吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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貨幣価値を決めるのが難しいですね、ほんと。

後、また1週間ほど投稿はお休みします。お気に入り、評価はいつでもお待ちしてますので何卒よろしくお願いします。


王国ぶらり食べ歩き

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、キミリア。あの後、モルガナにも吾輩の女性遍歴聞かされて心に傷を負ったので気分転換に外出する事にした。

 

「という訳で王国食べ歩きツアーやろう。お小遣いやるから」

「クラウンがいたら、財布いらずだね」

 

 なので、モルガナとアルチナが今後の契約含めた打ち合わせを始めてしまって1人暇を持て余していたロジェを連れて行く。最初はロジェも遠慮していたし、吾輩も無理に誘うつもりはなかったのだが、

 

『クロが1人で外出することは断じて認めません。いいですか? 私の全力の駄々こねを見たくなければ護衛に誰か連れて行く事です』

『お姉さんもさんせーい。ロジェちゃんは初めて社会や国ってものに触れるのに、本人の気質じゃ余計な事件まで引き寄せそうだからねぇ。先生がいれば安心だものぉ』

 

 目が吾輩並みに真っ黒になっていた2人からの有難いお言葉に、結局ニコイチで行動する事になった。ある意味都合がいいと言えばいいだろう。特にロジェは初めての外出だし、お金のやり取りもやらせないといかんからな。

 

「だから、ロジェ。吾輩から離れるんじゃ………っていねえ!!」

「おい坊主! 焼き串はいるかい? 今なら銅貨1枚だ!」

「あっ、え、と、ああ、ああああああ」

「お、おい? 坊主大丈夫か? 震える余り残像が見え出したんだが………」

 

 振り向いた先に既にロジェはいなかったし、既に屋台の焼き串の匂いに釣られて、目元に傷が入った強面のおっさんに絡まれているという。伏線回収が余りにも早すぎるだろ。

 ひとまず、強面のおっさんが怯えるくらいに震え出したロジェの足、肩を移動して頭に着地し、彼女がつけてる帽子をわざと目深に被らせて強面のおっさんから視線を逸らして、会話に乱入。

 

「すまない、店主。焼き串をくれ、よく焼けてる奴」

「!?!? 猫が喋った!?」

「ああ、気にしないでくれ。吾輩、シュレディンガーの所で新たに開発されたホムンクルスなんだ。見てくれ、これがその証」

 

 ちゃらんと首輪につけられた猫の全体を模した小さな飾りを見せる。後ろには『シュレディンガーのアトリエより』とモルガナの魔力に反応する文字が書き込まれいるので、この国ではこれが吾輩達の身分証明になるのだ。

 因みにアルチナは同じような腕輪、ロジェはアンクレットをつけている。スピンオフではこれはモルガナの仲間の証なので、いずれ他のメンバーもつけるだろう。因みに吾輩はNo.0である。

 

「お、おう。いや、錬金術師ってのはすげーもんだな。まるで人間みてえに喋るじゃねえか」

「まあな。という訳で店主、焼き串とついでにおすすめなんかあるか? 吾輩は生まれたばかりで、彼女はこの国に来たばかりなんだ」

「嬢ちゃんだったのか………まあ、面白えもん見せてくれたし、坊主と間違えた事に免じてタダにしといてやるよ。んで、おすすめって言えば、やっぱり温泉だろ!!」

 

 だろうな、と吾輩は溢す。ここ、アルキミア王国から北に向かって約50km先にある【レリジェーン活火山】の恩恵がデカいのだ。錬金道具に必要な鉱石は勿論、火山の麓には温泉街が広がっており、この国の観光資源にもなっている。

 因みに吾輩が手掛けた1作目のゲームでは7番目の魔女までを含めた温泉イベントがあるぜ。めっちゃ好評で吾輩笑った。肌色多めで原作よりエロいとはこれ如何に。

 

「じゃあこの国はどうだ? 今、吾輩達がいる中心広場から東西南北に綺麗に分かれてるみたいだが」

「おお、ついでに教えてやるよ。まずここが中心広場だ。いわば憩いの場だな。目印はあのデカい噴水像、従属女神【ミュウ】様を模ってるらしい。っても猫には分からんか」

「ああ、全く知らん。恐らくだが、ここから北に進んだ先にデカい城が見える。あれが王宮で、そこの大通りが貴族や軍部の管轄だな? なんかデカい訓練所見えるし」

「おう、合ってるぜ。北側には軍関係の機関、及び兵士や貴族のご子息達の宿舎がある。だからあそこで問題起こしたら1発で軍の奴らにしょっぴかれるからな。気をつけろよ!」

 

 ふむ、この辺りは認識と変わりがなさそうだ。となれば、東側は備蓄品や兵器、錬金道具などの保管庫。西側は内政関係と教育関係の機関。学校があるのも確かその辺りだ。

 店主の話は吾輩の予想通りに進むので情報に間違いもなさそう。だから、聞いてるか? ロジェ。焼き串食べて目を光らせてる場合じゃないぞ。この国では主がキーパーソンなんだからな。

 

「それで、南側は職人街。正門から入ると直ぐに見える通りだな。食料とか道具はあそこで買うといい。屋台も色々あるしな! あ、でも南側の裏路地には気をつけろよ。実力がなくて燻れた職人が追い剥ぎみてえな事、してっから。特に嬢ちゃんなんかは気をつけねえと、三羽鴉(トリニティレイヴン)に捕まって売っぱらわれちまうぞ」

「と、三羽鴉?」

「王国に潜む奴隷組織って奴だよ………身持ちを崩した職人やその妻娘なんかを帝国や魔族に売っぱらってるって噂。軍部も見回ってはいるが、起きる時は起きてるらしいからな。気をつけろよ」

 

 三羽鴉。こいつらがロジェの敵となる組織だ。3人の最高幹部とそれを従える総帥からできている組織だ。ロジェととある人物の物語の敵役として最後まで出てくるのだから、ここで知れたのはいい事かもしれない。

 

「情報提供感謝する。お礼に串を5本追加でいいか? こいつは店主の串を気に入ったらしい」

「うえっ!? え、あ、その、お、お、おいしかった………です」

「そいつは嬉しいね! じゃあ、全部合わせて銅貨5枚を3枚に負けといてやらぁ! また来てくれよな!」

「あ、はい」

 

 何とか吾輩が渡したお小遣い銅貨30枚を取り出して、30枚出そうとしたのを猫パンチで訂正。おずおずと銅貨5枚出したのを苦笑いで店主は受け取り、銅貨2枚が返ってきた。

 それを受け取って、噴水広場に据え付けられてるベンチに腰を下ろして焼き串を食べながらロジェにもう1度算術を教える事にする。

 

「お、お金が増えた………」

「増えてないぞ、減ってるからな? 王国に来るまでに教えたろ? 金貨1枚が銀貨100枚、銀貨1枚が銅貨100枚。後は白金貨ってのもあるがこれは王族や貴族ぐらいしか持ってないから気にしなくていい」

「確かに、クラウンもお金でそれを生み出さないよね? 因みに金貨何枚の価値なの?」

「同じだよ金貨100枚。だから銅貨換算で1000000枚か。焼き串が、1本銅貨1枚だから………1000000本買えるな」

「1、1000000本………!」

「涎を拭け」

 

 貨幣価値を考えるのが面倒で、全部100倍計算にしたんだよなぁ。今思えば、パティとロンが売ってきた持ち運び式屋敷も結構高かったな、アレ。吾輩くらいしか即金で払えないだろ。

 しかし、この国で世界共通の貨幣が作られてるとはいえ、帝国だけは悪貨時代で論外だから敢えて高めに掲示したかもしれない。吾輩がいなかったらあの純度の金貨用意できんし。

 

「少なくともモルガナの杖も白金貨1枚くらいの価値がある筈。アレも本来は王族に使わせるような代物だしな」

「って事は、あの時は焼き串1000000本で戦ってたんだ………」

「一気に心許なくなる価値表記」

 

 吾輩が白金貨を生み出さないのはそう言う理由がある。そもそも一般的な買い物で出るような貨幣ではないのだ。もっと国同士の費用のやり取りでしか見ないお金なのだから、騎士や錬金術師が持っていたらおかしい。金貨大量生産もおかしい? それはそう。

 

「さて、じゃあ次は職人街に行って見るか。錬金道具も色々あるだろうし、時間も潰せるだろ」

「ボクも賛成。錬金道具って色々な種類があるから結構楽しみなんだ」

「じゃあ、移動するか。それゆけロジェスティラ」

「あ、ボクの頭の上から退くことはないんだね」

「放っておくと、主は勝手にどっか行くからな。最初から主の体に張り付いていた方がいい」

 

 ここを吾輩の定位置とする! そんな感じでロジェの頭に揺られながら、人波に怯える彼女を誘導しつつ南側の職人街へたどり着く。道が真っ直ぐだから迷うことがないのが助かるな。

 

「職人街の工房はそのほとんどが間口はさほど広くないが、奥行きが深いみたいだな。中には流石に入れないか」

「通りに面した店頭は接客場所………かな? その奥が作業場ってなれば、多分、反対側が資材の搬入搬出経路になってるかも。侵入するなら裏側からだね」

「盗賊視点の解析やめろ」

 

 ちらほらと見受けられる工房では汗を流しながらも、それでも楽しそうに金槌を鳴らし、道具を作る男達の姿。時折混じって威勢のいい女性が武器を片手に客の呼び込みも行なっている。

 気付けば、あちらへふらふら、こちらへふらふらとロジェの頭の上で良かったと思うくらいには子供みたいに興味津々で回っている。12歳だし、当然か。

 

「………ねえ、クラウン。これ買って」

「ダメだ」

「けち」

「だーめーだ。第一、何に使うんだ? これ」

「ぐーぐっぐっぐぐ。お客さんお目が高い。これは『セブンスター』と呼ばれる道具でございやす。ロックピック、合鍵セット、潤滑油、ナイフ、ロープ、手鏡、小型ハンマー、くさびなどなど! それに実はこいつは呪われた道具でして………使った者たちは全員帰らぬ人になってるんですよ」

「の、呪いの道具………それってどんな呪いが………?」

「ええ、使った奴らは皆………泥棒として軍部にしょっぴかれていきやしたぁ」

「ただの犯罪者の末路じゃねえか」

 

 時折、気に入ったのか飾られてる武器や道具を物欲しそうに見ては吾輩に強請るように見るが吾輩は断じて拒否する。少しむくれるが、今から金の魔力に取り憑かれてはならないからな。吾輩が幾ら金を稼げるとは言え、それに慣れてしまえば浪費癖がついてしまうし。

 

 そんな何回目かのトランペットを眺める少年の図、みたいな光景を繰り返していれば、鼻を擽る良い香りにロジェがふらりと引き寄せられていく。見れば、何かしらの焼き菓子のようだ。現代風に言うなら、焼いたロールケーキみたいなものか? バームクーヘンに近いかもしれん。

 

「おじさーん! このお菓子ちょー美味い! これって、うちにも作れたりする!?」

「ほっほっほ、それは無理じゃのう。これは儂が長年の研鑽を経て辿り着いた秘伝の味じゃ。幾ら嬢ちゃんが可愛くても教えられんなぁ」

「えー!? そこを何とか! おじさんの! ちょっといいとこ! 見てみたい!」

 

 結構繁盛しているらしく、女性客もかなり多い。値段も見れば、甘いものにしてはかなり手頃だ。店頭から焼いてるところを覗けば、型で焼き上げて、それを薄く切り分けた後、上から光沢のある水飴をかけたものらしい。

 練り込まれているのは乾燥したぶどうやイチジクなどのドライフルーツに吾輩も知らない謎の果実達。分類的には菓子パンだな。

 

「残りのお小遣いでアレ買うね。クラウンも食べる?」

「吾輩はお腹いっぱいだから1口でいいぞ」

「だ、大丈夫? あれだけの量しか食べられないって………どこか体調悪い?」

「吾輩と主の胃の容量の差を考えてくれ」

 

 朝飯をアルチナ達の3倍は食っといて更に間食が入るのがおかしいんだって。お菓子だけに。この後はお昼ご飯も平然と食べるんだろうな、この食いしん坊め。エンゲル係数の跳ね上がりは吾輩が対応しよう。そうしよう。

 

 頭の中で、そろばんを弾いているとロジェが菓子パンを買っていたので、1口分けてもらう。むぐむぐ、確かに焼き菓子に近い香ばしさに水飴がパリパリで食感もいい。ただやはり、菓子パンに近いなこれは。

 

「ご馳走様………」

「そんな目をしても金は遣らないからな。この食べ歩きツアーは主の金銭感覚や管理を養う為のものでもあるんだ。お金が無尽蔵に湧いてくる。それを当たり前と思っちゃいかん」

「わ、わかってるよ。義賊らしく盗めばいいって事だよね」

「それ、ただの泥棒」

 

 違う違う、そうじゃない。先代達も泣いてるぞ、一族の天才が菓子パン盗むがてらに自分達の歩法を使われるとか。

 

「帰るぞ、昼ごはんも用意してあるかもだし」

「お菓子………」

「諦めろ。お小遣いで足りないなら仕事をして給金を稼ぐべきだな」

「むー、クラウンのけちんぼ」

 

 むくれるロジェも可愛いが、ここは心を鬼にしていきたい。元気な頃の妹もあーやって膨れていれば吾輩が何でもしてやると思っていたが、大間違いだぞ。彼奴、結局嫁入り出来るくらいには家事とか出来るようになったんだろうか。吾輩死んだ後も心配。

 

「え、やばっ!アンタ食べるの早すぎじゃん!? ウケる〜!ウチの分もいっとく〜?」

「アッヒョ!?」

「何か今、グーフ◯ーいなかったか?」

 

 吾輩の下から某ネズミの愉快な仲間の声がしたが、気のせいだろう。気のせいであれ。それにしても、ロジェの人見知りっぷりはどう直したらいいのだろうか。このままではユニと会話したら、対消滅しそうだ。彼奴、パッと見の姿と性格はオタクに優しいギャルそのものだからなあ。

 

「ちょ、待って!その猫めっちゃ可愛いじゃん!やば〜!ウチも昔、黒猫いたんだよ〜! でさ、そのコ名前なんての!? 何歳?性別どっち〜?」

「はわわわわわわ………! た、たしゅけて、クラウン」

「クラウン!? かっけ〜!名前負けしてないじゃん!てか、猫界の王様って感じ〜! でもウチの名前も負けてないからね〜!」

 

 そうそうユニもこんな感じのコミュ強なのだ。最早死ぬ事以外、怖いものなんてないが? そもそも死ににくいが? ってくらいの考えだからな。

 当時は滅茶苦茶悩んだものだ。原作者からの指定は『オタクに優しいギャル』しかなかったので、絵師の友人は苦労したと言ってた。

 

 確か、目の前にいるような太陽をそのまま閉じ込めたような鮮烈な黄色の髪を乾いた空の下で靡かせて、目元には白い薄布が巻かれている。彼女が何を見ているのかは誰にもわからない。けれど笑うときの口元だけで、すべてを見透かしているような雰囲気にさせる女の、子………待って。

 

「ウチが飼ってた黒猫の名前は──『モフガルド・ニャンディアス3世』」

 

 片側をゆるく編み込み、反対側でサイドテールにまとめた髪束を揺らしながら、明るい声で彼女は笑う。その首元には黒猫を模したペンダントと【No.5】の文字が刻まれていて、言葉を失った。

 

「おっひさ〜!! 3世!! 呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん!! 魔女の旅団No.5! ユニティ・ブバスティス! 100年前の約束を果たしにきたよ!!」

 

 突き出た胸とは反対に折れそうな程に括れた腰に手を当て、ピースサインを目元に当てた渾身の自己紹介。その喋り方も何もかもが、彼女が"御伽の魔女"である事を吾輩に教えてくるのだった。

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。スピンオフ世界ではまだこの国に居るはずのない魔女との再会に吾輩は度肝を抜かれたのだった。




本来の予定なら、ここで彼女は出てくる予定ではなかったんだけどなぁ………謎の黒猫のせいだな。うん
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