吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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書き溜め2話投稿!! もうこれでストックはゼロだぜ!
というわけでまた通常通りに戻ります。1週間に3話は投稿したい。


自分の欲に素直になれ

 吾輩は猫である。名前はクロ、キミリア、おはぎ。現在、吾輩達は腹拵えをしている。やはりというか、この家畜牧場は餌という名の残飯ばかりらしい。富裕層が出した残飯を貪るしかここで生きる術は無い。

 

「まあ、吾輩がいたらそうはならんがな」

 

 いでよ、新鮮な食材達! 魔女達の腹を満たすのだ!

 ふははは! 3日分の食料だ! 暫くは持つだろう! 

 存分に英気を養ってくれ!

 

「って吾輩、思ってた時期がありました」

「あ、あの………まだおかわりありますか?」

「ロジェちゃん………結構食べるのねぇ」

 

 その小さな体の何処に入って行くのか。まるで吸い込まれるかのようにポーチに入っていた料理たちが彼女の胃に収まっていく。

 確かに、ロジェの設定には『小柄だが大食い』なんて設定があったが実際に見るとかなり現実離れした光景だ。

 

 アルチナの驚きの声も当然で、まるでハムスターのように頬を膨らませながら食べる姿には愛らしさを感じるが、この簡素で小さな牢屋の床を満たすほどの食料を食べ切る胃袋の強靭さに吾輩びっくり。

 

「すげえ………3日分の食料食べ切ったぞ」

「お姉さんもそれなりに食べる方だけど………ロジェちゃん体に影響はない?」

「だ、大丈夫。まだ腹半分くらいだから! それにこんなに美味しいご飯、初めて食べたし、まだまだ入るよ!」

「残念ながらもうないんだ、すまんな」

「えっ………」

 

 すまんって、吾輩もロジェの食いしん坊っぷりを舐めてた。こうなったらローズ達に頼んで食料倍にしてもらうしかないか?

 いや、あんまり増やしすぎると帝国から何か疑われそうだ。普段より多めの食料を購入するとか、誰かを匿ってると思われかねん。

 

 だから、そんなこの世の全てに絶望した顔をやめてくれ。主のその顔は原作プレイした吾輩の傷を抉るのだ。蛞蝓、ネトネト、でんでんむしむし、吾輩そのせいで納豆やオクラなんかのネバネバが食えなくなったからな。

 

 そんなことは置いといて、吾輩は慰めるように彼女の手に肉球を乗せる。思い出すなぁ。吾輩も焼肉屋でご飯大を完食できなくなり、弟子やアシスタント達に好きなだけ食べろと肉焼いていたっけ。

 

 担当編集共々、歳下に美味いもの食わせたい欲が湧いて来たのも大体その頃だ。そして、今もロジェやアルチナには美味いものをたくさん食わせてやりたい気持ちがある。

 

「また明日、今度は大量に持ってきてやる。ついでに作戦決行日もな。それまで、2人とも達者でな。風邪引くなよ」

「………もう行くのかい? お姉さんともう少し一緒にいてくれない?」

「名残惜しいお誘いだが、脱獄したら受けるとするよ」

「また会える? 何処かに消えたりしないかい?」

「しないって。吾輩黙って消えたことはないだろう?」

「目の前で死んだことはあるけどねぇ」

 

 ちょっぴり皮肉混じりな言葉とジト目に吾輩返せる言葉もない。何せ、こう………ここまで思われてしまってるのが伝わって来た以上、彼女の目の前で吾輩死んだのは相当きつかった筈だ。

 

 好きな人に目の前で死なれるほど、堪えるものはないのだから。吾輩も大きく息を吐いて、アルチナをまっすぐ見て頭を下げた。

 

「………悪かったよ。主には埋め合わせをする」

「今、何でもって言った?」

「一言も言ってない」

「じゃあ、お姉さんとデートしよっかぁ。それで許してあげる」

「………分かったよ。吾輩でよければ付き合おう。ではまたな」

「お、大人だ………大人の関係だ………」

 

 ロジェのアワアワしてる姿はともかく、アルチナの寂しげな顔に少しぐらっと来たが、吾輩何とか耐えて元の穴から脱出。日が昇る前の菫色の空の下、ローズ達と待ち合わせの建物の屋根へ急ぐ。

 

 人から好意を寄せられるとはむず痒いものだ。あまり経験がないとはいえ、それでも確かにあった懐かしい記憶に身を委ねたくなる。まあ、吾輩にそんな暇はないのだが。

 

 屋根まで戻れば、2人の女性が地図を広げてあーでもない、こーでもないと頭を悩ませている。私服だから雰囲気は違うが、確かローズとブロッサムの筈だ。

 

 吾輩がにゃーと鳴くと、2人はこちらを振り向き、朝日に照らされた吾輩を見て、片膝をついた。ホワイ? 何故吾輩に敬意を示すような真似を!?

 

「「お久しぶりです。我らが参謀。我ら姉妹、ご帰還をお待ちしていました。何か必要なものはございますか?」」

「一旦、楽な姿勢を取らないか? 主らもそのままではきついだろ」

「「ハッ! 有難きお言葉」」

 

 最前線にいた頃はこんな子じゃなかった筈なんだけどなぁ。いやまあ、最前線で常に気を張り続けていたのだからあの時とは人格や纏う空気が変わるのは当然か。

 

「とりあえず久しぶりだな。2人とも。後は………ジャスミンとマーガレットか。あの2人は相変わらず仲いいのか?」

「「いつ子供ができてもおかしくはないかと」」

「その場合、どっちが父親になるんだろうな」

 

 吾輩の質問に息ぴったりで返す姉妹に少しの微笑ましさを覚えつつも返ってきた内容に何とも言えない顔になる。あの2人も変わらんな、悪い意味で。

 

 リリィ副隊長と最も気が合ってた2人を思い返すが、百合百合しい光景しか印象に残ってない。というか全部上書きされてる………再会した時にまともな彼女達をインプットしよう。そうしよう。

 

 ひとまず、ローズ達と情報共有を行いつつ、物資を受け取る。食料を1週間分受け取ってナツメ商会経由で仕入れた回復薬を受け取る。こちらもモルガナ作であり、今回の作戦の為に有金叩いて購入してくれたものらしかった。

 

「「こちらはとある人が目の前で死んだ後悔を元に作られた薬だそうです」」

「………そっか」

「「なので、ちゃんと使ってくださいね。決して、家畜や奴隷を優先しないように」」

「善処するし、前向きに検討する」

 

 とろりとした、薄緑の液体。体には悪そうだが、有り難くいただくとしよう。これでロジェやアルチナが傷ついても治してやれる。吾輩はとりあえず後回しだ。生き返ることが可能なのはわかったしな。

 

 薄らと2人から非難めいた視線が刺さってる気がしたが、吾輩努めて無視する。自分が助かろうとして、目の前で大切な人らに死なれる方が吾輩凄く嫌なのだ。吾輩も我儘くらい言わせてほしい。

 

「それで、決行日はいつだ? なるべく早い方がいいのだが」

「明後日になります。何故なら、皇帝の後継11歳の誕生日で国を挙げてのお祝いだからです」

「その為、事前に後継を狙う犯行予告を出していました。故にお祝い中は警備は富裕層を中心に集まります。貧困層はほぼ見習いだけになるかと」

「脱出手段も既にジャスミンとマーガレットが手配済みです。アルチナ団長には百合の花の模様が刻まれた馬車に乗るようにお伝えください。それがあの方が住む王国への道筋になります」

「「他の家畜達には囮になってもらい、その隙に逃げ出しましょう」」

「了解した。アルチナ達にも伝えよう」

 

 そうと決まれば、夜まで待つとしよう。吾輩、なんだかんだで一睡もしてないしな。吾輩が日陰で体を丸くしようとすると、2人は柔らかな布を取り出し、簡単な寝床を作る。

 

「そこまでしてくれなくてもいいんだが………」

「「私たちがやりたいことなのでお気になさらず。それに小さな事でいいから、あの戦場から逃げられた事の恩を返させてください」」

「吾輩、何もやっていないがな。主らの力だろう? 良かったな」

 

 それはそれとして、せっかく準備してくれたのだから吾輩は寝床を使うとしよう。肌触りも柔らかく、ふにふにと顔を埋めてしまうくらいにはふかふかだ。これなら気持ちのいい睡眠が………

 

「──て、起きてください。おはぎ参謀」

「もうじき夜中です。伝達をお願いします」

「………………寝過ごしたか?」

 

 やっべえ………まじで焦った。具体的に言えば、大事な打ち合わせの集合5分前に起きた感覚だ。デートの当日でもいい。一気に全身に血が回り、眠気が吹っ飛ぶあの感じ。デイジーとピーチの顔を見て久しぶりに思い出した、遅刻という恐怖を。

 

「久しぶりだな。デイジーとピーチ。随分と顔色が………肌艶に髪色も良くなってないか?」

「わかりますか? いえ、ナツメ商会から流れてくる道具がとても素晴らしくてですね。お給金の7割が消えました。なのでお金ください。もう、芋生活は嫌なんです………!!」

「吾輩、無駄遣いした奴にくれてやる金はないと思ってる。とはいえ、再会だし、起こしてくれたからな。銀貨5枚は恵んでやろう」

「そうやって甘やかすとまたつけあがるので程々にしてください」

 

 涙を流し、感謝するデイジーを冷ややかな目で眺めるがモルガナの新製品による無駄遣いと考えるとちょっぴり責任を感じなくもない。多分、吾輩の寝物語内容を律儀に再現したんだろうからな。こんな効果出せるって事は。

 

 そんなやりとりをした後、吾輩はさっさとアルチナ達の下へ向かう。昨日の穴を抜けて、あの牢屋のエリアを無心で走り抜けておかしな2人組が奇声を上げながら踊っている牢屋を目指す。

 

 昨日とは違い、監視の目を気にしながら目的地へ向かうがやはりそこまで目を光らせているわけではないようだ。巡回は1時間に1回くらい、それも欠伸しながらの気の抜けた循環である。

 

 ランタンで照らしてはいるが、わざわざ部屋の隅や牢屋の中まで覗く気はないらしい。見たところ40代くらいのおっさんが2〜3人順繰りに回るらしい。後ろを足音立てずについていくと、

 

「………露骨すぎるだろ」

 

 あからさまに廊下の綺麗さが変わった。先程までは瓦礫や雨漏り、崩壊などが当然だった有様なのに床は綺麗に鏡面のような仕上げが施され、壁も荒れてるどころか落書きすらない。天井には光り輝くランタンが吊るされ、ここのエリアだけ昼間のようだ。

 

「おい、帰ったぞ。さっさと代われ」

「チッ、仕方ねえな」

 

 曲がり角を曲がり、ドアノブを回す音に扉を開く音が聞こえたので吾輩は扉の死角へ入り込み、外に出て行くおっさんを見送る。そのまま部屋に入ればバレるのは確実だが、幸い中の状況が分かるように窓が据えつけられているのでちょっぴり顔をのぞかせると、

 

「………どちらが獣なんだか、わかりやしないな」

 

 おっさん達がたくさんの女の家畜を乗り回していた。後ろから突いたり、自分の腰の上に乗せたりととても楽しそうである。プロレスごっこでもしてるのだろう。大の大人が仕事を放って情けない。

 

 獣だ、なんだと言う割にはこうやって欲の発散しているのはおかしいと思わないのだろうか。まだ男同士の欲の解消は嗜みである!くらいの男気は持ってほしい。吾輩は全力で遠慮するが。

 

 とりあえず内部の大まかな監視事情も分かったので、ロジェ達の部屋へと進む。相変わらずぷりゃりゃーと声を出しているが、中を覗けばロジェしかいない。アルチナは何処に行ったのか。

 

「ロジェスティラ。アルチナの奴は何処だ?」

「ぷりゃりゃー………あ、アル姉はまだ帰ってきてないよ。もうすぐ獣部屋から帰ってくると思う………多分」

「そうか。なら待たせて貰おう。吾輩、角の隅で暗闇に紛れておくからな。無理に話さず、狂った振りをしておけ」

 

 ロジェだけとは少し悪いことをしたな。彼女は人見知りなのだから、訳のわからない猫と同じ空間になどいたくないだろう。

 人との会話が苦手な奴にとって同じ空間に他人がいるのは結構なプレッシャーになるのだ。何か話さなければならないだとか、気を遣わなくていいかなとか。

 

 ロジェはそういうのに耐えられないタイプなので、基本は1人行動を好み、スピンオフでもその傾向だった。余談だが、そのせいで和菓子無血開城事件に繋がったのではないかと、考察勢は言ってたが吾輩そこまでは考えておらぬ。

 

「………………」

「………………」

「………………………」

「………………………あの」

 

 沈黙に耐えられなかったのか、ロジェが恐る恐る口を開く。別に吾輩、いきなり怒鳴ったり、舐めた口を聞いたりはしないのだからそこまでビビらなくてもいいのだが。

 

「お腹空いたか? 今回は大量の食材を持って来たぞ。1週間分あるから流石に満足できるだろう。あ、おはぎだけはアルチナのだから食べちゃダメだからな」

「あ、ありがとう………じゃなくて。う、えと、その、黒猫さんは何でボクまで助けようとしてるの? だって、ボクは、貴方達とは関係ない訳だし」

「そうだな………色々と理由はあるが、主を仲間に引き入れたいってのが主な目的になるか」

「な、仲間………?」

「ああ。吾輩には使命があってな。娘が迎える最悪な未来をなんとしても避けたい。その為には優れた仲間がいる。主も吾輩が見定めたその1人だ」

 

 主も救うべき対象だとまでは言わない。あんな苗床で終わる人生の終着なんて聞いてしまえば、精神的に弱い彼女の事だ。そんな事になるくらいなら………と自殺しかねない。

 吾輩は魔女達には笑っていてほしいのだ。自分が蒔いた種ならば、悲劇の花は自分で摘み取り、何も知らずに彼女達には幸せを享受してほしい。

 

「それに主の人生がここで終わるのは余りにももったいない。外の世界はもっと色んなもので溢れてる。吾輩だって世界を知ってるわけじゃないが、こんな灰色のカビ臭い部屋が世界の全てじゃない事は分かるつもりだ」

「で、でも………帝国がこんなんだよ? 他の国もそうじゃないって保証はないよね? それでも貴方はボクにこの地下牢を出てほしいの?」

「その言葉振りだと、自分は脱獄はどちらでもいいと聞こえるが?」

 

 ロジェは黙って頷く。まあ、予想はしてた。今の段階の彼女は自分で道を選ぶという自主性が弱いのだ。脱獄したのも必要に迫られたと、脱獄出来そうな状況が揃っていたからと、場に流されて逃げ出したのだから。強い信念が無くても成功させるのが彼女の怖いところだが。

 

「であるなら、吾輩の助言は1つだ──自分で決めろ」

「ッ!? 待ってよ! ボクが必要じゃないの!? だからアル姉と脱出しようって話なんじゃないの!?」

「だとしても、主はこれから先に何か外の世界で辛い事があったら吾輩達のせいにするのか? 吾輩が逃げようと誘ったから、アルチナが逃げたからとか」

「そ、それは………」

「選択肢を前に他人と相談するなとは言わん。だが、決めるのは主だ。主の選択が主の人生を彩っていくんだ。外の世界へ飛び出す事──"自由"とはそういう事だ」

 

 ロジェはスピンオフでは成長系主人公の属性を持たせていた。足掻き、悶え、間違えて、それでも何かを少しずつ積み重ねていく。言われた事さえ従っていればいい家畜から自分で未来を切り開く人間になる為に。

 

 ロジェにとって自由と選択は大事な事だ。これから王国で待ち構える事件に彼女はその意味を身をもって知る事になるのだから。甘やかしてばかりじゃいられない。

 

「ポーチは預けておく。アルチナに武器と食料を渡しておいてくれ」

「え、ポーチはどうするの? 取りに来ないの?」

「主が決めろ。脱獄するなら返しに来い。そうでないなら、そのままくれてやる。暫く考えてみろ。主にとっては大事な事だ。脱獄は明後日の夜。それまでに決めるといい」

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、キミリア。伝える事は伝えたから吾輩は撤退しよう。厳しいかもしれないが、彼女なら乗り越えられると吾輩は知っている。だから、頑張れ。ロジェスティラ。




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