吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
ページ更新する度にお気に入りが増えていくの嬉しい………泣く。
なので、早めにアルチナ編1話投稿します。
頑張って2話も書くよ。金曜くらいには。
はるばる来たぜ、最前線
吾輩は猫である。かつての名前はクロである。
生まれなど、とんと見当がつかぬ。何でも荒野のど真ん中に倒れていたのだけは記憶している。
「………吾輩、死んだはずだよな?」
ついでに、自分が死んだことも。あの痛みや熱、苦しさは夢ではない筈だ。とても夢とは思えん。でなければ、今頃はあの村で目を覚まして、モルガナに抱きつかれるのが簡単に予想がつく。
「………荒れ果てているな」
時刻は夜中といったところか、月も星も見えない闇に覆われた世界。夜目が利くとはいえ、見渡しても意味はなかった。
視界を遮るものは何もない、大木や水源さえも見当たらない石ころだけの痩せた土地が延々と広がっていた。
代わりに刻まれているのは、破壊の跡だった。ガラス状になった大地、砂に還る寸前の頭蓋骨、大地に痛々しく残る斬撃の軌跡。
当然と言えば、当然か。何せ、ここは帝国から更に西に位置する『悪魔の手』と呼ばれる死の大地にして、
「偶然か………それとも、運命か。こんな所に来るとはな」
──魔族達との戦争の最前線なのだから。
魔族。原作エロゲにおける竿役にして、鬼畜度を跳ね上げた元凶達。オーガの腹を突き破るチ○コに、触手による上下の口からの種付。ゴブリン達の孕み袋にされるなど枚挙に暇がない。
それでも、まあ主人公のr18シーンよりかは全然見れた。趣味とは違うが、好きな奴は好きなんだろう。吾輩、歳上お姉さん系の純愛大好きである。NTRは絶許、死ぬがいい。
「ふぅ、歩くしかないな」
目的地に辿り着くまで時間もある。思考の整理も兼ねて、恐らくいるだろう………2番目の魔女候補。『アルチナ・ルイス・キャロル』について振り返るか。
アルチナ。モルガナの右腕にして、2番目の魔女である。原作ではただの女騎士であり、ハイレグアーマーを着ていたことや正常な時の台詞が『くっ殺!』以外なかったことから印象は薄い。
だが、奴は弾けた──股間に男の天をつくほどの剣を生やし、地につくほど乳をデカくして、部下の女騎士達を食い散らかす性騎士となったのだ。
そして言語も『ちん○!』『射精ぞ、オラ!』『孕め!!』『お゛っ!! イグッ!!』しか喋らなくなった。新種の生物かな?
そんなチン生物を前に吾輩、泣いた。読切から連載に切り替わり、新章という事でインパクトを!と編集に言われたが、原作からしてインパクトどころか、ビッグバンだったのだから。吾輩にこの廃棄物をどうしろと。
最早思いつかなすぎでやけ酒しながらも、廃棄物の分別を頑張った。萌える要素と萌えない要素の分別を終え、リサイクルに出した結果、出て来た女騎士は………30代の女騎士という概念しか残らなかった。
なお、担当編集者からは以下の言葉を頂いた。
『頑張った! 頑張ったよ! ほら? 廃棄物から売れ残りには変化したから! 今どき、珍しくないって30代ヒロインは! 行き遅れなんて当たり前だから!』
その後、担当編集はコンプラ違反で交代したが彼の人生に幸がある事を今でも祈っている。
「………さてと、そろそろ現実を見るとするか」
辿り着いたのは、絶壁。聳え立つ壁を前にして、吾輩は途方に暮れていた。何せ、目的地はこの壁の先にある──『地獄殿』を目指さねばならないのだ。
実はこの場所、峡谷なのである。人間の国と魔族の国を分けるようにして、東西にまっすぐ伸びた断崖なのだ。
吾輩はただ、崖の底を歩いて横断し、人間の国から魔族の国に乗り込もうとしているのである。
「多分、腕はもうないだろう………片脚を切って牢屋から逃げ出したくらいか。冷静になればなるほど自分の馬鹿さ加減に気が滅入るな………切り替えよう」
無論、時系列が定かではないがモルガナが12歳の時に彼女は地獄殿にて魔族達の繁殖の道具にされていた。そんな設定にした吾輩も吾輩だが、スピンオフである以上、エロゲらしさを出せと言われては頷くほかもなく。
その因果が今、帰ってきているとなるとますます動かないわけにはいかない。ここに飛ばされて来てから、まだ1年も経っていないと思うが、確認くらいはしておけば今後どう動くか作戦も立てやすい。
可能ならば、まだ捕まったばかりであってくれ。せめて片腕だけの状態であってくれ。祈るように上を見上げれば、いきなり頭上が暗くなった。
「ど、どいてくれぇぇぇぇぇぇ!!」
「は?」
見上げればそこには夕焼けを思わせる髪色の女性と、壊れかけた鎧をギリギリ引っ掛けてるみすぼらしい女性が落下する姿………落下? 吾輩の上に? 成人女性2人分が?
「うぉおおおおおお!?」
今までの猫生(1日)の中で、全力の横っ飛びを披露。女性達は、そのまま地面に衝突。着地ではない、堂々とした落下だった。舞う砂埃からして尋常ではない衝撃だった。
「………っく、全くわたしで無ければ死んでましたよ!」
「いや、普通は死んでるだろ………」
「っ!? 曲者!?」
なのに、平然と立ち上がってきたから思わずツッコんでしまうのも無理はないと思うが、自殺志願者らしき女性には関係ない。何せ、方向からして魔族の国から逃げてきたのだろう。
そんな中、喋る猫と出会えば魔物か何かと疑いたくなる気持ちも分かる。分かるんだが………どうして吾輩にそんな目を向ける?
「─────」
「何だ? 喋る黒猫が珍しいのか? いや、多分珍しいな」
吾輩の1人ツッコミにも反応せず、情報処理能力がパンクしたような顔でフリーズする彼女。なんか、敵とかそんな気配は全くしてこんな。拉致られた被害者か?
「というか主、もしかしてその木の枝で何とか出来ると思っているのか?」
「………はっ!? 何を言う! 木の枝ではない! これは我が愛剣! デュランカリバー!」
「名前が合体事故起こしてんぞ………それよりも、だ。その背中に担ぐ女性に吾輩、用があるのだが」
ぶぉん、ぶぉんと口で音を鳴らしながら剣を振るうアホっぽい女性はさておき、彼女が肩に担いでいるもう1人に既に意識は向いていた。
薄汚れてはいるが、後ろで一纏めにされた赤紫のややウェーブがかった髪に前髪で隠れた右目からは血が垂れている。うっすらと左目下に黒子も見える。まさかお目当ての人物があっちから来るとは。
「その女はアルチナだな? そいつを助けたければ吾輩について来い。またあの国に戻りたく無ければな」
やはり漫画の通りには上手く行かないらしい。吾輩の描いた漫画に彼女を助けにこれた人物はいない。まだ生きてはいるはずだが、無能な上司が拠点にいるが故に………砦に迫る危機にアルチナの救出が間に合わず、彼女だけが生き残ってしまったのだから。
「………貴殿、名は?」
「他人の名前を聞くより先に自分の名前が礼儀だろう」
「ふっ、ならば聞くがいい! 我が名はアーシュラ! 異界より訪れし、勇者なり!」
「そうか。吾輩は黒猫だ」
「絶対に信じてない目をしてる!?」
そんな事はない。ただ、異界………つまり
1人は吾輩が何としても避けるべき、最悪の未来の作り手たる原作の主人公。そしてもう1人は………魔女達のラストNo.の筈なのだから。こんな人形のような顔体全て整った女性ではない。
考えることばかり、増えるのに答えだけは見つからない。
まるで人生だ。吾輩、今は黒猫だが。
「まあいい。ここでは落ち着いて話も出来ない。吾輩について来い」
吾輩が谷底を先導するように歩き出すと、少し待って後ろから足音がついてくる。彼女に知られないように小さくため息をついて、切り替える。2度目の猫生も簡単には行かなそうだと気を引き締めて。
吾輩は猫である。かつての名前はクロだった。
はるばる来たぜ、最前線。地獄行きの特等席はまだ空いてるようだ。