吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
後はどう展開して行くかですね………因みに今日は2話投稿です。
次は18時投稿になります
吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。何故かダンスバトルが開始してた為、吾輩も混じって踊る事にした。へいへいゆーゆー!
「ぷりぷりゃー! ぷりぷり………っ!? 猫!?」
どうやら漸く気づいたらしく、アルチナであろう人物が吾輩の踊りを見て絶句した。それを見て、ロジェらしき人物もびっくりしたが気にせず不思議な踊りをしている。仕方ないね、誤魔化すには狂気が必要だもんね。
「驚いた………こんなとこにまで猫ちゃんは来るんだねぇ。おいで」
誘われたので吾輩、てくてくと鉄格子に頭を突っ込み、中へと侵入すれば、ボロ布を外して下から少し窶れてるが綺麗な顔のアルチナが現れた。
彼女は吾輩の顎下を撫でながらゆっくりと胸許に抱え込み、頬擦りする。服を着てない分、アルチナの体温が直に伝わってくるな。吾輩、人間だったらとてもやばかったかもしれない。
看病時代に彼女自身が筋肉ばかりで女性らしくないと言っていたが、無駄なくついた筋肉という土台に確かな女性の柔らかさが載っており、アスリートとグラビアのいいとこどりと言っても過言ではないのだ。
正直言って、吾輩ここに住みたい。吾輩、歳上の巨乳お姉さんに甘やかされる人生が良かったのだ。決して、尻を叩くツンデレしっかり者の歳下ではなく。
「ふふっ、いい毛並みしてるねえ。誰かの飼い猫かな? ポーチもついてるし。でも帝国だと黒猫は『邪神の使い』って呼ばれて不吉呼ばわりされてる筈なんだけどねえ」
何だそれ、吾輩初耳だ。スピンオフ作品にもそんな設定載せた覚えはない。というかこの世界の神様って吾輩が知る限り、1人しかいない筈だ。何しろ、原作者からの指定だったからな。
やはり、吾輩が知らない設定や展開は当然か。この世界は作品ではないし、1つの世界なのだから。それはそれとして、猫らしくふみふみ。すげえ、しっかりとした弾力の下に確かな筋肉を感じる………!
「ロジェちゃん。理解できないかもだけど、お姉さんはね………黒猫の先生がいたんだ」
「ぷぎゃぎゃー! ぷぎゃぎゃー!」
「あり得ないって思うかい? うん、お姉さんも初めて出会った時はそうだったよ。でも、恩人で──好きだったんだ。どうしようもなく」
………やばい。完全に正体を明かすタイミングを見失った。え、アルチナ吾輩の事が好きだったの?? でも、吾輩は猫だよ??
「ぷりゃりゃー? ぷりゃりゃー!」
「初恋………って奴だったのかもしれない。こんな歳になって、今更気づくなんて遅すぎるよねえ。何せ、帝国の男子は女性を処理道具くらいにしか思ってないもの。そんな中で、彼は誰よりも素敵な男性だった」
これ吾輩知ってる。漫画とかでよく見た、ヒロインが語る大好きオーラが主人公にバレてる話だ。とても不味い。吾輩の転生が最速で終わってしまうかもしれん。
何か誤魔化す方法はないか!? くそっ! こんな事ならポーチつけてこなきゃ良かった! そしたら何食わぬ顔でもう1回顔出せたのに! 吾輩、どんな顔してればいいんだ!
「1番辛い時に一緒にいてくれた。お姉さんが理想を守れる為の腕と目をまた与えてくれた。お姉さんの人生には意味があったと教えてくれた………そんな元人間の黒猫を好きにならないわけがないよねえ?」
「ぷ、ぷりゃりゃー! ぷりゃりゃー!」
すっげえ。聞いてる吾輩が悶えたくなりそうなほど、素敵な笑顔で惚気て来やがる。ロジェも一瞬、演技崩れそうになっただろ。
「なのに………お姉さんは彼を斬った。無辜の民達が傷つく可能性と、恩人を天秤にかけて。今でも夢に見るんだ。彼を斬った感触が手から消えなくて飛び起きる」
「………………」
そ、そんな風に重たく考えなくていいんだぞ? ほら、吾輩ピンピンしてるし、何度だって生き返るんだから笑ってくれよ。ほら、なっ?
ロジェ、真面目に聞き入って演技するの止まってるぞ!? やめろよ、このままだとひたすらに空気が重くなる!
「それを何度も繰り返して、気づいた。お姉さんは彼が好きだったんだって。死んでほしくなかったんだって………どうして、彼がまだ生きてる間に『愛してる』と言えなかったんだろうって」
「………それは」
や、やめてくれ! 泣かないでくれ! 吾輩の心がキュッってなる! 吾輩そんなお前たちを悲しませるために死んだわけじゃないのに! あと、ロジェ普通に喋るな! バレるぞ!
「また会えるって約束してもう3年が経つ。彼は次はキミの元に現れるって言ってたけど………未だに姿を見せてくれないんだ。もしまた会えたら、今度はちゃんと言いたいことがあるのに」
「アル姉………その、言いづらいんだけど」
万感の思いを込めて話を区切ったアルチナに、もはや演技をする事をやめたロジェがおずおずと切り出す。というかもう、アル姉呼びなのな。知らぬ間に仲良くなってて吾輩嬉しい。
「その………抱えてる黒猫が、その人じゃないの?」
「ははっ、まさか。お姉さんがここにいる事を彼は知らない。現れるとしたら、脱獄の日だよ」
「でも、さっきからその猫ちゃん。アル姉の告白に妙に反応してたけど」
思わぬ指摘に体が硬直。そして、その硬直が伝わったのかアルチナはゆっくり顔を下すとそのまま吾輩をがっしりと抱え込み、ポーチの中身を漁り出した。暫く漁り、ゆっくりと愛剣2振りをポーチから引き抜き、彼女もまた硬直した。
「………………」
「………………」
「あの、アル姉と………猫ちゃん?」
吾輩の目と目が合うと、ゆっくり剣を戻しながら吾輩を床に置き、一回牢屋を壁沿いにぐるっと周り、大きく天を仰いだ後に、彼女は膝をつき、吾輩の手を握った。
「先生、人間に戻ったらお姉さんと結婚してくれませんか?」
「開き直るなぁ!!」
吾輩、全力の猫パンチをお見舞いした。
アルチナは凄く嬉しそうだった。
閑話休題。
「さて、色々あったが話を戻そう。久しぶりだな、アルチナ。元気そうで何よりだ………なぜ、そんなに遠いんだ?」
「え!? いや、その………お姉さん、ここに入れられてから人間的尊厳ない生活ばかりでその、ねえ?」
「ああ、なるほど。なら、これを使え………と言いたいが、ある意味そちらの方が脱獄には役立つか」
「そ、そうだねぇ。お姉さん我慢するよ、うん………」
「ボ、ボクの部屋でいちゃいちゃするのやめてくれないかなぁ………」
しまった。アルチナの色気にやられて、ロジェの陰が強まりつつある。空気を変えねばなるまい。吾輩が出来る猫である事を証明するんだ。
「初めまして、ロジェスティラ・ルノワール。吾輩の名前は………いっぱいあってな」
「イッパイアッテナ? 変な名前だね」
「ああ、いや違う。全員が好きに名前つけていくからな。今はクロ、キミリア、おはぎのどれかで呼ばれてる。主も好きに呼ぶといい」
「い、今はとりあえずいいや。それで? ボ、ボクに何か?」
「そう怯えなくていい。吾輩は主らの味方だ。訳あって、主の力が必要なんだ。帝国を揺るがした義賊の末裔『ルノワールの生き残り』よ」
「………………ボクには、その名前はふさわしくないよ」
やはりまだ内向的というか、陰気なのは否めないか。幾ら、自分が帝国の富裕層を怯え上がらせた義賊の末裔だとしてもこんな人間の尊厳もない場所で育てば自尊心など育つわけもない。
であるなら、この短期間で自尊心を育てるしかない。つまりは吾輩が魔法を教えればいい。何せ、ロジェはスピンオフではモルガナの館に侵入し、アルチナと戦ってる最中に芸術魔法を不完全ながら使用できた才能の原石なのだから。
だから、吾輩は優しく言う。主は凄いんだよと。
「そう自分を卑下するな。ロジェスティラ。主には特別な力が──」
「だって、アル姉に教わった魔法も習得に3日もかかったし………秘伝書の技も全部習得したけど練度もいまいちだし………」
「お主やはり天才か??」
前言撤回。それで主はどうして自信が持てないんだ??
アルチナを見てみろ。自分は1年もかかったのに、3日で覚えられた事にしょっぱい顔をしてるじゃないか。
「て、天才って大した事じゃないよ………ボクの魔法だって『色彩感覚を実体化する』だけだもん。色が見えない相手には不利だし、アル姉の魔法は全部切り裂くんでしょ? それに比べたら………」
「アルチナ。吾輩の予想以上に才能ないか?」
「お姉さんの人生でここまで教え甲斐のある子はいなかったって言っておくわねえ。理論と実践の同調率が凄いのかしら?」
「才能に性格がついてこれていないな………まあ吾輩のせいか」
地味に凄い事だが、ロジェの設定はなんと原作者がほとんど考えていたものだ。他にはティアもそうか。お気に入りはちゃんと考えていたらしい。
しかし、それが原作で有効に活用される事はまずなかった。ロジェには元々『吸血鬼の血を継ぐ義賊』なんて設定があったのだが、最初から和菓子で股を開くので彼女が義賊をする姿は一度もない。
ファン達はその設定を見て、捕まえてからのおしおきHは!? わからせHがないのはおかしいだろ!って叫んだ。ぶっちゃけ、そのシチュは同人や二次創作の方がしっかりしてるからそっち見てくれ。
性格が内向的で流されやすいのも原作者がきっちり決めていたところで、実体験を元にしたリアルな設定のようだ。その場合、ロジェがかなりのビッチになるのだが?
「だが、このままの性格だと不味いぞ、アルチナ」
「分かるよ。これだけの才能だ、精神が安定すればとんでもない戦力になる。私としても出来るだけ自信をつけさせたい」
それもそうだが、吾輩の不味さは次元を超えてる。ロジェはその自信の無さから他人の指示に従ってしまいがちで、原作主人公に流されまくった結果、
「そうだな。ロジェスティラ。主の叶えたい夢とかはあるか?」
「ゆ、夢? 強いて言えば………一族の復興、かな?」
「なら、もう少し自分に自信を持て。主が今代のルノワールの当主なんだからな」
彼女は──人格を排泄され、空の肉体は蟲や触手の苗床になるのだから。
「む、無理だよ、そんなの………ボク程度が当主だなんて」
彼女はおどおどした態度を隠さない。確かに今の彼女では当主だなんて言われても到底納得出来ないだろう。では、どうするべきか。成功体験を積ませていくしかない。一歩ずつ、少しずつ。
「なら、積み重ねていこう。主の自信を、その土台を。主が胸を張ってルノワールの当主だと言えるように。段階を刻んで成長していこう。まずは第一歩だ。吾輩達と共にここから逃げないか?」
「逃げ………本当に? た、確かにここの警備は数も質も悪いから逃げ出すのは簡単だと思うけど」
「そこで、無理だとは言わないのねぇ。逃げられる自信はあるってわけ?」
アルチナの当然すぎる問いかけ。そうなのだ。ロジェは気弱ではあるが実力評価自体は間違っていない。人をよく見ている。よほど目がいいのだろう。真に価値あるものだけ見分けて奪っていく義賊としての血か。
「………ボクだけなら。でも、先代達はきっと牧場の全てを解放する筈。手際良く、誰にも気付かれずに。だから、ボクはダメなんだ。ボクはまだ相応しくない」
なのに、自己評価に関しては瞳が曇る。亡くなった先代達と比べて自己嫌悪に陥る。偉大な先達の光に目が眩み、自分の輝きが目に入らないのだ。
率直に言おう。ロジェスティラはルノワール一族にとっての最高傑作だ。と、言っても彼女は信じない。むしろ、冗談だと思うはず。
だから、彼女を磨き上げる必要がある。類稀な才能の宝石を。
「ロジェスティラ。それは誇りこそすれ、蔑むものじゃない。何故なら、主はまだ始まっていないからだ。その才能を振るう場に、輝かせる舞台に」
「そうねぇ。ならちょうどいいわねえ。今から、存分にその才能を振るう機会が来るわ。そこで初めて自分を測ってみなさい。自分がどれだけ出来るか、どれだけの立ち位置にいるのかを。客観的にね?」
「う………ボクに出来ると思う?」
「吾輩の使命に懸けて」
信頼の眼差しを逸らす事なく、ロジェに向ければ彼女は視線を宙に泳がせた後、ゆっくりと頷いた。どうやら腹は決まったらしい。
であるなら、吾輩達は歓迎しよう。新たな魔女の生誕に。
吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。楽しむといい、ロジェ。この脱獄は主が世界に認められる為の試金石だ。