吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
※追記。3回も同じ展開やると冗長になりそうなので1枚に変更します。
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。過去の吾輩が残した爆弾宣言のせいで吾輩死にそう。何をどうしたら、彼奴から許可取れんだよ。というか過去の吾輩は何者なの………吾輩、自分がわかんにゃい。
「何か考え事ですか? クロ」
「過去の過ちについて考えてた」
「分かる〜何で過去の自分ってあんなに馬鹿なんだろうね。恐怖による支配より、懐柔による支配の方が長期的にはいいのに」
「ねえ、おはぎ先生? この人、大丈夫かしらぁ? 色々と物騒なんだけど」
「み、身内には優しいから………」
「クラウン、ボク達と目を合わせてから言ってよ」
モルガナのアトリエに帰還後、皆んなでお昼を食べてハクが用意してくれた紅茶を楽しみながら軽く自己紹介をかわす。モルガナとユニは共同研究者だがアルチナとロジェにとっては初対面なのだから。
ちなみに吾輩はモルガナに抱きしめられている。このふかふか後頭部クッションにも慣れてきたところだ………あ、待って吾輩を引っ張らないでアルチナ。足が千切れちゃう。
「モナモナの紹介もあるし、これからよろしくねっ! アルアル! ロジロジ!」
「随分と気安い子ねぇ………所でどこでおはぎ先生と出会ったのぉ?」
「語ると長くなる………そう、あれはまだウチが因習島の姫巫女だった時の話」
薄々思ってはいたが、やっぱりユニは因習島………今の連邦国と呼ばれる国の前身に当たる島で育っていたのは間違いないようだ。の割には性格がやけに明るいというか、オタクに優しいギャルとはいえ、どちらかと言うと地雷系のキャラにした覚えがあるんだが………。
「〜〜っで今、ウチは作家をしてる訳。やばくない? そんな事されたらさぁ、ウチが片目差し出すくらい当たり前じゃん?」
「え、じゃあ今は片目ないの?」
「そうだよー! ほらっ!」
黒い布の下、隠されていた琥珀色の瞳が顕になるが彼女の言う通りだった。本来あるべき筈の右目の部分は真っ暗な空洞が広がっていた。その周りには何かしらの治療痕があり、へらへらしてる彼女からして活動には何の問題もないのだろう。魔女達は絶句してるが。
実際、彼女は両目が潰れようが世界を観測するのに支障はないのだ。彼女の本質は肉体ではないところにあるのだから。
それでも過去の吾輩の指示とはいえ、やりすぎじゃねえかなぁ!? 多分、過去の吾輩もそんな事は言って無いと思う!
「………また、とんでもない重さの子が来たわねぇ」
「いやいや、うち的にはまだまだ軽い方デショ。肉体なんて魂を納める器でしかないんだから。器が幾ら壊れようと魂が無事なら生きていけるって!」
「それが出来るのは貴女だけですよ、ユニ」
「………純粋な人間じゃないって事ねぇ。とりあえずその眼、治す気はあるのかしらぁ? 時間かかるけどお姉さんなら治せるわよぉ」
「そうなん!? じゃあ、お願いしちゃっおっかなあ!」
帝国出身である事から恐らく彼女の正体に勘付いたであろう、アルチナはユニを連れて席を外す。残されたのは吾輩とロジェとモルガナだけというある意味、提案をするには絶好の機会だ。
「………………」
「………………」
「………………………」
「………………………」
沈黙するなロジェ!! 今がいいタイミングだろうが! 視線でこちらに助けを求めるな! 自分で頑張って話してみろ!
モルガナもちょっと居た堪れない顔してるから早く話を切り出してあげて! 結構忙しい立場なんだから!
「………何か私に話したい事でもあるのですか?」
「うえっ!? あ、えーと、その………はい」
やきもきしてる吾輩を見て遂にモルガナが額に手を当てながらため息をついた。そのことに肩をビクッと震わせながらもおずおずと頷き、ロジェは先程吾輩から聞いた話をモルガナに伝える。
「つまり、貴女はどうにかして王宮に入りたいと」
「う、うん。可能ならルノワールの秘伝書を貰ってきて欲しいんだ」
「却下です。私に何の得もありません」
そして、にべもなく切り捨てられた。なんだかんだでやってくれるのだろうと思っていたロジェの顔が固まる中、モルガナは指を1本建てると丁寧に理由を語りだす。
「まず1つ目、貴女が王宮で問題を起こした場合に責任を取るのは私になります。良くて錬金術師の地位を剥奪後、追放。悪ければ極刑は免れません。王宮に忍び込むというのはそれだけ重大な犯罪なのです」
「ば、バレないようにすれば………」
「論外。2つ目は帝国家畜牧場から奴隷達が逃げ出した情報が既に出回っている事です。とはいえ、それが原因で送還されるなどはありませんし、アルチナが王宮を見たいというなら手引きをしました。ですが貴女はダメです。理由は分かりますか?」
「ボ、ボクに何の権力もないから?」
「違います。貴女が帝国の泥棒たるルノワール一族の末裔だからです。泥棒を王宮に招き入れるなど馬鹿しかやりませんよ」
「ど、泥棒なんかじゃない! ボクらは義賊だ!」
「それで王国がなるほど!と頷くと思ってるんですか? そして、3つ目にルノワールの秘伝書のような泥棒の技術など王宮で丁重に管理されている方がいいに決まっています。その技術が漏れ出せばどれだけの被害を被るか分かっているのですか?」
「そ、れは………」
「以上のことから、今の貴女を連れて行くわけには行きません。それこそ、王宮に呼び出されるような事でもない限り、私が貴女を連れて行くとは思わない事です」
「うっ………」
聞いてるこちらが泣きたくなるくらいに詰められてるロジェ、というか実際に涙目になっている。理屈は分かるが些か言葉が強すぎる気もしないでもない。つまり、モルガナは今の信用のないロジェを連れて行く訳にはいかないと言っているのだ。
じゃあ、どうすればいいか? その答えは恐らくこれだ。
「じゃあ、モルガナ。ロジェに仕事を与えてくれないか? 恐らくだが、主の手だけでは回らない仕事があるのだろう?」
「………へ?」
「クロには敵いませんね。実は私に資金提供をしてくださっている貴族のご令嬢がいるのですが彼女からの依頼があるのです。しかし、私も錬金術師の定期監査や報告会に向けた資料作成で忙しい身。アルチナに任せてもいいのですが、貴女がやってみますか? ロジェスティラ」
「つまりだな、ロジェ? 信用がないのなら積み重ねればいい。モルガナは多数の貴族から支援を受けている身だ。依頼をこなして信用を得れば、モルガナは王宮に手引きをしてくれると言っているのさ」
「な、なるほど………!」
「紹介状は書いてあげます。実行は貴女に任せますのでよろしくお願いしますね。お目付け役にクロ、お願いしてもいいですか?」
「問題ない。任せとけ! 吾輩がいる限り、ロジェには傷1つつけさせんさ」
「いえ、貴方はちゃんと後ろで守られていてください。決して前に出ない事。ロジェ、貴女がきちんと見ているのですよ」
「分かった。クラウンはボクが守るよ!」
「何故だろう。吾輩がまるでヒロイン扱い」
まるで放っておいたら勝手に死にに行くみたいな扱い方されてるの吾輩をなんだと思っているのだろう。心当たり? ないこともない。
吾輩の微妙な顔を2人は気にせず、モルガナから渡された1枚の紹介状を受け取ってロジェの頭に乗せられて部屋から退出する事になった。
同時に部屋の廊下からアルチナとユニの姿が見える。ユニの右目には包帯が巻かれているが、アルチナの顔を見る限りはうまく行ったようだ。
「へいへい、ロジロジ。何かいい事でもあった感じー?」
「え、あ、いや、その………まあ?」
「先生? 何かあったのかしらぁ?」
「ちょっとモルガナから野暮用を頼まれてな。ロジェの為に少しばかり働く事にしたんだ」
先程、モルガナから伝えられた内容を2人に共有すればアルチナもユニも何故だか眉を寄せる。ただ嫌な顔というわけではなくむしろ心配がどうにも勝っているようだ。
「話はわかったのだけどぉ………ロジェちゃんだけで大丈夫? 先生守れる?」
「ロジロジはともかく、3世は目を離すと勝手に命を賭けてるから心配だよね。分かる」
「ユニちゃんも、苦労してたのねぇ………お姉さんもついて行こうかしらぁ」
「ボクの事はどうでもいいの!?」
「「うん」」
「うん!?」
「いやだって、ロジェちゃんなら自分の身は守れるじゃない。悪く言えば臆病だけど、よく言えば慎重だしねぇ」
「だけど、3世はどっちかとゆーと悪く言えば蛮勇、もっと悪く言えば無謀だからね!」
「吾輩の事で良く言うことはないのか」
吾輩とても辛い。しかし、アルチナの力を借りる訳にもいかないだろう。何せアルチナはモルガナから吾輩人間化計画の指示を受ける筈だ。恐らくは吾輩の肉体を作成する為に力を貸すことになるのだろうから。
それにアルチナが解決してしまえばアルチナの功績だけが募っていくだけでロジェの目的の邪魔にしかならない筈だ。帝国では評価されなくてもこの実力主義の国なら彼女も正当な評価を受けるのだから。
「ならさ、うちがついて行ってあげよっか? 暇だし」
「………あらそう? じゃあお願いしようかしらぁ」
「え、え!? つ、ついてくるの!? ぼ、ボク1人で大丈夫だよ!?」
「まあまあ、そんな遠慮しなくていいって! うちらでぱぱーっと解決しちゃおう!! さあ! 作戦会議だー!!」
「あ、いや、まって、助けて! クラウン!」
「これを機に少しは他人に慣れるといいぞ」
「この人でなし!」
「吾輩猫だしな」
ドナドナと子山羊が売られて行くようなロジェを見送れば、アルチナが床に落ちた吾輩を抱えると、彼女の纏う空気が妙に緊張している。
「先生、あのユニって子は本当に信用できるのぉ? 姫様の研究に協力したとはいえ、あの子は………
「気づいていたか。流石だな」
「帝国のやらかしの果てに生まれたものだしねぇ。本当、お姉さんの出身国はやらかしてないことがないのかしらぁ?」
亜人。魔族とも人間ともまた違う第3の種族。分かりやすく言えば獣人やエルフに龍人、鬼人などの人間の姿でありながら一部が魔族のような特徴を持つ。
その特徴として、魔族としての高い肉体の強度に人間達が扱う魔法の才能に加えて種族としての特性を兼ね備えるところだ。
故に誕生の経緯から数自体は少ないものの、個体の戦力は高い傾向があり、私兵や傭兵として雇う者達もいるにはいる。
「ユニは非常に珍しく人間と遜色ない肉体を持っているが………あの目だけは特別性だからな。迫害自体は受けていた筈だ」
「基本的には異形の姿である事が人間には嫌われ、魔族達からは半端者として殺戮の対象にされる。生まれた事が間違いだったと思わせるほどに。お姉さんもそう、耳にした事はあるわぁ」
「正解だが、どうやら過去の吾輩が何かしたらしい。ユニは吾輩から見てもかなり明るく………」
「………冗談でしょう? 先生? あれが明るいって本気で思ってる?」
アルチナの目には信じられないという疑惑がありありと映し出されている。それを全て信じるわけでもないが、吾輩が描いた漫画とは彼女のキャラが変わってしまってるのも事実。
それでも、ユニの過去や彼女の性根が変わっていないとするならば、
「大丈夫だ。アルチナ。吾輩が保証する。彼奴は人間が嫌いだが、それでも人間を滅ぼそうとはしないさ」
「幾ら先生でも、それに素直に頷くほどお姉さんは馬鹿じゃないわよ?」
「ユニの職業が変わっていたなら吾輩も疑っていたがな。彼奴がその仕事をしてる限りはきっと主らは良き仲間になれるさ」
「確か、作家なのよね? それが関係あるのかしらぁ?」
「ああ、大有りだ。奴はな、物語が大好きなんだよ。それもとびきりのハッピーエンドのな」
あの静かな暗い地下室で、雨の音を聞きながら人の作った物語に夢中になっていた幼い彼女から何も変わっていなければ、きっと問題はない。
魂を観測してしまう彼女にとって、人間の人生は彼女が楽しみにしている物語そのものなのだから。
「きっと今のユニはロジェという物語がどうなるか見届けたいだけのはずだ。ハッピーエンド主義者である以上、主人公たるロジェを殺す事も仲間を傷つける事もない、と思いたい」
「それが、本当に彼女の矜持ならねぇ。分かったわ。ひとまずは様子を見るけど………何かあったら私が斬る。それでいいわね?」
「ああ。頼む」
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。それでは吾輩も気張るとしよう。
感想ありがとうございます。励みになります。
お気に入り、評価はいつでもお待ちしています。