吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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余裕が出来たので連続投稿。次は水曜日辺り予定
後、ちょっとストーリーを見返していて3枚も紹介状集めるのはダレそうだったんで1枚に変更してます。ご承知ください


偉大な父の背中は遠い

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。話は変わるが、ジブリ映画で吾輩はトトロが好きだ。真っ黒クロスケはいると思ってたし、猫バスに一度でいいから乗りたかった。

 

「みてみて〜! 3世に教わった芸術魔法、ウチここまで極めたんだから! あ、因みにこれが具現化した物語ね。大好評だから読んで感想よろしくー!」

「何処から見ても猫バスにしか見えん」

 

 それがまさか異世界で叶うとは吾輩思っても見なかった。ジブリのスタジオには嫁と行ったし、2人してきゃっきゃしてたがやはり作り物感は否めなかったが、こいつは違う。

 某猫バスというか黒猫バスは吾輩達を背中に乗せて走り出した。背中とはいえ、感じる風があまりにもリアル。背中はもふっとしてふわふわでお日様の匂いがする。ロジェなんか既に毛皮に埋まっていた。大丈夫? 窒息しない?

 

「ユニ、主の魔法はどこまで出来るようになった?」

「うん? 3世に教えてもらった通りだけど?」

「ああ、いや。あれから何年も経っているからな。主の魔法が吾輩の考えてる通りなのか知っておきたいだけだ」

「にゃるほど! 着くまで10分くらいだから、簡潔でいいなら!」

 

 世間話にユニに魔法の話を経れば、彼女は一冊の魔導書を取り出す。人を殴り殺す事さえ出来そうなその本の題名は『御伽の魔女』と書いてあった。

 

「"言葉は契約、想像は真実。虚構に縛られし物語よ、今こそ解き放たれろ。筆跡は運命を刻み、頁は現実を裂く。語られた結末に、逃げ場はない──具現せよ、我が物語"──魔導書目録展開」

「やはり、その口上は変わらずか………」

「だって、カッコよくない??」

「主がいいなら、まあいいが」

 

 魔導書に手を置き、そう唱えると本が光り出し、きらきら輝く文字たちが溢れ出すように飛び出していく。その文字たちにユニの指先が触れると、更に詠唱を紡いでいく。

 

「"検索開始。題名入力"──『ブラッド・ラメント』」

 

 そこまで言い終わると、触れていた指先から血のように真っ赤に染まった大鎌が具現化する。これがユニの芸術魔法『文学』。効果は『物語を具現化する』だ。

 一見、ありきたりで良くある強魔法なのだが適性がユニだったのがいけなかったのか。ちょっと厄介な側面も抱えてしまったのだ。

 

「こうやって、物質や知性のない生物とかなら問題なく具現化できるよ!」

「その魔導書の中に、主が描いた物語全てが記されているのか?」

「うん! だって、ウチがこの100年で書いた本だけで床が抜けかけたし………ウチの自伝作成依頼があった時についでで作ったんだぁ。いいっしょ?」

「ああ。これならば、必要な本を毎回持ち出す必要もなくなるしな」

「出会った当初はそれで大変な目に遭ったからね」

 

 吾輩は漫画でしか知らないがユニの目が死んでる事から概ね同じことが起きていたらしい。吾輩も同じ目に遭うのかなぁ、やだなぁ。それにユニはある事に触れていない。吾輩も触れたくないが、これは聞いておかないと不味いのだ。

 

「で、主の禁書達はどうなんだ?」

 

 スッ、とユニは目を逸らした。吾輩は頭を抱えた。

 

「100年あって、そっちは何の進歩もないのか………」

「そんな、暴論言われても………ちな言い訳は許される??」

「勿論、聞こう」

「3世がこんな欠陥残したまま、ウチに引き継いだのが悪くない??」

「正論で殴るのやめてくれないか?」

 

 いやまあ、否定できないが………だって完璧な能力とか魔法とかって面白くないだろう? 何かしらの弱点があるからそれを踏まえて魔法を磨いていくのが異能バトルの醍醐味だと思うの。

 現にロジェやティアの魔法は水や雨とか霧に弱いし、モルガナでさえ空中に部屋や家を顕現させることはできないのだから。

 

「ウチの書いた物語の知名度が上がれば上がるほど、禁書達も成長するのはいいんだけどさぁ………自己が強固になるし、魂を宿しだすし、強力だけどすんごい扱いづらいんだからね!」

「でも、主がその分強ければ問題ないだろ?」

「まーね! ウチ、のってる時はめちゃんこ強いから!」

「ああ、頼りにしてる」

 

 知ってる。だってそういう風にキャラを詰め込んだのだから。

 原作の段階では主は、様々なエログッズとエロモンスターを生み出す女だった。電マから始まり、ぶつぶつがいっぱいついた手袋とか、感覚遮断穴の触手とか服を溶かすスライムとか。書いたら発禁を喰らいそうな存在の具現化が主の魔法だった。

 

 その結果が、主が生み出した道具や巨大な怪物による死ににくい体質と主人公のイカレっぷりが合わさり、機械姦でイキ死ぬほどに絶頂しつづけ、怪物に丸呑みされウン◯として出てくるなど死なないからとやりたい放題されるのが主の末路だった。

 

「そろそろ着くね! 引き渡しはウチに任せてもらっていい? 好きにしていいんでしょ?」

「………人道に反するなよ?」

 

 領都が見えてきて、ユニは思わず目を細める。明るいユニの含みに吾輩が問えば、彼女は何も答えずに開いていた魔導書を閉じる。

 血に濡れた鎌は消え、黒猫バスはゆっくりと粒子になって消えていく。ふわりと全員を地面に降ろして、消えた後に彼女は漸く口を開いた。

 

「──そうなったら、また叱ってね。3世」

 

 

 

 

 

 

「んっ………ここは?」

「起きたか、ロジェ」

 

 あの後、寂しげに笑ったユニはこれ以上、喋る事はなく、吾輩達をクロイツベルンの屋敷へと連れて行き、何が起きたかを説明してくれた。ルーフェン殿は全て聞き終わると、ロジェを客室で寝かせてくれた上に医者まで呼んでくれた。

 

 その間に、ユニは氷像となったリリスごと何処かに行ってしまったが追うのはやめた。追って欲しくはなさそうだったし、ロジェも心配だったからな。

 

 医師による診察結果は魔力欠乏による気絶らしく、魔法を覚えたての子供がよく陥るガス欠のようなものらしい。魔力量が成長に連れて増えてくるならば、いずれはこんな事にもならないとか何とか。

 

 しっかり休めばいいと太鼓判を押されたので、クロイツベルンの者達は近くの宿を手配しようとしてくれたが、それに待ったをかけたのがルーフェン殿だった。

 

『彼女はモナの名代に加えて、あの三羽鴉の1匹を落としたのです。そして、その発端も辿れば私たちの依頼によるもの。彼女はこの屋敷で休ませます。異論はありますか?』

 

 反論はあったが、それでもと無理を通してくれた事でロジェはふかふかで暖かな部屋でぐっすり眠っていたのだった。結局、その日はロジェは目覚めず、ユニも帰って来なかったのでルーフェン殿がモルガナに手紙を書いてくれたらしい。

 

「以上が、主が寝ていた後の話だ。因みに依頼は達成したとさっきルーフェン殿の署名付きの達成状をもらった所だ。これでモルガナに頼めば、王宮の中に案内してくれるぞ」

「そ、それは良かった………ところで、ボク涎とか垂らしてなかった? こ、こんなベッド汚したりしたら弁償だけで費用が、とんでもないんじゃ」

「主の目の前に財布がいるのだから気にするな」

「人を財布呼ばわりするのって、ボクどうかと思う」

「主はそのまま清く正しい義賊になってくれ」

「ボクが言うのもなんだけど、矛盾してない??」

 

 ベッドの近くに置かれていた水差しから水を注ぎ、ロジェに渡せば彼女は一気にそれを煽り、自分の乾きを自覚する呼び水となったのか水差しごと掴むと半分ほど飲み干した。

 

「………何だか、実感が湧かないや。ボクが本当に奴隷組織の最高幹部を倒したなんて」

「漸くわかったか? 主の力はそんじょそこらの奴より凄いんだと、いい加減自覚しろ。あまり自分を低く見積もると周りからもそう扱っていいと思われてしまうぞ」

「実感、こもってるね? 実体験?」

「さあな」

 

 少なくとも吾輩にとってはいらない経験だったのは間違いない。体を壊して追い詰められて、死ぬ事が救いだと思う迄働くのは馬鹿馬鹿しいと学べたのが唯一の成果かな。

 

「………確かに、ボクは他の人に比べたら優れてるのかもね。でも、それと比べちゃならないんだ。ボクはルノワール一族なんだから」

 

 それでもロジェの顔は晴れない。三羽鴉は今後のシナリオを考えると確かにそこまで強い相手ではないかもしれないが、それでも王国の軍人達が捕まえられなかった一角を落としたのだから少しくらい調子に乗ってもバチは当たらない。

 

 なのに、ロジェは何かに対して自分を卑下し続けている。ルノワール一族という名の呪いに取り憑かれているように。

 

「ロジェ。主のその自信の無さは何処から来ている? 誰かと比べているのは分かるが、それは誰なんだ?」

「………クラウンには言ってなかったね。4代目当主。ルノワール一族最強と謳われたボクのお父さんだよ」

「………最強なのか、主の父は」

 

 あり得ないと言ってやりたかった。吾輩が知る主の父はルノワール一族の恥晒しとまで呼ばれた義賊ではなく、泥棒とすら呼べない詐欺師だったのだから。

 

「父は帝国では名前がよく知られてたんだ。それこそ、多くの貴族達に昼も夜も関係なく追われるくらいにはね。家畜牧場に居たのも奴隷達を解放するためだったんだけど、そこで母に出会って恋に落ちたんだって。心を盗まれた父は母と共にいる為に、幽閉されたんだ。かっこいいよね」

「それが本当ならな」

「でも、本当に父さんは凄かったんだ。歩法の知識をボクにも理解できるように話してくれたし、ボクが1日でマスターした影駆も父さんは全部の歩法を1時間で覚えたくらいに天才だったんだ。それに比べればボクはまだまだだよ」

「歩法を? 見せてくれたのか? 主の父が開発出来ていたのか?」

「うん。水の上を走る『水駆』って奴だけどあの場所に水なんてないから見せられないって笑ってたよ?」

 

 ふむ、本来のロジェの父はつまらない詐欺師で、ルノワール一族たる証の歩法をマスターできず、後継に新たな歩法すら残せなかったという設定だった筈だ。それでも彼は父として娘に歩法を託して、娘を庇って殺された。

 だが、この知識は吾輩の描いた漫画でしかない。もしかしたら、既に何かが変化して彼が最強だったのかもしれない。

 

「そうか。主の父は凄かったんだな。それと比べると主の自信の無さも分かる」

「うん。ボクは父に比べれば大した事なんてない。じ、地味だし、陰気だし、食いしん坊だし、全然キラキラしてないし──でも……、それでも、どうしても……目指したい姿があるんだ」

「それは?」

「ぼ、僕は、僕は──僕は……! ……っ。……るっ、ルノワール一族の中で一番……っ、一番になりたい! そして、一族を再興する!」

 

 まだどこかぎこちないながら、それでも語られたロジェ自身の夢、それは吾輩が知ってる内容のままだった。

 自分に自信の持てない彼女がどれほどの勇気を振り絞ってそれを自分に語ってくれているのかを理解した上で、吾輩は静かに彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「ルノワールの秘伝書があれば、そこへ行ける気がするんだ。だから、ボクは何としても手に入れたい………だから、その、一緒に、付き合って、く、くれない?………………あっ、いや、その! くれないって言うのは、もちろん、い、嫌じゃ無ければ、ってことなんだけど」

 

 そして絞り出すように紡がれる、自分と一緒に歩んで欲しいという決意。

だが、いきなり根が変わったわけでもなく、最後の最後でロジェはどこか締まらず尻込みしてしまっていたが──それが何処か彼女らしい。

 

「もちろんだ。一緒に夢を叶えにいこう。吾輩がちゃんと見ててやる。モルガナもアルチナも吾輩が死ぬまでちゃんと見届けたんだからな」

「そういうことするから、2人から執着されるんじゃないの?」

「そうかな? そうかも………」

 

 歯切れの悪い吾輩にロジェが笑えば、彼女の腹の虫が唸りを上げる。一気に真っ赤になってしまったロジェに苦笑し、釣られて2人で笑った後に吾輩達は朝御飯を貰いに行くのだった。

 

 吾輩は猫である。名前は名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。因みにロジェは珍しく朝御飯を遠慮して、3人前に収めた。ルーフェン殿は引いてた。

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