吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
今年も投稿頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。全くロジェが帰って来ない………となれば、捕まったか。若しくは彼女の元に案内されたかだな。
「モルガナ、アルチナ。吾輩ちょっと出てくる」
「おはぎ先生、お姉さんも着いていこうか?」
「いんや、8割くらいで内密な話をしてるだけだろう。2割を引いたら脱出準備を頼む」
「危なくなったらこの鈴を鳴らしなさい、クロ。その瞬間、私がこの城を無に帰しますから」
「そうならないように吾輩、全力を尽くすわ」
薄々、違和感は覚えていたのだろう。モルガナ、アルチナの提案に吾輩は丁重に断りを入れて、扉から飛び出した。
向かうは城の一角、この国の王女にして不治の病に侵されたミスト・アルキミアの部屋である。
彼女は幼少期にある亜人から呪いを受けた結果、成長するに連れて太陽光によって肌を焼かれて行くようになり、成人たる15歳を迎える頃には肉体は上半身しか残らないという有様だった。
そんな彼女は何とか呪いを解こうと、あらゆる魔導書や錬金術を試して行く。ルーフェン殿により生み出された服が献上されているのもその一環だ。そして、彼女は遂に自分の身に何が起きて、どうすればいいかの解決策に繋がる手がかりを手に入れた。
それがルノワール一族に残された秘伝書なのである。
さてと、話してる間に吾輩がたどり着いた部屋の扉は固く閉ざされていた。やはりというべきだが、吾輩はとりあえずにゃーにゃー泣いてみる。誰かが開けてくれたら御の字だ。
暫くにゃーにゃー鳴きながら扉をカリカリ爪で引っ掻いていると、中から音を立てて扉が開かれた。現れたのは、メイド服。即ち、ウルシュラである。
「にゃー」
「誰かと思えば貴方様ですか、キミリア。ああ、そのわざとらしい演技は結構、ウルスラから情報は同期してますが故に」
「にゃっ!?」
「猫を被るという言葉がこの国にはありますが、猫が猫を被るほど愚かなことはありませんね。知性も人間から猫並みに落ちてるなら、猫として生き直すことをおすすめしますよ」
「すっげえ、辛辣!? 吾輩、主に何かしたかなぁ!?」
「──別に、何も」
意味ありげに鼻で笑われた後に、ゆっくり扉を閉めようとするので吾輩も体を滑り込ませる。しかし、ウルスラから情報同期してるって事は………このメイドもモルガナが生み出した人形なのだろうか?
しかし、吾輩が知る限りはモルガナはある事情からウルスラの作成に踏み切った訳で、わざわざウルシュラなんて名前がよく似た別の人形を作るだろうか。甚だ疑問である。
「王女殿下、新たなお客様です。不吉な黒猫なので処分しても?」
「へ? クラウン!? だ、だめだよ! 彼はボクの宝物なんだぞ!」
「キミリアが宝物? 悪い事は言いません。やめておきなさい。この黒猫は死に縁が深いんです。放っておいたら勝手に死にますよ。それこそ、足を滑らせてミンチ機に頭を突っ込んで死亡みたいな」
「それは、そうかも………」
「ロジェ、頑張って反論してくれないか?? 吾輩も自覚はあるけど、そんな馬鹿な死に方はしたことないよ??」
「ウルシュラ、今日は随分と機嫌がいいんだね。舌戦が冴え渡ってるよ」
「吾輩のテンションは下がる一方なんだが」
罵倒が機嫌のバロメーターになるとか聞いたことないんだが?? ウルスラはもっとこう、純真で天然でほわほわした感じのアホの子だっだ筈なのに同型機でどうして、こうも違うのか。
自分から混じっておいて何だが、だいぶ気勢は削がれている。しわしわ黒猫になった吾輩をロジェが自分の頭に乗せると、王女殿下は咳払いをした。話を切り替えるようだ。
「では改めまして。わたしはミストと申します。この国の王女にして、呪いを受けた憐れな女………と同情してくれてもいいんですよ? あ、因みにこれは冗談ね? ほら、笑って、笑って!」
「わ、笑えないって………な、何故そんな風に?」
ブラックジョークをかましてくる殿下にたじたじになりながらも何とか会話を続けようとするロジェ。いいぞ、自分から会話できてるぞ! この調子で頑張れ!
「2年前に、とある魔族から呪いを受けたのです。その者はわたしにこう言いました。『我が輩の嫁になるのなら、血の呪縛を解いてやろう。だが、貴様が最期まで人間でありたいと言うならば、怪物となって死ぬがいい』」
「血の呪縛………?」
「はい。その者はわたしに自身の血を流し込んだのです。魔族の血が人間と混じり合う訳もなく、拒絶反応を起こした結果、わたしの肉体は今に至ります。謂わば亜人のなりそこない。若しくは上手く混ざらないカフェ・オ・レと言ってもいいでしょう」
「キミって会話の節々でふざけないといけないの??」
「やめてやれ、ロジェ。あれも彼女なりの処世術なんだ。許してやれ」
「失礼、会話なんてウルシュラ以外だと久しぶりだから。つい、胸が踊ってしまって。まあ、わたしに踊るほど胸はないんだけど」
「やめよう? 突っ込んでいいかわからなくなるからさ!」
ちぇーっ、と唇を尖らせるがかさかさの唇は動かすだけで皮が剥がれていく始末。呼吸をする胸元は全く上下に動いておらず、視線もたまにぶれているくらいだ。
今既に生きている事が奇跡だと言うのに、それを隠して気丈に振る舞う彼女。ロジェは吾輩なんかよりも目がいいから容体が酷いことにはもっと早く気づいているはずだから、会話を早く終わらせようと急かしている。
「この体にされてから、わたしは対象を調べ上げてついにその正体が………魔族の最高幹部『七元徳』によるものだと分かりました」
「魔族の最高幹部………血の呪縛、もしかしてやったのは『慈愛』のシャリテーヌか」
「っ! その名前をご存知でしたか。名もなき黒猫さん。そうです。愛の伝道者を自称する吸血鬼『シャリテーヌ・C・カンタータ』………王国でくまなく探している魔族の1人です」
この辺りはどうやらそのままらしい。魔族の最高幹部、神から7つの美徳を授かった精鋭中の精鋭。サジェスはその美徳の『知恵』担当だったが亡くなった。しかし、シャリテーヌはどうにもそのままらしいが姿を見せる事はほぼないだろう。
「美徳の持ち主たる魔族達はそう簡単に姿を現す事はないだろう。『希望』『信仰』『慈愛』『勇気』『知恵』『節制』『正義』。これらの美徳を持つ者は魔族の中でも特権階級にあるが、相応しくないと神に思われた時点で剥奪される。故に方針としては神に媚びを売る事が先だ」
「神ってのは誰のことなんだい? クラウン? あのミュウって女神?」
「いえ、ルノワール様。ミュウ様は『亜人』達の女神であり、かつては我が国を設立した錬金術師クロス様の仲間だとされたお方です。だから、我が国でも女神像が祀られています。しかし、魔族達の神様はまた別。その名前は──」
「──『メイソン』か?」
「………その名前もご存知でしたのね。はい。従属男神『メイソン』。創造神に仕える男女神の片割れにして、繁栄と厄災を司る邪神と我らの間では呼ばれています」
「どうかしたの? クラウン、頭なんて抱えて」
よ、よりによってここでその名前が出てくるかぁ………。
メイソン、こいつはかつて吾輩が描いた漫画の設定では創造神であった存在である。含みがある? 当然だろう。吾輩だって、ラスボス候補をこんな名前にするつもりはなかったのだから。
だが、とあるお方からこのスピンオフを描くに当たって自分の名前を神様にしろとのオーダーがあったので仕方なくこの名前になり、ラスボスは神様!という王道の展開が出来なくなってしまったのだ。
ただある意味、スピンオフから原作に繋がることを考えれば邪神による後押しという理由づけになるのでいいのかもしれないと思ったのは認める。
それはそれとして、奴が創造神から格下げされているのはどういう事なのだろうか。他の誰かが神の地位についたのか………誰が? 吾輩が知る限りのキャラに神様になれるような奴はいないと思うが。
「ち、因みにだが人間達の神様は誰だ? 創造神とやらか?」
「実は、創造神の名前全てはわかっていないんです。伝承によれば『男でもあり女でもあった、その方こそ───ス。我らが創造神である』としか」
「王女殿下、失礼ながら追記しますと法国では聖女勇者こそが創造神の生まれ変わりだと挙げられております。法国でも崇拝されていますし、大多数が聖女勇者こそが創造神だと言っておりますので。話を戻しましょう。脱線しています。貴方のせいですよ、キミリア」
「お、おう………すまん。それで、ロジェにミスト王女殿下は何をさせたいんだ?」
「ミスト、で結構ですよ。黒猫さん。人が人に礼を尽くすのは当たり前の事。ですが、動物にそうしろと言うほどわたしは狭量ではないので」
「では、ミスト殿と。仮にも元人間だったからな。形だけでも礼は尽くさせてくれ」
ロジェの頭に乗りながら、頭を下げる。吾輩の人間発言を聞いて、ミスト殿の目が僅かに見開き、そこから同情を感じる。吾輩も見た感じは確かに魔族か何かに呪いをかけられてと思われても仕方ない。これで少しは警戒心を解いてくれたらいいが。
「ごほん、ルノワール様にしていただきたいのは、貴方様が持つ秘伝書を見せて頂きたいのです」
「………? え? ボ、ボクは秘伝書なんて持ってないよ??」
「………え?」
「え?」
「………キミリア。美少女の頭の上でふんぞり返ってないで説明を求めます。貴方の無駄に鋭い勘は何のためにあるのですか」
「主は吾輩の何を知っているというのだ」
「弟子さえ誑すような人たらしにいう必要などありませんが?」
「ねえ、何でそれ知ってんの?? 吾輩、嫁と妹と親友しかそれ知らないんだけど??」
当てが外れて首を傾げるミスト殿、そもそもそれを手に入れる為にここまでやって来たロジェの間でどうやらすれ違いが起きてるらしい。ウルシュラからの見下す目線からの爆弾発言に吾輩、戦慄。
どうして、吾輩が愛弟子に好意を抱かれてたことまで知ってるんですか?? 一応、吾輩の潔白のために言うが吾輩は嫁一筋である。後輩ツンデレ嫁に尻に敷かれてたくらいなのだ。決して弟子には手を出してはない。
「………秘伝書に関してだが」
「話を誤魔化したね、クラウン」
「うるさい。とにかく秘伝書に関してだが、ミスト殿が欲しがっている秘伝書は………後半のページだな?
「っ!? 何それ!? ボク、知らないよ!?」
「知らなくて当然だろう。ロジェ、主は少し自分の事に違和感を覚えた事はないか? 特にリリスと戦った時だ。何でもいい、あげてみてくれ」
「えぇ………? うーん、あっ。ボクの攻撃があんまり効いてなかったとこかなぁ? ボクの蹴りをまともに受けても立って来てたし」
「………あれは、ほぼ死にかけだったがな。だがまあ、観点は悪くない。正確には主の魔力強化した肉体だけで亜人の魔力で強化した肉体強度を上回った事だ。魔法を使ったならばともかく。そんな事があり得るか? ミスト殿」
ミスト殿に水を向ければ、彼女は黙って首を横に振る。当然だ。恐らくアルチナでさえも魔力強化した亜人の肉体を上回ることは出来ない。魔族ならば、魔力強化が出来ないのでアルチナほどに鍛えれば抜けるかもしれないが、亜人は魔族の肉体+人間の魔力強化が乗るのだから、普通の人間が勝つのは無理だ。無理なのだ。
それこそ、
「ロジェ、心して聞いてくれ。主は………いや、ルノワール一族は
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。かつて原作者は使わない設定を生み出し、吾輩はそれを再利用した──即ち、『吸血鬼の血を継ぐ義賊』ルノワール一族は亜人の一族でもあるという事だ。
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