吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:あんみつ炙りカルビ
日刊ランキングに入ってはいたのでそれなりに読んでくださったのだと思っております。今後ともクソボケ黒猫をよろしくお願いします。
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、タンゴ、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。
いよいよ、帝国貴族学院入学の日だ。魔導列車計画が立案してから3年ほど経過し、ティアの物語の舞台が遂に始まるのだ。
「タンゴ様………」
この3年で様々な事をやってきたつもりだ。特に、ティアと婚約者のアルトリウスのお茶会ではメイドとしてついて行ったのは数え知れない。その度にアルトリウスは吾輩を、口説いて来たのだが。
「タンゴ様?」
吾輩からはそれに関しては何も言えない。説得力皆無なので。でも、婚約者の前でメイド口説くのはどうなんだ?とも思う。吾輩は何も言えないが。
「タンゴ様っ!!」
「うおっ!? なんだ? ティア!?」
考え事していた吾輩を呼び戻したのはティアの悲痛な叫びだった。狭い馬車の中、叫んだ彼女は………3年前と何も変わらず幼い少女のままだった。
「おかしいですわ!! 余りにも!! どうして、どうして………私は3年前からちっとも成長しないんですの!? 背は!? 胸は!? うおおおおっ!! 母様が細身とはいえ幾らなんでもですわぁあああああ!!」
器用に魔法を使い、学院へ向かう馬車内部から絶叫を抑えるティアだが吾輩達にも分からないのだから仕方ない………予想はまあつくのだが。
因みにティアは魔法を半年で身につけた。アルチナは泣いた。
「夢の中であの謎のハゲデブと結婚したのが原因かもな。というかそれしか理由が思い当たらん」
「何なんですの、何ですの!? 悪夢以外の何者でもありませんわ! 毎夜毎夜、出て来ては私をハメ倒すあの野郎はどこのどいつですの!!」
「妊娠とか体に影響が出てないのが、不幸中の幸いだな。とりあえず何かあったらすぐに言ってくれ。その為に吾輩もついて来たんだから」
元々、学院へは付き合う予定だったが理由がなかった所に打ち上げられたのがティアの悩み。対応出来るのが吾輩だけだと判明し、彼女に付き合うことが出来たのだ。
「でも、何でメイドなんだ………黒猫の姿でいいだろ」
「私の趣味ですわ!! 後は黒猫がいると、不幸の象徴として殺されますの!! 姉様から聞きましたわ!」
「物騒すぎるだろ」
この数年ですっかり慣れてしまったメイド服。ティアへのお茶会にこの姿で参加し、それを羨ましいと思ったのかモルガナ達にもこの姿で奉仕をするようにお願いされたくらいだ。いやでもメイドの仕事が身についた。
『まだまだ甘いよ、ますたぁ。メイド道はこれからだよ〜』
『男の娘メイドに就職したつもりはないんだよなぁ』
脳内で師匠面するウルテマを吹き飛ばした所で馬車が止まる。ムサシ殿の部下の騎士が扉を開ける瞬間、ティアは抱えていた頭を上げてにっこりと微笑む。
「着きましたよ、ティア様」
「ええ。いつもありがとう。お仕事、頑張ってくださいな」
3年前では全くしないような令嬢らしく振る舞う彼女。何があったかは知らないが、大衆の前で下品な言葉や言い方は控えるようになり、代わりに姉に似た丁寧な言葉遣いとなった。
吾輩と2人の時や家族の時には戻るから切り替えが上手くなったとも言える。いいね。これならきっといい人が見つかるだろう。吾輩が王国の軍人を紹介してもいいしな。
「ごきげんよう、皆様。本日から、この学院でお世話になります。ナツメ商会次女のティア・F・ナツメです。以後、お見知りおきを」
今では清楚なお嬢様と言っても問題ないくらいに成長した彼女は吾輩に荷物を預けて、学院の門を潜る。
目線を向けて来た先輩らしき人らには挨拶と自己紹介を済ませる。これも先に入学していたセレナ殿からのアドバイスらしかった。
曰く、後継の婚約者であり侯爵家である以上は突っかかる相手はほぼいない。代わりに自身が今後付き合っていく家を選ぶ立場に回る事。
その際に地位だけで決めるのではなく、男爵や子爵にも優秀な人はいるから彼女達が声をかけやすいようにする良い印象を与えておいた方がいいと。
「挨拶をやって損はありませんわ。むしろ、地位が上であればあるほどそんな簡単な事も出来ませんもの。侯爵家の令嬢でも目下に挨拶をしてくれる。いい人かも………そんな噂が流れれば勝ちですわ!」
「確かに。アルトリウスの奴が挨拶出来るとは思わないしな………」
「あの方は口を開くと余計なことしか言いませんわ。私よりもお口、悪いですわよ?」
思い出されるは婚約者同士のお茶会。楽しくはなくても政治として付き合わなくてはならない場面であの男はアート殿とネヴィア殿、そしてウルスラを連れて来ていた。
『この紅茶は香りが飛んでるね。ウルスラが作ってくれた方が美味いよ』
ウルテマの指示通りに作った紅茶が馬鹿にされ、
『これは口に合わないな。普段からこんなのを楽しめるなんて馬鹿舌じゃないか?』
帝国は飢饉により、食糧難だからわざわざ王国のミスト殿下から仕入れたおすすめ茶菓子を否定して、
『その下手な音楽をやめてくれないか? ネヴィアの曲が聞きたいんだけど』
挙句にはティアのピアノを馬鹿にして、ネヴィア殿に弾かせるという始末。
彼にはお世辞という概念はないのか。または他人に気を遣わなくてもいいと思っているのか定かではないがお茶会の度に冷え冷えの空気になるので、毎回メイドとして参加してる吾輩も辛かったくらいだ。
すっかり気分が下がってる彼女の為に、吾輩が用意したお茶菓子や頑張って入れた紅茶で彼女の愚痴を聞く感想会も定番になってしまったが。
「さて、着きましたわね。ここが私達が3年、過ごす事になる貴族学院『ラストバージン』ですわ!!」
見渡した先はいくつかの校舎や宿舎が立ち並ぶ中に、複数の運動場……いや訓練場?もあり、それらを結ぶのは石畳で舗装された道………の筈が石畳に隙間から草がぼうぼうに生えてるわと、ここも帝都と変わらず維持管理が出来てない、なかなか歴史のある学校ぶりである。
校舎と宿舎は石造りの長方形で、だいたい四階建てくらいか。ただ装飾は華美すぎる。多分、強度はガン無視で無駄に掘られた石細工やガラス細工が余りにも目に痛い。多分、帝国の有名人なのだろうけども。
後、わかってはいたけどね………うん。異界の知識が流用されてるからね。でもね? 学院の制服がさぁ、デザインが妙に現代に近いというかブレザー系なのはさあ。いやまあ、露骨に趣味が出てるというか。弟子のデザイン性の賜物というか。
『師匠。帝国貴族学院の制服はこんなイラストでいいかい? 師匠のは余りにも地味だったから私の方で直しといたけども』
『指示通りにやってもらえる?? ん………くっそ、相変わらず漫画は上手いな、お前は。特に女子のデザインがいい。不動が押し付けて来たイラストだと胸も尻も露骨に露出してエロを全面に出してたから修正したが』
『アレは下品すぎ。制服のいい所はきっちり身に付けるところで分かる体のラインとミニスカートとタイツによる絶対領域だろう? 全裸よりもエロいものがある。それをいたいけな少年達に教えるのが私達の役目じゃないか』
『………………違うよ?』
『ちょっと迷った間だね? 黒須師匠?』
ちょくちょくネームやデザイン画を変える時はあったが、その才能自体は目を見張るものがあった。確かに彼女のアドバイスが入った回はアンケート結果も良かったし。
それが反映されれば、そりゃあ学園ファンタジーみたいな制服にもなるわけで。とりあえず吾輩はティアに頼んで1着貰った後、ルーフェン殿に送りつけた。後日、怪文書と感謝の印にどんな下着を妻達につけて欲しいかの質問書が届いたので欲望を書いて送りつけたところだ。
「じゃあ、タンゴ。頑張りなさいな」
「はい、お嬢様もお気をつけて」
さてさて、そんな学院に入ると吾輩とティアは別れる。当然、ティアは学院に通いに来てるが吾輩は学院のメイドとして雇われたのだから。
実は学院には護衛や使用人を連れてくる事は許可されている。さもないと、学園寮だからって夜這いを仕掛ける馬鹿が数知れないからだ。
なので、セレナ殿もムサシ殿やその部下達を護衛として雇っていたりする。逆に男爵や子爵達はまともな護衛を雇えないので、地位が上のご令嬢と仲良くなるなどして守ってもらわなくてはならない。
こうして、派閥が形成され、将来的な関係へと進化していく。この学院はその関係を3年かけて築く場なのである。
特に今年はナツメ商会のお嬢様2人に、ムサシ殿も護衛でいる。加えて昨年にはアルトリウス殿下も入学していたようで既に後宮みたいなエリアもあるようだ。ヤリ部屋かな?
「ここだな」
そして、使用人は学院に預けられて日常は仕事をしなくてはならない。ただ夜には自分の主の元に戻る事ができる。つまり1日働きっぱなしというわけだ。ブラック企業も真っ青だな。
「失礼します。本日からここで働かせていただきます。ナツメ侯爵家から来ました。タンゴです。よろしくお願いします」
という訳で吾輩は早速、メイド部屋を訪れた。中ではずらりとメイド達が壁際に並んでおり………皆、体の節々に人間ではない証。すなわち亜人の特徴である尻尾や耳、肌の色も違う人がいる。
忘れているかもしれないが、帝国は亜人の扱いが酷い。つまり先程挙げられた仕事を学院にとらわれてずっと行っているのが彼女達亜人メイド。吾輩も今は亜人である以上、仲間はずれはないと思うが目線が痛い。
「よく来ました。私がこの学院の使用人の長。ヨミといいます。見ての通り、鬼神族。オーガに孕まされた人間の子です」
壁際に並んだメイド達の真ん中、額から一本の角を生やした女性が歩いてくる。背筋はピンと糸につられたようにしっかりとしており、落ち着いた物腰のメイド長は吾輩を見ると猫耳を触る。
「んっ………」
「失礼。ごく稀に猫耳をつける存在がいますので確かめさせていただきました。申し訳ありませんが、尻尾があるかも確認しても?」
「どうぞ」
「では失礼」
耐えろ。耐えろ吾輩。さわさわと触られる尻尾に付け根………すみません、がっつり尻を掴まないでいただけます? あの、尻を触る時間長くないです? ちょっと??
「なるほど、分かりました。結構です。服を整えてもらって構いませんよ」
「あ、ありがとうございます」
なんなんだろうか、この人。もしやリリィの同類か? 亜人の女性でしか興奮できない性質なのだろうか。こんな品のある由緒正しそうな鬼人メイドなのに?
「熱烈な視線は結構ですが、契約内容について御噺しても?」
「お、お願いします」
「よろしい。ではまず紹介を。メイドは20人。全員が亜人。私以外は帝国の忌まわしき家畜牧場で生まれた者たちです。試用期間は2ヶ月。研修を終えてから本採用となりますが、ここまではよろしいですか?」
「なんか、意外と綺麗だな………帝国にしては」
「質問はないと認識し、話を続けます。初任給は危険手当含めて金貨30枚。自由休が年に10日で、娯楽休暇が30日。年に2回与えられます」
「………ん?」
幾ら何でもおかしな発言だ。ここは帝国で、亜人達がなぜそこまで高待遇を受ける事が出来る? 休みなどないと覚悟を決めて来たというのに、甘い。甘すぎる。罠を疑ってしまうくらいだ。
そんな吾輩に勘付いたかは知らないが、ヨミ殿は薄く笑うと
「そして、最後に現在は私が1番ですが………貴方様がここで働くと決めた場合、貴方が1番になります。
「──ッ!? お前ら、まさか!?」
今のは絶対に聞き逃せなかった名前だった。吾輩をその名前で呼ぶ奴は今のところは1人しかいない。加えて亜人達がそれを口にするなら、彼女の所属は1つしかない。
「では最後にこちらが契約書………連邦国秘密結社『夜想文庫』の『月ノ章』への参加証明となります。いかがいたしますか?」
彼女はキメ顔でそう言って、ペンを渡して来たのだった。
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、タンゴ、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。
願ってもない提案なのだが………もう帝国ボロボロじゃんか。と逆に心配になるのだった。
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