吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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ブクマ、評価ありがとうございます。モルガナ視点になります。
空の解釈色々あるだろうけど、許して欲しい。我が世界ではこれで行くので。


黒猫の王子様

 ──私には黒猫の王子様がいました。

 

「………にゃんにゃん、喋るの?」

「吾輩だけが特別にな」

 

 彼は私が村に引き取られる前から、側にいてくれたようで、私の親代わりと言っていい存在でしょう。なので、当初は動物は喋る事が出来ると本気で信じてましたから、バカにしてきたロンを馬乗りで殴ったのは謝らないといけませんね。

 

 ………笑わないでください。仕方ないでしょう。物心つく時には、既にクロは喋っていましたし、村人も当たり前のように受け入れていたものですから猫が喋る事に何の違和感もなかったんですから。

 

「なまえ? にゃんにゃん名前ないの?」

「そうだな。あるにはあるが………この体には相応しくない名前だ。出来るなら主につけてもらいたい」

「じゃあ、黒いからクロ!」

「安直なネーミングセンスだな………いやまあ、吾輩が悪いのか」

 

 クロと名付けた彼は私が物事を理解できる年になると、様々な事を教えてくれたのを今でも思い返します。食べられる木の実や危ないキノコ、星から方角を調べる方法に加えて………村の外、しかも貴族が通うような学院でしか学ばない算術や識字と今思えば私が1人で暮らせるようにしてくれていたんですね。

 

 え? 彼は手が掛かるってぼやいていた? 

 ………そうですか。いえ、拗ねてません。不貞腐れてもいません。

 事実、幼かった私はその重要性よりクロに構ってもらう方が大事でしたから。

 

 算術や識字はそこまで難易度も高くはなかったですが、クロに教えてもらう為にわざと間違えたり、時には授業から逃げたりと子供の我儘として可愛い事は結構しました。

 

 特に、髪をとかしてもらう行為が好きだったのでわざと顔を洗った後に前髪を濡らしてボサボサにしたり、後は………ああ、私が人参が嫌いだと嘘をついていた事でしょうか。

 

 ええ、村に引き取られた身でありながら好き嫌いなんて余りにも失礼でしょう? 特に好き嫌いはありませんでしたよ。お世話になっていた女将さんからも貴女はまたって苦笑いされていましたが。

 

 そんな、なんて事ない穏やかな日々の中、私が10歳の誕生日を迎えた頃でした。いつになく真剣な表情で、だけど何処か憂いを帯びていた彼の顔に私もある予感がしました。

 

「モルガナ。今から主に戦う方法を教える」

 

 私の、目を背けていた運命と向き合う時が来たのだと。

 クロが教えてくれたのは、村の参考書にも書かれていない常識を外れた魔法。芸術魔法と名付けられたそれは、強力な反面、条件も厳しいようで。

 

「この魔法は吾輩が考え………いや、吾輩のものにしていいのか? 本来はモルガナが仲間達に教えていく………いや、悠長にもしてられんな。いいか? この魔法は芸術魔法と呼ばれるものだ。多分、世界で主を含めた9人………いや、今の時代だと7人か。とにかくそれだけ数が限られている魔法だ」

「はい。クロせんせい。村の皆は私を空属性だと言ってましたが、それが関係あるのですか?」

 

 まず初めに五大属性の内、空の属性を持つものしか使えない事。幻にして、最弱の属性。何かに働きかける事もできず、何かを成すことができない存在として扱われる。

 男性でも差別の対象になり得るそれが、女性が得て仕舞えば、まともな人生を送れるとは思えない。玩具の人生、それが私に与えられた運命だとその時までは本気で思ってました。

 

「ああ。実はこの属性、とてつもなく厄介でな。認識が力に変わるんだ。世界の本当の姿、それを捉えなくちゃ始まらないんだ」

「世界の本当のすがた………実は世界は動物達に支えられてるとか!」

「うん、違うな。吾輩も曖昧な認識ではあるんだが、吾輩達のいる世界はあらゆる要素が絡み合って出来ている。決して、不変のものなどない。それが世界の本当の姿だ」

「………???」

「だよな、吾輩もそう思う。要するに、世界は常に変化が起きているんだ。空の属性はその体現と言っていい、世界に『変化』を起こす。それがこの属性の基本だ」

 

 何故か説明してる本人も多少あやふやな所が気にはなりましたが、大枠だけなら捉えることが出来ました。火属性なら火を出す。水なら水を。風なら風を吹かせる。私達自身が何気なく使う魔法も、世界に変化を齎せているのだと。

 

 四大属性ではそれに付随した変化しか起こせない。火なら燃やすことは出来るが、濡らすことはできないように。

 ただ、空の属性は違う。四大属性の縛りなどなく、世界に直接変化を起こさせる。

 

 不思議そうな顔をしないでもらえますか? 貴女も、芸術魔法を教わったのでしょう? まさか今の今まで何となく使っていたわけじゃありませんよね?

 

 ………呆れました。クロにつきっきりで教えてもらってそれとは。まあいいでしょう。話を戻しますが、私達の芸術魔法は世界を直接変化させているのです。

 

 私が扱う『建築』も大地を変化させ、法則を変化させ、あのように出られない部屋などを作っているのですよ。貴女も、空間を断つような斬撃を放ってるのだから、もう少し理解を深めたらどうでしょうか。

 

 え? じゃあ、何故空属性は役に立たないと言われているかですか………これは私の推論によりますが、恐らくはやれる事が多すぎて、普通の人間には扱いきれないからかと。

 

 やろうと思えば世界すら壊すように変えられますが、何を変化させていけばそうなるかの道筋が見えません。だから、ある程度の区切りが必要なのでしょう。

 

 空の属性を使いやすいように設定したのが、四大属性であり、芸術魔法もまた『建築』や貴女の『彫刻』のように使いやすいように変化させた結果かと。

 

 ともかく、私は1年かけてその概念を理解し、見事にこの魔法を完成させました。そうすればクロがいっぱい褒めてくれると思っていたからです。

 

 それに、この魔法ならば──私とクロの愛の巣が出来ますから。

 

 おや、何故そのような目を向けるのですか?

 クロが私を家族のようなものだと言っていた? 勿論、私もそう思っていますよ?

 

 彼は──私の家族(おっと)です。

 彼も私と結婚するという提案に、人間に戻ったらと言っていましたので誤魔化しようのない純愛です。愛ですよ、愛。

 何ですか、その、頭痛が痛いみたいな表情は。何か言いたいならいいなさい。

 

 人間に戻す方法に心当たり?ですか?

 ふむ、実は子供の頃に試した事が1つありまして。それは何かって?

 

 お姫様のキスですが? 何か?

 

 待ちなさい。人を可哀想な目で見ないでください。いいですか?よく聞きなさい。私は帝国の皇女。つまりはお姫様です。

 そして、私は彼を異性として愛しています。異種姦趣味ではないです。彼の姿、ありのままを愛しているのです。

 

 そんな乙女の唇には無限の可能性があると思いませんか?

 参考文献? 村でよく読まれていたお伽話ですよ。

 

 だから、眉間を揉むのはやめなさい。とんでもない人について来たかもしれないという目をするのもです。しかし、毎夜に彼が寝てからしてましたが効果はありませんでしたし、次善策に移るしかありませんね。

 

 さて、取り出したるは頑張って作った賢者の石です。これを使い、彼を人間に戻すのです………急に椅子から転げ落ちてどうしたんですか? 本物かって? 完成品が存在しないので何とも言えませんが、おそらくは。

 

 これを作る苦労ですか? まあ、5年はかかりましたからそれなりに手間暇はかかっていますよ。すごくすごい頑張ったので、クロに褒めて貰いたいです。猫の姿もいいですが、やはり人間の姿も捨てがたいですね。今の年齢ですか? 16歳です。

 

 呆然とするのはいいですが、話を続けますよ? え? 費用? それはまあ、かなりかかりましたよ。ただ捻出自体は簡単でした。私の村が焼き討ちされた話はしましたよね。

 

 ええ、ええ………今思えば、過去の私は余りに許し難い。戻れるなら、幼い私を決してクロを助けに行かせなかったでしょう。

 

 私が気づいたのは、パティ………パトリシアのおかげです。彼女の父が村長だったのですが、彼が村長に自分が身代わりになり、私を逃すなんて話をしていたものですから、慌てた私は深く考えもせずに飛び出していきました。

 

 プレゼントとして隠されていた黒猫の模様があしらわれた杖を持って、今にも連れていかれそうな騎士を吹き飛ばして、勇敢なお姫様のつもりだったんでしょう。

 その結果が、クロの死と引き換えに村を守った実績でした。

 

 今でも私の愚かさに腑が煮え繰り返ります。怒りの余り、腹を下した馬鹿騎士達も同じように家に閉じ込めて、ずっとずっとクロの帰還を待っていました。

 慌てていたせいで何のルールで部屋に閉じ込めたかもわからずに、ただクロは必ず帰ってくると馬鹿みたいに信じて………待っていました。

 

 1日、1週間、1ヶ月。本当は分かっていました。

 だけど、認めたくなかった。認められなかった。

 

 私が、私のせいで、私が助けに来たから──彼は死んだ。

 

 無理矢理、パティやロンにご飯を食わされて部屋に連れ戻されても私はすぐに外に出てクロが大量の金貨によって圧死させた兵士と一緒にいる部屋の前に座っていました。

 

 だって、帰ってくるんだと、いつもみたいに、にゃーと鳴いて帰ってくるって………思っていたから。

 そして、ある日、私は外から扉を開けました。私が作る部屋は〇〇しないと出られないだけなので、外から入ることは可能なのです。

 

 既に村は森の別の箇所に移動していました。新たな村の建築は私がやりました。今でも立派な城壁や柵で守られている事でしょう。

 私は村の移転を終えた後、クロの生み出した大量の金貨が森を埋めないように更に巨大な劇場を作り上げました。

 

 今思えば、あれは彼への墓のつもりだったのでしょう。

 そうです、近頃噂になっている帝国の森に現れた【黄金劇場】はクロの墓です。大量の金貨が今も残っていますが、私が閉じ込めた騎士達がアンデッド化して、盗賊を襲うものですからアンデッド達が彷徨くダンジョンみたいになってますけど。

 

 私? 私はあの劇場の作り手なので、大量の金貨が眠る場所に直接移動できます。錬金術師の研究費用はあそこから捻出してますし、このすごいアトリエもクロが私に遺した金貨を使用しています。

 

 それで、扉を開けた理由ですね。簡単な話です。

 私は手紙を受け取りました。ずっと女将さんが預かっていたらしいです。私の誕生日前日に、自分が死んだら、モルガナに渡して欲しいと念押しされていたそれを読んだから。

 

『モルガナ。主がこの手紙を読む頃には吾輩、死んでしまったのだろう。残念であるが、仕方ない。吾輩、ずっと前から自分を世界の異物だと思っていたからな、寧ろ納得したくらいだ。』

 

『だが、それでも吾輩には使命がある。主にはこの使命に巻き込みたくはないが………もし、主のせいで吾輩が死んで後を追うとか馬鹿な真似を考えているなら吾輩の使命を叶えてくれ』

 

『主に教えた芸術魔法は全部で9つある。

1.建築 2.彫刻 3.絵画 4.音楽 5.演劇 6.文学 7から先は………主には理解できないから伏せておこう。対象の人物もまだいないであろうからな』

 

『使用者の名前を告げておくから、そいつらを助けて来たる未来………主らが人として吐き気がするような未来に向けて対処をして欲しい。今から60年後、魔族の玉座に異界からの人間が就く。そうなったらおしまいだ。何としても防げ』

 

『使用者の名前は………アルチナ、ロジェスティラ、ティア、エリス、ユニティだ。この名前を覚えたら手紙を燃やすんだ。帝国に先回りされるとまずいからな』

 

『………色々言ったが、吾輩は主には普通に生きて普通に亡くなって欲しいと思っている。こんな愚かな黒猫なんぞ忘れて大切な誰かと穏やかに過ごして欲しいと。でも、主がそんな人物でない事もわかっているつもりだ』

 

『よいか? 吾輩はもうお前を守ってはやれない。そばにいてやれない。だけど、今度はお前が守ってやるんだ。そばにいてやるんだ。お前は今からひとりぼっちになってしまう………でも!』

 

『お前には──仲間ができる。共に切磋琢磨し、世界に憤り、未来を切り開く信頼できる仲間たちが。だから、生きてくれ。情け無い黒猫からの最期のお願いだ』

 

『あとは、1人で顔を洗えるようになる事、起きられるようにする事、人参を食べられるようにする事………それから、それから』

 

『ああくそ、まだ言い足りない言葉があるってのにな。こんな時でも思い出すのはお前との思い出ばかりだ………』

 

『ありがとう、我が娘。なんて──色鮮やかな日々だったろう』

 

 ………手紙には涙の跡がありました。彼が泣きながら、遺書を書いていた、私ともっと一緒に暮らしたかったとひしひしと伝わってきたんです。

 

 私だって、もっと一緒にご飯を食べたかった! 一緒に冒険もしたかった! 絵本の中でしか知らない海や火山だって見てみたかった! 好きな人と結ばれて、子供が出来て喜んで、手を繋ぎながら………永遠の別れを見送りたかった!

 

 ──2人で一緒だったら、どこでも良かったのに。

 

 ふぅ………失礼、取り乱しましたね。その後、私は村を出ました。追手がいつ来てもおかしくはありませんでしたから。

 帝国から離れる馬車に乗り、私はどうすればまたクロに会えるかをずっと考えていました。

 

 貴方が遠い………死と生で別れてしまったのに、この境界が果てしなく遠い。どうすれば、また会える? どうすれば、また笑いかけてくれる? どうすれば彼を蘇らせられる?

 

 ふと、そんな時に昔の記憶を思い出したのです。村長の家に忍び込んでパティやロンと本を漁っていた中に不思議な記述があったことを。

『賢者の石』それは人間が完全という領域に到達する為の石。変化するのが世界の常なのに、完全という矛盾した存在。

 

 そこに一縷の希望を得ました。世界のルールが私たちを裂くならば、世界そのものを変化させれば良いんだと。

 クロを、我が夫にもう一度会う。それを私の人生の目的にしました。

 

 なので、貴女に問いたい──元『帝国近衛騎士団長』アルチナ・L・キャロル。

 

 我が夫に出会ったのは真実なのですね? 

 

 貴方が、彼と出会って何を成したか、くわしく話しなさい。

 それを貴女と()()()()1()0()()を我がアトリエで雇う条件に致しましょう。




次回からアルチナ編になります。
なるべく早く投稿したいです。感想くれたらかなりスピード上がりますので何卒………何卒
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