吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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お待たせしました。
またもや次回予定は今週の金土日のどれかになりそうです。

そろそろ50話の壁が見えて来てびっくりしてます。久しぶりにこれだけ長い作品書いてるんだなって。支援絵とか下さってもいいんですよ?(チラッ)


その後、建物内に彫刻が立った

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。たっぷり食べてぐっすり眠って、気力体力充分である。そして今は、全員揃って朝ご飯を食べる。

 

「朝ご飯は質素だね」

「昨夜は随分と重たかったですから、今朝はあっさり目です。子持ちのスメルトという小魚を焼いたものに、スープ。それと温泉街名物の温泉卵です」

「あたたた、頭痛い………飲みすぎたかしらぁ」

「二日酔いは勘弁してくださいよ、アルチナ。今日は貴方が主役なんですから」

「分かってるわよぉ。あ、これ? 出汁よねえ? 帝国のぶくぶく貴族が捨ててたのをよく見たわぁ………沁みるぅ」

「飲むと、お腹ほこほこするね。こんなに美味しいのにもったいない」

「温泉卵にも出汁がかかってるな。吾輩好みの味付けだ」

 

 あっさりとした朝ご飯を食べた後は、皆が着替えや準備してる間に朝から内風呂に浸かりにいく。大きな檜の風呂で湯の暖かさと、朝の澄んだ外気の冷たさに心地良さを感じながら、湯に浸かり、空を仰ぐ。

 

 今日のロジェは個人行動の筈だ。であれば、三羽鴉と戦う事になるだろう。場所はどこか分からないが、ロジェなら負ける事はあるまい。食欲のグラストンはいい相手だ。奴の魔法はロジェに自分を振り返るいい機会を与えるだろう。

 

「今回でロジェも少しばかり、成長してくれるといいが」

「あっ、3世いたー!」

 

 ゆっくりと息を震わせて、自分の気持ちを静かに鎮めていると、内風呂の窓から何者かが顔を出す。まあ、誰かは分かるがここはあえてお約束といこう。

 

「にゃーん、ユニのえっちー」

「いやいや、1番えっちなのは3世でしょ。魂の形からして人間時代えぐいくらいモテててそうじゃん。ほれほれ、ウチに教えてよ〜」

「その話はまた今度な。そんで、何しに来た? 三羽鴉についての共有か?」

「まーね! 今日、ロジロジは単独行動なんでしょ? グラストンに襲わせようと思ってさ! どこ行くか、3世は知ってる?」

「クロスのアトリエに向かうそうだ。吾輩、あの辺りはよく知らないが被害が出ないような場所を知ってるか?」

「あー、なるなる。心当たりあるからてきとーに誘導しとくよ。3世は? アルアルとかと一緒に治療に行くの?」

「ああ。だから、ロジェの方は頼む。負けるとは思わないが、何かあったら困るからな」

「──なんかさ、ロジロジに甘くない? 3世」

 

 低い声が床に重く落ちた。見上げれば、窓から覗かせたユニの顔は酷く不服そうで。

 

「ウチの時もそりゃ、子供だったからさ甘やかしてもらってたよ? でも、3世が亡くなった後はウチは100年必死に自分の力で頑張ってたわけ。このまま3世の敷かれた道に従わせるだけでいいの? あの子、考えなしに従うだけになるでしょ」

「………言い分は最もだが、まだロジェは12歳だ。15歳になれば主の言う通りに自分で考えて行動させるでいいと思うが」

「………まあ、いいや。ウチも子供の頃は駄々甘くしてもらってたし、我儘いっぱい言ってたからね。でも、ウチは忠告したからね。何でもかんでも道筋引いたらロジロジの為にならないよ! そんじゃ!」

 

 納得はしてない顔のままユニが逃げていったのを見送ると、後ろの扉が開く音がした。振り返れば、いつもの青と黒を基調とした魔女っぽいローブに身を包んだモルガナがいる。

 

「クロ? 誰かと話をしてましたか?」

「いんや。ただの独り言だ。準備はできたか? 吾輩はいつでも行けるぞ」

「もう少し待ってください。ドラゴの部下が準備に手間取ってると、ハクから連絡がありましたので。その間にしっかり毛並みを乾かしてあげますから、来てください」

「ああ、ありがとな」

 

 モルガナに抱えられて移動する吾輩はユニの言葉を思い返す。

 確かに、モルガナもアルチナも吾輩がいない時間が確かにあって知らず知らずのうちに大人になっているのは分かる。ユニに至っては島国を連邦国として成立させたくらいなのだから、文句を言いたくなる気持ちも分かる。

 

 本来のストーリーの流れを変えたくないから!なんて言うつもりはない、それなら吾輩はパティやロンにリリィの事も見捨ててる。変えられるなら変えていきたい。ただ、ロジェ周りはよく悪くも全員の影響がデカすぎるからな………助言は出来るが、あまり変えられない。

 

「言い訳だな。情けない」

「いや、ほんまにクロちゃんの言う通りや。幾ら新兵とはいえ、酔って寝坊とか有り得へんやろ。オレとか朝からロジェちゃんと走り込みして、朝風呂入っとったで?」

「あ、はい。果実水奢ってくれてありがとうございます」

「通りで起きたらロジェちゃんいなかったわけねえ。お姉さんも2日酔いがなかったら付き合ってたわぁ………ほんとよ?」

「誰も疑ってませんよ、貴女に関しては。ドラゴ、準備は出来ましたか? 予定より押しています。向かいましょう」

「せやな。そんじゃ、ロジェちゃんはここでお別れやったな。楽しむとええで。ぜひ、オレの実家の饅頭も食ってくれや」

「あ、はい。楽しみにします」

 

 考え事をしてたらいつの間にやら旅館の外にいた。既にドラゴはきっちりと軍服を着込んでいるが部下達はまだ服に乱れがあったり、髪が寝癖がある。そんなだらしなさに厳しい目を向けつつ、ドラゴは馬車に乗り込み、モルガナとアルチナを引き入れる。

 

「それじゃあ、ロジェ。あんまり食いすぎるなよ」

「お小遣いがないからと盗む事は許しませんよ。困ったら、ハク達使い魔に頼りなさい」

「お菓子があるからって知らない人についていったらダメよぉ」

「子供じゃないんだから、分かったってば。みんな、気をつけてね」

 

 ロジェと使い魔に見送られ、吾輩達は馬車を走らせる。昨日は夕方についたせいで良く見ることが出来なかった街並みだが、今日は太陽が気持ちいいくらいの晴天。陽光を浴びて街が煌めいてるようだ。

 

 見上げれば、街の背景には巨大な赤土の活火山が鎮座している。山頂からは常に細い黒煙が立ち上り、それが空の青さを濁らせているが、住人たちは気にしてない。いつもの事っぽいが、吾輩達からしたら微妙に違和感があるな。

 

 建物自体は降り注ぐ火山灰に耐えるため、家々の屋根は急勾配で、滑りやすい黒い瓦で覆われ、壁は熱を遮断する分厚い白壁のようだ。

 また道の両脇にある側溝からは、音を立てて熱湯が溢れ出し、常に白い蒸気が馬車の足元を包み込んでいる。

 

 昔、嫁と行った銀山温泉を思い出しながらも硫黄とどこか懐かしい薪を焼く匂いが鼻をくすぐる中、漂ってきたのは肉と野菜のいい匂い。角を曲がれば、なるほどその匂いの理由を理解する。

 

「あれ、凄いわねえ。大きな釜?」

「おっ、アレはな。この温泉街の名物『レリジェーンスープ』や。火山の地熱であっためた釜に温泉を入れて野菜や肉を入れたスープ。滋養強壮に効くって噂でな。湯治に来た客達が食ってくんや」

「ああ、あの足湯に浸かってる人達が食べてるのがそれか。美味いのか?」

「私は食べましたが。天然の塩味が効いたスープという素朴ですが力強い味ですね。何度も食べたいとは思いませんが、来たら食べるか。という感覚にしてくれます。せっかくですし、昼ご飯はそれにしましょうか」

 

 モルガナの提案に頷きながらも、吾輩は街並みを眺めていた。街のあちこちに設けられた公共の足湯には、旅装を解いて、重い荷物を下ろしたばかりの行商人が腰を下ろして疲れを癒す光景が流れる中、馬車が坂を登り詰め、街を一望できる場所まで来ると、今までの活気は薄れていく。

 

 何故ならここから先は、

 

「もうすぐ着くで。療養区。治療院と、湯場がある軍人達の施設や。ここから空気が変わるからあんまり騒がんといてな」

 

 区間に入り、馬車を降りる。吾輩を抱えたモルガナとドラゴが先導する先は、濃い硫黄の蒸気が、その療養してる治療院と湯場を優しく隠すようにゆらめいていた。

 

「王国軍のドラゴ・レイテ大佐や。湯場への入場許可を頼むで」

 

 建物入口で受付を済ませると、和装姿の女性が緩やかに案内をしてくれる。靴を脱ぎ、吾輩も床に降りると木製の床にじんわりと伝わる地熱を感じる。そのまま脚を進めると湯気のカーテンが吾輩達を出迎えた。

 

「………ドラゴ大佐、か」

「おう。湯治中、すまんな。約束通り連れて来たで。皆、集まってな」

 

 そこには火山の恵みを直接引き込んだ巨大な石造りの足湯と寝湯が広がっていた。袖が虚しく風に揺れる沐浴着を羽織った男たちや、杖を傍らに置き、失われた脚の付け根をいたわるように湯に浸かる者たちが、点在するように座っている。

 

 そんな中、注目を集めるように拍手したドラゴ殿と、後ろに立つ吾輩達に絶望を宿した視線が突き刺さった。

 

「紹介するで。こちらが皆の腕を治せる可能性を持つ女性や。自己紹介頼むで」

「アルチナ・L・キャロルよお。よろしくね?」

 

 ドラゴの言葉にその場にいた者たちの反応は、一様ではなかった。

 

「……本当なのか? 魔法で、本当に、元に戻るのか!?」

 

 脚を失っていたまだ若い兵士が持っていた杖を突き飛ばすような勢いでアルチナの方へ数歩、よろめきながら進む。その瞳には、恐怖に近いほどの切実な輝きが宿っているが、逆に古参らしき男は舌打ちをしてじろりと一瞥をする。

 

「………女か?」

「あら、女じゃ何か悪いかしらぁ?」

「ふん、今さら御大層な女神様のお出ましを信じられるかってんだ。切り落とされた場所からまた生えてくるなんて、トカゲじゃあるまいしそんな夢、今さら見せられてたまるか。放っておいてくれ」

 

 古参らしき男の声は震えていた。期待すらしていないようだ。それにドラゴが申し訳なさそうに眉を寄せる。

 

「すまんな。ここにいるんはアゼル卿が作成した義手や義足を与えられなかった奴らなんや。加えて法国から凄腕の神聖術でも治らんかった奴らばかり。期待を裏切られて来たから、希望を持つことすら出来んくなってるや。気を悪くしたらすまん」

「構わないわぁ。希望を持つことが怖いのは………お姉さんもよくわかってるつもりだものぉ。失礼、そこの坊や? 脚を見せてくれる? それと使っていい石はあるかしらぁ?」

 

 アルチナの問いかけに坊やと呼ばれた若い兵士は、おずおずと脚を見せる。欠損した足と無事な脚。両方を見比べた後、ドラゴが用意した石へ向けて、剣に手をかける。

 

「死印天華『零の開花』絶剣、抜錨」

「おい嬢ちゃん、一体何を………」

 

 魔法発動の文句と古参の男の発言を遮るように剣閃が走る。どれだけの人間が目に追えているかわからない太刀筋の後に、まるで実際の脚を思わせる石造りの彫刻が出来上がった。

 それをアルチナは掴み、若い兵士の欠けた足に添えて装着部分を合わせるように削ると嵌め込むように押し込んだ。

 

「はい、坊や。脚をあげて〜よし。これでちょっと待っててねえ」

「え、いや、あの?」

「はいっ! 指先を動かしてみて?」

「そんな事言われても………えっ?」

 

 暫くして、アルチナが手を叩き、それに戸惑いながらも脚の指先を動かそうとして………若い兵士は固まった。

 

「う、動く………指が、動く!? これって!?」

「お姉さんの魔法はそっくりなら手や目玉を作ってくっつけられるの。今はまだ繋がっただけだから、簡単にとれちゃうけど………3日もすれば完璧に脚になってくっつくわぁ。1か月もすれば感覚は戻るし、普通の生活までに半年。戦えるようになるには1年は必要よ。お姉さんが自分で確かめたから間違いないわぁ」

 

 アルチナが手を差し伸べ、若者をゆっくり立たせた瞬間、広場を支配していた静寂は、地鳴りのような咆哮へと一変し、

 

「……治った、本当に治りやがった!」

 

 堰を切ったように周囲へ伝播する。さっきまで冷ややかな目で見ていた古参の男たちも、現実に理解が追いつくとさっきまで座っていた椅子をなぎ倒し、這い寄ってくる。

 

「先生、頼む! 俺の脚も見てくれ! 脚が治れば故郷に帰れるんだ!」

「俺には娘がいる! この腕が戻れば、また抱き上げてやれるんだ、頼む、頼む……!」

 

  男たちの怒号に近い叫びが、湯煙を震わせる。彼らはアルチナの服の裾を掴み、泥にまみれた手でその足に縋り付く。アルチナはそれを聞き、ゆっくりと片膝をついて、泥だらけの手を強く握りしめた。

 

「大丈夫。全員治すわぁ。その為に、私が来たんだから」

 

 アルチナの振る舞いに傷病者の目に敬意が宿る。吾輩とモルガナは目が合うと、笑い合った。どうだ、ウチの騎士は最高だろ?と胸を張る。何で吾輩達が偉そうなんだとかいうツッコミは野暮なんでしないで欲しい。

 

「というわけや、ほな全員並べ。慌てず、騒がずに………ん? どしたん?」

「あ、いや………」

 

 期待に胸が高鳴り、高揚した熱に温泉の熱が負ける中、さっきアルチナに対して噛みついた古参の兵士が迷ったように口を開いては閉じていたが、意を決したように頭を下げた。

 

「さっきは………舐めた口を聞いた。非礼を詫びる。すまない」

「ふふ、いいのよ。気にしないで。それよりも早く並ばないと貴方、最後尾になっちゃうわよ?」

「っ!! ああ、本当にありがとう! これで俺もまた軍に復帰できる!」

 

 おっさんも列の並びに混じっていった所で、アルチナは肩と首を大きく回す。その間にドラゴとモルガナが多数の岩を用意して、それを見てアルチナは2振りの剣を抜く。

 

「それじゃあ、お医者さんごっこ始めましょうか!」

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。暫くして、アルチナは魔力欠乏によりダウンするが、先程までの陰鬱な空気は最早なく、ただ皆が笑った姿にアルチナも満足気に笑うのだった。




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