吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
50話がユニティの魔法お披露目回なのはいいのだろうか。
とりあえず頑張っていきますので応援よろしくです。
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。現在、アルチナがダウンしたので休憩所にて昼休憩中である。
「あ゛あ゛ぁぁぁ」
「また、はしたない声を………そんなに按摩はいいものなんですか?」
「まあ、吾輩も肩首患ってたし、気持ちは分かる。主も歳を取ると体の保全が必要になるんだ。これ、実体験な」
アルチナが休憩所の隅に備え付けられた按摩施設で全身解されてる間、吾輩達は名物のスープと温泉の蒸気で蒸された野菜達を食べていた。
味は先程のドラゴの言う通り塩味一辺倒だが、煮崩れる寸前まで煮込まれた野菜と染み付いた温泉の癖のある香りがあとを引く。柔らかくなった肉も独特の弾力が心地よい歯応えとなって生きている。
「全体的に評するのならば、力強い味だな。これ単品じゃなくて、付け合わせにパンとかの穀物を追加するといいんじゃないか?」
「正しくその通りや。というわけで地熱による天然の火加減で焼いたパンや。スープに浸すとええで」
吾輩もパンをちぎり、スープに浸すとなるほど、少々強いとも思える塩辛さがマシになった。それを味がない蒸し野菜で中和し、それら全ての様々な食感で飽きさせずに進ませる。日本食における肉じゃがのような立ち位置だな、これ。
「これもクロス殿が作ったものなのか?」
「いえ、これはクロス様の1番弟子が作ったとされているようです。女性だったようで、レリジェーンの名物や食事関連は彼女によりクロス様の故郷の味を再現されたようです」
なるほどなぁ。落ち着いたら吾輩もクロス殿のアトリエに向かうべきかもしれない。ほぼ日本人である事は確定済みとは言え、何かしら残してるかも。それこそ日本語で書かれたレシピとか。
「しかし、アルチナちゃん遅いな………寝とるんちゃうか?」
「かもしれませんね。様子を見てきます。ドラゴ、クロを見ててもらえますか?」
ドラゴの言葉にモルガナが衝立の向こうに消えていく。暫くすると、すよすよと穏やかな寝息を立てるアルチナを背負った彼女が出てきた。安らかな顔してるだろ? 寝てるんだぜ、こいつ。
「私は彼女を休憩室で寝かせてきます。女性用の仮眠室がありましたよね?」
「ああ。ただ少し歩くで。気をつけてな」
彼女がアルチナを背負って階段を登り始めた姿を見送り、吾輩も満腹になったお腹を撫でる。食後に出された麦を絞った汁………恐らく麦茶であろう温かなそれを啜りながら、一息つく。
「平和だなぁ………」
「まあ、平和なんは帝国以外やけどな。帝国は平和からは程遠いで。あんなんでも人類領の防壁や。崩れたりしたら、笑い話じゃすまん。軍人である以上、オレ達は真っ先に戦う義務がある」
「つかぬ事を聞くが、どうしてドラゴ殿は軍人になったんだ?」
「ん? 別に大したことはないで。実家の饅頭屋は兄が継ぐっちゅーからやる事もなかったし、錬金術の才能もなかったしな。飯も食わせて貰えるって事で軍に入ったんや。あとは、地元に軍人をもう少し配置出来ないかとか思ったりな」
やはり、彼は吾輩が描いたドラゴ殿のようだ。地元の温泉街には度々、火山から魔物が降りてくるのだ。基本的に軍人は常駐しているが、それでも王都よりかははるかに少ない。
ドラゴ殿はそれを憂いて、軍人になりある程度の地位を得たならば故郷に軍人をもう少し多く配置しようと考え、双璧と呼ばれるようになった後にそれを実施した。
「古傷が傷んだり、引退を考えてる古参たちや新兵を纏めてここに配置する事で簡単な訓練や心得も先輩方から伝授されるし、温泉で体を癒す事もできる。その結果とは言えんが、シャリテーヌが来た時も何とか撃退には成功したしな」
「その代償が彼らというわけか」
「せやな………ありがとな、クロちゃん。おかげで肩の荷が降りたわ。これで引退を考える奴らは増えるかもしれんが、まあしゃーない。命あっての物種や。それこそ、はよティーガーが並んでくれたらええんやけど」
「後進育成は大変だな。吾輩も何かあったら、全て弟子に任せるようにしていたが──」
不安、と言葉にしようとした瞬間、ドラゴ殿が吾輩を抱えてその場を飛び退く。同時に天井が崩れ、何かが先程まで食事していた机を破壊。土煙が舞う中で、青髪の持ち主がこちらに向けて吹き飛んできた。
「ッ!? 3世!? ごめん!! しくった!?」
「まずその体勢どうにかしろ。パンツ丸見えだぞ」
「光景はエロいんやけどな………何があったん?」
まんぐり返し状態のまま、声を掛けてきたユニに立ち上がるように促すと彼女は少しばかり耳を赤くしながら、口から血を吐き出す。先程の一撃で口を切っていたらしかった。
「ちょ、マジ聞いて?さっき三羽鴉のひとりに凸られたんだけどさー」
「なるほど。女の子を狙いにくるとか男の風上にもおけんな。手を貸すで、ユニティちゃん」
「あ、いや………三羽鴉自体はロジロジが倒したの。ただ、あの、かなり手痛い置き土産を残されちってね?」
「は、じゃあ、何があの土煙の中、に──」
吾輩の疑問を解決するように、土煙が晴れた。風を肩で切るように、堂々と歩いてくるのは帰り血塗れの男………いや、女か?
服装が布切れ引っかかってるだけのようで、大事なとこだけをギリギリ隠しているようなその姿にドラゴが唾を飲み込む音がして、ユニが冷たい目を向ける。
「………なんや、あれ。吸血鬼か? いや、外は晴天や。シャリテーヌの眷属やとしても日光の下で存在できるわけあらへん」
「マジでレベチすぎて語彙力失うんだけど! フツーの半吸血鬼は耐性あるし、酷くても日焼けを再生でごまかせるけど、あの子は次元が違う。マジで
「おい、まて、じゃあユニまさか………あの、半吸血鬼は!」
その女は何も喋らず、藍色の髪に隠れた顔を上げた。血走った赤い目と切り裂かれたような口角からはここまで生臭い鉄の匂いが漂ってくる。
背丈はすっかり大人びて、手足も伸びて女性らしさがありありと感じられる………だというのに、吾輩には信じられない。
「まさか、こいつはロジェだって──」
「あかん! クロちゃん!」
呆然とする吾輩の前にドラゴが躍り出る。同時にロジェらしき人物の脚撃がドラゴの顔面を捉えて、
「アホか。王国の双璧舐めたらあかんで」
その脚撃が破壊した何かにより、まるで突風に吹き飛ばされたように彼方へと吹っとんでいった。
「大丈夫か、ドラゴ殿!!」
「まあな。しかし、まさかオレの『風圧壁』まで貫いてくるとか………亜人なだけあって肉体の強さ尋常じゃないやん。下手したら死んどるで? よくユニティちゃん、生きてたな」
「てか、女子はヒミツがあるからこそマジで美しくなれるワケ!」
「で、どないしたん? アレがロジェちゃん………と言われたらまあ納得は行くわな。幼い頃から美少女やったけど、成長したらあないな美人さんになるとは」
感慨深く頷くドラゴ、つまりロジェから視線を逸らした。故に吾輩が気付いた頃には膝蹴りがドラゴのこめかみを撃ち抜いて、
「しっかし、今は獣同然やな。力技じゃあ、オレの風圧壁は突破出来んで。出直しな」
柔らかな何かに当たったように膝蹴りがドラゴの寸前で止まると、再び突風のようなものが噴き出して、彼女を壁へと吹き飛ばす。今度は受け身を取られたが、本能で危機を察知したらしく、こちらへ飛んでこない………いや、何かに固められたかのように動けなくなっている。
「よし、今のうちに情報共有や。何があったん?」
「てかマジ、クロス様のアトリエ着いた瞬間にグラストンとかいう奴が武器狙って凸ってきたの、ガチで意味不すぎない?しかもそれ装備して襲ってくるとか、やり方汚すぎでしょ! でも、うちらが勝ったのはマジで大優勝!そこはマジで神。ただ、撃ち込まれちゃって、ロジロジが」
「打ち込まれた? 何を?」
「──高濃度の吸血鬼の血液」
「おまっ、それあかん奴やん!? 下手したら、王国を吸血鬼の根城に変えるほどの代物やんか!」
「あの彼女だからギリ死んでないだけで、身体の中身はガチでパニック状態っしょ。無理やり急成長させられてるとか……身体の限界超えちゃってる感じ? んで、その足りないものを外から魔力で補給しようとしてるとか、それもう代償的なやつじゃん!エモいけど、見てるこっちはヒヤヒヤするんだけど!」
「つまり、一種の吸血衝動って奴やな。半吸血鬼はそこまで血要らないってアゼル卿から聞いてたが、今の感じやと分からんな。やっぱ止めるしかあらへんけど………あかんな、もうすぐ破られるかもしれん!」
ドラゴ殿が固めている魔法………風属性の派生、空気を操る魔法で空気を固めているのだろうがそれも押し返されている。いずれ、固めた箇所に穴が開けば空気が漏れ出し、ロジェは自由になってまた吾輩達を狙ってくるだろう。
つまり、必要なのは血が存在せずにかつ捕縛と戦闘を高い基準で熟せる怪物。それに該当するのは──
「ユニ」
「なになにー? なんかいい案思いついた感じー?」
「『禁書』を解放してくれ。奴の力が必要だ」
「何や、禁書って!? ユニティちゃん、心当たりあるん!? 出来れば早よしてな!? 無傷に抑えるんは難しいで!?」
隣で悠然と構えるユニティだった。この非常時に魔道書すら出すことなく、佇む彼女の禁書ならロジェを無傷で取り押さえる事は出来るだろう………本人が形容のできない表情を浮かべている事が気になるが。
「えぇぇぇ………あの子? あの子? マジで出すの? えぇぇ、この状況でぇ? 男がいる、この場所で?」
「扱いづらいのは分かるが、奴なら直接戦闘も捕縛もできるだろう!」
「いやでも、治療院がベタベタになるし、切り札をあんま見せたくないし………」
「──なら、舞台は私が整えましょう」
コツン、と何かの音がする。刹那、瞬く間に吾輩達とロジェを囲む巨大な城壁が顕現。天井まできっちり、覆って外部と遮断した空間内で1人の女性がこちらへと歩み寄る。
「ルール『ロジェを元に戻すまで出られない部屋』です。退路は断ちましたよ。ユニ。私達にすら見せていないその切り札、どうぞお使いください」
「………いい性格してんね、モナモナ。3世そっくり」
「褒め言葉として受け取っておきます」
「〜〜〜ッ!! あーもうわかったってば! その代わり、ドラゴさん! ぜったいに、ぜっったいに! 奴に色目使わないでね! マジのガチで!」
「お、おお? 分かったわ」
「うぅ………また、展開考えるの?? 我儘聞くのもうやだよぉ」
しわしわなユニが自身の自伝を取り出し、検索を開始。膨大な魔力と共に文字達が空に踊る中、彼女は静かに告げる。
「──天つ空、満ち欠ける銀の輪を巡りて、静寂を穿つは、跳ねる稲光」
文字達の光が一気に収まったかと思うと、稲光の如き閃光と共に文字達が自伝の中へと帰っていき、静寂が訪れるが誰もが言葉を発せない。嵐の前の静かさのような世界で、ただ1人怪物は鬼気迫る表情で空気の檻から脱出する。
「しもた!! ユニティちゃん!!」
「甘き蜜の毒、柔らかなる鉄の枷、物語の閾を越え、此処にその輝きを現ぜよ」
ユニティの持つ本の題名が入れ替わっていく。その間にもロジェの脚が迫る。音すら置き去りにしたような威力の飛び蹴りを前にして、彼女はただ呼ぶ。輝ける月の姫、極天に浮かぶ輝夜姫を!
「──煌いて、『輝ける月の姫君』」
ユニの言葉が終わった瞬間、白い月を思わせる何かが本から飛び出し、ロジェの蹴りを受け止めて、跳ね返す。そして、弾力のあるその白い何かを内側から食い破るようにして、その存在は顕現する。
ウサ耳をぴょこぴょこ動かしながら、余りにも魅惑的な肢体を無理矢理バニースーツに落とし込んだ彼女は気怠げに周囲を見渡して、ユニティを見るとあからさまに嫌そうな顔でユニティの顔をビンタした。
「いったぁぁ!? なんで!? なんで、出て来て早々、ウチが殴られてるわけ!?」
「言ったわよね。次、呼び出すまでにとろけるような苺大福と私がとろけそうな素敵な王子様を用意しとけって? うん?」
「もう10人も作ったじゃんかー!! これ以上は物語として成立しないってばー!!」
「何を言ってるの? 私は月の姫様よ。つまり、世界の誰よりも偉いんだから、黙って従いなさい。私のしもべ」
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世。キミリア。遂に出されたユニの切り札たる禁書シリーズ。今思うと、もう少し言うこと聞くような設定にしてあげた方が良かったかもしれないと吾輩思うのだった。
感想、評価ありがとうございます。励みになってます。
どんどんください。待ってます!