吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
少しあっさり目。シリアスが長かったからね。暫くはラブコメをしたい
吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。
「では、決意も定まったようだ。話を進めてもいいかね?」
泣き止んだロジェにハンカチを渡したまま、吾輩は席に戻る。ロジェはしばらく、ぼーっとハンカチを見ていたがハッとしてすぐに席に座って身を縮めた。
「すみません、アゼル卿。お話の腰を折ってしまって」
「いやはや若者達の青き春をこの目で見られるのだから、眼福だよ。馬鹿息子はその辺り、浪漫のかけらもなくてのう。では、どこまで話したか」
「アゼル卿の妹が亡くなった事、それをばねにして同じ立場の姫様を救うって話まででしたね」
「そうだな。歳をとると物忘れが酷くて敵わん。続きだが、それには必要なものがあってだな。まずは素体となる人形の調整、これにはヤマト君。悪いが付き合ってくれたまえ。次に賢者の石、こちらはロジェスティラ君の力が必要になる。頼むよ」
「あ、はい。わかりました」
「それと、これは錬金術師的な興味からなのだが………ロジェスティラ君。君はクロス氏の究極の1品に心当たりがあるのかね?」
「え、でも、あれは美術品の価値しかないと思いますけど………お金に困ってるんですか?」
ロジェが不思議そうに首を傾げる。というかマジで見つけたのか、ロジェ。吾輩も気になるが聞いた限りだとただの美術品なのか? ロジェが心を惹かれないタイプの。
それを聞いて親指と人差し指を顎に当てるアゼル卿。何かしら、思い当たる節があるのだろうか。
「ふむ、まあ確かに錬金術師でなければ周知の事実なのだが知らなくて当然か。細かい事はシュレディンガー君に任せるが、クロス氏が生み出した錬金術の集大成が3つあるのだよ」
「3つ? 1つは賢者の石ですか?」
「その通り。そして、2つ目がまるっきり人間と同じ機能を持つ人形………『ULシリーズ』と呼ばれる人形の事だ。ミスト王女殿下の近くにいたなら知っとるだろう? ウルシュラと呼ばれたメイド。彼女はクロス氏によって建国当時から王家に仕えるメイド人形なのだよ」
あー、そこに変化点があるのか。と腑に落ちた。この世界ではモルガナが生み出したウルシュラはクロスという錬金術師の創造物になっているらしい。シリーズと言われた以上、ウルスラもその系譜で作られたに違いない。
問題はクロス殿が何故、彼女達を作ったかだが。メイドフェチだったりするんだろうか? ちょっといい酒が飲めそうな気がする。
「そして、3つ目だが『変換器』だ」
「へ、変換器?? い、今までのものと毛色が違うね」
ロジェの疑問に吾輩も頷いた。賢者の石、人間と同じ人形と来て、変換器? だが、その疑問やはてなマークが顔に浮かんでる吾輩達をみて想定していたのか、話を続けてくれた。
「これだけはクロス氏のレシピに載っていただけなのでな。機能自体は詳しくは分からん。しかし、この3つによってクロス氏は『死者蘇生』を成し遂げたと言われている」
「し、死者蘇生………!? そんなことが可能なのか!?」
「分からん。何せ、400年も前の話だ。御伽話かもしれんが、それが解明出来たら素晴らしいことだと思わないか? 私でさえも胸が躍るくらいだ。誰だって、もう一度会いたい死者がいる筈なのだからな」
期待に満ちた目をするアゼル卿………には大変申し訳ないが、胡散臭いというか嫌な予感だけがビンビン伝わってくる。大丈夫? その変換器って人の魂をエネルギーにして賢者の石とか作ったりしない? 国土錬成とかやめてよ?
ただ、期待する気持ちは分からなくもない。
おれだって彼奴に会えるなら喜んでその錬金術に縋るだろう。それでも今は優先すべき使命があるから。そちらを優先するが。
「わ、分かりました………じ、時間が出来たら案内します………」
「頼むよ。では、今日はここまでにしよう。明日、昼過ぎにアトリエに来てくれたまえ。賢者の石と素体の調整を行うのでな。夕飯と朝飯はそこの棚に用意してあるから、好きにしたまえ」
話すべきことを話し終えたからか、アゼル卿がアトリエを出ていこうとするので後を追うために立ち上がれば、その肩を優しく叩かれた。
「ヤマト君。君には彼女の世話を頼むよ。そちらの方が君にも都合がいいだろう?」
「えっ!?」
「分かりました。それでは夜道にはお気をつけて」
「えっ!? えっ!?」
「ほっほっほ、若造に心配されるほどやわではないよ。ではな」
「いや、ちょっ、まって、その!?」
地上に上がるアゼル卿を見送り、部屋の中にいるロジェに向き直れば彼女は部屋の片隅であわあわと震えていた。まるで哀れな子羊を襲う狼のようだが、被捕食者はきっと吾輩である。身体能力で負けてる弱者である。
こちらの挙動をおっかなびっくり観察する彼女をさしおき、棚を調べると保存食だろう乾パンとチーズ、それと持って来たのだろう綺麗な籠に入った根菜類が見つかった。塩はあるし、簡単なかまどもある。年季は入ってるが。
さてと、腹ペコのロジェがいるから腹に溜まるものを作らないといけないわけだが………どうするかね。根菜はじゃがいもみたいなのと、にんじんみたいな奴か、ポテトグラタンにするか。
「あ、あの………な、何か手伝う事って………」
「そしたら、机を片付けてくれるかな? 変な薬品には触らなくていいから錬金術書とかを棚にしまって欲しい」
「あ、はい」
ロジェの申し出に簡単な指示を出して、かまど近くにあったナイフを手に取る。水は………これかな? ウォーターサーバーみたいな装置に手を触れるとじんわりとした何かが少し持っていかれ、代わりに綺麗な水が下の器に溜まっていく。魔力と引き換えに動かす仕組みらしい。
「かまども魔力で動かす仕組みか………触るだけでいいのは助かるな」
かまどに火を入れて、そのまま水を沸かす。その間に、芋を洗ってナイフで皮を剥いていく。剥き終わったら、芋を煮る。煮た後、その芋を潰して、潰した芋を皿に流し込み、チーズを薄くスライスして並べていく。
「て、手慣れてるね………前は、その、料理人、だったり?」
「いや、前職は作家だったんだが自宅で仕事をしていてね。嫁が外で仕事をしていたから家事は自然とおれがやる事になったんだ。料理も、その時に身につけたものだよ」
漫画が売れて一緒に住み出してから、家事は基本的に吾輩が担当。土日は彼女が家事をやるという分担で、上手く回っていた。趣味とまでは行かないが、嫁が美味しいと言うくらいだから味に問題はない筈。
「腕が錆びついてないといいけどな」
三重にチーズとポテトを重ねた後、塩で味付けをして乾いたパンを擦ってパン粉に変えて振りかける。それをかまどに入れて10分待てば………完成。ポテトグラタンだ。
「ほわぁ………おいしそう………」
「味付けは塩だけだから、あんまりかもだけどな」
湯気立つポテトグラタンを机に並べて、匙を渡す。ロジェは目を光らせながら匙を受け取ると早速ポテトグラタンに差し込み、とろけたチーズを伸ばしながら、熱々のそれを口に運んだ。
「んっ! すっごく美味しい!」
「そっか、では。おれも」
匙を入れれば、ふりかけたパン粉のサクサク感を堪能。そのままチーズを絡めてポテトごと口に運ぶが………まあ、塩味がするマッシュポテトだな。ケチャップでもあればまた違うんだろうが、用意してもらってるんだから仕方ない。
明日以降は、吾輩が金を出して買うとしよう。へっへっへ、金に関しては困らないのが吾輩の良いところだ。
とはいえ、こんな淡白な料理でも美味しいと言って、満面の笑みで食べてくれるのは嬉しくなってしまう。吾輩も単純だな。
「ほら、ポテトが口についてるぞ」
「え!? あ、そ、その、あり、ありがとうございます………」
対面で食べる彼女の頬についたポテトを拭えば、ロジェの顔が赤くなっていく。しまった、幾ら子供とはいえ今のは恥ずかしすぎるか。完全に黒猫の時のつもりでやってしまった。
「すまない。今のは君に対して失礼だったな。子供扱いしすぎた」
「い、いや、ボクの方こそ、その、ごめんなさい………ご飯、美味しかったです」
「ちゃんとお礼が言えるなんて偉いじゃないか。親御さんの教育が良かったのかな?」
「あ、いや、その、姉的な人達が作法について、簡単に教えて、くれたので………」
しどろもどろではあるが、こちらの目を見て会話できてるのは凄く成長を感じるのは吾輩だけだろうか。それとも先程みたいに弱みを見せたのが、彼女の心的外壁を下げているのならば万々歳だ。
その後、一気に食べる速度を増したロジェはすぐさま食べ終わるとお皿を片付ける。吾輩も食べ終わって皿を洗おうとしたが、奪われるようにして受け取られた。どうやら彼女がお皿を洗ってくれるらしい。
彼女が水を用意する道具に、感嘆の声を漏らしてる間に吾輩は寝床の準備に入る。寝具はどうやら地下室の天井にかかってるハンモックのみ。毛布も穴は空いてるが、ないよりはマシとの事なのでロジェに譲る事にする。
そもそも吾輩がハンモックで寝たら落ちる自信あるし、あの高さなら下手したら知らぬ間に死ぬ可能性がある。
そう言う話をロジェにすれば、彼女は素直に頷いてハンモックを選んでくれた。ゆらゆらと楽しげに揺れるが、あまり揺れるとハンモックが千切れそうで吾輩怖い。
そして、吾輩はソファに寝転がり………ふと、ルノワールの秘伝書の存在を思い出した。危ない危ない。色々ありすぎて忘れるところだった。
「ロジェスティラ。ハンモックで遊んでるところ、悪いが君にユニティ・ブバスティスから預かってるものがある」
「ゆ、ユニティさんから? いったいなんだろ」
「秘伝書、だと言えばわかると。三羽鴉が持っていたのを拝借したと」
そこまで言うと目にも止まらない速さで手元から秘伝書が消えていた。部屋中を探せば、机に置かれたランタンで秘伝書を照らし、その文字に食いつくように読み進めている。
暫くは声をかけても無駄だろうし、内容自体は把握している。書かれているのは、ルノワール一族がどうやって半吸血鬼という亜人の血を継いで、太陽を克服したかだ。
「初代の魔法が………空属性、それがかけられた血の投与が鍵? 血の儀式? なんてボクはした覚えがないけど………それはつまり、ボクが完成形?」
ただ、正直に言うと──姫様を救う鍵はあれど、方法はそこにはない。
だけど、ロジェスティラは姫様を救う。それは間違いない。
「ロジェスティラ。おれは先に寝るから、ほどほどにな」
一応、声掛けだけして吾輩もソファに寝転がる。
きっと明日の朝にはロジェは寝不足だろうと思いながら、吾輩も明日の朝ご飯を考えながら眠りに落ちるのだった。
吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。
しかし、明日の朝飯は何にしよう………かまどでチーズを溶かしてフォンデュにでもしようか。コンソメがあれば良かったんだがな。
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