吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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後、3話くらいでアルチナ編終了予定。
そしたら、wiki風小説書いたりして、ロジェ編に入ります。
アンケート作ってみたので回答ください


いい人は怒らせてはならない

 吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。アルチナが原点を思い出し、今一度耐え忍んだ1年が今日漸く終わる。

 そして、吾輩の目の前ではアルチナが二振りの剣を鞘に納めたところだった………死屍累々のリリィ達を尻目に。

 

「どうだ右腕と右目の調子は」

「問題ないとも、おはぎ先生。見ていてくれたかい? お姉さんの剣技」

「目にも止まらないとはああいう事なんだなと、吾輩思った」

 

 息すら切らさず、寧ろ漸く準備運動が終わったとばかりに佇むアルチナは吾輩を抱き抱え、うりうりと顔を撫でまくる。やめるんだ、吾輩の毛並みがぼさぼさに!

 

「でも、まだズレがあるね。後は戦いの中で調整するさ」

「嘘だろ?? アレで?」

「10人倒すのに、体感15分はかかりすぎだからねえ。全盛期なら7分くらいだもの」

 

 余りにも実力が桁違いすぎる。どうやら魔法を駆使して、10人がかりで挑むリリィ達に対して2振りの剣だけで魔法を切り裂き、踏み込み、全員峰打ちで仕留めた………らしい。いやもう、瞬きしたら既に別の相手を倒してるような奴に何と言えと。

 

 それにしても、以前までの彼女はスピンオフ時代の研がれた刃のような雰囲気だったが、吾輩に頬擦りしてる今の彼女は大分柔らかくなったと思う。部下達も生き残ってるし、いい傾向だ。これならば、復讐鬼にはなるまい。

 

「作戦の方は大丈夫か? 砦に攻め入る理由が必要だろう?」

「問題ないよ。リリィ、説明。………いつまでへばってるんだい?」

「ま、まって………たいちょー………いきが、息がまだ………」

「そんな体力じゃあ、お姉さんと同衾は夢の話だねえ。まぁいいか。お姉さんから先生に説明してあげる」

「参謀になったり、先生になったり、吾輩忙しいな」

 

 しかし、サジェスを圧倒してたリリィがこうもズタボロにされるとは、吾輩が設定したとはいえ予想より強くないか?? 想定してた計画より前倒しになってるはずなのに。

 

「こーら、先生? ちゃんと聞いてたかい?」

「ああ、すまん………何だっけか」

「悪い子だ。そんな子にはもう一回説明してあげる。あの司令官は手柄が上がる事と女の子相手にしか腰が上がらない。だから、餌を垂らす。『繁栄の砦には誘拐された()()()()()()()()()()()()女の子と金が山ほどある』ってね」

「………なるほど、女性達は真実だが、今まで吾輩が用意した金貨は砦から持ち出されたものだと説明したのか。上司への偽装報告だな。斬首ものじゃないか?」

「先生。戦場で士官が死ぬ理由の1つに()()()()()()ってのがあってねえ。彼は勇敢に名誉の死を遂げるよ。きっと、多分」

 

 吾輩、怖すぎて何も言えない。ちょっと聞いたこと後悔した。それに対する反対意見が上がらないのも怖い。息が上がってるから? 絶対それだけじゃないって。

 

「んじゃ、明後日は予定通りアタシが先導で女性達を解放する。デイジーとピーチは避難経路の確保。カメリアは男騎士の相手を頼む」

「男騎士達は正面突破に誘導でいいんだよね? その間に副隊長が裏から侵入して女性達を助ける」

「ああ。男達が対峙戦力なんて把握してるとは思えねー。全力出して疲弊してきた所を殺されんのが関の山だろ。でも、新兵は助けてやれ。アタシらの活躍を帝国に報告する人間もいるしな」

 

 だって騎士団の皆様は、普通に座り込んで明日について話してますもの。さらっと男達囮にするって話も聞こえたし、口封じついでに自分達に都合のいい証言させようとしてない?

 

「因みにだが………今からでも男騎士達を助ける方向は?」

「お姉さんが、リリィと結婚するくらいないわねえ」

「嘘でしょ、隊長!?」

「さて、とりあえず訓練はここまで。後は明日、各自体を休めて明後日に備えるように。では解散」

 

 脳が破壊されたように顔が溶けたリリィはさておき、吾輩の毛皮をモフりながら帰っていく騎士達を見送り、吾輩らも詰所に設置した入口を降りる。そこはもう吾輩達の部屋しかない。パティとロンは半年前に帰還したからだ。

 

 1年の間に吾輩の定位置になったクッションの上に座れば、アルチナも鎧を脱いで下着同然の姿に。吾輩が何度はしたないと言っても態度を変えないので言うのも諦めた。

 

「最後まで彼らには世話になったねえ。お姉さんなんて、こんないい双剣頂いちゃったし。彼らにお礼を言わないと」

「『異国』と『鏡国』の事か。そうだな。また会えたなら礼を言っておくといい」

 

 2振りの直剣はスピンオフで吾輩が設定したアルチナの専用武器。この世界ではモルガナとロンの合作のようだ。金と銀で彩られた見た目的にも美しいが、頑丈さに斬れ味は折り紙付きの代物。

 

 戦争が激化する前にと、売上達成した2人は帰ろうとした………吾輩を捕まえて。朝起きたら、ケージに閉じ込められていたのだ。危うく、金貨でケージを無理矢理破壊するとこだった。

 

『悪く思わないで………っ! モナに連れて帰れ!って言われてるから!』

『特別ボーナスが出るんだ、許して欲しい………っ!』

『吾輩が無限に金を産める事、ひょっとして忘れてらっしゃる?』

 

 割と切迫した2人にモルガナはどんな詰め方をしたのやら、幼馴染を顎で使うなんてまた会った時にはお説教をせねばなるまい。とりあえず2人には穏便に交渉した。山吹色の金貨疾走(100枚)で。

 

 吾輩、このままモルガナの元に帰るわけにはいかないのだ。騎士達と顔を繋げられたおかげで帝国に入れるかもしれないのだから。

 

「アルチナ、主はこの戦いが終わったらどうするつもりだ?」

「そうだねえ。幾ら作戦が上手くいっても、男達に犠牲が出た以上、お姉さんは騎士団会議で吊し上げられるんじゃないかなぁ。功績で帳消しか、帝国追放になれば御の字かなぁ」

「そうか………もしそうなるなら、主に頼みたいことがある。吾輩を連れて、帝国の人間家畜牧場に連れて行ってほしい。買いたい奴がいるんだ」

「………先生も雄だったんだねえ」

「その失望した目をやめろ!! 違うわ! 吾輩の魔法の候補者がそこにいるんだ!!」

 

 名前はロジェスティラ・ルノワール。今だと、大体9歳くらいか? 人間家畜牧場で誕生した生まれながらの家畜にして人間だ。

 

「ロジェスティラ・ルノワール………もしかして、あのルノワール一族の生き残り?」

「何だ、知ってたのか。そうだ、帝国の悪徳貴族や上層部から富を盗み、貧困者や領民達に配っていた義賊の末裔にして、一族きっての天才だよ」

 

 何せ、12歳の時にたった1人で家畜牧場から多数の家畜を逃し、自分自身も帝国から脱走。加えて、生活の為に侵入した館にいたモルガナの魔法を見ただけで逆算し、不完全ながらもその場で芸術魔法を使うなど才能の原石だ。

 

 でも、和菓子で股を開いたじゃないかって?

 原作者曰く内気で慎重、物静かでボーイッシュな女の子ってエロい事に興味津々で押せばやれるらしいから………吾輩とてもそうとは思えぬが。

 

「その子を何とかして手に入れたら、王国にいるモルガナを頼ろう。あの子は優しい子だ。吾輩を家族としてきっと迎えてくれる筈だからな。上手くいけば吾輩死なずに合流できる」

「家族にしてはやけにじっとりした情念を感じるのはお姉さんだけかい?」

「ははは、まさかそんなわけないだろう。モルガナが異種姦好きなわけでもあるまい」

 

 きっと、アルチナの勘違いだ。まだ実際の人物を見ていないからな。でも性格的な相性は悪くないからすぐに仲良くなれるだろう。

 その為にも明後日の戦い勝たなくてはならないな。

 

「おはぎ〜おはぎ先生〜話聞いてる?」

「ああ、すまん。聞いてなかった。で、何だ?」

「少なくとも相手側の拠点を潰す以上、強い奴は必ず出てくる。恐らくはサジェスって言うスライムだね。お姉さんと先生の作戦が上手くいけば私たち2人で対処できる筈だ」

「ああ。本来なら切削があれば問答無用で空間ごと断ち切って終わりだが、まだ覚えられてないから仕方あるまい。やれる事をやるまでだ」

 

 話も終わり、吾輩がクッションをふみふみして体を横たえた後、なぜか吾輩の体が宙に浮く。見ればアルチナが手拭いを片手に吾輩の体を持っていたからだ。

 

「こーら。汚い体で寝ちゃダメだろう? さあ、お姉さんとシャワー浴びよっかぁ。この部屋、好きなだけ水が使えるのも助かるよねえ」

「吾輩、雄なんだが? 恥じらいはないのか?」

「看病の際に好きなだけお姉さんの体を見たじゃないか。それに、おはぎ先生になら見られても構わないからねえ」

 

 それはそれで心外だなと言う言葉は心に秘めておく事にした。吾輩、今は猫だし、男と思われなくても仕方ない。人間だった頃が男らしい姿だったとも言えないしな。

 

 余談だが吾輩紳士だから基本は目を瞑っていたのだが、それをいい事に彼女に吾輩の体は弄ばれた。もうお婿さんにはいけないかもしれん。

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。それでも、彼女の精神安定剤になれたならそれでいいのだ。

 

 

 

 

「──おはよう、諸君。朝から集まってくれてありがとう」

 

 そして、その日はやってきた。

 

 人間と魔族を妨げる峡谷を抜けて、その騎士は剣を抜き地平線の彼方を指し示す。その青く紫がかった瞳に映るのは、助けるべき者たちがいる魔族の砦だ。

 

「さて、今この瞬間から私がこの組織の指揮を執る。皆は私に従ってもらいたい」

「ふ、ふざけるなぁ!! 余にこんな真似をしておいて! 帝国に楯突いて! 貴様、生きていられると思っているのか!!」

 

 この場にのこのこと女奴隷と天幕を持ち込んだ愚かな司令官は既に縄で拘束されており、彼を筆頭に男達から反対の声が多数上がる。

 彼女はただ、困った風に眉を顰めると、司令官に向き直る。

 

「困ったねえ………そうだ! 司令官殿、貴方に聞きたいことが」

「ふざけるな、小娘! 余を早く解放せぬか! さもなくば、貴様は家畜牧場に送り込んでやる! そこの部下達も全員だ! 貴様らが家畜となり、豚のように鼻を鳴らしているのを見るのが楽しみだわい!」

「──どんな死に方が好みかな?」

「………は?」

「"死印天華『一分咲き』──『斬白百合』"」

 

 それは誰にも悟らせなかった一撃。魔法が使えない無能な女と揶揄された、それでも騎士団長を名乗るに値する無慈悲の一刀。ゆっくりと落ちていく司令官の頭に騎士達の間に動揺が走る。

 

「流れ弾か? デイジー?」

「流れ剣じゃないっすかね、ピーチ」

「おはぎ参謀がいなくて良かった。リリィ副隊長も気が利くな」

 

 それを当然のように流す女騎士達に、ここまでが仕組まれていた流れだと分かり、男達はすぐさま背中を向けようとして足を止めた。彼女から発される殺気がどうなるかを教えてくれたから。

 

「君たちには2つの選択肢がある。敵前逃亡して、私に君たちを殺せる理由を与えるか。若しくは、果敢に敵に挑んで生き残るか。では、改めて聞こうか?」

 

 その女騎士………アルチナは、顔についた返り血を拭いながら見下すような目で選択を迫る。それが、もはや死中に活を見出すような答えしか残っていなくても。

 

「私に従う気はあるか? 帝国の屑ども」

 

 堪忍袋の緒が切れた彼女を前にして、今まで辛い事から逃げてきた結果に誰もがなす術なく頷く他なかったのだから。

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