 年齢は11歳。魏国の宰相・蕭阿(しょうあん)の孫であり、成人と認められる前から祖父の宰相府に詰める俊英ですが、性格はご覧の通りのお気楽少年。

 

 以前の歴史と伝統を重視する魏国ならば、いかに宰相である蕭阿の孫でも遷都のような重要な仕事には関わらせなかったでしょうが、そういった老害じみた考えの人物はすでに淘汰されています。

 

 魏国の舵取りを担う信陵君と、これに同調する蕭阿が彼らより鳳明を選んだのも事実ですが、もっと単純に旧態依然とした官僚は時代の流れについていけなかったのです。

 

 

 いくら血筋と家柄を振りかざそうとも、有益な議論ができなければ自然と軽んじられます。

 

 鳳明の台頭以降、熱意と向上心にあふれる若い世代は画期的な知識を猛烈な勢いで取り入れていき、自然と話についていけなくなった高官たちはこれを恥じ、揃って職を辞したのです。

 

 その空席は蕭何のような若い世代や、外国人である韓非によって埋められて、秦の范雎が五年はかかると見積もった開封への遷都は、わずか三年で完了しました。

 

 ……それは、この場にいる全員が、もっと誇ってもいい偉業なのです。

 

 

「でもなんかすみませんね。韓非さんはもともと、鳳明様の考えたヘンテコ農業を勉強するために留まってたのに、すっかりこっちの手伝いをさせっきりで」

 

「そ、そうだった……今からでも間に合うだろうか……」

 

「大丈夫じゃないですか?」

 

 

 すっかり忘れていたコトを思い出して、さすがに愕然とする韓非に蕭何はのほほんと続けました。

 

 

「ウチが毎年大量の食料を押し付けた所為で、一時的に農耕を放棄した韓は自力で秦の王齕を追い返したそうですから」

 

「そ、それは別の意味で心配になるのだが……」

 

 

 韓が30万という耳を疑うような大軍を編成したことは知っていましたが、それだけの数を揃えられた理由がまさかの軍事極振り⭐︎農業バッバイにあるとまでは知りませんでした。

 

 一年以上放置した農地を使えるようにするのは並大抵のことではありません。

 

 よもや魏国の文官達が狙ってその状況を作り上げたとまでは思わないものの、帰国後の苦労を想像すると、韓非でなくてもゲッソリしてしまうでしょう。

 

 

「だから大丈夫ですって。むしろそれぐらいの方が重宝されますよ。幸いボクらと鳳明様もしばらくヒマになりますし、開封にはあの人が農園にするつもりで確保してる場所もありますしね。ボクらが座学、鳳明様が実地で、来年の種蒔きまでにみっちり仕込んであげますから」

 

「……呼んだか?」

 

 

 そうして韓非が気がつくと、周囲は友好的な笑みを浮かべた文官達の肉壁によって厳重に封鎖されていました。

 

 

「……話は聞かせてもらったぞ、韓非殿」

 

「うむ。貴殿の献身により、我らの仕事が予定より格段に早く片付いたことは明白だ」

 

「ならば今度は俺達が貴殿の仕事を手伝う番だ」

 

 

 彼らは本質的に仕事がない状況に耐えられない……その事を、韓非はこの地獄で厭というほど学んでいます。

 

 何ということはありません。彼らは韓非を使って暇つぶしがしたいだけなのです。

 

 

「……う、うむ。き、きき貴公らの好意は嬉しいのだが」

 

「なんだ? 今さらわざとらしく吃音(ども)りやがって」

 

「気弱な韓の公子に戻ってやり過ごそうってか? この二年間、一度も吃音らなかったくせにそれは通らねえぜ」

 

「ああ。今から十万項目に及ぶ鳳明式農法を(そら)んじることができるまで、徹底的に叩き込んでやるから覚悟しやがれ……」

 

「ま、待つのだ君達……!!」

 

 

 ……そんな騒動を一瞥して、鳳明は自身の傍らで書類整理を手伝う老宰相に笑顔を向けました。

 

 

「なんだか皆が仲良くなってくれて嬉しいですね」

 

「そうですな。韓非殿も思いのほかこちらの水が合っていたようで、後見を頼まれたこの老いぼれもひと安心ですわい」

 

 

 活気があるのはいい事です、の一言でこの騒動を片付ける鳳明も大概ですが。

 

 まったくですな、と微塵も隙を見せず同調するこの老人もただ事ではありません。

 

 

 鳳明台頭以前の蕭阿は王の信用こそ厚いものの目立った業績はなく、信陵君の陰に隠れる地味な存在でした。

 

 しかし鳳明紙の採用と実用化以降、この老人はその真価を発揮しました。

 

 

 もともと人と人の間に入っての調整に優れていた彼は、鳳明の才能を貴重な物と捉える信陵君と相談して、鳳明がまだ幼い武官の子という一事をもって差別しない若手を引き入れて、王宮に一大勢力を築き上げました。

 

 以降は若手を育てつつも老体を鞭打ち、信陵君と歩調を合わせて国内の反対派を一掃。見事にこの遷都完了まで国家の屋台骨を守り抜きました。

 

 

 ……ですが、彼がこの先も同じことを続けていくのは難しいかも知れません。

 

 鳳明と出会い、彼を取り立ててから六年で、蕭阿の体重は半分になってしまいました。

 

 若い頃に貯め込んだ脂肪があったからこれまでは何とかなりましたが、これ以上はさすがに苦しいでしょう。

 

 だというのに肩の荷を下ろしたかのような蕭阿の笑顔は、これからの未来を案じているようには見えませんでした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後──鳳明の手で近代のそれに生まれ変わった開封の王宮にて開かれた論功行賞を、後世の歴史家たち(司馬遷は除く)の多くは「日本と同様に、古代中国の統一国家が現代まで続くことになった歴史の転換点」であることに言及します。

 

 史実においては何度も異民族に滅ぼされた中華の国体を、はるか未来まで継続せしめた要因がこの論功行賞にはあったというのです……。

 

 

「これより論功行賞を始めるッ」

 

 

 玉座の前に進み出た宰相の蕭阿が澱みなき声を朗々と響かせます。

 

 参列した多くの文武官僚たちを前に、その威厳は老いてなお健在──信陵君の隣に控える霊鳳にも、ひときわ巨大な肉体を誇示する凱孟にも痩せ細った宰相を侮る様子は見られません。

 

 

「まずは呉慶将軍っ! 前に出られよ!!」

 

「ハッ」

 

 

 やはりこの日の主役の一人はこの男──呉慶が玉座の前に跪くと、蕭阿は長年の功を讃えました。

 

 

「そなたは初陣より変わらず忠義を尽くし、数多の戦場を駆け抜けること二十余年。遂には秦に奪われた領土を山陽まで取り戻し、胡傷の軍を打ち破ったこと真に天晴なり。この働きに報いるため、魏国王政府は貴公に鄭州・許昌・洛陽の地を与えるものとする。貴公はこれを受けるか?」

 

「有り難く」

 

 

 その評価はやはり凄まじく、謁見の間は驚愕に震えたといわれます。

 

 

「おいおい。開封の西側に大領を構えるのはいいが、叔父貴の領土も含まれちゃいないか?」

 

「ああ、私は他の地に移封される」

 

「移封だと!?」

 

「私のために怒ってくれるのは有り難いが、別に左遷ではないぞ。太呂慈とこれに同調した馬鹿どもの領土が酷いことになっていたのでな。自分から志願したのだ」

 

「そうか……」

 

 

 信陵君が霊鳳に語ったところによると、太呂慈たちは王都から派遣された役人を追い返して、本当に好き放題にやっていたそうです。

 

 当然、鳳明の改革も届かずその領内は貧しいまま……これは確かに、信陵君以外には任せられません。

 

 霊鳳は叔父にまた借りを作ったと恐縮しましたが……それにつけても呉慶将軍です。

 

 

 彼は軍内部の昇進ならまだしも、領主にしてそこに赴任することを拒み続けてきました。

 

 領主としての教育を受けていない自身に大領は治められないし、また、そのための教育を受ける余裕もないという理由で。

 

 そんな呉慶が開封の西側一帯を拝領したのは、彼の強い決意の表れです。

 

 魏の国は、そして開封は、何者にも侵させはせんという……。

 

 

「次ッ! 霊鳳将軍参りませ!!」

 

「おっと、次は俺か」

 

「ああ、行ってこい」

 

 

 以降も武官の論功行賞が進み、胡傷戦に功ありと認められた霊鳳は、呉慶ほどでないが新領土を。

 

 先の反乱で信陵君に味方した凱孟と紫伯は、それまでの不服従には一切触れず領土保全と報奨金を。

 

 この裁定に凱孟などは「ワシには領土をくれんのか。儲かってるクセに案外ケチだな」と放言して副官につま先を踏まれましたが、紫伯の顔は晴れやかでした。

 

 

 ……実はこの紫伯、信陵君に味方した交渉の席で自裁を覚悟していました。

 

 

 これまでの不服従は詫びる。自分はどうなっても構わない。その代わり妹を守ってくれ──自らの喉元に槍の穂先を当てて訴える紫伯を、信陵君は『なまじ兄と妹のままでいるからややこしくなるのだ。血は繋がっていないのだからさっさと結婚しろ。関係者の不満は調整してやる』と諭したそうです。

 

 これにより最愛の女性と結ばれた紫伯は、死をも厭わぬ忠義を信陵君に捧げることになります。

 

 

 そして論功行賞はその後、白亀西や宮元といった呉慶配下の有力武将にも及び──最後の主役が登場します。

 

 

「では最後に異例ながら、呉鳳明殿っ!! こちらに参りませ……!!」

 

 

 ……これは本当に異例のことです。

 

 無位無官。それどころか初陣も許されない年齢の子供が論功行賞の大トリを務めるのですから。

 

 

「オオッ! 鳳明様の出番だ!!」

 

「鳳明様ァ!! いつも通りで宜しいのですぞ!!」

 

「兄様、頑張って……!!」

 

「宰相のおじいちゃんなんてやっつけちゃえ!!」

 

「そいつはいい! 酒の肴に見物しようぜ」

 

 

 厳粛であるはずの論功行賞を台無しにしかねない野次と歓声も異様ですが、それを咎める気配のないこの雰囲気も異様です。

 

 

「……皆さんあんなコトを言ってますけど?」

 

 

 そして王の御前に出頭するや、困ったように肩をすくめる鳳明。愉快そうに笑う安釐王と、クスクスと楽しそうな綺丹公主。

 

 ここで蕭阿だけが威厳を示そうとしても笑い物になるだけです。

 

 

「そうさな。それではいつも通りに行こうか。それとも先ほどの調子で君がこれまでに何をしてきたか言ってほしいかね?」

 

「いつも通りでいいです」

 

 

 無論、そのことは蕭阿もわかっていましたし、本人もこう言っています。

 

 彼は、これまでの人生で最も濃厚であったこの5年あまりを振り返って、少しだけ寂しそうに口を開きました。

 

 

「製紙、農政、遷都……君はこれまで多大な益をこの国にもたらしてきたが、他にも色々やってくれたな」

 

「そうでしたっけ?」

 

「そうだとも。例えば遷都の忙しい時期に技師たちを動かして、魏国全土の詳細な模型を作ろうとしたな。アレは誰に頼まれた?」

 

「霊鳳様です。父様を助けてくれたお礼に」

 

 

 そこで場の視線が霊鳳に突き刺さり、彼はひどく居心地の悪い思いをしました。

 

 

「他にも発泡酒か。アレも大変な騒ぎになったし、浴場もそうだな。君が身体を洗う石鹸や、頭の洗料を作ったことで、快適すぎて、儂まで抜け出せなくなりおった」

 

 

 蕭阿の言葉に「うんうん」と熱心に頷く綺丹公主に気がついて、鳳明は珍しく照れた様子だ。

 

 

「他にも例を挙げたら枚挙に暇がない。君は喜んで貰えそうだからと、それだけの理由で本当に何でもやってしまう。儂はそんな君を危惧して、君が中華全土を無用に刺激しないように小さく留めようとしてきたが……今回の遷都で思い直した。もうこれからは君のしたいようにさせてやろう。そう決めたのだよ」

 

 

 そう言って純金製の飾緒(しょくしょ)を手渡そうとする老宰相の姿に、謁見の間は静まり返りました。

 

 実際、事前にこれを聞いていたのは主君である安釐王以外には、鳳明のもう一人の後見人である信陵君と実父の呉慶だけだったのです。

 

 

「これからはこの国の舵取りを君に任せる。受け取ってもらえるかな?」

 

「構いませんけど、宰相って具体的に何をしたらいいんですか?」

 

「何もかもだ。宰相とは王の信任を得て、宮廷の一切を預かる者だ。軍事、内政、外交。それらすべてを君が差配することになるが、出来そうかね?」

 

「あ、それなら何とかなりそうです」

 

 

 微塵も動じずに笑った鳳明を見て、生意気な小僧が大言壮語をかましていると見なす大人はもう残っていない。

 

 この子は必ずや最善の選択をしてくれる。その信頼が蕭阿にはある。

 

 そしてそれは、まったく裏切られなかった──。

 

 

「とりあえず軍事は門外漢なので、この場で父を魏軍最高司令官に任命します。引き受けていただけますか?」

 

「無論だ」

 

「補佐に霊鳳様と紫伯様を。凱孟様はしばらく前線で頑張ってください」

 

「おいあの小僧、ちゃんとワシのことをわかっておるぞ?」

 

 

 凱孟がまた余計なことを言って副官に足を踏まれたが、霊鳳と紫伯が疑問の余地がない拝命の姿勢を取ると、慌ててそれに従いました。

 

 

「外交についてもよく分からないので僕も勉強しますが、しばらくは顔の広そうな信陵君にお任せします」

 

「ああ、任された」

 

「それとこれからはゆっくり休んでいただいて構いませんが、急にいなくなると僕も寂しいので、気が向いたらまたお茶会に参加してください。そのとき相談とかもしたいんですけど、いいですか?」

 

「……勿論じゃよ」

 

 

 鳳明の要請に快諾してみせた蕭阿ですが、その内心は平静とは正反対でした。

 

 実は鳳明がたったいま決定したのと同じ人事を、蕭阿は職を辞する前に行うつもりでした。

 

 

 だがそれが新体制の枷になってはいけないと、直前で撤回──宰相職を引き継いだ鳳明に相談されたら、初めて助言するつもりでいたのです。

 

 やはりこの少年に託して正解だった。その確信に蕭阿は両目が熱くなりました。

 

 

「──鳳明様万歳ッッ!! 呉鳳明様万歳ッッ!!」

 

 

 この時、最初に鳳明を讃えたのは文官ではなく武官でした。

 

 爺や、白亀西、宮元といった呉慶配下の有力武将だけではなく、ほとんど顔も知らない紫伯や凱孟配下の武将達も勝ち鬨のような叫びを放ち、凱孟自身も何がなにやら分からぬまま声を張り上げています。

 

 

「チクショウがッ! 鳳明様の何たるかも知らない武官連中に負けてるんじゃねえ!! 鳳明様万歳ッッ!!」

 

「『鳳明様万歳ッッ!! 鳳明様万歳ッッ!!』」

 

 

 この場の誰もが鳳明を讃えています。彼らは程度の差はさておき、鳳明が魏国に多大な益を与えたことを知っています。

 

 今や鳳明を三皇の一柱(ひとり)である神農の生まれ変わりだとして崇拝する者もいます。

 

 

 その彼が魏国の舵取りを任された──爆発的な歓喜は、外に待機する近侍らを巻き込み、瞬く間に城内を席巻。

 

 それどころか、王宮より響き渡る轟音を聴き分けた開封の民が、周囲の者を巻き込んでこれに同調。それなりに苦労して潜入した間者達もこれを知るところとなり、動揺した彼らはたちどころに踵を返してこの凶報を持ち帰ったといいます。

 

 

 これが史に名高き『呉鳳明。任官を許されただけで中華を震撼させる』の全容になります。

 

 

 

 

 







何と申しますか、とりあえず感想、ブックマーク、高評価ありがとうございます。

凄まじい勢いで日刊ランキングの1位まで登り詰める光景に、未曾有の豊作に怯える文官達の気持ちが分かったような気がします。

これからは作中の文官達にもう少し優しくしてあげようと思いますので、これからもよろしくお願いします。


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