吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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日間ランキング7位に復帰したので連続投稿です。
モルガナ編より長くなりそうだわ、アルチナ編。


有能な奴から死んでいくの勘弁してくれ

 吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。久しぶりの再会に吾輩、年甲斐もなくテンションが上がっている。

 窓から飛び降りた吾輩を受け止めた2人は存分に撫でまくると、追いついて来たリリィに連れられて、女騎士達の詰所で詳しく話を聞く事にした。

 

「よくこんな所まで来たな、主ら! どれ、お小遣いをやろう!」

「「わーい!!」」

「完全に親戚のおっさんじゃねえか………アタシらにも紹介しろよ、おはぎ」

「おう、そうだった。この子達は吾輩が以前いた村の子達でな。パトリシアとロンだ」

「パトリシアです! 気軽にパティって呼んでください!」

「僕はロンです。2人で『黒猫の宅急便』って言う商人してます。って言っても幼馴染のアトリエに間借りしてる見習い商人ですが」

「気になる物や欲しいものがあれば何でもござれ! モナが作った特別な道具は私達から直接買えますよ!」

「元気だなぁ………団長にその元気分けてやりてーよ」

 

 あははは、と愛想笑いするロンに宣伝するパトリシア。どうも2人でモルガナが作った道具を売っているようだ。モルガナのアトリエに間借りしてるという事は3人で仲良くやっているのだろう。

 これが、吾輩が命を懸けた結果なら懸けた甲斐があるというものだ。猫の命で人生が変わるなら安い買い物である。

 

「しかし、主らは良く吾輩がここにいるって分かったな? そもそも言っては何だが吾輩は確かに死んでた筈だ。だから手紙を残したんだしな」

「ああ、それはね………ロン、説明よろしくぅ!」

「ええっ!? 僕がするの!? えっと、その………気を悪くしないで欲しいんだけど、その、『金食い虫』って名前の商品使ったでしょ? 猫でもつけられるような小さなポーチ」

「あれか。今も吾輩つけてるぞ。愛用してる」

「それに入れた金貨は全部モナの結婚資………隠し財産に行くんだよね」

「は?」

「しかも、国庫の金貨とか不味い金を入れられた時用にどこで何枚入れたかまで分かるようになってて………ほら、クロの金貨って純度が凄いでしょ? そんな金貨を大量に用意かつ、帝国の戦場の最前線から来てたから彼女が勘付いて僕らを派遣したってとこ」

「モナは帝国には入れないし、クロ、若しくはそれに関係する人物がいなかった場合は私らはアルチナって人の助けになるようにって言われてもいるしね」

 

 目を逸らしながら語るロンに吾輩は驚きを隠せない。このポーチにそんな機能がある事やそれだけで理解して吾輩がいるかもと推測したモルガナの慧眼に感心する他ない。

 ただ、これがモルガナのGPSだと考えると………吾輩が生きてるかもしれない事前提の道具を作った彼女の執念が怖い。娘からの愛がデカくて、吾輩びっくり。

 

「という訳なので、アルチナさん及びその関係者はお集まりください! 我らの黒猫宅急便の商品説明を始めさせていただきます!」

「みなさん、戦場の最前線で食事に困ったことはありませんか? 不味い携帯食料? 新鮮な食材? ノンノンノン! そんな事より、これを買え!」

「何か急に寸劇始まったぞ、おはぎ」

「黙って聞くんだ、リリィ。吾輩の娘の努力の結果が見れるんだぞ!」

「お前、もしかして親バカだったりする?」

 

 失礼な。親としては子供の頑張りを見たいのは当然だろう。吾輩が会ってない1年で何処まで成長したのだろうか。スピンオフ通りに錬金術師になった時はびっくりしたが、それもまた運命なんだろう。

 

「こちら、ただの宝石じゃありません。水を吸い上げた上で綺麗にしてくれる『浄水石』! 嵩張らず、尚且つ一個小隊の5日分の水を蓄える事が出来ます!」

「そして、水があるなら食べ物も! こっちは水を垂らすだけで食べ物になる『乾燥食』! こちらに水を垂らすと〜」

「何とびっくり、パンになります! 戦場でふわふわのパンが食べられるのはこれだけ! その他、肉や魚に野菜もありますよ〜!」

「他にも洗浄剤に傷薬、解毒剤もお付けして〜! お値段、金貨15枚! 金貨15枚です! どうですか? お買い得ですよ〜!」

「おはぎ! あれ買って!! なあなあ! 傷薬は他にもあるか!? 後は甘いものも!」

「玩具を欲しがる子供みたいだ」

 

 途中から目をキラキラさせて前のめりになっていたリリィに、詰所の扉の隙間から見覚えのある女騎士2人とその仲間達が顔を覗かせているのを見ても、彼らはがっちり心を掴んだらしい。

 

「なあなあ、買ってくれよ〜!!」

「分かった分かった。ほれ、金貨15枚だ」

「毎度あり! しかし、お客さんお金持ってますね〜良ければこちらなどいかがです?」

 

 ドヤ顔のパトリシアから差し出されたのは、彼女の掌くらいの球体。表面はつるつるで穴もなく、何かしらのスイッチもない。だが、モルガナが作った道具だ。かなり便利な代物なんだろう。

 

「こちらは『不思議な箱庭』。これを地中に埋めると、何と家が作れるんです! モルガナの建築魔法の賜物で、中身は吹き抜けの台所と居住空間に寝室になってます!」

「買ったぁ!! 言い値で払ってやる! いくらだ!?」

「2つ合わせて金貨70枚!の所を60枚にまけておきます!」

「安い買い物だ、馬鹿め!!」

「「毎度あり!!」」

 

 うおお、唸れ吾輩のチート能力! 行けっ、じゃらじゃら金貨で奴らの財布を満たすのだ!

 うちの娘が賢くて本当に可愛い。吾輩が必要としてるものだけ用意してるとか。神か? 女神か? それとも魔女か?

 

「なあ、本気でアンタらうちと契約しねえか? 帝国だから支払いに難はあるけど、おはぎがいるなら信用性はある筈だ。むしろ、こんな道具が金貨15枚で買えるなんて安いにも程があんだろ。倍でも払うわ」

「構いませんが………帝国には内緒にしていただけると」

「訳アリか? まあ、うちだしな。いいぜ、アタシ達はアンタらの事は打ち明けねえよ。困ったことがあれば何でも言いな。見たところ、護衛もいないみたいだし」

「いや、いるにはいるんですよ………ただ魔物だと勘違いされないように仕舞ってあるだけなんで」

「なので、大丈夫! あっ、そうだ! 良かったら穴を掘る許可貰えないですか? 私達もさっきの道具で宿代うかしてるので!」

「おう、いいぜ。せっかくだ。隊長もその家に避難させよう。このままだと司令官からの夜襲が起きても対応できねーからな。隊長を頼むぞ、お前ら」

 

 リリィの指示に音もなく、扉から覗いていた騎士達が消えた。こいつら、実力は確かなくせにアルチナ大好き集団なのがな。それさえなければ手放しで喜べるんだが。

 

 まあいい。吾輩達も早速準備をしよう。詰所の別の部屋、大量の剣………の残骸が放置された片隅に石畳が捲れて土が見える。どうやらそこに埋めるようだが、ロンがそれよりも武器に視線が行っている。

 

「あの、この剣って」

「ああ。アタシらが来る前の騎士達が使ってた武器の手入れ部屋なんだが、手順書や引き継ぎ書も無しに壊れたり錆びた武器だけ放置していきやがってな。こんなんでも剣には変わりはないから、使えるもんは使うようにしてんだ。今はおはぎのおかげで大分マシになったがな」

「………僕で良ければ手入れしましょうか? この位なら村でもやってましたし、宿代代わりにしましょうか?」

「本当か!? なら、この鎧とかの手直しも!?」

「あまり難しい構造や複雑なものはダメですね。男性騎士達がつけているのは特に。ですが、皆様でしたら今よりはマシにできますよ。道具も持って来てますので」

「ふふん、ロンは村では鍛治師の息子だったからね! 今はアトリエでモナが適当に作った素材で遊んでばかりだけど!」

「なぜお前が誇らしげなんだ、パトリシア」

 

 しかし、そういえばそうだったな。ロンは鍛治屋の跡取りでまだ子供の頃から鍛治場でよく手伝っていたっけ。いつの間にか、1人で武具を修理出来るとは………子供の成長は早いものだ。

 

「おはぎ! 何しみじみしてんだ。早くこいよ! この部屋すげえぞ!」

 

 感慨深く頷いていると、既にリリィが家を土の中に埋めていたらしい。見れば土があった場所に地下へ降りる為の梯子らしきものがつけられているじゃないか。

 

「こういう秘密基地要素は幾つになってもワクワクするな!」

「分かるよ。僕もいつも使う時、ワクワクしてるし」

「そんじゃ行ってくる。女騎士達がアルチナを運んで来たら吾輩達はここにいると伝えてくれるか?」

「うん。任せて」

 

 武具と向き合うロンを残し、地下の梯子を降りていけばそこには何処か懐かしい空間が広がっていた。

 白で統一された部屋には、確かに話に聞いていた通り、台所に居住空間と寝室が合わさったいわば現代的なワンルームが広がっていた。

 

 内装がほぼ、独身男性の部屋と変わり無いのが凄い。建築を極めると、現代に寄っていくのだろうか?

 いや、吾輩が寝物語に語った話が原因かもしれん。吾輩の昔の話とかから着想を得たのかも。

 

 とはいえ、新築の匂いと別の匂いが漂っているが借主のずさんな性格を表すように、部屋のそこら中に服が脱ぎ散らかしてあるのはどうなんだ。おい。

 

「パトリシア。これお前の服だろ。というか吾輩が買った家を埋めたんじゃなかったのか?」

「ごめんごめん。説明してなかったね。この家は並べて埋めると隣と連結するんだ。アルチナさんの避難部屋は赤の扉の向こうだよー!」

 

 あからさまに生活感溢れる部屋を通り過ぎ………通り過ぎ………どうしよう吾輩、ベッドに枕が2つ並んでる事やこの匂いに突っ込んだ方が良いのだろうか?

 

「おはぎ………あの子らってその………」

「待ってくれ。吾輩も子供だと思ってた子らが、大人の階段登ってた事に驚きを隠せないんだ。まだ15歳だろうに………」

「いや、15歳はもう大人の仲間入りじゃねえかな? それより、防音大丈夫かアタシ心配だよ」

「主の場合、防音がしっかりしていたらアルチナと情事に耽りそうで怖いわ」

「おはぎ、幾らアタシでも弱ってる隊長相手にそんな事しねーよ。アタシを何だと思ってんだ」

「淑女と言う名の変態騎士」

「分かってんじゃねーか。褒めても何も出ねーぜ」

「吾輩の伝達力も落ちたものだな。三分の一も伝わってなさそうだ」

 

 避難部屋を開ければ、こちらも間取りは同じでパリッとした清潔なベッドやソファに机と生活に必要なものは一式あるようだった。台所とかは後でパトリシアに使い方を聞くとしよう。

 

「基本的には主と吾輩が彼女の面倒を見る形になるか? 主には大変かもしれないが吾輩がなるべく面倒を見て………」

「なあ、おはぎ。アンタに頼みがある。隊長の世話はアンタと………あの子達にさせてやれねーか?」

「………理由を聞こうか、リリィ」

 

 騎士然とした態度で、問いかける彼女に吾輩も知らずに背筋が伸びる。吾輩、猫背だからな。

 

「隊長が壊れたのは少なからず、アタシらも関係してるとは思うんだ。そりゃアタシらは隊長が大好きだけどよ………それが重荷になるくらいならアタシらは死んだ方がマシだ」

「そうしたら、残されたアルチナはどんな気持ちになるか分かって言ってるのか?」

 

 砦の乗っ取られた者たちを斬り殺し、全員分の墓を作り、墓の前でただひたすらに自問自答を繰り返す墓守になるのだ。モルガナが来るまで砦に近づく魔物達も殺しながら。

 

 彼女達は変態だ。それでも、そこまで自分を追い詰める程にアルチナの中では大事な仲間だった。それはスピンオフだろうと、この現実だろうと違いなんてある訳がない。

 

「主らがアルチナが大好きなように、アルチナにとっても主らはかけがえのない仲間の筈だろう? じゃなきゃ、わざわざスライムから逃げるために殿なんて務めるか?」

「………それは」

「顔を合わせない事でゆっくり休んでほしいというなら、その願い聞いておこう。主らにやれない事は吾輩がやる。吾輩ができない事は主らがやれ」

「アタシらに出来ること………」

「砦を守り、アーシュラ達を助けにいく準備は主らにしか出来ん。だから、備えるんだ。吾輩達と主らで彼女が戻ってくるその日まで」

「──ああ、分かった。悪いな、弱音なんか吐いちまって」

「気にするな。弱音を吐くのは人間の証だろ」

 

 リリィは両頬を思いっきり叩くと、部屋から詰所へ戻っていく。その顔に最早迷いはない。それよりもアルチナの方が問題だ。

 彼女の心が折れたのはスピンオフの墓守でも同じだった。そこから立ち直る事が出来たのはモルガナの身の上話のおかげだったから。

 

 彼女がここには来れない以上、吾輩が代わりに語るしかない──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。それじゃあ、我が娘の恩人を助けるとしよう。これが親としての吾輩からの恩返しだ。

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