吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。朝御飯を食べた後、吾輩達は街の散策に出る事にした。迎えはモルガナ達が来てくれるらしい。
「って、ルーフェン殿から聞いてたんだが??」
「何でここにいるの??」
「クロに何かあったかもしれないと思い、すぐに駆けつけたんですよ」
「建前でもいいからロジェちゃんが心配だって言葉も入れましょう? 姫様?」
何とびっくり、屋敷から出た瞬間にモルガナとアルチナが迎えに来ていたのだった。王国からここまで2日かかるんだぞ? 手紙もまだ届いてないだろうに、どうやって………あっ。
「転移扉か………」
「流石はクロ。話が早くて助かります。モルモルポイント贈呈します」
「それは貯まったら何と引き換えられるんだ?」
「美人でお金持ちなお嫁さんがついてきます」
「間に合ってるので遠慮します」
首を傾げて疑問符を浮かべるロジェに経験したであろう事象を信じられないアルチナに向けて、吾輩が簡潔に説明を始める。
「転移扉ってのはな、モルガナの魔法と錬金術を合わせた扉と扉を繋ぐ道具なんだよ。恐らくだが、ルーフェン殿に作成した扉を分け与えてる………で、合ってるか?」
「はい。ルーフェンは私の友人ですから。完成したその数日後に、プレゼントしました。暫くの間は頭を抱えてましたが、泣きながら喜んでくれましたよ」
「どうしよ。その涙が嬉し泣きではないのがボクにも分かる」
「物流の概念壊しかねない道具を簡単に渡されたらそうもなるわよねぇ。お姉さんも渡されたら斬ってなかったことにするわぁ」
モルガナの表情から善意で渡したんだろうなぁってのは伝わるが、ルーフェン殿は振り回されたはずだ。公開する訳にもいかず、まして秘密が明かされてしまえばその扉を狙いに来る者たちは多いだろう。
「今度からはいきなり渡す前にきちんと性能を説明してから渡そうな」
「ルーフェンと同じ事を言うのですね、クロ」
「もしかして、モルガナさんって微妙に抜けてる?」
「ロジェちゃんやおはぎ先生がいない間に、起きた事説明してあげたいくらいだわぁ」
微妙に疲れ切ってるアルチナに吾輩がいい笑顔を向ければ、そのまま頬をもにょもにょされる。わ、吾輩が世話役とはいえ吾輩が全部悪い訳じゃないだろうに! え? 貴方が甘やかすから? 子供が出来たら、甘やかしそうって? それ、彼奴にも言われたわ。
「さて、2人とも時間はありますか? ありますね? 今から、ルーフェンのアトリエに向かいますので着いてきなさい」
「え、拒否権は………?」
「ん? ありませんよ。何故なら私たちの戦闘服を作って貰うのですから」
「「何それ、初耳」」
「モルガナ………主はもう少し、根回しする事や仲間達に事前説明をするようにしような? 仲間だから許されるってわけじゃないんだぞ?」
「これでも説明してるつもりなのですが………分かりました。以後はもう少し詳細を語るにしましょう」
吾輩の指摘にうんうんと、頷く新参2人。モルガナは微妙に納得いってなさそうだったが割と素直に頷いた。とりあえず、用意されていた馬車に乗り込み、目的地へ向かう。
ちなみにこの馬車は、モルガナがここにいる為の言い訳用なのだ。ルーフェン殿が迅速に手配してるらしく、クロイツベルン家の紋章が彫られている。
「これ、吾輩は後で金貨を詰めた饅頭でもプレゼントすべきか?」
「やめてよ、先生。帝国でよく見る賄賂の渡し方とかお姉さん幻滅しちゃう」
「あ、やっぱりあるのね。こういう形式」
しかし、長閑ではあるなぁ。今の今までがどったんバッタン大騒ぎなだけでもあるが。こうやって3人とのんびりと茶菓子をつまみながらゆったり移動出来るなんて思ってもいなかった。
「ユニもいれば良かったのにな」
「ユニは予定があると言って、温泉街の方へ旅立って行きましたよ。ついでに軍人達に三羽烏を引き渡して」
「あ、そ、その事だけど………依頼!達成したよっ! や、約束、覚えてるよね!」
モルガナの目が薄く細まる。ただでさえ冷たい印象を与える彼女がそんな顔をすれば、ロジェは泣いちゃうだろう。ちょっと半泣きになってるぞ。もうちょい愛想良く行こう。
「あの時、交わした言葉を覚えていますか?」
「お、覚えてるよ………信頼がないからボクは王宮に導けないって。だから、依頼を達成したんだ」
「その通りです。信頼は何よりも重い。失うのは容易く、得るのは非常に難しい。信頼がなければ言葉に説得力は生まれず、価値すらも消えて無くなるのですから。その上で──貴女は私の信頼を勝ち取った」
「それって、つまり………」
「私からの依頼の達成に加えて、王国を悩ませていた三羽鴉の最高幹部の拿捕という手柄を立てたものが無名であっていいはずがない。貴女の名前は既に王宮に挙げられているのです」
「要するに、王宮もまたロジェスティラという人物に興味を抱いたと?」
「どこまで掴んでいるかは分かりません。ですが、貴女は彼らの視界に入った。故に私からは貴女にこれを渡しましょう」
「こ、これって………?」
渡されたのは手紙だ。ただし、羊皮紙ではなく、この世界ではかなり珍しい白い紙。そこに王家に伝わる紋章と認められた証が記されていて。
「──王宮からの呼び出しです。此度の活躍に褒賞を与えてくださるそうですよ。よく頑張りましたね」
「つまり、ロジェちゃんが勝ち取ったのがその手紙ってわけねえ。誰の力でもない。貴女自身の手柄よ、ロジェちゃん?」
モルガナやアルチナの褒め言葉に、手紙を大事そうに抱えるロジェ。その顔には喜びが綻んでいて、見てるこちらも何だか嬉しくなってくる。
そんな話をしていれば、馬車が止まったので窓から顔を出す。そこには吾輩が漫画で描いた通りの立派な煉瓦式の建物が建っていた。
参考にしたのは、北海道にあるあの赤煉瓦庁である。あの大きさと赤煉瓦による美しさは実際に見ると、おおとため息を漏らすほどだ。寸分違わずとまでは言わないが似たような建物に吾輩はモルガナに抱えられて入っていく。
中に案内されると、多くの女性たちが針と糸でせっせと服の刺繍を施している。モルガナは彼女達をスルーすると、更に奥に進み、階段から地下へ移動。
薄暗い中で古着らしき大量の服が吊るされた部屋を更に進むと、いきなり赤絨毯と屈強な護衛達が出迎える。彼らはモルガナの姿を見ると、吾輩達を先に入れて、アルチナとロジェの2人に身体検査を行う。
5分後、彼女たちも部屋に招き入れられると先程の古着の倉庫とは打って変わって、イタリアンスーツ店のようなテーラーと何人かの従業員が吾輩達の前に現れた。
「久しぶりですね。モル? もう少し顔を出したらいかがですか?」
「お互いに面倒事はごめんでしょう? 私たちは錬金術師と後援者。そのくらいの関係だと周知していた方が都合がいいのですから」
そして、そんな吾輩達の前に令嬢らしいドレスではなく動きやすさを追求したパンツルック姿のルーフェン殿が両手を広げて出迎える。モルガナも吾輩をロジェの頭に置くとその抱擁に答えた。
「名代さんも先程お会いしたばかりですが体調は大丈夫ですか?」
「アッ、ハイ」
「それと見ない方ですね………新人さんですか?」
「ええ。アリシアって言うの、よろしくねぇ?」
平然と偽名を名乗って握手に答えるアルチナにも気にせず、ルーフェン殿はソファに座るように促す。先程まで仕事をしていたのだろう、衣類のデザイン画が机中に散らばっていた。
「約束のものは出来ていますか?」
「昨夜に、何とか。そちらの名代さんが道具に必要な素材を揃えてくれたおかげです。アレを持ってきてください」
両手でパンパンと叩くと、社員なのか使用人なのか分からないが彼らがクローゼットから見ただけでも高いとわかる夜会用ドレスと………黒で染まったドレスを持ってきてくれる。
夜会用のドレスはそれぞれ紫、藍色を主体にされており、あからさまに彼女達2人のために仕立て上げられたものだった。
もう一着の黒染めのドレスは片方はゴスロリ風なものと、肩や背中を惜しげもなく晒す色気があるものの2着。どちらがどちらかは一目で見分けがつく。ロジェ、主はゴスロリだぞ? そもそも主はあんなに肌を出せぬだろう。
「どちらのドレスにも錬金術の布が使われています。こちらは汚れを弾き、水洗いしても痛みませんし、簡単に汚れが落ちます。大きさの調整は言っていただければこちらで調整しますので、気軽に申し上げてください」
「いつも助かります。ルーフェン。貴女の仕事はとても素晴らしいものだ」
「こちらこそ。モルの錬金術で作成された布があってこそです。そうだ、パトリシアさんはお元気ですか? 今度また機会があればお茶会をしましょうと伝えておいてください」
モルガナとルーフェンが談笑してる間に女性2人がロジェやアルチナにドレスを合わせて微調整をしていく。肩幅や胸元、胴体などを測った後、そのまま隣の部屋へ連れて行かれた。
吾輩も着いて行こうとしたが、護衛のいかつい男に掴まれて、そのまま部屋から出されてしまう。仕方あるまい、毛繕いでもしよう。かっこいい服に毛玉が付くのは皆もやだろうしな。
「チピチピチャパチャパ、はい!」
「「ドゥビドゥビダバダバ!」」
毛繕い完了し、暇だから猫ミームダンスをいかつい護衛達と踊っていると漸く扉が開かれる。吾輩、実は結構2人の姿を見るのが楽しみだ。おめかし2人を見るのは俺も初めてなので、少しだけどっきどきである。
まぁ普段から美人さんなので、だいたい想像は……つ……く……が、
「久しぶりに正装したけど、いいわねぇ。男達の情欲を煽るドレスじゃない。女としての美しさを表すドレスってのも」
「うっ………お、落ち着かない。どうして、世の中の女の人ってこんな腰布だけで生活出来てるの?」
「発想が野蛮人すぎよ、ロジェちゃん」
アルチナのドレスは紫を基調とした肩口や背中を露わにした体のラインが出るようなタイプで凹凸の激しいボディラインが丸分かりであり、少し動くだけで豊かな双丘が揺れるのに、吾輩の理性が捻じ曲がる音が聞こえてくるくらいだ。
逆にロジェは藍色を基調としたミニスカドレスだった。鍛えられてはいるが、しなやかな美脚を惜しげもなく晒しており、今はまだ可愛らしさが勝つが大人になった彼女が着たらまた別の破壊力が生まれそうな服に吾輩も頷くしかない。
「いいな、2人とも! アル…アリシアは大人の色気重視でロジェは可愛らしさ重視なのか! 似合ってるな!」
「そ、そうかな? ボク、こんな綺麗な服着るの初めてで不安だけど………」
「お姉さん的には30過ぎてここまで露骨なのはいかがかと思うけどねぇ」
「そのような事はありませんよ。帝国貴族には40超えてもご令嬢などと嘯く方達もいらっしゃいます。そんな若作りに固執し、本当の美を忘れた人達に比べればアリシア様はとても作り甲斐のある方でした」
「ルーフェン殿の言う通りだぞ、アリシア? 自信を持て。主は美人だし、スタイルも抜群だ。吾輩が猫じゃなかったら、お付き合いを………OK。この話はやめよう、モルガナが恨めしそうに見てる」
「うん。ボクもそれがいいと思うよ」
背筋に冷や汗が滲むくらいにじっとりした視線が突き刺さるのを感じ、冗談混じりの発言を途中で切る。アルチナは少し頬を赤くしていたが、ヒュッと息を吸った後にロジェを連れて逃げるように元の部屋に戻っていった。
残された吾輩は腹をゆっくり掴まれ、そのまま上昇。振り返れば、これ以上ないくらいに笑ってはいるがとんでもない圧力を感じるモルガナがいた。
「………所で話は変わりますが、ルーフェンには私のドレスも作ってもらってるのです。勿論、見てくれますよね? 20着くらいありますが」
「ハイ、吾輩………モルガナの着飾った姿が見たいです………」
「よろしい。では、ルーフェンお願いします」
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世。キミリア。その後、吾輩はモルガナのドレスをいっぱい見た。何故かメイド服やチャイナドレスとかソシャゲのDLCコンテンツみたいな服装がいっぱいだったが、どれもこれも着こなす彼女に吾輩も調子良く、全ての支払いをするのだった。
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