吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、キミリア。現在、大ピンチである。貞操の危機である。
モルガナに抱きしめられたまま逃げられずに連行されたのは、とある一室。室内から良い香りが吾輩を出迎え、モルガナは何も気にすることなく入っていく。恐らくは彼女の自室なのだろう。
かなり広い部屋だ。恐らくは3LDKの広さを全て居住スペースにした感じ。デカすぎるワンルームみたいな感じと言ってもいい。流石に風呂とトイレは別のようだが………いや、風呂場も相当でかいな。
他にも映画でしか見ないような天蓋付きのベッドが鎮座してたり、大きな窓の近くには整理されたキラキラと光るガラス瓶や調合道具らしきものが置かれた机など、彼女がどんな生活をして来たか感じられる。
少なくとも、部屋を汚くしたままとか錬金用具が散らばってるとかはないようだ。まあモルガナも子供ではないし、当然か。
さて、じゃあ娘の様子も確認できたし、吾輩そろそろお暇………やめて、そんな悲しそうな目で見ないで。分かったわかった。何がしたいんだ?
「一緒にお風呂に入りましょう」
「アウトだ、バカ!!」
「何故ですか? 家族とお風呂に入ることは何も不思議なことではありません。私としてもクロに見せて恥ずかしい所は何1つありませんので」
「こいつ、なんて澄んだ目で堂々と………!」
「因みにですが、この部屋には『私と朝を迎えるまで出られない(黒猫限定)』ルールがありますので貴方に選択肢はありません。というわけで一緒にお風呂に入りましょう。反論は聞きません」
吾輩の意見はガン無視で、連れて行かれるお風呂場はとても広く、モノづくりの国だけあって磨りガラスなんかもしっかり作ってある。
うんうん、いやあ素晴らしいなぁ。吾輩の後ろで誰かが服を脱ぐような布ずれ音が聞こえなかったらじっくり見たいんだがなぁ!
「おや、クロどうかしましたか? 目を瞑るなんて」
「吾輩、紳士だからな。嫁入り前の娘の体はなるべく見ないようにしたい」
「そうですか………じゃあ今から風呂場に『私の体を30分以上見ないと出られない』ルールを付与しておきます」
「うおおお! 吾輩の気遣いが全力で無下にされるぅ!」
暴れても無駄だとばかりにモルガナの胸に抱き抱えられてしまう。すごい、張りがあって大きな水風船みたいな感触………くっそ、吾輩がおっぱい星人である事が情けない!!
大理石らしきもので作られた床に置かれて、扉を閉められ、もはや逃げ場はない。仕方なしに目を見開き、モルガナを見上げれば、彼女はバスタオル1つ巻き付けずに悠然と立っていた。
堂々とした佇まいから溢れる自信が形になったような均整の取れた肢体。先程の胸にしかり、腰のくびれから足のつま先まで一種の芸術品と言っても過言ではないだろう。
これはどちらかというと、エロいよりかは………ため息を漏らすような美しさだ。女性の裸体をモチーフにした彫刻をみてるような目の保養。
「ふふ、そこまで見つめられては些か私も恥ずかしいものです」
とはいえ、じっくり見すぎたらしい。モルガナも腕で彼女の大事な所を隠しながら恥じらう。その顔にはほんのり赤みが差していて、これ吾輩が人間だったら耐えられなかった。猫だったから耐えられた。
くっそ、吾輩があまりにも情けなさすぎる!! 娘みたいな存在にちょっとムラっとするな! 吾輩がそれをぶつけていいのはただ1人だけだろ!
「どうしました? そんな陸に上がった魚みたいにのたうち回って」
「吾輩は………おっぱい星人の自分が情けない………! おっぱいが大きい美人なら誰でもいいのか、吾輩は………!!」
「クロ。私は………構いませんよ?」
「あーっ!! おやめくださいお客様ーっ! 吾輩の価値観を壊さないで下さいましーっ!」
可愛らしくこてんと首を傾げないで!! 吾輩負けちゃう! 大事な一線だけは越えないようにしてたのに、負けちゃう!!
落ち着け、吾輩。こんな時には原作を思い出せ………そうだな、ロジェの顛末を思い出し、欲望を消すんだ………!
「じゃあ、体を洗いましょうか。わしゃわしゃわしゃ〜」
思い出せ、ロジェが自分の魔法【人格排泄】で中盤に主人公に言われて押し流された結果、排泄後の人格を原作主人公のオナ〇にされた事を………あ、背中に柔らかい感触が。
うおおお! 外界に気を取られるな! 心を燃やせ! そのままロジェの肉体を蟲魔族にくれた事で終盤助けに行ったエリスが吐くような事態になっていた事を!
「お湯加減も良さそうですし、入りましょうか」
うおっ、すっげえ、湯船の中で双丘が浮かんでる………だ、か、ら! 吾輩負けてんじゃねえ!! 恐怖を思い出せ!
一族の繁栄を願っていたロジェが蟲や触手の繁栄の苗床になっていた悲惨な末路を変えるために吾輩は頑張るんだろう! 胸に負けるな! 脂肪に負けるな!
『でも、アンタはおっぱい大好きじゃない。視線が露骨すぎなのよ、あっきれた。あたし以外だったら100年の恋も醒めてるわよ』
くっ、不味い。彼奴の言葉まで出て来た。これ以上は本気で不味い。心頭滅却………吾輩は猫。吾輩は猫である。人間ではあるが、今は猫なのだ。誰が言おうと猫なのだ………。
「どうしました、クロ? 先程から愉快な百面相をしてますが」
「吾輩………自分が大嫌いだ………」
「なら、その分、私が貴方を好きでいてあげますよ。そんなに自分を否定しないで」
駄目だ、モルガナは吾輩を本気で落としにかかっている。意識を切り替えろ………最早、吾輩はただの猫である。決して、人間の女に欲情したりはしない。今、モルガナに抱き抱えられて後頭部に柔らかな感触を感じているが、それは水風船だ。
「クロ、真面目な話をします。なので、ちゃんと聞いてくださいね」
「吾輩は猫」
「こればかりはしっかりと相互理解が必要だと思いましたので、ちゃんと言葉にします──この後は、どうしますか?」
「吾輩は猫っ!!」
吾輩、負けてもいいかな………余りにも魅力的なお誘いすぎるぅ! ぐおおおっ、だが負けるな吾輩! 例え既に理性の装甲がダンボールまで弱体化していようとモルガナの甘い囁きに屈してはならぬ!
「選ばせてあげます………猫のまま、私と愛を交わすのと、人間に戻ってから私と営むのであればどちらがいいですか?」
「………え? 人間に戻れるの?」
急に冷や水ぶっかけられたみたいに理性の装甲が回復した。ダンボールはびしょびしょになったが話題が変わったのでヨシ!
それはそれとして、聞き捨てならない言葉が聞こえてきたような。
「正確には
「詳しく聞かせてくれるか?」
「それでしたら、ベッドの上で話しましょう。ここだと風邪をひきますからね」
モルガナの微笑みに吾輩も頷き、風呂場から出る。湯上がりの柔らかそうなガウンを着ているが、これはパティとの合作らしい。錬金素材を服に仕立ててみたとか。
吾輩も現代にありそうなふわふわタオルで体の水分を取られた後、熱風が出る道具によって毛並みを乾かされた。モルガナの開発力が凄くてまるで現代みたいだ。
「それでは、話の続きから。因みにお供には冷たいミルクと温かいミルク。どちらがいいですか?」
「冷たいのを頼む………冷蔵庫まで作ったのか」
「便利ですが、まだまだ改良は要りますし、費用もバカにはなりませんけどね。どうぞ、こちらを。それと毛並みを綺麗にしましょうか」
大の大人2人が寝転んでも問題ない広さのベッドの上で待っていれば、ひんやりとした牛乳瓶がサイドテーブルに置かれたので近づく。
木の枝を加工して作られたストローを使って喉に流し込めば、どうやら無意識に渇きを覚えていたらしく、一気に飲み干した。
それを見ると、モルガナは吾輩の背中にブラシを当てる。柔らかいが妙に芯があるシリコンみたいな素材だ。これも錬金道具だろうか。
「話の続きですが、クロ。まず貴方に呪いをかけた人物………まあ魔法か魔族の美徳によるものだとは思いますが心当たりはありますか?」
「いや、全く。吾輩も気づいたら主の近くにいたからな」
何ともむず痒いな。昔は吾輩が彼女の髪を乾かしていたのに今ではこうして吾輩が世話を焼かれるとは。吾輩にも子供がいたら、こんな気持ちを覚えるようになっていたんだろうか。
毛並みを解かされながら彼女の質問に頭を捻るが、それらしき人は近くにはいなかった筈だ。転生したならば、仕方ないかもしれんが。
「ますます不思議ですが今は置いておきましょう。でしたら、クロを人間から猫に変えたのか。またはクロの魂を猫に移し替えたのか。それだけでも分かりませんか? 直感でも構いません」
「………後者が近いかも、な?」
吾輩は実際は転生した身だ。元のなよっとした肉体があるはずが無い。魂だけが猫に入っているのだから。
「であれば、クロを人間に戻すにはまずは肉体が必要ですね。魂を移す道具は今は手元にありませんが………私の手には賢者の石がありますから」
「ッ!? もう完成してるのか!? あれを!?」
驚きの余り、飛び跳ねてしまったがベッドが柔らかすぎて無駄に跳ねてしまう。どんな高級ベッドなんだこれ。
それはそれとして、もう賢者の石が出来てんのか!? おいおいおい、あれは
「勿論、私1人では出来ませんでした。パティやロン、それにユニにも協力して貰いましたからね」
「っ!? ユニ………!? ユニティに会ったのか!? 彼奴は連邦に居るはずだろ!?」
「やはり、知ってたんですね。彼女の事を。名前だけではなく、あの手紙で全部教えてくれればよかったのに。『
「も、モフガルド………なんて? い、いやすまん。まさか、彼奴が主に早い段階で手を貸すとは思ってなくてな………?」
訳がわからない。何故、この段階でユニの奴が手を貸す!?
今の彼奴は
吾輩の知らない所で色々何か起きてるのか!? これは一度確認出来るものは全て確認した方がいいかもしれない。打てる手は少ないかもしれないが現状は把握しなくては。
「クロ? 大丈夫ですか? もしかしてユニの奴と何か………?」
「いや、何でも無い。少し、吾輩の知らない間に色々進んでるなと思っただけだ。話を戻してくれ」
「そうですか? とにかく賢者の石は変化する世界でただ1つの完全の物質。即ち変化しないものです。これを使えば、魂の情報を何1つ落とさずに肉体に移すことが出来る道具を作れる筈です」
「お、おお………! だが待て。肉体はどうする? それも作るのか?」
「その手がなくも無いですが、それより簡単に行きましょう。アルチナの力を借ります。彼女の魔法なら、魂さえ入ればクロの肉体として馴染むはずです」
「それは、そうかもな……………やる価値はあるのか?」
「失敗した場合が怖いので作業にはかなり時間がかかりますが、私に委ねてくれますか?」
………悪い話じゃないのかもしれない。
今の猫の体ではやれることがあまりにも限られている。この体ではいざという時に肉壁や囮にはなれても彼女達の代わりに戦う事も守る事も出来ない。
『──さよなら、しよっか』
『──逝かないで、師匠!』
吾輩が人間に戻れたなら、もう2度と大切な誰かを目の前で死なせることがなくなるかもしれない。ちゃんと守れるかもしれない。
それに今度こそ、ちゃんと真っ当に人生を送れるかもしれない。誰からも恨みを買わずに穏やかに過ごせるようなそんな日々を。
「モルガナ………頼めるか? 情け無い猫の頼みだが」
「──クロ、私は一度も貴方を情け無いだなんて思った事はありませんよ」
小さく下げた頭を彼女は軽く撫でて、吾輩の両脇に手を差し込み、持ち上げる。胴体から足先が揺れる中、ゆっくりと彼女の顔が近づき、柔らかく湿った感触が吾輩の口元に触れた。
「貴方はいつだって………私にとっての王子様でしたよ」
はにかみながら、少女のように笑う彼女を見て守りたいと心の底から湧き上がってくる。もしこれが神様がくれたチャンスなら、今度こそ吾輩の命を無駄にしても彼女達を救いたい。と強く思う。
「──今日は一緒に寝るか? 久しぶりに」
「──ええ。今はまだ、昔みたいにお話ししてください」
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、キミリア。その夜はとても懐かしく、暖かな夜だった。昔みたいに体を寄せ合って眠る。その暖かさに何処か安心感を覚えながら、吾輩も眠りにつくのだった。
皆、モルガナに食われる事を期待しすぎでは………?
いつかr18で別ルート書けたらいいね