吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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話にカロリー持っていかれてる気がする………
次回は多分ロジェ視点。それが終わったら、最終ラウンドに入れるかもしれません。


忘れてやらない

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 結局、あの後はモルガナによる事情説明から軍も交えての話となり、最終的には夜になってしまったので再び旅館に泊まった所である。

 

「じゃあ、悪いけどロジェに薬を届ける様に頼んでくれ。ここまで目立った以上、吾輩は転移扉で帰れないからな」

「かしこまりました、旦那様! 手紙は必ず、このハクが届けると約束しましょう!」

 

 アリバイ作りのために普通に馬車で帰る事になったので、ミスト王女殿下に薬を届ける役目をロジェに頼まないと行けないので、吾輩が書いた手紙を転移扉を使って使い魔に届けてもらう事にした。

 そして、翌朝、旅館を出た吾輩達の前に王家の紋章が記された馬車と、1人の軍人が立っていた。

 

「お迎えに上がりました。ルドルフ・Y・クロス様。今日から護衛を担当させていただく、ティーガー・ミッドウェイ少佐と申します」

 

 膝から崩れ落ちそうになったのを、隣で腕を組むモルガナに支えられる。王家の耳に入るまでの流れがはやーい。吾輩、今すぐ猫になって逃げ出したいのだが? だめ?

 

「アルチナに辛酸舐めさせられた割には元気そうですね。休暇を与えられていたと聞いていましたが?」

「ついこの間、終えたばかりです。復帰早々、馬鹿国の泥棒猫から国を設立した偉大なお方を守護する任務を与えてくださり、泣いてしまいそうです」

「あ、あの〜馬車に乗りませんか?」

 

 わあ、すっごい空気がピリピリしてる〜。冗談言ってる場合じゃねえ。これ、割と吾輩の扱いとんでもないことになってるな?

 極寒のブリザードが吹き荒れる空気の中、馬車に乗り込めば無言で馬が走りだす。やべえや、ドラゴ殿と違って、和気藹々なんて空気じゃない。助けて、アルチナ! ロジェでもユニでもいい!

 

 なんて言っても助けは来ないし、モルガナはティーガー殿に冷たい敵意をぶつけるだけなので吾輩頑張るしかない。どうしてこうなったんだ………

 

「ティーガー殿………その、今のおれはどのような扱いになっているのですか?」

「ルドルフ様、私の事は敬称など付けなくて結構です。貴方がクロス様………若しくはその血縁であれど王家に連なる方に違いはないのですから」

 

 アルチナと対峙していた時のような冷徹さはそこにはなく、眼光は柔和なものだったが、眉の上や顎先できっちり揃えられたアイスブルーの髪は、厳しい印象を与えるものだった。

 加えて、腕を組んで意図的に胸を強調している姿からして寒気を覚える。吾輩ですら薄々と察する色仕掛け。これ、多分ティーガー殿まあまあ納得してないな? この依頼に。

 

 という事は、上から命じられたのか………恐らくは前回の失態に対する汚れ仕事として性による奉仕と篭絡。忠誠心と愛国心のある彼女の事だ、嫌々だが頷くしかなかったのだろう。

 

 通りでモルガナが微妙に機嫌が悪いのがわかった。嫌々、護衛任務をやられても失敗する確率が高いからだ。要は本気でやる気がないなら、引っ込んでろと言う事かもしれない。

 

「そっか、おれがクロス殿の血縁たる可能性もあるのか。確かに一致度も90%と言っていたし。それで国としてはおれをどうしたいと?」

「まずは貴方様に国から研究施設とそこの所長………謂わば名誉職が与えられます。申し訳ございませんが、国家錬金術師の資格は与えられません。ルドルフ様が決められた規則に違反するので」

「その辺りはしっかり規則があって安心だよ。おれは、まだ錬金術師の卵にすら成れてないからな。他には?」

 

 軽く触りを聞く限り、王国としては本人(吾輩は絶対違うと思う)か血縁(まだ分かる。転生した肉体が血縁者とかな)を逃したくはないのだろう。ただでさえ、勇者パーティの仲間にして国の設立者、そして錬金術を生み出した英雄にして偉人なのだ。他国に行く前に首輪をかけるわ、そりゃ。

 

 ってなると、名誉の次に来るのは………金か若しくは、

 

「箔付けの為に縁談がございます。第一候補はミスト・アルキミア王女殿下でしたが………彼女は自分の体質を理由に辞退しました。その為、第二候補として──ルーフェン・クロイツベルン伯爵令嬢様が選ばれています」

「ッ!! 聞いていませんよ、そんな事! 彼女から!」

「座れ、貴様になど聞いていない。シュレディンガー。これは国からの命令………確定事項だ。貴様の支援者だろうが友人だろうが、貴族の娘というのはそういう用途に使われる。貴様のような安い駒にはわからないかもしれないが」

「そう言う貴女は、王国の軍部の実力が帝国に劣ると知らしめた駒ですね。高くついた駒というのは貴女の事でしたか」

「やめろ、シュレディンガー。言い過ぎだ。落ち着け。ティーガー殿も彼女を煽らないでいただきたい。それにおれは亜人だ。亜人としか子を成せない以上、貴族に婿入りなどもってのほかだ」

 

 だよなぁ。婚姻させて、逃さない。伯爵家以上ならば、ゆくゆくは王家に血を混ぜてもおかしくはない。よく出来てるよ、全く。モルガナも頭がいいから、わかってるんだろうな。吾輩を逃すつもりがないって事が。

 

 だから吾輩が亜人である事を全面に押し出す。亜人は亜人でしか子供を作れない。それを聞いたティーガー殿は眉を顰めたが、変わらずに淡々と事項を伝える。

 

「失礼した。だが、確かにルーフェン殿もそれを懸念事項を挙げていた。貴殿が亜人である事………すなわち、世継ぎを作ることが出来ないのに貴族に婿入りさせるのは違うのではないかと」

「だろう? だから、婚姻関連は遠慮を………」

「しかし、代案として………こうもおっしゃられた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とな。何せ、その錬金術師は()()()()()()()()()()と聞いている」

 

 やられた。と吾輩が思ったのは、不機嫌度MAXだったモルガナの圧が一瞬にして消え去り、代わりに浮き足だった空気が隣から漏れてきた事だ。

 吾輩をどうにかしたい国として、やはりネックだったのは彼女だったのだろう。彼女がいる限り、吾輩の壁となる。引き離そうにも錬金術師としての功績が許さない。ではどうするか。

 

「というわけだ。国家錬金術師 モルガナ・シュレディンガー。貴様とルドルフ様の婚姻を王家は認めるとした。加えて、他にも妻を迎える事もだ。王国は実力主義。多数の妻の食い扶持を稼げない奴にこの許可は降りないが、貴方様ならば問題はあるまい」

「いや、それとこれとは話が別………!」

「承りました。わたし、モルガナ・シュレディンガーはその命を承諾いたします。アルチナ・L・キャロルは反対はしないでしょう。ですが、ロジェスティラ・ルノワールはまだ子供。彼女が成長し、望むならばそうさせますがダメな場合は私とクロイツベルン家の繋がりを持ってして成立とさせていだたきたいです」

「構わない。王国としても無理強いをするつもりはないようだ………が、亡命した犯罪者の一族の末裔としてより、亜人の妻として国にいる方が些か風当たりはいいと私個人は思うがな」

「………脅しか?」

「いいえ。起こりうる可能性を上げたまでです。ルドルフ様。全ては貴方次第なのですから」

 

 答えは懐柔する、そして利益をちらつかせて吾輩に頷かせるだ。というかモルガナが即決したようにデメリットがあまりないんだよな、これ。

 研究施設の所長という名誉職だと、多分実際の研究担当にモルガナもついてくるだろう。研究施設の警備としてアルチナとロジェにも仕事を与えられる。今のアトリエはパティとロンに譲って商会として自立させれば、今後もやりやすい。

 

 そして、吾輩が実は血縁ではなかった時も切り捨てしやすい。何せ、モルガナも国家錬金術師ではあるが、この国の人間ではない。というか吾輩達全員が王国の基盤に関わる人間ではない。そうなった場合、ただ有用な錬金術師に投資したという事にすれば良いのだから。

 

 デメリットとしては、王国の意思に沿うような形に今後はなっていくということか。ロジェやアルチナ辺りは国に従うことに不服かもしれない。しかし、彼女達のやりたい事を吾輩の名前を持ってして責任を負えるのも事実か………責任かぁ。

 

 モルガナにしかり、アルチナにしかり吾輩を好いてるのが伝わる以上、反論はないよなぁ………覚悟決めるしかないか。

 ずっと吾輩のことが好きだったんだもな。吾輩の為に、賢者の石を作ったり様々な支援をしてくれたんだもんな………いい機会だ。年貢の納め時とも言うべきか。それに答えない方が不誠実か。

 

 吾輩が絆された………好きになってしまったんだから。これを機に彼女達と向き合うべきだ。

 アルチナにも言われた通り、吾輩もまた幸せになる為の努力を始めてもいいのかもしれない。

 

 今度こそ、悲劇が起きたら取り返しはつかなくなりそうだが。

 

『あたしが──世界で一番幸せに決まってんでしょ、大和先輩』

 

 今でも瞼に描ける──永遠の愛を誓った君へ。

 君の事は忘れない。ただ願わくば、もう一度だけ出会えるのなら君に伝える言葉があった。もう叶わない願いだろうけど。

 

 おれは君のように彼女達を死なせない。この命が尽きるまで彼女達の代わりに命を散らそう。だから、見ていてほしい。生まれる価値のなかった自分が彼女達の為に出来る小さな手助けを。

 

 なんて、都合の良い言葉を並べても君から返事が返ってくる事はないんだけどな。だから、これはただの意思表示だ。

 隣に座っていたモルガナの手を取り、自分の手を重ねる。彼女の体が横目にも震えたのが見えたが、黙って握りしめた。

 

「条件がある」

「いいでしょう。伺います」

「おれにはまだやるべきことがある。籍はこの国に置くとしても、他国にも足を伸ばさないといけない。その自由の確保と、後ろ盾になってほしい」

「………建前があるならばいいでしょう。国からもある程度は要望に応えるように言われていますので」

 

 ある程度、がどこまでかはわからないが今はこれでいい。時期がくれば帝国とぶつかる上で国が後ろ盾になってくれるのはありがたい。

 吾輩のスピンオフだと、帝国に対して魔女達と使い魔だけで殴り込むと言う無謀なクーデターだったからな。そのせいで貴族達を流用しなきゃならなくて、結果が民達の肉便器ルートに行った所もある。

 

「なら、受け入れます。おれはクロス殿ではないけど」

「今まで数多の錬金術師達が起動させられなかった錬金道具を起動させておいて、それは通るわけがない。だが、承認いただき感謝する。ひとまず今日はこのまま王宮に向かわせていただく。ミスト王女殿下が貴方にお会いしたいと」

 

 吾輩も黙って頷く。クロス殿が吾輩の作品を知ってる以上、もしかしたら吾輩が金食い虫に入れて来た道具達が役に立つかもしれない。

 しかし、国も国で気前が良すぎないか? 一応は英雄の錬金道具だよね? 見知らぬ人間に渡しちゃっていいの? 本当に?

 

 そんな事を考える吾輩の袖をくいくいと、引っ張られた。そんないじらしいさも感じられる行動の主は少しばかり心配そうに俯いていて。

 

「クロ………本当に良かったのですか?」

「何が?」

「縁談のことです。私は、その………クロと本当の家族になれる事は大変嬉しくて、すぐに承認しましたが。クロは違うでしょう? 貴方には、その………異界の時に奥様がいられた筈では?」

「そう、だな。死別して、吾輩だけがこちらに来た。忘れられない、忘れてやらない。吾輩を、吾輩がいいと言ってくれた女性だからな」

 

 無価値だと思う吾輩に価値を見出してくれた彼女を忘れたら、それはもう吾輩ではなくなってしまう。

 だから、彼女の事は絶対に忘れてやらない。それでもこんな吾輩をまた選んでくれるというならば、

 

「それでも、モルガナ。吾輩は彼女のことは絶対に忘れてやれないけど………主を幸せには出来ると思っている。ただ、約束してくれないか?」

「なにを、ですか?」

「………吾輩よりも1日でいいから長生きして欲しい。もう、1人では生きていけそうにはないから。それが約束できるなら」

 

 魔法を発動、空気が緩やかに輪を描き、白金の光がゆっくりと指輪の形を成す。それを掴み取り、彼女の薬指に嵌める。

 拒否されるとは思っていないから出来る行動に、彼女の目が大きく開かれた。

 

「吾輩と──本当の家族になってくれますか?」

 

 震える唇に、見開かれた目から溢れる透明な雫、それを彼女は袖口で拭いながらも冬のような冷たい表情から、春のような温かさを感じさせる笑顔に変えて、

 

「──約束します。貴方の思い出ごと、最期まで側で看取ると。亡き師匠の名、シュレディンガーに賭けて」

 

 彼女は、吾輩の告白を受け入れたのだった。

 

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 きっとこの光景も吾輩は忘れる事はないのだろう。ティーガー殿からのいちゃつくな!という視線が刺さったのも踏まえて。




ミスト(この場合、私よりももっと相応しい相手がいるのでは?)
ルーフェン(これ、私が正妻を名乗るよりモルにやらせた方がいいな………じゃないと私が殺される)
ティーガー(良かった………これもダメなら、軍閥の伯爵令嬢として私が選ばれるところだった)
↑のような配慮があったとか、なかったとか。
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