吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
でもヤンデレも曇らせもないと思うんだけどなー。
別に目の前で恩猫が死ぬだけだしなー
アルチナ視点でモルガナとの対話になります。
「ってのが、先生に出会ってからの2年間だねえ。あ、パティ。クッキーのお代わりもらえるかしら?」
「お任せあれー!」
「私の幼馴染を顎で使わないで欲しいのだけど」
先生と出会ってから5年後、私はとある館の一室にいた。
その所在地は帝国から馬車で2週間かかる隣国『アルキミア王国』だ。人間が住む四大国の1つで、物作りが盛んな国として噂は聞いていた。
ここに来るまで色々なものを見た。夜だというのに、街全体が明るく、見れば火を使わない街灯や街道もぴっしりと揃えられた石畳で提供された馬車の揺れも小さい。おまけに馬車自体にも衝撃を吸収する機構があるのか長く乗っても疲れにくいなどだ。
聞けばこの街では、武器や防具は勿論。普段の生活に使う日用品や仕事の道具などに錬金術の要素が入っているとか。いわば錬金術師達が国をより良く大きくして来たというのだから、帝国とはまるで違う。
何しろ、帝国にも錬金術師はいたが彼らは皆、目が死んでいた。無茶な納期に足りない人員、工数削減費用削減と時間も金も減らされ、貴族の望むものができなければ打首とかいう始末だったのだから。
だけど、この国では目の色が違う。目的地を目指す途中、職人街を通って来たのだが、皆が目を輝かせながら何かを作っていたのだから。まあ、殴り合いもあったけど最後には固い握手してたし、まぁ大丈夫よね。
そして、そこを抜けると王城へ向かう大通り。そこに面する館が………先生が言っていたモルガナが住んでいるアトリエだ。
以前は、老いた錬金術師とその孫娘が住んでいたのだが孫娘が旅に出るとの事で弟子だったモルガナに管理を任せているらしい。
1階はモルガナが生み出した道具を売買する売り場で2階から上は経理などの事務作業場。3階はモルガナ自身の居住地になっているらしかった。因みにパティとロンも部屋を借りて住んでるとの事。
そして、私はそこの2階にある応接室でモルガナと話していた。最初はどんな女の子が来るかなんて思っていたのだけど………正直、ここまで美人になってるとは思わなかったわあ。
「話は分かりました。こちらとしても貴女達のような使える人材を逃すのは惜しい。それにクロの紹介なら雇う以外の選択肢はありません」
「本当? 良かったわぁ」
「部屋は足りないのでまた明日来てください。私の魔法で部屋数は増やしておきます」
月を編み込んだ銀髪は緩やかにウェーブがかかっていて、肩の位置で揃っているし、お姉さんの目より彩度が高い碧眼からは深い知性を漂わせてるわね。体付きもそこらの男なら涎を垂らすほど………これが16歳の出す美しさなのは詐欺じゃないかしら。
「まずは感謝を。あの日、貴女に見逃されていなければ、私はこうして生きていなかったのですから」
「いいわよ。それくらい。こちらこそ、お姉さん達を匿ってくれてありがとね」
「その話で聞きたいのですが………帝国の家畜牧場行きになったのは本当の話なのですか?」
頭を上げた彼女の目には少しの憐れみと多少の疑問が入り混じっているようだった。どうやらリリィ達から話は聞いてるようなので、先生と別れてからの3年間を語ろうかしら。
やはりというか、お姉さんはそのまま帝国に出頭命令が出たわ。砦を落とした報告と司令官が死亡した旨を伝えればこうもなるでしょう。
そして、そのまま流れるように幽閉されたわねえ。しかも、性犯罪者として捕まった男達の向かい側の牢屋に全身の服をひん剥かれた状態で。
その、パティちゃんは部屋から出てた方がいいんじゃないかしら? 今から聞くの、結構胸糞悪いわよ? もう寝ることにする? それが賢明ね。ロンくんによろしく。
で、話は逸れちゃったのだけど、そんな事をしてもお姉さんの精神にもう影響はないって言うのにねえ。どの道、あんな男達が無様に自分の剣を弄ってようが猿が発情してるなあくらいの感覚だもの。
そうねえ。その3日後くらいに騎士団裁判が始まったのよ。罪状は簡単に言えば『司令官を籠絡してから殺し、砦を落とした功績を盗もうとした』事だったわねえ。
うん。その眉間を押さえたくなる気持ちは分かるのだけれど、これも帝国の風習なのよねえ。女は男が必死になって築き上げた地位に何の努力もせずに乗っかるだけのお荷物。って言うね。
正直、否定できないところはあるのよ? 特に帝国の貴族令嬢はその傾向が強いもの。帝国の令嬢は武力や知力より、美貌が優遇されるわぁ。王国は実力主義な以上、皆様は努力してるかもしれないけど。
まあ、そんな感じで砦を落とした有能な司令官をお姉さんは体で誘惑して、首を刎ねたらしいわ。因みに砦は司令官が剣で全員倒したらしいわよ。一度も剣持った事ないのにねえ。天賦の才が覚醒したらしいわぁ。すごい凄い。
ん? ちゃんと調査はされていたのかって? されてるわよ。した上でお姉さんを処罰して、女性が上に立つのはあり得ないって国民に知らしめたいんでしょうねえ。
一応、裁判で助けてくれた新兵達も証言してくれたわ。
『キャロル隊長は司令官を誘惑し、戦場に天幕を持ち込んでひたすらやった後に剣で首を刎ねたんです!』
わお、お姉さんってそんなに脳内桃色に見えるのかしらぁ?
というわけで判決。死刑………と言いたいところを温情で家畜牧場行きになったわぁ。温情って何かしらねえ? 温い情って意味あるの? 因みにここまででおよそ1年ねえ。まだ2年あるわよお。
「………お茶のおかわりはいりますか?」
「あのアールグレイって奴を貰えるかしらぁ?」
ちょっとやつれたかしら? 16歳に聞かせる内容じゃないかもしれないのだけど、貴女はそこの後継なのだから話くらいは聞いておいた方がいいんじゃない? 自分はのんびりクロと暮らしたいだけ? 断言するけど、絶対に帝国が邪魔してくるわよお。
さてその後だけど、まず家畜牧場に行く前にナツメ商会に呼び出されたわねえ。どうも結果ありきの裁判だって事はわかっていたらしいわぁ。だから横槍を入れて事情聴取というわけね。
ほら、お姉さんっておはぎ先生にお願いして無限に金貨を稼いでいたじゃない? それがかなり商会の助けになったみたいでねえ。久しぶりに帝国の経済が安定して本人達も漸く休暇が取れるって泣いてたのよ。
お姉さんの記憶だと、いつか全員過労死するんじゃないかって思ってたし、そしたら帝国に1人末娘のティアちゃんだけ残っちゃうもの。
え? 急にどうしたの? 咳き込んで? 変なとこにお茶が入った? え? あの子、将来お姉さん達の仲間になるかもしれないのお?
ま、まあいいわ。話を続けるとお姉さんはかなり人らしく扱って貰えたわぁ。軟禁状態だったし、部屋に足枷つけられたままだったけど自由はあったもの。それに色々便宜図ってくれたしねえ。
………ここだけの話、ナツメ商会は帝国から亡命しようとしてるらしいわあ。やっぱり金銭の流れを読み切ってきた貴族は違うわねえ。直に経済崩壊するのがわかって逃げようとしてるのよ。
そこでお姉さん一肌脱いだの。拠点を移すならいい場所ありますよって。
ええ、貴女が知っている通り、パティとロンを紹介したわぁ。あの2人なら帝国に行き来しても問題ないし、このアトリエも名義は2人の店にしてるのよねえ? 貴女も普段はシュレディンガーって名乗ってるようだし。
貴女も知っている通り、ゆっくりと商会の拠点を王国に移そうとしてるわねえ。まだ時間はかかりそうだけど、抜けた日には帝国には大打撃よ。換金や外交担当者がいなくなるもの。慌てふためくのが楽しみだわぁ。
という流れで、お姉さんが先生を利用して稼いだお金で仕事の負荷が減った分、ゆっくりと移籍中らしいわねえ。貴女も何処かで顔つなぎする? お姉さんが仲介するわよお。
あ、そうそう。商会を通じてリリィ達が貴女達に連絡を取ったわよねえ。門前払いされたらどうしようって皆思ってたのよ。受け入れてくれて良かったわ。それに大量の道具や馬車とかも手配ありがとうね?
おかげで家畜牧場から脱出するのに役立ったわあ。
そうよ。ここまでで1年。後の残りはお姉さんが家畜牧場に連れて行かれてからの話になるわぁ。
ここからは帝国の闇に触れるから少し真面目に話すわね。
人間家畜牧場。これは帝国の繁栄の最重要拠点なの。表の目的は奴隷売買用よね。知性がなければ反抗する事もできない。買われた後は危険地帯で死ぬまで働かされるの。
次に犯罪者達の抑制もあるわ。帝国に仇なす者達は全員がここに送られて家畜のように扱われる。今までの生活から一転して落魄れる者達を見に貴族や令嬢が来るくらいだもの。
服すら着られず、浅ましく餌を貪り、首輪が繋がってる事に疑問を持たない獣達を嘲笑いにね。監視達も彼らを人間とは思わず、家畜として扱う畜生っぷり。だって家畜の顔の区別がつかないのよ? お姉さん達が家畜の豚や鶏が見分けられないみたいに。
因みに何回か、それを利用して脱獄した奴らがいるわ。方法? 知性なき獣の振りをして監視の目を盗み、普段ついてる首輪の鍵を盗んで貴族や令嬢が来た時に首輪を外すの。
さっきも言った通り、たまに令嬢が来るからそいつが1人になった瞬間に服を剥ぎ取って裸にして首輪に繋ぐ。そうすると、逃げ出した存在はいない事になるわ。喉を潰しておくと更にいいらしいわねえ。
………少し休憩する? 顔色がとても悪いわよ? ここまで来たからには最後まで聞くのね? 無理だったら早めにお願いしてね? ならさっさと結論だけ話すようにするわぁ。
家畜牧場、その裏の目的は──異界の魂を招き入れる事よ。
元々、帝国には何故か異界の人間を呼び出す為の魔法が残ってるのよ。それを使って異界の魂を招き入れるみたいねえ。その文化や知識で帝国はあそこまで大きくなってきたわぁ。
何故家畜牧場に使ってるかと言えば、見分けが簡単に付くかららしいわね。かなり前までは帝城に出入りできる貴族にだけ使っていたのだけど………どうも異界の住人は倫理観が非常に素晴らしいみたい。
貴族に転生した異界の魂はその権力を駆使して、帝国を真っ当な国に変えようとしたらしいわぁ。それを知って慌ててその異界の住人を処分したようねえ。
そして次に、転生した異界の住人達は転生がバレたら処刑されると思ったらしく最後まで姿を現さずに寿命で亡くなったの。そうなれば、異界の文化や知識で栄えてきた帝国は堕ちるだけ。
じゃあどうすればいいか? そうだ。最初から余計な知識や常識が入らない世界で育てればいいんだと馬鹿達は気付いたようね。
知性なき獣を集めて、異界の言語で『異界の住人だと分かれば贅沢させてやる』なんて、言えば理解出来る者はすぐにそれに飛びつくもの。
下手に優れた倫理観が裏目に出たわよねえ。ずっと周りで同じ筈の人間が家畜扱いされていたら逃げ出したくなるのが普通だもの。
お姉さんがまだ騎士団長だった頃はまだいなかったようだけど、もうすぐ生まれるんじゃないかしらぁ? そうなればまた帝国は勝手に栄える事でしょう。異界の知識によってねえ。
で? お姉さんの話よね。残りの1年はお姉さんそこで過ごしたわぁ。とは言っても首輪繋がれただけの家畜扱いだけどねえ。上から分厚いガラスの板で押されて強制的な四つん這い状態にされた中で、全裸のまま晒されるの。
男だろうと女だろうと関係なくねえ。外部から入れた奴らはこうやって精神を折るのよ。無駄な反抗を削ぐ為にねえ。
まあ、お姉さんの精神はかなり回復してたし、色々前向きだったから余裕だったわぁ。食事に発情剤入れられて襲われかけた時が1番危なかったけれども、死守したわ。他の子はまあ、うん。
で、そんな生活が半年くらい続いた後に別の牢屋に移動になったわ。そこは寝床用の藁と用を足す為の水が流れてる最悪の場所だったけれど………お姉さんは最高の出会いをしたわ。
そう、モルガナ………いえ、姫様にも紹介するわぁ。入って来なさい。ついでに手土産も持って来てねえ。
お姉さんの言葉に扉の外で待たせていた人物がゆっくり扉を開いた。入って来た人影は余りにも小さい。それは当然。まだ12歳で栄養失調気味なのだから仕方ない。
顔を隠すように深く帽子を被り、短く顎辺りでぼさぼさに揃った海を思わせる藍色の髪を覗かせる中、おどおどした態度で視線を向ける。
「あ、あの………は、初めまして………ぼ、ボクはロジェスティラ。ロジェスティラ・ルノワールです………よ、よろしくお願いします。それと………こちらがボクの宝物」
扉が閉じて、もう1人が入ってくる。姫様の目が大きく見開かれた。
彼は四つん這いで、てちてちと。黒い尻尾を振りながら、夜の毛皮を艶やかに見せて、テーブルの上に飛び乗り、どこか気まずそうに名乗りをあげた。
「吾輩は………猫である。名前はおはぎ、クラウン。そして──クロ、だ。その………久しぶりだな。モルガナ」
どうかな、姫様? これがお姉さんからの手土産だ。気に入って貰えたら嬉しいな。
救ってきた人物や行動が巡り巡って、再会の兆しになる………それってとても素敵なことじゃない?
次回からロジェ編スタートです。ちょっと1週間くらい時間ください。