そろそろ焦土作戦実行しないと死ぬぜ!!   作:個々易々地

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再会

両者が動きだしたのは同時だった。

 

黄泉は刀を一瞬だけ引き抜き、一閃

分身したのかと見紛うほどの速度で4連撃が叩き込まれる。

 

『【DCF-晶壁展開】』

 

しかしそれはAR-777が生成した結晶の壁に阻まれてしまう。

 

『【CGR-結晶成長】+【CGE-晶獄展開】』

「む…」

 

砕かれ空中に散乱した壁の一部が肥大化し黄泉を刀ごと結晶に閉じ込める。

一瞬の隙

AR-777はそれを逃さない。

 

『【LKF-晶杭貫穿】』

 

右腕の結晶が一瞬(またた)いたかと思えば次の瞬間、それはすべてを貫く光となって黄泉に放たれていた。

 

「ふっ…」

 

迫る光を前にして黄泉はただ冷静に刀を握り

己を覆う結晶を飴細工とでも言わんばかりに流麗な身のこなしで

一寸の狂いもなく光を断ち切った。

 

「フェリクス、あなたは花火に操られている。私はあなたの(スウォーム)ではない」

『敵…殲滅…スウォーム……殺す…!』

 

黄泉の声もAR-777には届かない、辺りを緑色の結晶と紫色の閃光が照らしだす。

 

二人の技の応酬でロビーはほぼ壊滅状態

しかしその中でもホタルを守る結晶だけは傷一つつかずに佇んでいた。

 

「隊長…!くっ…ダメ、この壁全然壊れる気配がない」

 

ホタルは手に炎でできた直剣を握り結晶の破壊を試みていたが、結晶は衝撃を吸収してさらに大きくなるばかりである。

 

(サムに変身すればなんとか突破できるだろうけど、そのためのエネルギーが足りない…!)

 

彼女を包む結晶はサムをもってしても突破は難しいと思わしめるほどの硬度であり、さらに結晶自体が持つ特性によってエネルギー不足になった経験がないサムすらも著しいエネルギー不足に陥っている。

 

「どうしよう…このままじゃ隊長が…」

 

ホタルが攻めあぐねている間にも戦闘はさらなる激化を遂げていた。

 

『【SGE-晶華照射】』

「その生、朝露と消え失せぬ」

 

空中に生成された結晶とAR-777によるオールレンジアタックすら黄泉は危うげなく捌き切る。

返す刀で黄泉は一気に距離を詰めると紫電の如き一撃を放った。

神業とも言えるその逆袈裟は飛び下がるAR-777の胸部を的確に掠めとった。

鉄騎の装甲が剥がれコアが剥き出しとなる。

 

「これまでだフェリクス。これ以上はあなたを殺すことになってしまう」

 

膝をついたAR-777に刀を突きつけながら黄泉は語りかける。

しかし彼に止まる意思など無い

あるのは眼の前の(スウォーム)を滅殺するという使命のみ

 

『胸部破損…確認……修復…再生………戦闘続行…(スウォーム)を駆逐する!』

 

胸部の装甲が結晶によって再生される。

振り出しとなった状況に対しても黄泉はなんの感慨もなく刀を構えた。

 

「なるほど…ならばあなたが止まるまで、私は刀を振るうとしよう」

「【DHGDR-星晶守護機構】』

 

AR-777と黄泉、両者のギアが数段跳ねあがる。

AR-777は結晶の利用を自身の強化のみに絞り、自らを純粋な質量兵器と為し。

黄泉はさらなる虚無へと近づき、神速の剣技に莫大な威力と破壊力を乗算させた。

 

『【BHF-天晶】!』

 

結晶で覆われた拳と刀がぶつかり合う

 

「迸れ…過去の電閃」

 

しかし次の瞬間には蹴りと刀の応酬が始まっている。

もはや二人の戦いはホタルですら生身の目では追うことができなくなった。

 

金属と金属のぶつかる音と時折えぐれる地面がその戦いの激しさを物語っている。

 

そして2つの巨大なエネルギーの衝突はその余波だけで大地を揺らすほどの影響をもたらす。

その影響はホタルを守る結晶にも表れていた。

 

「この壁だんだんヒビが入ってきてる…!これならサムで破壊できるはず!」

 

傷一つなかった結晶に亀裂が入り、今も大きくなっている。

この機を逃すまいとホタルがサムを展開しようとしたその時

 

『ガハッ…!』

「隊長っ!」

 

ホタルを守る結晶にAR-777が叩きつけられた。

ズルズルとホタルを背にして崩れ落ちた彼の姿はひどく痛ましい。

纏っていた結晶は一片残らず消え去り、ほとんどの装甲が破損していて全身からスパークが起こっている。

 

「フェリクス、もう立つ気力もないだろう。催眠が解けるまでそこで大人しくしているといい」

 

対して黄泉は負った傷は頬のかすり傷ただ一つのみ

勝敗は誰が見ても明白であった。

 

『…まだ、だ』

 

しかしAR-777はまだ諦めていなかった。

彼にとって自身の命は些事であり、なにより重要なのは仲間を危険から守ること。

その執念にも似た思いが立ち上がれないはずの彼を立ち上がらせた。

 

「隊長ダメ!これ以上動いたら本当に死んじゃう!」

 

立ち上がってしまったAR-777を必死に止めるホタル

ホタルの声が聞こえたのか彼は少しだけ振り向くと彼女に向かって()()()と笑いかけた。

 

『安心しろ。お前たちは俺が守るから、だからそこで見ていてくれ』

 

顔は見えなかったはずなのにホタルは彼が笑ったのだと、自分を安心させるために笑ったのだと理解した。

そしてAR-777は黄泉の方へ向き直ると、己のすべてを掛ける覚悟を決めた。

 

『俺が…死んでも、オマエだけは連れて行く』

 

彼の前に相対するは手も足も出なかった最強の黄泉(スウォーム)

そんな相手に取れる最後の手段はたった一つ

もはや彼に迷いはなかった。

 

『【SGE-晶化エンジン】点火』

 

AR-777が光りだし彼の体が結晶へと置き換わり始め、光に照らされた地面も彼と同様に結晶化し始めていた。

それは己の命を薪にあらゆる物質を結晶とする文字通りの自爆技であり、過去の焦土作戦においてスウォームを殺りこぼした反省から生まれた技でもあった。

そしてその技は同じグラモスの鉄騎と結晶に囲まれた者には効果がない。

 

「…!あなたはこの夢境ごと道連れにするつもりなのか?」

 

今まで冷静であった黄泉にも幾ばくかの緊張が走る。

技の発動まで残り数秒、彼女が選んだのは同等のエネルギーをぶつけることによる相殺であった。

 

「涙雨…」

 

黄泉の刀が完全に引き抜かれ、世界が白黒へと染まる。

 

「降りて溢るる 渡り川」

 

その中でも彼女の持つ刀は紅く、そいて妖しく輝いていた。

 

[合図したら起動しろ]

 

視界がスローモーションとなり白黒となった世界でも色褪せない緑色の結晶

命を掛けて突貫する彼の後ろ姿が過去の光景と重なる。

 

あのときは何もできなかった

 

あなたを救えなかった

 

(でももう私は。私はもう二度とあなたを…)

「死なせはしない!」

 

ホタルの体が炎に包まれ、炎が晴れると同時に翼の生えたもう一騎が壁を打ち破っていた。

ホタルは飛ぶ。

かつての仲間を、かつて救えなかった仲間を救うために

 

「…黄泉路をゆけず 常世遠らむ」

『【ΩCF-万物結晶化】』

『【DHGDR-死星オーバーロード】!!』

 

2つの緑と一筋の紫はぶつかり合い、拮抗し、そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは?」

 

目を覚まして最初に目に入って来たのはどこまでも続いてそうな広い空間

その中でポツンと一つだけ浮かぶ足場に私は寝ていたようだ。

 

(確か、隊長と巡回レンジャーが戦ってそれで…)

 

意識を失う前の事を思い出そうと立ち上がって辺りを見渡す。

そして私の背後、一步でも進めば落ちてしまうだろう足場の端に隊長が立っているのを見つけた。

 

「隊長…そんなところにいたら危ないですよ」

 

隊長は背を向けていて私からでは顔が見えなくなっている。

 

「隊長?」

 

呼びかけても反応がない

具合が悪いのかと思って一步近づいた時、ようやく隊長は口を開いた。

 

「AR-26710…俺はお前と顔を合わせられない」

 

絞り出したような声が辺りに響く。

 

「それは…どうして?」

 

しばらくの静寂の後、声を震わせながら隊長は答えた。

 

「俺が…俺が油断したせいで花火に操られて、無関係な人間を襲って、お前まで巻き込んで、それでこのざまだ……俺には、もうお前と再会を喜ぶ資格がない」

 

その言葉に私はそんな事無いと叫びたかった。

けどそう言ってしまえば彼はもっと自分を責めてしまう気がして、だから代わりにずっと伝えたかった事を言うことにした。

 

「隊長…私、あなたと離れてからいろんな経験をしたんです」

「…………」

「見たことのない景色を見て」

「………」

「食べたことのない料理を食べて」

「……」

「それに…新しい仲間もできて」

 

私には今の隊長を慰める言葉は思いつかないけど、これだけは伝えておきたくて

 

「ここまで来れたのはあなたのおかげで、あなたとの約束があったから生きたいって強く思えたんです」

「………」

 

隊長はずっと黙ったままだ。

どれだけ私の思いが伝わってるのかわからないけど、少しでも多く伝えたくて必死に言葉を紡ぐ

 

「だから次は私の番。あなたが生きてていいって思えるように私はあなたを助けたい」

「………どうしてお前は俺にそこまでしてくれるんだ?」

 

そんなの自分が一番わかってるでしょうに

 

「だって私達は仲間じゃないですか」

 

隊長の肩が少し震えて、ゆっくりと私の方へ振り向く

振り向いた顔には涙の跡が残っていた。

彼の口が何度も開きかけては閉じ、そして今にも泣き出してしまいそうな顔で隊長は口を開いた。

 

「俺…まだお前を、仲間って呼んでいいかなあ」

「何言ってるんですか。当たり前でしょう?」

 

返答はなかった。

けど私達はこの瞬間、ようやく本当の意味で再会を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢と夢の狭間の先、ドリームリーフにて

 

「そういえば私、新しい名前ができたんです」

「奇遇だな、俺も新しい名前を貰ったんだ」

 

薄暗い路地を容姿がよく似た二人が歩いていた。

仲睦まじく並んで歩くその姿は本当の兄妹ようで。

 

「じゃあお互いに自己紹介しません?」

「ん、そうだな。それじゃあ名前を聞いていいか?」

 

そこには二人が、そして死んでいった仲間達が追い求めてやまなかった『救い』があった。

 

「はい!私の名前はホタル。隊長、あなたの名前は?」

「俺の名前はフェリクス。改めてよろしくな、ホタル」




今後あるかわからない貴重なバトル回でやんした。
屋上へ行こうぜ…ひさしぶりに……筆が乗っちまったよ…

黄泉のコメント:オマエが俺に勝てるワケねえだろ!
ホタルのコメント:お前も家族(仲間)
フェリクスのコメント:そうかな?そうかも…
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