吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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ラブコメを書きたい。せっかく人間形態になったからモルガナやアルチナとイチャイチャさせたい。でもストーリー進めないといけないからね。仕方ないね。


アゼルのアトリエ〜死者の蘇生と賢者の石〜

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 ふと、目が覚めた。地下室だからか太陽の光は届かないが、柱時計を見れば朝方の時間帯だ。動かなかったりするから、遅れてるかもしれない。早急に朝の準備をするとしよう。

 

「もう、起きてるのか」

 

 彼女も起こそうと天井を見上げたが、ハンモックに彼女の姿はない。どうやら先に地下室から出て日課のトレーニングでもしに行ったようだ。じゃあ、その間に朝ご飯でも作るか。

 

 エプロンを身に着けながら棚からチーズを取り出し、残り物の根菜を茹でる間に小鍋にチーズを入れて熱を加える。

 

「そして、あった。あった。白ワイン。残り物っぽいが、匂いは………うん、まあ行けるだろ」

 

 白ワインを入れて熱でアルコールを飛ばしながら、チーズと混ぜていく。茹で上がった根菜類と乾パンを一口大に切り、更に並べる。完全に溶けたチーズを小鍋ごと机に並べれば、階段から誰かが降りてくる音がする。

 

「あ、お、おはようございます………」

「おはよう。ロジェスティラ。手を洗っておいで、朝ご飯にしよう」

 

 振り向けば、汗ばんだ彼女が立っていた。こちらを見る目はまだ警戒心の解けてない猫のようだったが、それでもこちらの言う事を素直に聞いて、水を汲むと上層に戻っていく。上で着替えているようだ。

 

「いただきます」

 

 戻ってくる間に味見をしとこう。並べた串に乾パンを刺して、とぷりと白いチーズの海に、バケットを沈める。沸々と煮えるチーズの香りに、バケットにたっぷりとそれが絡まりとろーりと流れていく様といったらたまらない。

 

「あふ、あふ、ふまいな。チーズの味が濃い………ファンタジーあるあるか?」

 

 昨日も思ったが、チーズの味が濃い。前世で食べてたスーパーのものとは大違いだ。これが高価なものだとすれば、アゼル卿には感謝せねばなるまい。

 

「わ、わあ………おいしそう!」

「おかえり。ほら、食べ方を説明するから座りな?」

「あ、うん。ありがとうございます」

 

 戻ってきたロジェスティラに串を差し出し、見本も踏まえて根菜に串を刺して、たっぷりとチーズを絡めて口に運ぶ。茹でてあるおかげでスッと入った串に絡まったチーズが芋にいい塩味を与えてくれている。

 

 ロジェも吾輩を見習って、気合い十分に乾パンをチーズにつける。勢いよく、強く、たっぷり絡めようとして。

 

「あっ」

 

 チーズの海に落ちた。欲に溺れた末路のようにチーズに溺れた乾パンにショックを受けるロジェに苦笑いをしながら、串を借りるとチーズの海から救出してやる。そのまま、彼女の口元に差し出すと、

 

「ほら、あーん」

「………っ!? じ、自分で食べられるよっ!」

「そうか? なら、はい」

 

 からかってみれば、彼女はとても慌てふためきながらも奪うように串を掻っ攫って自分で口に運ぶ。すると、すぐに目を光らせて他の食材にチーズを絡ませて口に運んでいく。どうやらお気に召したようだ。

 暫くはせっせと、口に運ぶリスのようなロジェを見つつ吾輩も食べていき、最後のチーズソースもロジェにパンで拭わせる事で完食させた。ちょっと物足りなさそうだが、諦めてくれ。食材がないんだ。

 

「満足したかな? 因みに外はもう朝だったかな?」

「あ、はい。詳しい時間はわからないけど、頭の上に太陽は来てないからまだ昼ではない………筈です」

「そっか。分かった。じゃあ、準備が出来たら出るとしよう。アゼル卿のアトリエに早く着く分には怒られはしない筈だ」

 

 とは言っても、互いに身一つだけなのですぐに2人して外に出る。地下室にいたせいか、太陽の日差しがやけに眩しいが帽子があるだけでまだマシか。ロジェは太陽の光を浴びてはいるが、心地よさそうに目を閉じている。

 

 いい機会だ。歩きながら少し確認しよう。ロジェの体が何故太陽光に対して無傷なのか。吾輩の設定通りかどうかの確認も踏まえて。設定通りなら昨日渡した秘伝書に書いてある筈だしな。

 

「ロジェスティラ。君は半吸血鬼だろう? 何故、太陽の光を浴びても無事なんだ?」

「うえっい!? いや、その、それはぁ………先祖代々から伝わる技法のおかげでぇ」

「技法? 良ければ教えてくれないか? ああ、無理にとは言わない。少し、興味があるだけだ」

 

 嘘である。ばりばり、興味がある。吾輩の設定ならば、ルノワール一族は太陽を克服するために初代の魔法がかけられた血を投与されていた筈だ。初代『ラケシス』・ルノワールは空属性で、『自分の肉体を変化させる』義賊だった。

 

 ラケシスは吸血鬼と恋をして、子を授かるがその子孫たちが自分と同じように太陽の下を歩けない事を憂いて、自分の血を抜き取り魔法をかけたのだ──『太陽光に適応するような肉体に変化』させるように。

 

 ただ、想定外だったのは二代目にその血を投与したせいで半吸血鬼を前提にした肉体変化が始まったせいか、その後も半吸血鬼が必ず生まれるようになってしまったのは初代にとって誤算だったろう。

 

 けれど、代々血を継ぎ、徐々に太陽光に耐える肉体を手にした結果、ロジェスティラで遂に太陽光に耐える肉体を手に入れたのだった。

 いわば、初代の慈愛がロジェスティラを夜の闇から朝の光に連れ出したという愛の一族の設定なのだ。

 

「う、うーん………でも、ファウストさんにも話さなきゃいけないからまあいいかな? どの道、どうにもならないし」

 

 ロジェの声のトーンが落ちる。そう、ここまででわかったかもしれないがミスト王女を治す為の方法は秘伝書の中にはない。あれは自分達が何故太陽を克服できたか、自分の代ではどこまで克服できたかの研究日誌でしかない。

 

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それがあの秘伝書が教えてくれた残酷な事実だったのだ。

 

「ボクの一族は初代の魔法がかけられた血を代々取り込んできたんだって。それが血脈の儀式………太陽を克服する為の儀式だったんだ。だから、本当に必要だったのは初代の血。5本あったはずの血はボクまでで4本使用されてるから、後1本しかない。だけど」

「そうか、ルノワール一族は帝国を拠点にしていたから」

「う、うん。血は帝国にしかない。今から取りに戻って間に合うのかな?」

「そこまではわからないが、時間があまりないのは確かだろうな」

 

 断言するが間に合わないのは確実だ。じゃなきゃ、アゼル卿も人形を作って魂を移動させて延命させたりはしないだろう。

 しかし、この辺は吾輩の設定通りらしい。じゃあ、それを踏まえてこのあとの推察を、

 

「でも、不思議なんだよね………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そこまでは渡してもらった秘伝書にはなかったから」

「しよう………なんだって?」

「あ、あれじゃない? ファウストさんのアトリエ。は、早く行きましょう。や、ヤマトさん? どうかしました? お腹でも痛い?」

「ば、爆弾発言を残していってどうしようってなってるだけだよ。ロジェスティラ。気にしないでくれ」

 

 そろそろ胃が痛くなって来たが、気にせず行こう。もう、行き当たりばったり感が否めないが情報足りないのに考察しても無駄でしかないしな。開き直ってるだけ? はは、仕方ないじゃないか。予想を超えてくるのが世界ってもんだしな。はあ。

 

 小さくため息ついて、アゼル卿のアトリエを見上げる。国1番の錬金術師とだけあって立派な建物だ。

 見上げるほどに高いその塔は、石造りの重厚な基部から、天を突くような鋭い尖塔へと繋がっている。

 

 元々は均衡の取れた時計塔だったのだろうが、後から継ぎ足されたと思われるバルコニーや、外部に露出した真鍮の配管が、まるで巨大な生き物の血管のように壁面を這い回っているのが妙に不気味だ。

 

「……まるで、建てる途中で設計図を描き換えたみたいだな」

 

 吾輩の呟きに、ロジェスティラが小さく身震いする。

 日光を反射して鈍く光るその外壁は、かつての美しさを、執念という名の煤で塗りつぶしたかのようだ。

 

 意を決して、吾輩は真鍮のノッカーへと手を伸ばした。彫り込まれたの蛇の目が、こちらの心根を見透かそうとしているようにも見えるが、意を決して音を鳴らす。

 

「……誰だ?」

「や、ヤマトです。それとロジェスティラも一緒です」

 

 低い、しかし地を這うような声が扉越しに響き、名前を名乗れば間を置かず、重い音を立てて扉がゆっくりと内側へ開いた。

 異界に足を踏み入れるように足を踏み出せば、何というか外見とは裏腹に意外と綺麗な広間が吾輩達を出迎えた。

 

 一階は広々とした受付兼販売ロビーになっており、高い天井からは淡い光を放つ錬金道具らしきシャンデリアが吊るされている。

 壁一面の棚には、色とりどりの薬瓶や、緻密な歯車が組み込まれた錬金道具が整然と並べられていた。市場の喧騒とは無縁の、まるで高級な宝石店のような空気感だ。

 

「い、意外と、普通。というか、綺麗だね」

 

 ロジェスティラが周囲を見渡しながら、小さく肩の力を抜く。確かに、あの外壁の配管から想像していた「狂気のマッドサイエンティストの巣窟」といった雰囲気はない。

 というか、なんであんな外観にしたんだ………あからさまにバイオとかでありそうなラスボスの住処だったぞ。吾輩あんな外観にした覚えないんだが。

 

「いらっしゃい。アゼル様はお待ちだよ」

 

 受付の奥から姿を現したのは、感情の読めない瞳をした若い助手だった。彼は無機質な動作で階段を指し示す。

 

「三階がアゼル様のアトリエだ。二階は私室と資料室になっているから、立ち入らないように……さあ、早く行きな。もうじき休憩時間も終わって客もくる。さっさとするんだな」

「ああ、ありがとう」

 

 吾輩は短く応じると、ロジェを促して螺旋階段を上がり始めた。

 一段上るごとに、一階の清潔な石鹸の香りが薄れ、代わりに鼻を突くのは、焦げた金属の匂いと、何かが発酵したような重苦しい薬品の臭気。

 

 二階を通り過ぎ、さらに上へ。三階の重厚なオーク材の扉の前に立ったとき、中から「チッチッチッ」と、複数の時計が刻む不揃いな秒針の音が漏れ聞こえてきた。

 

「……行くぞ」

 

 ロジェが小さく頷き、吾輩が扉を押し開けると、部屋の中心にアゼル卿がいた。こちらに背中を向けて、台座に置かれた何かを宝石を愛でるように触っている。

 

「これさえあれば、私の夢が叶う………!」

 

 近づいてわかった。それは………人間の腕だった。陶器のような肌には血が通ってはおらず、まるで人形のように生気がない。

 それを愛でるのに夢中なせいか、吾輩達に気づかないようで一旦戻ろうとして、慌てていたせいで机に脇腹をぶつけてしまった。

 

「誰だ!?………なんだ、ヤマト君とロジェスティラ君か。驚かさないでくれたまえ」

「ぼ、ボク達に何をするつもりだ!」

「ん? 昨日も言ったろう? 賢者の石の手伝いだと………」

「そ、その死体は!? ボク達も同じように死体にするつもりなんだろ!! それで標本でも変えるつもりなんだ!」

 

 鬼気迫る表情で振り返ったアゼル卿にロジェがすかさず前に出て、吾輩を守ろうとしてくれる。やだ素敵………なんて冗談はさておき、吾輩達を見て、落ち着いたアゼル卿はその腕をぷらぷらさせながら穏やかに話しかけてきた。

 

 その様子に噛み付くロジェを見て、アゼル卿も自分達との間で何かしらの誤解が生じていると察したのか、こちらを見て手招きをする。

 

「………ああ、なるほど。ふむ、ヤマト君にロジェスティラ君。こっちにきたまえ。なーに、何もせんよ。何もな」

「あからさまに黒幕っぽい事言わないでもらえます? アゼル卿」

「ばっ! だ、だめだよ、ヤマトさん! 近づいたら危ない!」

「へーきだよ。昨日言ってたろ。あれは多分」

 

 吾輩が近づき、台座に置かれたその存在を眺める。腕や体は確かに人間の姿ではあるが、顔はない。のっぺらぼうというか、出来のいいマネキンのようだ。つまりこれが、

 

「人間と同じ人形………『ULシリーズ』という奴ですか」

「その通りだ。後は君の力で最終調整を行う段階でね。来てくれた事だし、早速始めたいのだがいいかね? ヤマト君にロジェスティラ君」

「………え、それが人形?」

「おや。君には私が人間の死体を愛でる狂った錬金術師に見えたのかな?」

 

 茶目っ気たっぷりにウインクするアゼル卿にロジェは戦闘態勢を解くと、急な寒さに襲われたかのようにガタガタ震えだし、真っ青な顔で、

 

「し、失礼な真似をしました………ごめんなさい」

 

 とても美しい謝罪をかますのだった。

 

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 でも、アゼル卿があからさまに黒幕っぽい振る舞いをするのも悪いと思う。本当に黒幕じゃないだろうな。

 




次回は水曜日の12時。書き溜めたのでちゃんと投稿します。

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