北乃カムイのもにょもにょ異世界(仮)『伝説行事!応援合戦遊戯会』   作:カムラー

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最終決着

 ツツジは嘆息し、呆れたように髪をかき上げた。

 

「まったく、見当違いもいいところですわね。私にそんな弱点なんてありませんわ」

 

 と言っている割には、視線をシャークキャットと一緒にいる西宮に向けようとしない。

 

「まあ何とでも言えばいいさ。で、こいつをどうするかというと……」

 

 西宮の言葉でツツジは体を固くした。シャークキャットが向かってくるかと思いきや、逆方向へ駆けて行った。

 

「無意味だと思って逃がしたのですか?」

 

「まさか。あんまりけしかけて倒されたり、もう知らないと言ってゴールに向かわれたりしたら困るから……」

 

 シャークキャットはゴールである屋外ステージに上がり、座りこんだ。

 

「あそこにいてもらうことにする。これで会長が隙をついてゴールに行く可能性はほとんどない」

 

「随分な念の入れようですわね。そんなことしなくても、あなたを倒してから大手を振ってゴールしますわ」

 

「だと思うけど、ゴールされたら終わりだからな。あいつをあそこからどかすためには、額の札をはがすか、札をはった俺を倒すか」

 

「分かりやすいですわ、ね!」

 

 ツツジが一足飛びで西宮に向けて飛び込み、札を手に西宮のお腹に掌底を叩き込む。

 

 衝撃で西宮は吹っ飛んだが、それほどダメージはなく、地面に手をついてすぐ立ち上がろうとした。だが、体が重だるくて動きが鈍い。

 

「これは」

 

 腹を見下ろせば、そこに〝加速〟の札がはられていた。ツツジによってはられ、効果が逆転して発動しているのだ。

 

「トドメです」

 

 顔を上げれば、ツツジが空中に浮かせた札を蹴って宙を高速移動していた。ただでさえ目で追い切れないスピードなのに、今はもう、影すら追えない。仕方なく西宮は――、

 

「天空イズナ落とし!」

 

 声よりも全身を駆け巡った衝撃の方が速かった。頭頂部に重たい一撃を受け、その際に発生した電撃が全身を巡り、西宮は地面に倒れ伏した。

 

「これで……」

 

 ツツジが屋外ステージに視線を送ると、そこにはまだシャークキャットがいてのんびりと欠伸をしている。

 

「それは、昨日見た」

 

 のっそりと起き上がった西宮は額に〝硬化〟の札をはっていて、電撃を地面に逃がした鋼線を(腹に巻いていた)、地面から引き抜いて見せた。

 

「いつの間にそんなものを」

 

「さっき吹っ飛ばされた時に地面に刺しておいた」

 

『意外や意外! 時間稼ぎが成功しているぞぉ~! 西宮の頼みの綱である仲間も、五丁目の半分を過ぎた! あと少しだぁ!』

 

 そのフッチーの放送で、ツツジと西宮は同様に苦い顔をした。

 

 ツツジは西宮の思い通りになっていることが悔しくて。西宮はまだ少し余裕があることをツツジが知ってしまったことに。

 

(会長が本気なら、俺なんて一瞬でやられる!)

 

 と思った時には、西宮の目の前からツツジの姿が消えた。

 

 種明かしから挑発的な話し合いに移行しようとした西宮の思惑は、フッチーによってダメにされた。

 

 もはや策も何もない。〝硬化〟の札で少しでも防御力を上げて時間を稼ぐしかない。

 

「あなたの考えなんてお見通しですわ」

 

 その声が聞こえている間に、西宮の体に五枚の〝硬化〟の札がはられた。

 

「しまっ――」

 

 たった一枚の〝加速〟の札で動きが鈍くなっているせいで、西宮は高速で動くツツジに全くついていけない。相手に札をはれば圧倒的に有利という札の対人戦を、西宮はあらためて実感した。

 

「カムイちゃん達とは、打ち上げで再会するのですね」

 

 現在紙よりも防御力が落ちている西宮。おそらく一発受けただけで強制送還だ。

 

 もはやどうにもできない西宮は、ただ覚悟して歯を噛みしめた。

 

「カムイ、悪い」

 

「何がだニャ?」

 

 激しい肉のぶつかり合いが、西宮の耳元で聞こえた。

 

「なっ!?」

 

 驚きの声を上げたのは、拳を受け止められたツツジだけ。西宮は信じられなさすぎて、声すら出なかった。

 

 伸びきった棍の先端に乗っていたカムイちゃんは不敵に笑い、

 

「夕焼けとギターとカウボーイハットを用意できなかったのが残念ニャ」

 

「そのヒーローの登場シーンを頭に思い描ける若者がどれだけいると思ってんだ!」

 

 ツッコミだけはすぐに出た。

 

「追いつかれてしまいましたか」

 

 地面に下り立ったツツジは、ちょっと残念そうに呟いた。

 

「透と翡翠ももう少ししたら来るニャ。私だけ一足早く翡翠に送ってもらったのニャ」

 

 カムイちゃんが棍から下りると、棍は縮んでいった。

 

「まあいいですわ。少し手間が増えただけです」

 

「さあ、最終決戦といこうかニャ!」

 

「カムイ」

 

「お互い話とか後にするニャ」

 

「いや、先に言っておくけど、おそらく俺達会長に勝てないぞ」

 

 その言葉でカムイちゃんは肩すかしをくらった。

 

「どうしていっつも西宮はやる前からそんなことを言うのニャ!」

 

 頭上から蒸気を出しつつ西宮につめ寄った。

 

「冷静な状況分析だ。向こうの方が実力は上だし、頭上を取って攻撃できるなんて圧倒的に有利だ。それにあのスピードに追い付けるのは、俺達の中でカムイしかいない」

 

『その通りだ。おまえ達がいくら頑張ろうが無駄なんだ』

 

「すっごい罵倒ニャ!」

 

 荒谷の放送に、思わずカムイちゃんが突っ込んだ。

 

「じゃ、何で西宮は私が来るまで頑張っていたのニャ」

 

「札教を勝たせるためにだ」

 

「?」

 

 カムイちゃんは首をひねって疑問符を頭上に浮かべる。会長に勝てないと言っておきながら、札教を勝たせると言う。意味が分からない。

 

 察しが悪いカムイちゃんを見て、西宮は嘆息しながら髪をかき上げる。

 

「カムイが花を持っているんだろ? ダッシュでゴールにむかえ。会長と競争になるだろうが、ゴール前に猫がいるため会長は躊躇するはずだ。間違いなく勝つ……と思う」

 

『な! なんと卑怯千万な作戦だぁ! あれほど会長をあおった張本人でありながら、本人は全く勝負にこだわっていなかったぁ~! 勝てれば何だっていいと言うのかぁ~!』

 

『嫌な奴だ。何が隙をみてゴールされないよう念のため、だ。この作戦を見抜かれないようにするためだったんだな』

 

 周りからの大ブーイングの中、西宮は耳を塞いで聞こえない風を装っている。

 

「そんな勝っても恨みが残るようなやり方しないニャ」

 

 カムイちゃんがあっさりと拒否した。九割方断ると思っていた西宮は、仕方ないと嘆息して二度は提案しなかった。

 

「ふ~、どうして作戦を立案する人というのは、自分を悪者にしてでも勝とうとするのでしょうね」

 

 ツツジにも思い当たる人がいて、困り顔で呟く。

 

「ニャ。しかもそれが自分のためじゃないから始末が悪いニャ~」

 

 カムイちゃんも同調して頷く。

 

 呆れた感じの二人を前にして、西宮は居心地が悪そうに首元を触る。

 

「あ~も~。それよりしっかり前を向け。カムイが見てないと抵抗もできないだろ」

 

 西宮に言われてカムイちゃんはツツジに目をやるが、彼女はまるで動く気配を見せない。

 

「もうどうせだから待ちますわ」

 

「ふぇ?」

 

「あなた達と戦うのは、楽しそうですから」

 

 本当にツツジは何もせず待っていた。しばらくして、息を切らした透と翡翠がやってきた。

 

「ほ、本当に、西宮さんが、います」

 

「なんで、おまえがいるんだ」

 

「敵を騙すにはまず味方からってやつだ。それよりゴールしないならどうするんだ、カムイ? 四人そろっても『障害物競走』の時は瞬殺されてナレーションベースだったんだぞ」

 

「周りの協力を得ようとしても無駄ですわよ。みなさん空気を読んで、もう邪魔をするつもりもなさそうですし」

 

 ツツジの言う通り、フィールドにいる学生達も戦闘を止め、遠巻きに見守っている。

 

「決まっているだろニャ」

 

 ニヤリと笑うカムイちゃん。その笑顔から、西宮は嫌な予感がしてしょうがなかった。

 

「何か作戦があるというのなら、見せてもらいましょうか」

 

 ツツジは〝飛翔〟の札を体にはり、空にあらためて〝硬化〟の札を浮かし、足に〝突風〟の札をはって空へと上がる。

 

「二人はタイミングを見て、私の指示を聞いてほしいニャ」

 

 カムイちゃんに言われて、よくは分からなかったが透と翡翠は頷いた。走りっぱなしで体力が落ちている二人を休ませることに西宮も反対はしないが、その後に向けられたカムイちゃんのニンマリとした笑顔に、更に嫌な予感を強める。

 

「それじゃ西宮、行くかニャ」

 

「行くって……どこに?」

 

「相手の土俵にニャ」

 

 

 カムイちゃん達の出方に興味があったツツジは、目を丸くした。あれこれ予想していたが、こればっかりはまるっきり予想していなかった。

 

 西宮を背負ったカムイちゃんが、〝跳躍〟の札をはって向かいの〝硬化〟の札の上に乗っていた。

 

「さぁ~! 空中戦と行こうかニャ!」

 

「…………」

 

 ツツジは無言で空を走った。彼女は自由に空を疾駆できるが、カムイちゃんは浮遊する〝硬化〟を踏み台にしなければいけない。その制限は、空中戦で致命的だ。

 

『相手になるわけがないだろ』

 

 観客達も呆れ声の荒谷に同意して頷く。

 

 カムイちゃんは手元で札を発動させてツツジを狙うが、一発も当たることがない。

 

 ツツジは通常なら攻撃がそう来ることがない真下を位置取り、手元で札を発動させる。

 

「西宮、ユナイテッドフロント!」

 

「〝貫通〟!」

 

 〝硬化〟の札を蹴って、真下に落ちるカムイちゃんの右腕に西宮が札をはる。

 

 カムイちゃんは拳で放たれた風の塊を砕き、そのままツツジへと迫る。だが、ツツジはただその場から離れた。

 

 カムイちゃんは止まることも方向転換することもなく、そのまま落下し続ける。

 

「透、足場! 翡翠、やるニャ!」

 

 下からカムイちゃんの落下地点に〝硬化〟の札が投げられ、足場となる。そして、

 

「棍操術、シャクナゲ!」

 

 伸びてきた棍をツツジは避けたが、そばで棍が爆発して爆風に煽られた。

 

 ツツジは足元で突風を発動させて、すぐに姿勢を制御した。

 

「どうやら、本気で私と空中戦をやるつもりのようですわね」

 

 試しに軽くつついてみて、カムイちゃんが冗談で空にいるわけじゃないと分かった。

 

「当ったり前ニャ。そっちの方が盛り上がるだろニャ」

 

「ふふふ、『空知』となった私に空中戦を挑んできた人は、利羅以来ですわ」

 

 ツツジは楽しそうに笑って手に札を持ち、腰を落として構える。

 

 カムイちゃんも満面な笑顔で、手に札を持つ。

 

「西宮、透、翡翠! 頼むニャ!」

 

 言われなくてもと、三人は頷いた。

 

 ツツジから先に動いた。〝硬化〟の札を踏み台にするごとにドンドンとスピードが上がっていく。

 

 五枚目を踏み台にしたところで、西宮にはもう目で追えなくなっていたが、カムイちゃんの金色の瞳は激しく動く。

 

 カムイちゃんが急に動き、西宮は振り落とされないよう必死にしがみつく。今までいた場所を通り過ぎたツツジに、カムイちゃんは札を投げつける。が、直角に急上昇したツツジは軽く避け、カムイちゃんの頭上を取る。

 

「西宮、〝穿つ〟ニャ!」

 

 西宮はカムイちゃんの左腕に札をはる。ジャンプをしたカムイちゃんはまだ最高点に達しておらず、ツツジに向かって拳を突き出す。

 

 ツツジはその拳を首を傾げて避け、カウンターでカムイちゃんに拳を叩き込む。

 

 落下するカムイちゃんは、手をグッパーして握るジェスチャーを送る。すると、それで察した翡翠が棍を伸ばしてきた。

 

 棍を掴まえ、ぶら下がったカムイちゃんは、

 

「透、西宮! ユナイテッドフロント!」

 

 左腕を掲げる。その腕に〝硬化〟の札がはられ、下から投げ飛ばされた〝炎〟の札がはられ、カムイちゃんの左腕が燃え上がった。

 

 棍を回され、カムイちゃんは手近な宙に浮く札に乗り直し、ツツジを睨む。そして飛びかかるが、空を自在に動く彼女は難なくその突進を避ける。

 

 カムイちゃんが手で前方を指さすと、その方向に西宮が札を投げ飛ばした。その札を足場にしたが、足裏から伝わる感触がツツジのに比べるとかなりふわふわとしていたから、思わずカムイちゃんの頬が緩んだ。

 

 ツツジの背後を追って、カムイちゃんが札を蹴り飛ばした。

 

『おお~っと! これはドッグファイトだぁ! ツツジ会長の背後を取ったカムイちゃんが、炎の拳を握って追う、追う! 空を飛べないカムイちゃんは、仲間の手助けでジグザグに追う! 不格好ながらも、そのスピードは中々のものだ!』

 

『すごいのは下でサポートをしている東屋と南川だな。あの二人の経験の先読みがあるからこそ、あの能天気で何も考えていない、アッパラパーの猫耳娘がツツジを追えるのだ』

 

 カムイちゃんの左腕の炎が弱まり、そろそろ効果時間が切れる。

 

「翡翠、飛ばしたいニャ!」

 

 進行方向に〝穿つ〟の札が下から飛んできた。カムイちゃんは炎の拳でその札を撃つ。

 

「ファイアーフィスト!」

 

 西宮と違ってカタカナを採用したカムイちゃんの炎の拳が飛び、ツツジの背中に迫る。

 

 ツツジは迫る炎の拳を手元で発動させた氷を壁として防ぎ、反転してカムイちゃんに迫る。

 

 攻撃力が落ちた瞬間を狙ってきたツツジ。

 

「棍操術、雷花(かみなりばな)!」

 

 雷をまとわせた棍を大きく避け、カムイちゃんの頭上を取る。

 

 ツツジの体の前に、十枚に近い札が浮く。

 

 気をきかせて攻撃してくれた翡翠の棍は、まだそこにある。つまり、防御の手が一つ減っている。

 

「オムニレイン!」

 

 火・氷・雷・風など、多種類の攻撃が降り注いだ。

 

 カムイちゃんが周囲を見ると、浮遊していたツツジの札が効果を切らしてなくなっていた。さすがは『空知』。自身の札の効果時間までも熟知している。

 

 逃げ場がない状況で、カムイちゃんは火球に当たりにいって、その後に水の塊をくらった。

 

 錐もみになって墜落するカムイちゃんと西宮。

 

 観客から悲鳴が上がる中、

 

『カムイちゃん!』

 

 下からの透と翡翠の声に起こされ、カムイちゃんは目を見開く。迫る地面に気づいて、カムイちゃんは慌てて反転して、四つん這いで地面に下り、すぐさま跳躍して空に戻っていく。

 

『荒谷先生、今のは?』

 

『避け場所がないと判断して、最小限のダメージになるよう自ら攻撃に当たりにいったんだ。火の後に水に当たったのがその証拠だ……ふん、その根性だけは褒めてやるか』

 

 荒谷が珍しく異世界人を褒めたことに、観客から「お~」という驚きの声が上がった。

 

 着地の衝撃で目を覚ました西宮は、カムイちゃんに〝跳躍〟の札をはり直した。

 

 戻ってきたカムイちゃんを見て、ツツジが空中に〝硬化〟の札を展開させる。その一つにカムイちゃんは乗る。

 

「あくまで、空中戦で片をつける気ですか」

 

「当然ニャ。売出し中のアイドルは、どんな企画だって体当たりだニャ!」

 

「その精神は敬服いたしますわね」

 

 素直なツツジの褒め言葉だった。

 

「カムイ、ここで決めるぞ。もう札が少ない」

 

 耳元で西宮に言われ、カムイちゃんはコクリと頷く。

 

「そして、一か八かの作戦を思いついた」

 

 耳元で語られる作戦に、カムイちゃんは笑ってしまった。

 

「透、翡翠! 一か八かの作戦だってニャ! 前と同じく頼むニャ、透!」

 

 降ってきたカムイちゃんの言葉に、透と翡翠は苦笑した。

 

「またか」

 

「もう様式美ですね」

 

 大体は把握した。だが、前回と違って四人に距離があり、大声で打ち合わせすればツツジに聞こえるため確認はできない。ただ、機を見逃さないように身構える。

 

「行くニャ!」

 

 カムイちゃんから跳び出し、迎え撃つツツジと空中で交差する。両者札をお互いにはろうとしたができずに離れ、再び肉迫し、離れ、間合いをはかって札で牽制する。

 

『これはすごい! まるで連発する花火を見ているような輝きです! ギリギリの状況! 少しでも何かが狂えば即相手に喰われる! 目が離せない!』

 

『ふん、だかやはり猫耳娘の方が不利だな。このままでは力負けするのは必定。どこかしらで博打を打たなければ……』

 

 と、解説したのがキッカケだったわけではないだろうが、札に着地したカムイちゃんは下から迫り来るツツジに向けて、

 

「繋力、発動!」

 

 淡い光で繋がった二枚の札を投げ飛ばした。

 

「繋力の札をはられるわけにはいきません!」

 

 ツツジは右に直角に移動し、二枚の札を避けた。そこに、

 

「棍操術、桜花!」

 

 燃え上がった棍が突きこまれてきた。だが、それぐらいは読んでいて、急浮上して回避する。

 

「ここにくるだろうと思った!」

 

 カムイちゃんの背中を踏み台にした西宮が、拳を振り上げて上昇してくるツツジに飛びかかった。

 

 これにはツツジも驚いた。一瞬硬直しそうになった体から力を抜いて、急浮上する勢いを弱めた。

 

 カムイちゃん以上に空中では身動きが取れない西宮は、標的を失って落下する。

 

「西宮!」

 

 カムイちゃんがすぐに札を蹴って、西宮の襟首を空中でキャッチする(首が閉まってぐえっと西宮の声がしたが)。

 

 しかし、そのせいでカムイちゃんはツツジに背中をさらした。決定的な隙に、ツツジは札を構える。

 

「ユナイテッドフロント!」

 

 カムイちゃんの言葉に、ツツジの心臓が反射的に高鳴った。胸中に不吉な予感が充満する意味が分からない。空中にいるあの二人に、何ができるというのか。

 

 それに、カムイちゃんは両手で西宮の襟首を持っているのだ。札すら持っていない。西宮と協力はできないはずだ。

 

(なら、誰と? ――――!!)

 

 気づいて、ツツジは下にいる二人のファンに目を向ける。

 

 透の体の前で、先程カムイちゃんが下に向けて投げた二枚の札と、透の三枚の札が繋がって星を描いていた。それは、開拓使のシンボル――

 

「アシクネプ――五稜星!」

 

 放たれた赤い軌跡を残す光の奔流が、ツツジへと迫る。

 

 すぐさまツツジはその場を離れた。あれがどれほどの威力があるのかは、初日に見た。防御しきれるものではない。

 

 反応が良かったツツジは直撃を避けたが、掠った勢いだけで体は激しく錐もみし、五陵星の余波が彼女の体を揺らしてダメージを与えていた。

 

 自然落下するカムイちゃんと西宮を追い越し、ツツジは激しく地面に墜落した。

 

 その結果に、観客から激しい喝采が上がる。

 

『ぬぅわ~んとぉ~! まさかまさかの大金星だぁ~!』

 

『……さすがに、これは信じられんな』

 

 そんな沸く下界をよそに、落ちているカムイちゃんと西宮は静かだった。

 

「おい、カムイ。ツツジがいなくなって足場がなくなったけど……」

 

「そうだニャ……」

 

 二人とも何もできなかった。そう、二人の手元に札はもう何もない。

 

 ……………………(トンボ)。

 

「西宮……どこに、落ちたいニャ?」

 

「そのネタだけは聞きたくなかったぁ~!」

 

 まあ、二人に落下場所を選べるわけもなく、ツツジのそばに仲よく墜落したのだった。




次回更新は火曜日予定です。
ようやくラストです。長かった。
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