吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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に、日間ランキング1位………1位!?
嘘だろ、今までweb小説書いてきて1位になったことなんてないよ!!

ありがとう………それしか言うことが見つからない………


おはぎのようせい?

 崖底を歩く事、数時間。見渡す限りの巨大な岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れている。恐らくは戦争の激化による崩落だが、そのおかげで安全なエリアが確保されているのだ。

 

「おい、アーシュラ。岩と壁の間に隙間がないかを探してくれ」

「おまかせ下さい! わたしに掛かれば赤子の手を捻るようです!」

「おお、頼んだぞ」

 

 あまり時間もない。岩と壁の隙間に顔を突っ込み、目的の場所を探す。こう言う時は猫で良かったと思う反面、人間でないとアルチナの体格を運ぶのは不可能だったろう。魔女達の中で一番背が高い上、筋肉質だしな。

 

「キミリア殿、壁面と一枚岩との間に隙間が空いているようだ」

「………………ひょっとして、それ吾輩の名前か?」

「ええ、名前が無いのも可哀想ですからね。褒めてくれても構わないですよ? わたしはネーミングセンスには自信があります故」

「一応、吾輩にはクロって名前が………」

「いや、わたしの名前の方が気品があっていい! クロは安直すぎる!」

「でも、クロ「キミリア!」く「キミリア! 早く行きましょう!」………わかったよ」

 

 わくわくやドキドキを抑えられない子供みたいな目でアルチナを抱えて先に行かれてはこちらも付いていくほかはない。というか、滅茶苦茶意思が強いな、この子。

 

 岩の隙間に入ると、壁面側が奥へと窪んでおり、意外なほど広い空間が存在した。そして、その空間を下へと降りていくと仄かな明かりが吾輩達を出迎えてくれた。

 

「これは凄いな………」

「吾輩もここまで綺麗とは思わなかったが、ここなら奴らにも見つかるまい」

「ふむ。わたしに似て神秘的な場所ですね」

「自惚れにも程がある」

 

 そこに在する深い青色の湖からは雪のような光が立ち上り、突飛さこそ少ないものの、非常に幻想的な光景だ。この地底湖はアルチナが身を隠し、癒していた秘密の場所だ。先回りした甲斐があった。

 さてと、拠点を確保したところで早速だがアルチナの治療に入ろう。

 

「アルチナの様子はどうだ? まだ生きているか?」

「やはり、流石はアルチナ殿ですね。驚異的な生命力です。わたしとしては感服するあまり、感謝の舞を踊りたくなるほどです」

 

 吾輩、絶対に突っ込まん。それよりも治療が先決だ。恐らくはアーシュラが処置をしたのだろう………いや、押しが強い性格の割に処置はかなり適切だ。正直、訂正する場所が見つからん。

 

 とはいえ、顔色は悪い。栄養と休養もいる。水はこの地底湖を利用して、食べ物は地底湖に棲む魚を釣って食えばいい。ファンブックに書いた情報が反映されているなら、かなり栄養価が高いからな。

 

「だが、包帯を換えねばならんし、薬もいるな………やはり、ここは魔族の国に侵入するしかあるまい」

 

 しかし、薬系が足りない。魔物はそもそも薬を使う知能はないし、魔族達の国に行くしか入手方はないだろう。効能は低いだろうが背に腹は代えられぬ。幸い、喋る猫なら魔族の扱いを受けるだろう。繁栄しか考えていない魔物達に捕まれば、リスポン案件だが。

 

「あの………」

「すまぬ。吾輩、急用を思い出した。主にはここを任せるぞ」

「いえ、お困りのようであればこちらを」

 

 差し出されたのは、薄紅色の軟膏らしきもの。僅かに薫るのは梅のような匂いだ。はて? こんな軟膏を魔族が作れるような文化はなかったと思うが。

 

「もしや、これは主の手製か?」

「はい! 塗ってよし! かけてヨシ! 良薬は口に苦し!の代物です! 塗れば傷口の殺菌や治癒に役立ちますので良かったら」

「おお、助かる………後は」

「それと逃げ出す際に包帯を盗んできたんで良かったら。後、火を起こしておきましたので魚を釣って食べましょう。水は既に沸かしていますのでアルチナ殿の体を拭いて清潔にしてから軟膏を塗る形で!」

「お主、手際が良すぎないか??」

「褒めてくださってもいいんですよ?」

「なら、かがめ。全く幼い頃のモルガナを思い出すな」

 

 さっきまで拾った木の枝で騎士ごっこしていた奴とは到底思えなかった。むふーっと何かを待ち望む子供のような彼女に吾輩は屈ませると、彼女の額に肉球で触れれば、

 

「主がいてくれたおかげで助かった。その段取りの良さは、きっと主の力に変わるだろう」

「──ふふっ、どうもありがとう。キミリア」

 

 彼女は花が咲くように笑い、とりあえずは満足したのか釣竿と糸を取り出して………待て待て待て。

 

「主、何処からそんなものを取り出しているんだ? 軟膏にしかり、包帯に然り、釣り竿もだ!」

「ふふふ、良くぞ聞いてくださいました! これこそがわたしの魔法! 『インベントリ』です! ここに入れたアイテムは数や種類に自動で分けてくれますし、保存も利くのです!」

「シンプルに便利な魔法だな………空属性か?」

「ええ。異界から召喚された際に知りました。結構レアな属性だそうですね。やはり、召喚系勇者と言うのはチートを持って当たり前というわけですか」

 

 何故だか言葉尻が小さい。何かしら、自分の魔法に思うところがあるのだろう。だが、今の状況ではかなり便利だ。これならば復活に1年はかかると見ていたがもっと短縮できるかもしれない。

 

「主の力を教えてくれた礼と言っては何だが、吾輩の能力を教えておこう。とはいえ、今の環境じゃあ役には立たないがな」

「キミリアの能力ですか!? ん? 魔法とは違うんです?」

「吾輩も自分の能力に詳しくないからわからん。だが、詳細はわかる………『()()()()()()()()()を好きなだけ用意できる力』だ」

「マンサツ………? 人をたくさん召喚出来るってことですか?」

「………ああ、すまない。てっきり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()いやはやすまない。吾輩とした事が、金貨や銀貨を生み出す力だと言った方が良かったか?」

「───ッ!!」

「やはり、主。異界………日本から召喚されたものではないな? 日本人ならば、ああ言えば、主とは違うまた別の返答が返ってくるだろう。ある程度の認識は共通するはずだ」

 

 吾輩の予想していた答えは、『えっ!? 万札を用意できるの!?』か、『猫のくせに金額チートかよ!』みたいな反応だった。何せ、この世界では紙幣など使われていない。万札と言って分かるのは異界の人間くらいだろう。

 

 そもそも名前や顔立ちからして、明らかに日本人離れしている。外国人が召喚されていたとしても流石に紙幣と言えばある程度はわかるだろう。わからなかったら? それこそごめんなさいだが、彼女のしまった!という顔からしてブラフなのは間違いないようだ。

 

「全く何故、嘘をついた? 普通に魔族に誘拐されて捕まっていた、と言えば良かっただろうに」

「それは………その………」

「何か言えない事情があるのか」

 

 彼女は吾輩から目を逸らすように俯きながら、首を縦に振る。なるほど、気持ちは分からんでもない。出会ったばかりで信用できない奴に秘密を明かす奴はいないし、ましてや喋る猫なんて怪しいです!って言ってるようなものだ。吾輩なら魔物達との内通を疑う。

 

 それに今にも怒られて泣き出しそうな子供みたいに体を震わせていれば詰める気も失せる。散々、あの国で怖い思いをしてきたはずだ。余裕がある吾輩が嘘を笑って許すくらいの度量がなくてどうする。

 

「なら、聞かん。吾輩も言えないことはあるしな」

「…………よろしいのですか?」

「ああ。だってそうだろう? 主が何者かは分からないが、少なくとも魔族の味方ではあるまい。そこで寝ているアルチナは帝国1の剣の使い手だ。敵なら殺しておけばいいのに、助ける奴はいないだろ」

「あなたを、信用させるためかもしれませんよ?」

「なら、吾輩の見る目が曇っていただけだ。責任は吾輩にある」

 

 そしたら、アルチナを叩き起こして彼女だけでも逃すが。白兵戦が出来る魔女は貴重なのだ。特にアルチナは戦い方が魔法剣士とか、そっちの方に近いからな。いると楽なんだ。屋内戦とか。

 

 吾輩の言葉に怒気がないのを察したのか、彼女は足を崩して立ち上がる。幾分か、気持ちは持ち直したようだが、釘だけは刺しておこう。

 

「だから、嘘はつくな。信用は減るものだからな。吾輩も主の事は質問はしない。主も吾輩が何故アルチナを知っているかなどは質問するな。お互いに腹の探り合いは抜きにして、共通の目的であるアルチナを治すことに専念だ? よいな?」

「ええ、ええ! 必ずややり遂げてみせますとも! まずは食糧からです、うおりゃあああああああああ!」

「声がデカい! バレるし、起きるだろうが!!」

「………………っ、なん、だ?」

 

 気合いの雄叫びを上げて、釣りを始めた後ろで瞼に閉ざされていた青紫の瞳がこちらを見ている。まだ視線が定まっていない。防衛反応か、危機察知か、目を覚ましただけでも大したものだ。

 

「気にするな、地底湖の妖精だ」

「ようせい………? おはぎではなく………?」

「それ、吾輩を見て言ったか? 吾輩、彼岸に食べるアレに見えるのか?」

「おはぎのようせいって、しゃべるのかい……?」

「今も疲れてるだろ? そのまま寝てしまえ」

「はじめまして、おねえさんは、あるちな………年は27………」

「寝ろ」

 

 完全に支離滅裂な発言しかしないアルチナの瞼を肉球でゆっくりと下ろしていく。近くで見ると酷い傷だ。右目があった場所には暗闇が広がっており、顔には横一文字に傷がついている。

 

 右腕は肩から先がなく、まだ脚があるだけマシだが………二刀流の剣士である彼女から片腕を奪ってしまえば、戦力は半分以下になるのも仕方ない。

 

 だが、彼女がまだ27であるならば部下達が………粘体生物に乗っ取られ、アルチナが全てを斬り殺す。そんな悲惨な事件まで時間がある。

 それまでに、彼女に芸術魔法──『彫刻』を覚えさせなくてはならない。残り、5年か………お釣りが来るレベルだ。

 

 吾輩は猫である。かつては、クロ。今はキミリア。

 これより、アルチナの看病を始めよう。必ずや主も部下達とこんな戦場から生還できるようにしてやる。約束だ。

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