北乃カムイのもにょもにょ異世界(仮)『伝説行事!応援合戦遊戯会』   作:カムラー

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狙われた西宮

「と、いうわけで、特訓に付き合ってくれ」

 

 フィールド『大通公園』の十一丁目『フロンティアの歴史・文化ゾーン』で、西宮はモンスターを倒していた翡翠を見つけ、事情を話し、合掌して頼み込む。

 

 翡翠は嘆息しつつ、面倒そうにダークブルーの髪をかき上げる。

 

「なんで私が」

 

「カムイも透も森羅万象(アカエゾ)が得意だし、武身強化(クロエゾ)が得意なのは俺の身近だと翡翠しかいないからだよ」

 

「先生に頼めばいいだろ」

 

「頼んださ、荒谷先生に。頼んだらまず「イヤだ」って言われて、「メンドイ」「授業の復習でもしろ」「そんな暇はない」「異世界人と放課後まで一緒にいられるか」などととりつく島もなかった」

 

「…………」

 

 カムイちゃんと西宮のクラスを担当する荒谷先生の異世界人嫌いは有名だったが、意欲的な生徒をそこまで拒否する貫きっぷりに、翡翠は言葉が無かった。

 

 仕方ないとばかりに手近にそびえ立つマイバウム(ドイツの祭木で、高さは二十五メートルある)に寄りかかる。

 

「先に言っておくが、私の特訓は厳しいぞ」

 

 その言葉に、西宮の顔がパアッと晴れる。

 

「ありがとう! 助かった!」

 

「で、西宮の現状の実力を知っておきたいんだが、もうさすがに全体強化はできるようになったのか?」

 

「ああ。それと二枚までなら札を同時に使うことができるようになったぞ」

 

「ふぅ~ん、普通だな」

 

 褒められるとは思っていなかったが、一片の感情すらない言葉にちょっと西宮は凹んだ。

 

「……その程度の実力であと半月以内に六丁目までたどり着けるようにするには…………」

 

 翡翠は腕を組み、静かに考え込む。

 

 そして、緊張した面持ちで待っていた西宮は、スッと静かに開かれた翡翠の目をしっかりと見る。

 

「今すぐ諦めるのと、それらしいことをやって結果やっぱり駄目だったのと、どっちがいい?」

 

「可能性が低くても成功する未来をくれ!」

 

「私の特訓は厳しいと言ったはずだろ!」

 

「真実の厳しさっていう意味だったの!?」

 

 驚愕のツッコミをする西宮に、翡翠はため息を一つする。

 

「なんと言うべきか……私なりに精一杯気を遣って本人のやる気を尊重して、できるだけ不可能という言葉を使わず、犬に1+1の答えを言わせるよう調教する方がまだ望みはあると思いつつ提案したんだが……」

 

「それならいっそスッパリ斬り捨ててくれた方が気持ちよかったわ!」

 

 少しは悪いと思ったのか、翡翠は頬を指でかきつつ、

 

「ちなみに、西宮は地元世界で何か武道をやっていたか? 剣道や弓道のような、武器を使ったものなら特にいいんだが」

 

 その質問に、西宮はポンッと手を打つ。

 

「なるほど。翡翠の棍のように武器を使ってレベルアップするわけだな」

 

「そうだ。で、何か経験はあるのか?」

 

 聞かれ、西宮は気まずそうに苦笑し、

 

「何もない。勉強ばっかしてたし」

 

「じゃダメだ」

 

 あっさりとしたものだった。

 

「え~、剣とか使ったら強くなりそうなのに?」

 

 西宮の単純な発言に、翡翠は顔をしかめる。

 

「あのな~、素人が剣持ったからって強くなるわけがないだろ。西宮だったら誤って自分の脚を斬りそうだから刃物なんて持たせられないぞ」

 

 もっともな意見に西宮は反論もなく、

 

「…………あ、じゃ、銃とかないの? 札を射出できるようなこの世界独自の銃とか?」

 

「あるぞ」

 

「マジで!?」

 

 ファンタジー的な答えで一気にテンションは上がったが、

 

「高いぞ」

 

 現実的な答えで一気にテンションは下がった。

 

「あ~も~…………よし、武器でのレベルアップは諦めよう」

 

 翡翠は「とすると」と前置きしてから、

 

「残るは正攻法だけだな。武身強化(クロエゾ)の使える枚数を増やすよりも、森羅万象(アカエゾ)を少しでも使えるようにした方がいいだろう。札を一月も使っていれば得意でなくともすぐ浮力ぐらいは発動できるようになるはずだ。だが、それは戦闘の幅が広がるぐらいで、大したレベルアップにはならないがな」

 

「でも、森羅万象(アカエゾ)を使えるようになったら燃える拳とか、凍らせる蹴りとか、カムイの協力がなくても使えるようになるんだろ?」

 

「……見ていろ」

 

 翡翠は背中から棍を取り出し、そこに『炎』の札をペタッとはる。

 

「森羅万象(アカエゾ)は張力が弱い。森羅万象(アカエゾ)を得意としない者が使用すると、さらにそれは弱くなる。だから森羅万象(アカエゾ)の札をはって武器や体を激しく動かすと……」

 

 西宮の目の前で棍を思いっきり振り回すと、はった『炎』の札はすぐにはがれ落ちた。

 

「このようにはがれる。当然はがれたら効果は失われる。全力で体や武器を動かしてもはがれないほどの張力を発動させるのは、簡単なことじゃない」

 

 説明を終え、翡翠は棍を背中にしまう。

 

「半月じゃ……」

 

「絶対無理だ」

 

 西宮は重そうな闇をズドンッと背負う。確かに半月で六丁目に行くまで強くなるのは無理そうだった。

 

「分かったか、成功する可能性が低い特訓すらないんだ。諦めるなら早い方がいいんじゃないか。無駄な努力だ」

 

 そう言われ、西宮はバッと曲がっていた体を勢いよく起こした。

 

「無駄な努力はあっても、無意味な努力はないんだよ」

 

 語気を強く言い放ち、西宮は「ありがと」とぶっきら棒に言って翡翠に背中を向ける。

 

「……おい、ちょっと待て」

 

 翡翠に止められ、西宮は振り返らなかったが足を止める。

 

「六丁目に向かうのは全員一斉にスタートだ。当然何人かが組んで目指すのもアリだぞ」

 

 振り返った西宮の顔は驚きに満ちていた。

 

「それアリなの!? それなら俺やカムイが六丁目にたどり着く目も出てくるな!」

 

 現金なものだと、翡翠は喉の奥で笑いを殺す。

 

「足手まといになるようだったら置いていくからな」

 

「わかってるよ。そこら辺容赦無さそうだしな、おまえ」

 

 

 やることが明確になった西宮は札の練習をしつつ、カムイちゃん達とフィールドに挑み、連携を高めていった。

 

 そんなこんなで数日が経った札教のレストランの片隅で、カムイちゃん達いつもの四人は、遅めの昼食をとっていた。そして食事も終わり、珍しく透から話を切り出した。

 

「最近誰かに見られているような気がするんです」

 

 それを聞き、残りの三人は一斉に、

 

「奇遇だな、私もだ」

 

「私もニャ~」

 

「あ~、俺も俺も」

 

『西宮は気のせいだろう』

 

「何でだよ! 綺麗にハモるな!」

 

 テーブルを掌でバンッと叩きつつのツッコミだったが、カムイちゃんは臆した様子もなく、

 

「だって見ているだけで癒される美少女の私達なら視線を集めちゃうのも分かるけど、西宮を見るモノ好きがいるとは思えないニャ~」

 

「ストーカーという線も考えにくいだろ」

 

「うっ、まあ確かにそうだけど……」

 

 西宮自身そういった可能性はないと納得し、たじろぐ。だが、助け舟は意外なところから出航された。

 

「あ、分かりました。たぶん西宮さんの勘違いじゃありません」

 

 透が思いついた! というような晴れやかな顔で、

 

「西宮さんって、最近カムイちゃんや私達と一緒にいることが多いじゃありませんか。だから、私達を見ている人の視線が、自分を見ているって感じているんだと思います」

 

「ああ~、自意識過剰なんだニャ」

 

 出向された船はすぐさま沈む泥船どころか、撃ってきやがった。

 

 西宮は最早ツッコむ気力もないのか、憮然と押し黙った。

 

「西宮の勘違いは置いといて、カムイちゃんや透には誰かに見張られるような心当たりはあるか? 私はないんだが……」

 

「う~ん、奥ゆかしい熱狂的なファンかニャ~」

 

 西宮はバッと隣に座る透(西宮の視線を前で受けるのが嫌なため、四人でいる時は隣に座ることが多い)に視線をやると、すぐさま彼女は視線をそらした。怪しい。

 

(おい)

 

 武士の情けで追求する声は小声だった。

 

(違います! 私じゃありません! 隠し撮りだって一度もばれたことないんですから!)

 

(今のは自白ととっていいのか)

 

 だが、おそらく犯人は透でないと、西宮は分かっていた。透が犯人ならば「最近」ではないはずだし。

 

 誰一人思い当たる様な心当たりは無かった。

 

 

 昼食の後も学園で札の練習をし、西宮は疲れた体を引きずって寮の部屋に戻ってきた。

 

 部屋のど真ん中に観葉植物があった。

 

 しばし西宮は動きが止まってしまった。

 

「……部屋間違えたか?」

 

 と、ドアを見直したがしっかりと自分の部屋だった。不思議に首をひねりながら部屋に入って、

 

「何でこんなものが……誰か部屋を間違えておいていったのかな~」

 

 観葉植物に近づき、何か持ち主の手掛かりでもないかと、植木鉢を確認するためにしゃがみ込む。その時、何かが頭上を通り過ぎていったような風を髪に感じ、背後を振り返って見上げる。

 

「くっ! 運のいい奴!」

 

「誰だおまえ!」

 

 全身黒づくめで顔も黒い布で隠して目だけを見せている人が、陶器の大きいツボを持っていた。怪しいと言うより、珍妙な奴だ。

 

「我が家に伝わる暗殺術『部屋のど真ん中にある植物に気を取られている間に後ろから鈍器で殴られる』を避けたのは貴様が初めてだ」

 

「よしっ! 色々ツッコみたいことはあるが……なんで俺が暗殺のターゲットになっているんだよ!」

 

 同時に複数のツッコミをして分散させるより、大切なものを一つだけ選りすぐってツッコミをするという西宮の技に、黒づくめの隠している口が密かに笑う。ターゲットとしている者の力に手応えを感じたのかもしれない。

 

「ふ、知れたこと。貴様が異世界から来た西宮だからだ!」

 

 言いながら振り回されるツボ。どうやらまだ先程の暗殺術は続行されているようだ。

 

「だから、それで何で暗殺されなきゃいけないんだよ!」

 

 大きなツボを避けるのは難しくないが、狭い部屋でバタバタされて、西宮はとても迷惑そうだった。

 

「ふふふふ、依頼主がバレるかもしれぬ情報を漏らす暗殺者がいると思うのか。貴様は何も知らずに冥府に旅立つのだ! 『北斗』の称号を持つ、長谷川(はせがわ) 司(つかさ)の手によってな!」

 

「大声で自己紹介する暗殺者がいるかぁ!」

 

 そのツッコミに、司の動きがピタリと止まる。

 

「ふ、ふははっはは、私から情報を引き出すその手腕! さすがに一筋縄ではいかないようだな! だが、今回は挨拶代わりだ。貴様はこれから朝に夕に暗殺の恐怖に怯え、眠れぬ夜を過ごすことになるのだ。最早安眠できるとは夢にも思わないことだ! 私はいつでも貴様の首をかき切ることができるのを忘れるな!」

 

 颯爽と背中を見せ、ドアから出て行った。

 

「……なんだったんだ、あれ」

 

 部屋に観葉植物が残された西宮は、独りごちた。

 

 そして翌朝、まだまだ眠っていたい朝の五時三十七分という、なんとも微妙な時間帯。

 

 絶妙に耳障りでくぐもった音が西宮を起こした。苛立ち気な顔で普段から目つきが悪い目は、寝不足でさらに凶悪さを増している。音源を探して部屋を見回すと、それは観葉植物の方から聞こえてきていた。

 

 緑の植物を引っこ抜き、根ごと土をさらって植木鉢を確認すると、そこにけたたましい音を鳴らす目覚まし時計があった。

 

「安眠できないって力技でかよ!」

 

 寝不足でもかげりがない西宮のツッコミが響いた。

 

 

 午前の授業が終わり、昼食の時間を兼ねた昼休み。西宮は透と翡翠のクラスに乗りこんでいき、

 

「おい! 『北斗』の称号を持つ長谷川 司っていう奴知ってるか? どこのクラスだ!」

 

 興奮した西宮に驚いていた周囲が、彼の言葉でさらにざわついた。

 

「まさか!?」

 

「会ったことがあるんですか!?」

 

 聞かれた透と翡翠が、信じられないという顔で聞き返してきた。

 

「っていうか、狙われた!」

 

 変な時間に一度起こされたせいか、午後になったというのに西宮の目はまだ普段よりも悪かった。

 

 その視線に透はおっかなびっくりしながら、

 

「クラスというか、この学園の生徒じゃありません。噂だと、樽勝の生徒のはずです」

 

「樽勝の?」

 

 まさか別の学園の生徒とは思わず、苛立っていた西宮の機嫌はそっちに気を取られて平静に戻る。

 

「称号を持つだけあって噂はよく聞く。闇にひそみ、闇に生きる者。代々伝わる暗殺術を用い、狙った標的を必ずしとめる恐ろしい奴だと――」

 

「一年A組の皆さん、少しお時間いただきます」

 

 そう言って突然入って来たのは、四人の生徒会メンバーだった。当然のように、そこに会長である利羅の姿は無い。

 

 代表して副会長が教壇に立つ。

 

「来たる応援合戦交流会まであと一週間に迫りました。応援合戦遊戯会は両校の威信と意地をかけた熾烈な戦いです。相手を倒すために両校全力を尽くします。もちろん、本番だけでなくその前から……ですので皆さん。懐柔、買収、闇討ちに気をつけてください!」

 

 一拍遅れて、教室中に驚きの声が溢れる。

 

「特に新入生でありながら実力があるあなた達A組の生徒が一番危ないと思われます。こちらも事前に偽情報を流して相手を惑わしてはいますが、称号を持っている二人は間違いなく狙われますから、特に気をつけてください」

 

 教室中の視線が、透と翡翠に集まる。

 

「あと、会長を見つけた場合は不意打ちの攻撃を許可します。最悪、右手と口と頭が無事ならいいですから。捕まえて生徒会室にまで運んでください。以上」

 

 スリリングな連絡事項を最後に、生徒会メンバーは教室を出て行った。教室は和やかでないざわつきが広まる。

 

 西宮は大きめの汗を頭にかき、

 

「応援合戦遊戯会って、毎年こうなのか?」

 

「いや、毎年楽しく見ていたが、まさかこんな裏舞台があったとは全く知らなかった」

 

 翡翠の言葉に、透もコクコクと頷く。

 

「最近誰かに見られているとは思ったが、樽勝の工作員だったのか」

 

 西宮はふと、

 

「つまり、俺も戦力になりそうな生徒として、称号持ちの暗殺者にマークされているってわけか」

 

「おそらく本命の戦力を守るための囮として大げさに情報を流したんだろう。異世界から来たと一時期噂になったし、それなりに説得力がある。高度な情報戦だ」

 

「見事に成功しているのね」

 

 西宮は八つ当たり気味の軽い脳天チョップを、二人にかました。

 

「こんにちわっさ~む。おひるべしべ。あ~、お腹減ったニャ~」

 

 通りの良い声に振り向けばそこにカムイと、

 

「ぬぅ、西宮宗円!」

 

 何か西宮を見て驚いている男子生徒がいた。

 

「カムイ、そいつは?」

 

「さっき声をかけてきた子でニャ。最近異世界からやってきた変な噂が絶えない人物について話を聞きたいって言われたから」

 

「ほうほう」

 

「西宮のことを話していたんだニャ」

 

「何でそうなる!」

 

 ツッコミしながら、西宮はカムイに脳天チョップをかます。

 

「だって、他に心当たりがないニャ」

 

 ブスッと口を尖らせ、カムイちゃんは叩かれた頭をさする。

 

「自分のその小さな胸に手をあてて考えてみろ!」

 

「ケンカ売っとんのかニャ~!」

 

 プンスカと怒るカムイちゃんから男子学生に視線をやり、西宮はビシッと指を突き付ける。

 

「それよりおまえ、長谷川司だろ!」

 

「ふふふふふ、さすがは西宮、気づいたか」

 

 否定もせず、嬉しそうに口元を緩ませる。

 

「当然だ。ギャグの様式美だからな」

 

 司は大きく後転して飛び退き、着地した時には制服姿から黒装束に変わっていた。

 

「だが、今さら焦っても遅い。もう貴様の情報は十分過ぎるほど取得した!」

 

 男の正体を知り、透と翡翠はカムイちゃんを守るように立ち上がる。が、司の視線は終始西宮にだけ注がれている。

 

「『北斗』の称号を持つ私を甘くみたな! プロとは入念な情報をもってターゲットを仕留める! もう貴様に残された猶予はほとんどないと知れ!」

 

 勝ち誇ってはいるが、西宮は司の言葉に首をひねる。

 

「俺の……情報? そんな何か警戒するようなものなんてあるか?」

 

 ハッキリ言って、西宮の実力なんて並もいいところだ。カムイちゃんから何を聞いたかは知らないが、情報なんてあってないようなものだと思う。

 

 が、司はそのひょうひょうとした西宮の態度に目を細め、

 

「何を白々しい。私ほどの者を推しても、事前情報との違いに驚いた。頭頂部に耳がある美少女のおっさん。プロレスラーに師事し、変化や憑依、仲間を呼ぶ能力の他、仲間と協力して札の威力を高めるとあったが、そのほとんどがウソだったとはな!」

 

 …………………………………………(とんぼ)

 

「事前情報で正しかったことと言えば、そう、西宮という名前だけ。やられた」

 

「そこまで違うなら、名前の方が間違っているって分かるだろうが! 人違いだ! 俺の隣見ろ、隣! 耳が頭頂部にある美少女のおっさんがいるだろ!」

 

 ツッコむのもバカらしいと、西宮は高々と声を荒げてカムイちゃんを指さした。

 

 司は西宮の隣に立つ美少女猫耳娘、北海道育成アイドル北乃カムイちゃんを改めて目にする。彼女は口元に握った両手を持ってきて、瞳をウルウルと潤ませる。

 

「ひ、ひどいニャ。いくら自分の身が危険だからって、こんな可愛いだけが取り柄のアイドルを身代わりにしようだなんてニャ」

 

「安心しろ。私はプロだ。ターゲットが命惜しさにたわ言を言おうとも、惑わされはしない!」

 

「ぅお~い!!」

 

 西宮が地獄の底から響かせるような声で、二人に睨みをきかせる。

 

 その視線から、すぐさま二人は顔を背ける。

 

「こ、ここはひとまず退いてやろう! 昼食でも最後の晩餐よろしくしっかり味わって食すがいい~、は~っはっはっはっはっはっは!」

 

 高笑いと共に姿を消した司を見て、カムイちゃん達は「逃げた」という答えに一切の疑念を持たなかった。




次回更新は火曜日予定です。
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