吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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1週間の前に新章の最初だけ投稿するスタイル。
次は携帯の機種変更含めて金曜日予定。
多分、アルチナ編と同じかそれ以上になるかも


"色彩の魔女"ロジェスティラ編
とんでもないイージーモード


 吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。結局、アーシュラは助かったのだろうか。吾輩、とても心配だ。何せ、またもや無事に転生してしまったから情報は恐らく入ってこないだろう。

 

「………ぐがっ! 何だこの匂いは!」

 

 とんでもない悪臭に目を覚ませば、そこにはトタン造りの屋根や増改築が重ねられた木材とガラクタの“塊”が並んでいた。

 

 掃除されなくなって久しい雨水溝はゴミと土砂で埋没し、小路はゴミや汚物で完全に覆われている。どこもかしこも悪臭が充満していた。屎尿、汚物、不衛生な体臭や口臭、腐敗した何かの臭い。

 

 間違いない。ここ帝国の貧困層だ。吾輩が設定したより酷いが。

 

「………だめだ、鼻が曲がる」

 

 鼻で呼吸すれば慣れるとか聞いたことはあるが、その前に吾輩死ぬ。仕方ないので口呼吸で吾輩はてちてちと路地裏を抜けて、貧困層の通りへと向かう。

 

 路地裏から通りまではそう遠くはなかった。だけど、それだけの距離で多くの浮浪者を見た。幼児に近い子がゴミを漁り、還暦前の女性が僅かな金の為に、陰部を咥える。男達は集団で襲いかかり、他の奴らから金やボロ布の服や変な染みがついたパンツすら残さず持っていく。

 

 これが吾輩が描いた世界なのか?

 こんなものを吾輩は描きたかったのか?

 細部を決めた結果が、より鮮明な地獄を作り出したとしたら………

 

「まだふわふわしてた原作の方がマシだったのかもな………」

 

 弱音を残して、吾輩は帝国の中心部へ向かう。

 

 帝国、本来は『シュヴァリエ帝国』と呼ばれており、この国は中心に向かって貧困層、技術層、富裕層に分かれている。帝国の領域全てを巨大な壁で囲い、同心円状に3種の壁がある。

 モルガナが育った近郊の森は貧困層より更に外側にあり、富裕層の真ん中にある帝城から直通の抜け道が存在。かつて、皇妃が抜け出す為に使った秘密の通路が今でも残っている、と言う設定。

 

 家畜牧場は、帝国の貧困層の中心部近くに存在する為、吾輩はさっさと移動しているのだ。まずは中に入らねばならないが、家畜牧場もぼろぼろだ。あんな所に民の血税使うくらいなら、懐に入れる富裕層がいるからだが。

 

 しかし、やはりというか家畜牧場近くまで来ると衛兵が多い。下っ端騎士なのだが、何せ脱走者が多い。ぼろぼろだから抜け道は幾らでもあるし、家畜だからと飼育員は舐めてる奴らが多いから。

 

「早く妾を通せと言うておる! 此度の日を楽しみにしてたのだぞ! 早く無様な獣達を見せよ。そして、妾に安心を覚えさせるのじゃ!」

 

 それに、帝国の富裕層での暮らししか知らないご令嬢も来るのだ。吾輩、今は別の建物の屋根から家畜牧場を見下ろしているが見覚えのある貴族令嬢が入っていった。

 

 彼女こそがロジェスティラにとっての救世主である。

 

 ロジェスティラ、愛称ロジェはルノワール一族の生き残りだ。本人達が代々受け継ぎ、研鑽して来た『ルノワールの秘伝書』なる盗みのテクニックを彼女は12歳までに全てマスターしたのだ。

 

 そんな彼女の性格は気弱で内向的、他の女性が人語を喋れない家畜だった事もあり、中性的な喋り方をするのだが………その才能はモルガナに並ぶと言ってもいい。

 

 下品な言い方にはなるが、ロジェは初潮を迎えた翌月には首輪に繋がれる事が決まっていたのだが、その前からボロ布を顔に巻きつける奇行を始めるのだ。

 

 その後、首輪に繋がれたロジェは覚えた盗みのテクで首輪の鍵を外し、令嬢が来た時を狙って脱出。令嬢を気絶させて、ボロ布を巻きつけた後に首輪を繋ぎ、喉を潰す。

 

 そして、令嬢の服を着て扇子で顔を隠しながら、正門から堂々と出ていった。因みに入れ替わった令嬢は公爵令嬢だったのだが、ティア編後にいなかったことにされた事が判明する。

 

 なので、吾輩がやる事は実はそんなにない。強いて言えば、脱出路を確保しておく事だ。最悪、帝国から近郊の森にさえ逃げ込めば、モルガナが育った村で体を休める事はできるだろう。

 

 そこからゆっくり、王国を目指せばいい。路銀はたっぷりある。

 そうと決まれば吾輩の食事を探さねば。最悪は吾輩もゴミ漁りをせねばなるまい。

 

「ん? 黒猫だ………珍しいな、帝国で見かけるのは」

「本当ですね。帝国だと嫌われてますもんね、黒猫」

 

 ふと、背後から声がして猫っぽく振り返れば2人の女性がいた。しかし、貧困層の住民にしては着ている黒の衣類などに汚れはない。どころか清潔感に溢れている。さっきの令嬢の護衛だろうか?

 

 彼女達は吾輩がいた地点にうつ伏せになると、1人は双眼鏡を取り出し家畜牧場を観察しだす。もう1人は吾輩の顎下を撫で始めた。ついでに何かくれたら吾輩嬉しい。

 

「猫ちゃん、何かたべるー?」

「あんまり遊ぶなよ、リコリス。私達の任務を忘れるな」

「はいはい。カメリアは余裕がないなあ。おはぎ参謀をよく吸ってた癖に」

 

 聞き覚えのある名前に吾輩の猫耳がピンと立つ。顎下を撫でられながら、記憶を遡ればすぐに出て来た。服や印象が変わっていてわからなかったが、この2人はアルチナの部下だ。

 

「なーお」

「悪いな子猫ちゃん。今は大事な任務中なんだ。あっちに行っててくれ」

「いや、吾輩も混ぜてくれ。ロジェの救出に手が欲しい」

「「………………ッ!?!?! 猫が喋った!?」」

「馬鹿! 声がでかい!」

 

 咄嗟に身を隠す2人に吾輩は屋根の上からにゃーと鳴けば、下にいる家畜牧場の衛兵は舌打ちをして興味をなくす。そのまま身を引いた2人に近づけば、戸惑っているようだ。

 

「え………その、おはぎ参謀? ですか?」

 

 カメリアの方から、おずおずと問いかけてきたので吾輩も頷き、尻尾を揺らしながら、堂々と答えた。

 

「そうだ。カメリア。よく吾輩の後頭部や腹に顔を埋めていたな。リコリスも元気そうだな? デイジーやピーチ、リリィも無事か?」

「〜〜っ!! おはぎ参謀生きてたんだね!」

 

 突進してきたリコリスの抱擁にタップするが、逆に締め上げられてしまう。頼む、助けて! このままだと吾輩ミンチになっちゃう!

 カメリア! 涙ぐむ気持ちは分かるが、助けて! やばい、吾輩の肋骨がミシミシ言ってる!

 

「………驚きました。まさか本当に生き返るとは。という事はつまり、貴方の狙いもロジェスティラ・ルノワールですか?」

「ああ。主らもか? ロジェの為にアルチナから指示を受けたんだろう? 共有と行こう。今、アルチナは何をしてる?」

 

 何とか腕から脱出し、カメリアと情報共有に入る。吾輩が死んでからどれくらい経っているとか、帝国の情勢が吾輩の想定通りなら良い。

 しかし、現実は軽く吾輩の予想を超えてきた。

 

「まず隊長は家畜牧場行きになりました。現在はガラス部屋で畜生ごっこしてます」

「は?」

「我らは隊長からの指示で全責任を押し付けるように言われており、泣く泣く責任を押し付けて、我ら10人は執行猶予付きで解放され、行動しています。今はナツメ商会と手を組み、大規模な脱走計画が進行中です」

「え!?」

「最後におはぎ参謀が死んでから、既に3年が経過してます。その間にナツメ商会を通じてモルガナ様とは連絡を取り、協定を結びました」

「待て待て待て! もう吾輩やる事なくないか!?」

 

 神妙な顔のカメリアから持たらされた情報に吾輩は背中に宇宙を背負う。ええ………吾輩が知らない間に大分話が進んでるぅ。いや、優秀なアルチナとその仲間達のおかげにしておこう。生きててくれてよかったよ。本当に。

 

「しかし、そうなると吾輩のやる事はほとんどなさそうだな」

「いえ。そうでもありません。おはぎ参謀がいてくれるなら、隊長や要救助対象のロジェと接触して欲しいのです」

「ほら、私らって帝国にいた頃から家畜牧場の警備をさせられていたせいで内部構造は頭に入ってるけどさ。猶予付きの隊長の部下達が接触するわけには行かないじゃん? それで計画勘付かれても嫌だし」

「リコリスの言う通りです。あの建物は酷く損傷しており、猫程度なら様々な場所から入り込める筈です。なので、私達の伝書鳩ならぬ伝書猫をしていただきたい。頼めますか?」

 

 確かにカメリアの考える通り、吾輩なら様々な抜け穴から屋内に入ることは可能だ。それに事前にここまで準備が進んでいるならロジェの警戒も解いておかないと、アルチナ達を敵と勘違いして逃げ出すかもしれん。

 

「分かった。その頼み引き受けよう。ついでに栄養あるものを差し入れておきたい。吾輩のポーチはまだあるか?」

「それならリコリスが回収していた筈です」

「持ってるよー! まさかお守りにしてたポーチが役に立つとは。あ、ついでに私達のポーチに金貨入れといて。色々、物資補充するから」

「その程度ならお安い御用だ。そらっ」

 

 金貨を宙から生み出し、彼女達のポーチにじゃらじゃら入れた後、吾輩は腰にポーチをつけてもらう。ついでに金貨も大量に入れておけば、モルガナも吾輩の再誕に気づくだろう。

 

「では、頼みます。ポーチには3日分の食料が入ってますのでまずはそちらを提供ください。それと隊長の剣も入れてあります。脱獄時に渡せば、それだけで全て済む筈です」

「全部切り裂くから実質マスターキーみたいな話だな、それ。まぁいい。では行ってくる。落ち合う場所はここでいいか?」

「お願いします。次はローズとブロッサムのコンビが来る予定なので、彼女たちにも話は通しておきます」

「了解した。じゃあ、抜かりなく頼む」

 

 吾輩は暗闇に紛れて、屋根から壁傳いに降りていく。そのまま見張りの死角に入りながら建物の裏側へ侵入すると、煉瓦が崩れて小動物なら入れそうな穴が開いてるのを発見。ここを侵入路とする!

 

 脳内でミッション・インポッシブルのテーマを流しながら内部へ侵入。こちら、黒猫。敵アジトに潜入した。情報求む。と、脳内メタルギアごっこはここまでにするが、内部はかなり酷い。

 

 壁はほとんどが崩れかけており、普通の人間が見れば脱出し放題ぐらいに管理ができていない。家畜達に開けられないようにしてある鉄扉は赤錆が浮いてるし、石壁には落書きがある。

 

 内部は古びた廃病院、しかもホラー映画のような不気味さが漂っていて、壁にかけられたランタンなどいつ消えてもおかしくはない。

 管理人達が仕事する区画のみ綺麗にされている筈だから、ここらは家畜牧場エリアなのは間違いないだろう。

 

 とりあえず吾輩は耳と気配を研ぎ澄まし、人がいそうな方へ向かってみる。暫く歩けば、曲がり角の先から獣のような唸り声がしたので壁際に張り付きつつ、顔だけ覗かせれば、

 

「覚悟はしてたが………実物はきついな」

 

そこはまるで罪人を閉じ込める地下牢だった。真ん中を通路とすれば、左右の壁には鉄格子が嵌められた檻がずらりと並んでいる。だが中にいるのは罪人ではない。

 

「ぴぃゆあや!! ふんぎょらや、さみゅらか!!」

「ぎぃやややややあ!! かんぎょらあつああああ!!」

 

 獣が、いた。衣類は何も身につけられず、鉄格子をばんばん叩いたり、舐めてみたりする動物や、何も考えずに交尾を繰り返す畜生もいた。吾輩が通路を走っても彼らは手を叩くくらいの反応しかせず、吾輩を食べたいのか馬鹿みたいに手を伸ばす奴らもいた。

 

「………すまん」

 

 誰も助けて欲しいとは言わなかった。言えなかったが、正しいか。彼らにはこの檻が世界であり、自分達が飼い主と同じ人間だとは思えないのだ。それを踏まえた上で、吾輩はただ走り抜けるしかなかった。

 

 原作だけならふわふわとした設定で、突っ込めたかもしれない。例えば家畜ごっこしてるだけとか。でも吾輩が煮詰めて詳細を明らかにしたせいでこうなってしまったのだとしたら、

 

「吾輩は………あの作品を描いて良かったのか?」

 

 ふと、過ってしまう。吾輩はただ地獄までの道を丁寧に作り上げてしまっただけではないのかと。駄作と呼ばれようとふわふわした作品の方が彼らには幸せだったのじゃないかって。

 

「ダメだな。1人だと、余計なことまで考えちまう」

 

 さっさとロジェを見つけねば、吾輩自身が潰れてしまいそうだ。けれど、見つからん。まさかもう運ばれたか!? だとすると作戦まで時間がない。逃げられるのはいい事だが、足取りが掴めなくなるのは勘弁………ん?

 

「ぷりぷりゃー! ぷりぷりゃー!」

「ぷりゃりゃー! ぷりゃりゃー!」

「………………」

 

 吾輩、とある牢の前で腰を下ろし、目元をぐりぐりと解す。どうやら転生したばかりでまだ視界が虚ろらしい。ぼろ布を顔に巻いた2人が両手を上げて上下に飛び跳ねてるのだが、とても見覚えがある。

 

 小さな方は布の隙間から藍色の髪が見えており、小さな体で飛び跳ねる度に天井にまで手が届くほどの跳躍力。

 大きな方は服を着てないが故に、豊かな胸元を飛び跳ねる度に揺らしながら、紫の髪を振り乱している。

 

 見覚えしかない………こいつら、ロジェとアルチナじゃねえかな? 

 つまり、そう言うことだな?

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。ふふ、つまりはこの吾輩とダンスバトルで勝負だな! 見せてやろう、吾輩のダンス。ネット上で話題になった猫ミームのダンスをな!




猫ミームのダンスはへいへいゆーゆーの奴が好き
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