吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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誰か仕事を減らしてください。お願いします………


ロジェスティラの初陣

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。世の中の絶叫マシン真っ青な速度でユニの悲鳴の下に辿り着く。そこはぽっかりと空いた大樹のうろだった。

 

 まるで入って来た存在を食べるような感覚を覚えるが、ロジェの歩みに躊躇いはない。一応、心は決まっているかもしれないが確認しておこう。

 

「あからさまな罠、だな。どうする?」

「き、決まってる。助けに行くよ」

 

 普段の気弱っぷりは何処へやらとばかりに迷う事なく、助けに行くと宣言。それを普段から言えるならもっといいのだが。

 

「よし、なら行こう。吾輩も存分に肉壁として使ってくれ」

「それやったら、色々な意味で死にそうだからやめとく」

 

 何故か少し身震いしたロジェは吾輩を頭の上に置きながら、ゆっくりと大樹のうろへと侵入。樹洞空間には白い糸が積み重ねられ、大きな人間大の繭が幾つもあり、眉を顰めるロジェ。

 

「た、たすけてー! 食べられちゃうー!」

「っ!! ユニティさん!」

 

 その空間の丁度中腹に、迫り出した木の枝先には糸で縛られ蓑虫みたいになっているユニがいた。絶賛ピンチにしか見えないが、吾輩から見ると何遊んでんだ。という感じにしか見えない。ちょっと顔も笑ってるし。

 

「待ってて! 今すぐ助けるから!」

 

 そんな彼女に対して真っ直ぐなロジェに黒猫ポイントを上げたくなってしまう。因みに貯まると吾輩のお腹をわしゃわしゃしながら添い寝が出来る。モルガナに渡したらとても不味い気がするので彼女以外だが。

 

 ロジェは吾輩を地面に置くと、すぐさま大樹を蹴って中腹まで飛んでいく。地面を発射台か何かにしか思ってないんだろうか、彼女は。

 そのままユニの元に辿り着くと、糸の繭に手を触れようとして──

 

「っ!!」

 

 瞬時にその場から飛び退く。同時に何かが飛来。それは液体のようだったが、ロジェが先程までいた箇所を黒い煙を上げながら溶かしていた。彼女はすぐさま大樹の壁に茶色の魔法で木の足場を作ると、そのまま上を見上げる。

 

「へえ、今のを避けるのね。強い雄は嫌いじゃないよ」

 

 異形が、いた。背後に嫌悪さを思わせるけむくじゃらの足が6本を忙しなく動かしながら、その異形は宙にあって、まるで玉座から下りゆく支配者の如く、見えない階段に足音を響かせる。

 背中から生えてる脚以外はまだ人間らしさがあった。ロジェよりも身長が低く、小学生だと言われても納得してしまうほどの体格であっても。そんな幼女が舌舐めずりする姿に胸焼けするような色気を宿していても。

 

「………そ、その姿はまさか魔族?」

「聞いてないの? リリスは亜人。蜘蛛と混じり合った結果、産まれた怪物。それがわたし。三羽鴉が1人………性欲担当、リリス」

「と、三羽鴉! 串焼きのおじさんが言ってた!! ゆ、ユニティさんをか、解放しろ! 奴隷になんてさせないからな! さもないと、こうだぞ!」

「なーに? 脅し? ごっこ遊びならお家でパパとやってなさい」

 

 蹴りのモーションで脅しを掛けようとする、ロジェにリリスは鼻で笑った。確かに客観的に見て、必死に威嚇するレッサーパンダとほぼ同じだもんな。

 ユニの方を見ればあちゃーって顔をしてる。これ、説明したけどちゃんと理解されてないやつだな? って事は先制攻撃は、

 

「──警告は、したからね」

「なっ、速っ………」

 

 やっぱり、ロジェだったか。慢心しまくってたリリスがユニにしたり顔で嘲笑ったせいでロジェの姿を視界から外してしまった。その間に彼女は影駆で壁を駆け上がると、そのままの勢いで遠心力をたっぷりと乗せた空中回し蹴りをお見舞い。

 

 それだけならば、リリスもまだ立ち直せただろう。流石は亜人と呼ぶべき人間離れた肉体強度に種族特性の蜘蛛の脚3つでギリギリ防いだのだから。

 

 なお、防がれたと判断したロジェはそのまま逆脚を振り抜き、空中回し蹴りの遠心力を利用した弐の脚撃ががら空きだったリリスの頭蓋へ直撃。大木を揺らすような脚撃に彼女が空に浮く為に使っていた足場の糸がぶちん、と音を立てて切れた。

 

 そして、とどめと言わんばかりに上半身を捻ることで更に三撃目の空中回し蹴りへと繋げる。一回転して戻ってきた右足が風を唸らせながら、意識を回復させたリリスの顔面に強烈に撃ち込まれ、大樹の壁にめり込んだ。

 

「やっぱり、糸を足場にしてるんだ………薄暗いし、見えづらいけど、既にここはキミの巣の中って訳だ。聞いてる?」

「………がっ、き、きいてないわよ、こんなの」

「う、嘘でしょ? 本気で蹴ったのに………な、何て防御力」

 

 自慢の脚撃で立ってきた事に慄くロジェ。でもよく見てくれ、リリスは既に背中の足は半数がひしゃげて、使い物にならず、頭も割れて血塗れの虫の息なんだ。満身創痍なんだ。

 いやまあ、人間なら多分死んでるから確かに亜人の肉体はすげえ!って感想でいいかもしれない。その肉体を打ち抜くロジェはもっとやばい。

 

 さっきまでのリリスと同じように吾輩には全く見えないが、糸の上に立つロジェをリリスが憎しみを持って見上げる。腕組みをしながら、見下ろすロジェの強キャラ感がぱないの。

 でも、ロジェ本人はきっと亜人怖いって思ってそう………現に今、無表情だけどガチガチに緊張してるから笑えないだけだわ。

 

「こ、こうなったら、全力でやるしかない! ルノワールの名に恥じない為にも! ボクは負けるわけにはいかないんだ!」

「ひいっ!? アレで全力じゃないっての!? ほ、炎よ!!」

 

 先祖の名に恥じない自分というが、先祖達が見たらお前がNo.1だって満足そうに頷いてくれると思うぞ。勇気を出して、魔力強化をフルに使い出したロジェに今にも泣き出しそうなリリスが掌から糸を出し、それに魔法で炎を付与する。

 

「『万彩顕現』!『赤い靴』!『水色の靴』!」

 

 炎の鞭と化した糸が迫る中、足場にしている糸を足裏で滑り落ちていきながら回避。もはや、どちらが蜘蛛の亜人なのかわからないほどに糸を使って空中を走るロジェ。

 その両脚には赤い絵の具と水色の絵の具が付いており、避け切れない炎の鞭に対して的確に弾き飛ばし、炎と氷の残滓が飛び散る中、リリスに向けて突き進む。

 

「『万彩顕現』!『黄色の靴』!」

「ッ!! 鋼糸封殺・落命の巣!」

 

 糸を滑り降りた勢いそのまま、黄色の蹴撃がリリスに迫る。先程の威力を思い出したのか、顔を真っ青にしながらリリスは仕掛けていたのだろう罠を起動。

 壁際に張り付いていた見えない糸がロジェの逃げ場を無くすように迫る。咄嗟にもう片方の足に赤色を纏い、燃やそうとしたのか振るうが、絡め取られてそのまま糸の繭に閉じ込められてしまう。

 

「これで殺す………! 黒巣葬送!!」

 

 伸ばしていた一本の糸、それが黒く染まり、それに伴い繭もまた毒々しい紫色へ変貌。遠目からでも伝わる刺激臭に毒を送り込んだと理解した頃には、リリスは頭を糸で縫い上げて大きく息を吐いて勝利の雄叫びを上げていた。

 

「よし、ヨシっ!! て、手間取ったけど………さすがリリス! 流石わたし! でも久しぶりに命の危機を感じたわ。総帥に勧誘された時以来………あの死神にもやられたのもあったか」

 

 そこまでぶつぶつ呟くと、吾輩を見つけて張り巡らせた糸を使ってゆっくりと降りてくる血塗れの幼女。いつ倒れてもおかしくはないが、目には嗜虐的な光を宿している。

 

「戦場に猫を連れてくるなんて、最近の子は甘いったらありゃしない。おかげで帝国や魔族に送る馬鹿も絶えないから助かるけどね」

「老害みたいな発言やめとけ。まだ50年しか生きてないだろ、主は」

「………あの死神から聞いてたとはいえ、本当に喋るのね。なら、いい悲鳴もあげるのかしら?」

「なんだ、吾輩を手に掛けるのか? やめておけ。ただじゃすまんぞ」

「何かしら? あの錬金術師風情や死に損ないの騎士程度にわたしが負けるとでも?」

「いや、それより先に──」

 

 リリスの頭上、毒の繭から何かが飛び出した。白銀の神聖な色に身を包み、毒の液体を弾く神々しい姿にリリスも遅れながらその存在に気づく。しかし、その頃には糸を足場に真下に向けて落下を始めていた。

 

「ロジェにやられるからな」

「くっ、ならばもう一度!!」

 

 真正面から突っ込むロジェにリリスは先程と同様の対処を行うが、ロジェがそのような愚策を行うはずもない。またもや糸の結界を手繰り寄せようとした瞬間、ロジェはいきなり空中で曲がった。まるで何かを掴んだように。

 

「っ!? わたしの糸を!?」

「キミが手繰り寄せた糸はボクにだって見えるからね」

 

 そのまま結界をかわすと、地面に降り立ち、がら空きの胴体へ前蹴りを………しようとしたロジェが脚を上げた形で固まった。

 

「まさか………! この周辺にも糸を!?」

「わたしがただ猫と話す為だけに地面に降りて来たと思ったの?」

 

 目を凝らせば、吾輩にもうっすらと見える糸。それが張り巡らされていたのだ。吾輩も無造作には動けず、少しでも動けば鋼糸に触れたロジェのように肌に傷が浮かぶだろう。そんな中、リリスは勝ち誇った顔で拳を握る。

 赤熱化する拳に、纏わりつく糸。毒が効かないならば、炎による一撃で決着をつけるつもりか。ロジェもまた姿勢を維持しながら、その熱に顔を顰めた。

 

「一応、名前を聞いておこっか。死姦用の奴隷の名前を書かないといけないからね」

「自分の名前でも書いておいたら? 特別性が出ると思うよ」

「いいね、その減らず口。死んでも同じ事が言えるかな? 『焔蜘蛛・紅ノ糸』!!」

 

 燃え盛る焔の鞭、10を超える焔糸が動けないロジェへ叩き込まれ──

 

「──()()()()()。『万彩顕現』『青藍氷水』」

 

 る、前にロジェの上空から2人を塗り潰すように水色と青色の絵の具が雨のように降り注ぐ。その絵の具に触れた瞬間、リリスの体が凍り付き始め、尋常ではない冷気が空間を支配する。

 恐らく、毒の繭自体を銀の光………神聖さを売りに踏み倒したのだろう。この世界には『神聖法』という錬金術と同じ括りの魔法があるしな。

 

 そして毒の繭の半分を、青と水色の絵の具に変化させて待機。リリスの必死の攻撃を前にして絵の具を操作して頭上からぶち撒けたのだ。豪快に浴びてしまったリリスの体は綺麗な氷像へと変わり、炎もまた消化される。

 

 完全に動きを止めたのを確認しロジェは、魔法で糸を絵の具に変えるとそのままゆっくりと腰を落とした。

 

「かっ、た………?」

「ああ、お主の勝ちだ」

「ボクが………1人で………?」

「そうだ。主だけの力だけでな」

 

 実感が湧かないのかロジェに言い聞かせるように吾輩も頷く。吾輩が手を出すほどでもなかった。少しひやりとしたが、おおむねは安心して見れていたのだから。

 自信がない子に自信をつけさせるには成功体験を積ませるといい。厳しいかもしれないが、これでロジェは自分の実力を正しく把握できるようになるはずだ。

 

「や、やったぁぁぁ!」

 

 漸く、実感が湧いてきたのか。両手を上げると疲労が出たのか、魔法の使いすぎか、そのまま大の字に倒れてしまう。近づけば呼吸は正常、単に気絶しただけのようだ。

 仕方あるまい。少しくらいは眠らせてやろう。頑張っていたのは見ていたからな。しかし、何かを忘れているような気もするが………

 

「3世〜おろして〜あだまに血がのぼりゅ〜」

「しまった、ユニの事、完璧に忘れてた!!」

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。その後、吾輩の引っ掻き攻撃で何とか糸は解除した。代償にロジェが起きるまでひたすら猫吸いされるのだった。




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