女教官は墜とされたい 作:コーネリア大好き
若きパイロット達を一箇所に集める事には理由がある。同年代とのコミュニケーションを取らせる為、そして……年相応の感情を失わない為である。
軍隊では海外の遠征より帰還した兵には、故郷を再現した箱庭で一時的なリハビリを行わせる。どんな風に暮らし、どんな風に言葉を交わすか、それを思い出させるのだ。
『GOE』基地内に作られた教室はパイロット達に本来の情動を呼び起こさせ、戦う為の戦闘マシーンである事を一時だけ忘れさせるべく、ケイを始めとした『ラウンズ』の願いで作られた。
「今日は歴史の講義を行います。内容は……『レイダーとは何か』。終戦から10年というこのタイミングだからこそ、貴方達には敵について改めて学んでもらいます。当然知識の確認も兼ねてるから、私からの質問にはしっかり答えられる様に」
10年前の大戦時に命の限り戦い続けたケイ達は、同時に経験すべき青春や学生生活と言ったものから遠く離れた道を歩まざるを得なかった。いくら英雄と讃えられようとも、人生において二度と味わう事のできない日々を戦いに奪われてしまったしこりは消えるものではない。
それ故に、次世代のパイロット達には同じ思いをしてほしくないという一心で『教室』が設けられたのである。
「10年前、月面の基地を乗っ取って行動していたレイダーは月面大戦によって全滅。しかし、第二陣とでも言うべき軍団が現在地球に定期的に降下してきては破壊行動を繰り返しています……ハヤテ・ジュン、レイダーの生態について説明しなさい」
「はい!」
前時代的な黒板には大きく『レイダーとは?』と敢えて大袈裟に強調された一文が記されている。それを背にびしっとケイが指差したのは、ずらりと横4列でズラリと並べられた学習机の中でも最前列に座っている少女。記念式典にも同行した教え子の一人、ハヤテである。
一言で表すならば『真面目』である。品行方正でルールを尊重し、動きからもその精神が滲み出ている。それ故に実戦では判断力が不足する事もあるが、それでもケイが指導する若者の中でも群を抜いて優秀だ。乗機は『ジュワユーズ』、遠距離射撃を得意とする指揮官機だ。
束ねた長い髪を揺らしながらハヤテは立ち上がり、
「レイダーの生態はタコの様な軟体動物。骨格と呼べるものはなく、それ故に10年前の大戦では閉鎖区画にも容易に潜入する事ができ、それ故に人類は奇襲攻撃に翻弄されました。弱点は体内の心臓部を破壊される事にあります。今現在地球を攻撃しているレイダーはキャリバーの存在を学習したのか、自分達も装甲を身に纏いさながら機動兵器の様な外見を取っています。あくまでも考察に過ぎませんが、レイダーは最近になって明確な知性を持った作戦行動を取っているとも―――」
「そこまでで結構。ハヤテ、正確な説明をするのは良いけれどそれ以上は必要ないわ」
「あ、はい! 申し訳ございません!」
求めている以上の回答をハヤテが続けようとしたところでケイはさっと手で制する。自分が張り切り過ぎていたと気付いた彼女は顔を真っ赤にし、俯きながら椅子に腰を下ろし視線を伏せる。
ハヤテは10年前のケイによく似ている。生真面目と言えば聞こえは良いが、肩に力が入りすぎだ。時には柔軟な思考、またはある程度の脱力というものが必要になる。どこかのタイミングで彼女自身がそれに気付く時もきっとあるだろう。
「ハヤテが話を先取りしてくれたところで、現在のレイダーについて説明します。半年前、再びレイダーは地球への攻撃を開始しました。以前とは異なり、高度に発達した科学技術を伴って……では次にトモエ・ミヤモト。再び現れたレイダーの行動、および変化について説明しなさい」
「え、あーし? あぃす、了解す」
信じられない程軽薄な物言いと共に、ズッと190センチの長身が立ち上がる。その外見はおよそ軍属の人間とは思えない程に派手だ。軍服などは適当に着崩し、髪色も金髪。肌も日焼けで少し肌黒いとまで来ている。何より胸部はハヤテとは比べ物になりない程主張が強く、パツパツだ。恐らく着崩れの理由は胸元が苦しいからなのだろう。
トモエ・ミヤモト。彼女は記念式典にはいなかったものの、優秀な教え子の一人である。ハヤテが生真面目と言うのならば彼女は異端児とでも言うべきだろうか。
「あー……10年前にレイダーの襲撃を受けて基地丸ごと乗っ取られた挙句繁殖用のプラントに改造された月面は今のところ襲撃こそあれどそれ以外は干渉なし。んで、今のところレイダーが地球へと降下してくる際にどこから来たのか一切わからない状態。地球周辺にそれらしい物体も観測されず。レイダー自体も光学迷彩でも利用してンのか大気圏突入前によーやくレーダーに引っかかるレベル? んで、なんでそうなってんのかどこもかしこもわかんない状態? 恐らく超長距離からの惑星間航行でもしてんじゃないスかね。ぶっちゃけあーしが思うに連中どっかから瞬間移動でもしてんじゃないスか、知らんけど」
「非常にわかりやすい説明ありがとう。言葉遣いと身だしなみだけはなんとかしなさい」
「いやぁこれでも結構真面目に着てるほうっスよ。てか胸が入んないスよ胸が。この前死ぬ程対邪忍みたいなカッコしてた教官ならわかるはずっスよ。なんなんスかあのカッコ……」
「……」
外見に似合わず、トモエは軍事的な知識が異様に豊富だ。加えていわゆるオタクでしかも機械弄りが趣味。日焼けした肌も屋外で機体の整備に熱中した結果だと言う。つまるところ『人は見かけに寄らない』という奴である。乗機は『オートクレール』、電子戦を得意とする支援機だ。彼女そのものとでも言うべき、非常に巨大な機体でもある。
非常に優秀な生徒なのだが……いかんせん態度が悪い。本人に正す様指導しても、
「いやこれ自然体っスよ。かしこまったら効率最悪になるっスよ。態度悪くても軍規違反はしないんで勘弁してくださいマジで」
と言われる始末だ。10年前の仲間達にはいなかった、アレな言い方であるが『イマドキ』な性格をしている。怒る怒らないよりも先に果たしてどう対応するべきかまったくわからず、当人が言う様に問題も起こしていないので現状維持である。
さてトモエが不用意に口走った言葉でケイは片方の眉を吊り上げた。『対邪忍みたいなカッコ』……恐らくトモエが好きなアニメと関連しているのだろうが、直感で正体を読み解いた。式典で着る羽目になったあのパイロットスーツの事だ。
「……あのパイロットスーツは、10年前私が着ていたものの再現です。企画した人間からの要望だったので従いました。私個人が好んで着たものでない事だけ、ここでハッキリ言っておきます」
「っス……そうだとは思ってましたけどお疲れさんス。個人的には下手なコスプレより完成度高くて最高っした……」
当初トモエの口ぶりは煽っているかの様だったが、ケイが顔を赤らめながら説明すると一転して心から感激した様な面持ちに切り替わりそのままどっかと椅子に腰かけた。オタクとしてどうやらあの破廉恥極まるスーツに感じ入るものがあったらしい。生憎アニメなどてんでわからないので、とりあえずこの場を収められた事に安堵した。
正直式典について触れられたくない。というか触れられたとしてどう返しても恥ずかしい。お願いだから何も言わないで欲しい。
「きょ、教官……質問よろしいでしょうか? その、式典について」
「え……」
ケイの願いも虚しく、一人の男子生徒が手をあげた。顔を真っ赤にし、鼻息が荒い。信じられない程邪な気持ちが顔に出てしまっている。思春期の少年らしい感情だが、溢れ出すぎている。
「あのパイロットスーツ、10年前教官はどの様に思われていたのかお聞きしてもよろしいでしょうか。僕達の世代はあの様なデザインではない為、着心地とか、パイロット保護の側面から見てどうかとか、そういうの……」
「―――」
驚く程その男子生徒は授業の流れを無視した、自分の欲求100%の顔をしている。よく見ると教室内の男子生徒は一様に同じ表情を浮かべており、どうやら彼はケイに質問するべく選ばれた男子生徒代表の様だ。
確かに若者らしい情緒を持ってほしいという気持ちでこの場を設けたが、よもやそういった部分まで年相応だとは思いもよらず、ケイは数秒程押し黙っていた。
(……侮っていた、これが若さ。いや普通上官に対して聞かないでしょうそんな突っ込んだ説明。というかどういう答え期待しているのかしらこの子達……)
だがケイにはまだ頼みの綱がある。それは女子陣である。少なくとも今の話題は男子陣からすれば興味の対象であるが、女子の目線から見れば破廉恥極まるデリカシーのない質問。誰か一人手を挙げて『そういうの良くないと思います!』と言ってくれればそのまま有耶無耶にできるのだ。
と、そんな風に助け船を求めるかの様に視線を投げかけようとしたところで、女子生徒が一人手を挙げた。確か整備課の人間である。その時が来たか、とケイが内心でガッツポーズを取ろうかというところで、
「……私も、気になってまぁす!」
「あたしも!」
「あの鼠径部のあたり信じられないくらい事になってたんですけどどうだったんですか!?」
「えぇ……!?」
(なんでよぉ!)
そういう事に興味があるのはどうやら男子だけではなかった。というより男女で分けてとかそういう考えは不適切であったかもしれない。まるで男子陣に呼応するかの様に女子達は顔を真っ赤にして首を横に振り続けるハヤテと自分には関係ないと言いたげに頭の後ろで手を組んでいるトモエを除き、全員がケイに熱視線を注いでいた。
同年代とのコミュニケーションを深め、戦闘だけではなく10代の少年少女としての情緒を育てる。果たしてそんなケイ達の願いが実を結んだ結果、全員が『28歳鬼教官が恥を忍んで全世界に晒した対邪忍ぴっちりタイツスーツ』に夢中になっている……なんという団結力か。
(凄い、何も嬉しくない。その団結力は全然いらない……)
若きパイロット達、そして整備兵達を指導し始めてそれなりの時間が経ったが、今程協力しあっている姿を見た事がない。人類の危機だとか地球の危機だとかよりも今、若者達は『破廉恥スーツを着た教官』で脳を埋め尽くされている。
救いはないのか、教え子達に肌の張りつきが凄かったとか食い込みがとにかく凄かったとかほぼ全裸に近かったとかそういう話をする以外に……
「教官んぅ!! 俺も、トマリ・タクミも気になる事がありまぁす!! 教官がレイダーを肉眼で視認した事とかぁ、マニューバとかぁ!!!」
思わぬ助け舟は、ひたすらに沈黙していたトマリ・タクミの絶叫だった。アマギ・ケイ絶体絶命のピンチに椅子から弾かれる様に立ち上がった彼は唾を飛ばしながら、慌てて要領を得ない言葉をまくしたてる。それが場の空気をなんとか変えようとしている努力なのは間違いなかったが、同時にそれまでのすべてを粉砕せしめる空回りでもあった。
さーっと空気が冷えていく、否、最早凝結していく。男女連合軍は突然変な声を出した不穏分子をじっとねめつけ、『何してくれたんだコイツは』という眼差しを突き立てる。
ケイとしてはありがたいと言う他になかった。この状況で敢えて仲間達の感情の行き場を迷わせて逃げ場を作ってくれているのだ。流石はデュランダルを任された少年、状況判断が優れている……。
「どうしたんだ皆!? なんで、なんでそんな目で俺を見る! 皆知りたくないのかぁ、教官がどの様なマニューバを取ったのかをぉ! 凄かったんだぞぉ教官はぁ! こう、素手でビシュッとだなぁ!」
「トマリァ! テメ、なめてんじゃねーぞコラッ」
「アンタ話の流れ読めてないんじゃないのぉ~!!!」
「えっ、は、話の流れって……式典だろ!? 教官がレイダー5機を誘導し、閃光の如く駆け抜けたあの!」
「ちっげーよこのキャリバーバカ!!」
(あっ違うこの子はこの子で空気読んでないだけだ)
タクミは同級生達に怒られ、何を間違ったのかと困惑そのものな顔であたふたしている。演技ではなく心から混乱している。話の流れを完全にぶっちぎって自分の言いたい事だけぶちまけ、そして怒られている現状に戸惑っている。
トマリ・タクミ。卓越した操縦技術、どの様な戦場においても一騎当千の活躍を見せる『赤い閃光』。その実力たるや、過去の『ラウンズ』に勝るとも劣らない。弱点があるとすれば操縦技術を除いた人間性に強い難あり、というところだ。別段団体行動が苦手というわけではない。コミュニケーションを避けるわけでもない。ただどういうわけか、ケイが関わると急に判断能力が鈍くなる。
今日はその鈍さが助けになった。今しかないと踏んだケイはタクミの乱入を利用して声を張り上げ、
「―――ええと、授業はここまで! パイロット班は訓練に戻り、整備班は次の出撃に備えて機体のメンテナンスを! 以上!」
こう言われては、上官命令である以上生徒達も従うしかない。好機を逃がした口惜しさからか誰もが唇を噛み締め、ついでにタクミに並々ならぬ殺意を向けながらケイに一礼してから教室を出ていった。煩悩に脳を支配されながらもこうして命令そのものは守ってくれるのが、戦争に巻き込まれた若者達の苦悩を思わせる。
と、教室に何名か生徒が残っていた。偶然なのかは定かではないがタクミ、ハヤテ、そしてトモエの優秀3人組、『シャルル』と名付けられた部隊のメンバーが全員揃っているではないか。
「どうしたの? 私の指示、聞こえなかった?」
「いや、そうじゃなくてその……俺、ホントに教官のマニューバかっこよかったです!って伝えたくて」
「それで教官困らせたら元も子もないでしょうが! すみませんアマギ教官、ウチのタクミが……」
「しゃあないっしょ、たっくんKYだから。さっきのはGJだったけど」
三者三様だが、口ぶりから察するに『大変でしたね』と一応ケイを気遣ってくれている……のだろう。タクミはまだ勘違いしているが。
ケイは思わず口元を綻ばせていた。窮地を脱したおかげで気が緩んでいたのもあるが、まるで姉弟の様な3人組の距離感がどうしてもおかしく感じてしまったのだ。
タクミは何が悪かったのかという顔で腕を組んでいる。
ハヤテはそんなタクミに呆れ返り、やれやれだとかぶりを振っている。
そしてトモエはいつの間にか風船ガムを膨らませ、何が面白いのかニヤニヤと笑っている。
一見凸凹も良いところだが、この3人が現状『GOE』のエースチームだというのだ。若者の可能性とは想像の埒外にある。
「―――ふぅ。タクミ、貴方はもう少し集中して話を聞いた方がいいかも。ハヤテとトモエはチームメイトとして面倒見てあげなさいね」
「はっ! お任せください! ほら戻るよタクミ!」
「えっ、でも俺まだマニューバの話……」
「帰るよたっくーん。あざした教官、後で対邪忍のデータ送りますんで見比べてください」
そうして、かつてない程混沌とした授業は無事に終わった。ケイはなんとか生徒達の前で恥を晒す事を回避できたものの……
『件名 マジやばかったです
差出人 トモエ・ミヤモト
アマギ・ケイ教官殿 私が愛してやまない『対邪忍 屈辱! 女教官恥辱の■■■■■!!』をお送りします。
マジ完成度高かったです。12月のコミケ来てもらえませんか。利益の4割を教官にお渡しします。ちなみに私の好きなシチュエーションは主人公に厳しい女教官(26)が敵の罠にはまってオークとかゴブリンとか捕らえられた教え子の前でストリップショーを行う展開で■■■■■■』
「……あの子、まぁまぁヤバい気がする」
頑張れアマギ・ケイ。教え子に危険な変態が混じっていても頑張れ。
僕に絵を描く力はないので文章だけの説明になりますがキャラクターの情報です。自己満足です想像を膨らませてください絵は描けません。
名前 年齢 身長 スリーサイズ 好きなもの 嫌いなものです 体重は細かい事考えらないのでやめときます。
アマギ・ケイ
年齢28歳 身長 168センチ B90 W57 H90
好きなもの 一人の時間・一人飲み(過去の戦闘で臓器が不調なのでまともに飲めないけど一人でぼーっと考える時間が欲しい)
嫌いなもの ホウレンソウ不足・話を聞かない人・ナンパ好きの男・飲んでる時に声かけてくる男
外見はほぼ銀河機攻隊マジェティックプリンスのスズカゼ・リン教官です。ぶっちゃけメインヒロインだとずっと思ってます。劇場版まで見てください。劇場版終盤あたりを見てください。
ハヤテ・ジュン
年齢17歳 身長 160センチ B88 W53 H85
好きなもの 集団行動の動画視聴・部屋の整理整頓・ポイント還元の時に還元率込みでどれくらいお得なのか計算すること・たまに一人で喫茶店に行って食べるパンケーキ・パッドで注文する方式
嫌いなもの はみ出し者・協調性のない者・今どき手書きで価格表示する店・電子決済が使えない店・QRコードで注文する方式
外見はマクロスΔのミラージュ・ファリーナ・ジーナスです。真面目でCOOLです。
トモエ・ミヤモト
年齢18歳 身長 190センチ B102 W60 H96
好きなもの アニメ・漫画・ゲーム(大体デバイスで見られるがバイブルだけは実物で持っていたい派)・8月と12月(外せないイベントがある)・対邪忍アカギ(バイブルなので実物ソフトもDL版も両方持っている)・トマリ・タクミ(多少ディープな話題でも必死に理解しようとしてくれるから好き。なんか弟みたいで面白いからたっくん呼び)・オンラインゲーム・機体整備・ハッキング・ピッチピチのタイツ(対邪忍アカギの影響)
嫌いなもの 八尺様(昔散々言われたから)・デカ女呼ばわり・厚着・軍服・ヘタレ・アニメとかゲームとかに冷たい人達(好き嫌いは人それぞれなの知ってるから別にいいけどそれなら半端に近付いてこないで欲しい)
外見は正直自分の中でもモヤモヤしてます。ざっくりいうならラストオリジンに出てきそうながっしりした子です。ついでに日焼け肌です。スパロボX-Ωです。