吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
超かぐや姫が遅効性のように効いてきたせいで暫く筆が取れていませんでした。仕事も馬鹿忙しくはありますが、週1は心がけて行きたいです。
あ、因みにこちらが書いていた二次創作です。良ければどうぞ。
https://syosetu.org/novel/408149/
結局、昨日ヤマトさんは帰って来なかった。まさか、アル姉とその………え、えっちな事を!なんて、思ってたら今朝にモナ姉の使い魔さんが手紙を届けに来た。
裏を返せば、ボクの居場所も彼女達には筒抜けらしい。
なのに、何で彼女達はボクに恨み言一つ吐きに来ないんだろうか──そっちの方が、ボクにとっては。
『ロジェスティラへ。この手紙を読んでいる頃には恐らくクロスのアトリエにあった究極の一品を起動させたせいで、おれは夜明けの錬金術師クロスとして王国から丁重に扱われていると思います。自分にもさっぱりですが、とりあえず薬をミスト王女に渡してあげてください。ただのヤマトより』
そんな思考が頭を掠める中で、渡された手紙はその消極的な考え全てを吹っ飛ばした。何の何の何だって??
何で、ヤマトさんがクロスのアトリエにあった一品を起動させてるの?? というかよくわかったね、あの猫がその一品だって。黒ずんでたけど元は純金で出来た代物だし、触った感覚からして多分下地は宝石か何かだよ、あれ。
でも、ヤマトさん凄い人だったんだなぁ。本人もその自覚は無さそうだけど。ただの、って手紙の文字が強調されてるけど諦めて名乗ればいいのに。
そんな事を思いながら、ボクは王宮まで足を運べば、強面の軍人さんがこちらを睨んでいる。とても帰りたいけど、それはダメだよね………
「何の用だ、小娘」
「あっ、あ、あーあの、み、ミスト王女殿下にお薬を………」
「薬? ああ、ファウスト卿の………話は聞いている。少し待て。おい、ウルシュラを呼んでこい!」
吃りながらの言葉に怪訝な顔をしたけど、思い当たる事はあったみたいだ。近くにいた門番の人に威厳たっぷりに指示すると、すぐさまその人は駆けていき、ほんの数分でウルシュラさんを連れて戻って来た。
「遅かったわね。ついて来なさい。案内するわ」
小走りで来てくれたけど、汗の1つもかいてない涼しい顔で彼女はカーテシーをしてボクはその背中をついて行く。
まだ数えるほどしか会ってないけれど、いつ会ってもこの人は堂々としている。一つ一つの動作に気品があるというか………自分に自信がないボクには到底出来ないような振る舞いだ。
「しかし、今日はお客様が多い日です。ロジェスティラ様にしかり、ユニティ様にしかり。もっと日程を調整していただきたいものですが」
「え!? ユニティさん、来てるの!?」
「ええ。何やら面白い本が手に入ったからと。今朝届けに来ましたよ。今はミスト王女殿下と共にいるはずです」
「い、いやいやいや、それは一般的に危なくない!?」
「仮にもユニティ様は連邦国の代表たる巫女姫です。問題が起きれば、王国、法国、連邦国の『三舞同盟』が大きく均衡を崩す事もわかっているでしょう………あのクソボケ猫がいる限り、あの女が魔族や帝国側に回る事はありません。さあ、着きましたよ」
いつものように陰鬱な空気に晒された彼女の部屋へと足を踏み入れる。ここに来た目的であるミスト王女はいつもの治療器具に入りながら、僅かに動かせる手で古ぼけた紙の束を読んでいた。
ユニティさんはその側に立っていたけど、ボク達に気づくと口角をあげて微笑んだ。
「ロジロジ〜おっひさ〜! 元気そうで何より、何より……で? 3世を殺して以来だね。1人逃げ出した気分はどう?」
「っ!! それは、その………」
「──今から殴るよ、防御しな」
へ? なんて間抜けな声を上げる前にユニティさんの掌がボクの眼前まで迫っていた。見切れるし、なんなら防御も余裕で間に合う。それこそ後ろに飛んで受け流してもいい。
「ッ!! へ、んな、かんしょぐ………なにごれ?」
「ばっ!? 『魂絶』を真正面から受けるとかロジロジ馬鹿じゃん!? 防御しなってウチ言ったじゃん!!」
「──逃げちゃダメだって思った。ボクが殺したのは事実だから」
だから、ボクは彼女の掌底を顔面で受け止めた。それにギョッとした顔をしたのは、ユニティさん達。皆、ボクが避けるか防御するのを予想していたのなら、期待を裏切ってしまったかな。
にしても、ユニティさんの掌底はなんか凄い不思議な感じ。なんか内部に直接響くって言うか、変な音を体内に撃ち込まれたみたい………魔法じゃないよね。って事は種族としての力かな?
「それに、今の一撃はユニティさんの立場からしたらケジメって奴でしょ? 本気で怒ってるなら、あの、餅兎を出すもんね」
ユニティさんがボクの意見に沈黙した後、ふいっと顔を横に向けた。まるで図星を突かれて拗ねた子供みたいに。
「べっつに〜そんなつもりはなかったよ〜ほんとだってば〜。まっ、ウチも覚えがあるからね。なあなあで許されてるか、分からないよりは1発殴って禊をした方が互いにとって1番スッキリするじゃん?」
「うん。ありがとう、ユニティさん。それにしても、何故ユニティさんもここに?」
「それについては、こちらからご説明いたしましょう。きっとロジェスティラ様も来てくださったのはこれに関してだと思いますから」
こちらの成り行きを見守っていたミスト王女から差し出されたのはさっきまでの紙束。ボクはそれを取りに行く為に近づくと、漸くそれが何を意味するかを理解した。
『我が娘──ロジェスティラへ。4代目 レイヴン・ルノワールより』
思わずミスト王女の顔を見上げて、そしてユニティさんに目を向ける。彼女達は肩をすくめたりしてるだけで何も語らなかったけど、この紙束が………ルノワール秘伝書の最後のページ達だと、理解できた。
「これはきっと、貴女が読むべきものです」
そう言って、渡された紙束を震えながら捲る。今の今までに読んできた秘伝書はルノワール一族がどうやって半吸血鬼の血を継ぎ、太陽を克服して来たかを記載した日誌だった。
だけど、最後のページに値するこれは手紙だった。初代とそして、ボクの父である4代目が遺したそれをボクはゆっくりと読み始める。
『初代ラケシス・ルノワールより。恐らく全員がこれを読むのだろうが、意味が分かるのは400年後になるだろう。その為に拙は拙の技術を血と共に継いでいく。逆算して、恐らくは4〜6代目の誰かがきっと当事者になる筈だ──世界を姦淫に堕とす悪魔との対峙に』
「姦淫………悪魔?」
「ウチ達、魔女の最終目標の事だよ。ロジロジ」
「え!? 何か知ってるの!? ユニティさん!?」
「そりゃ、ウチも100年前に聞いたからね! まあ? 要点だけ言えば、異界から来た姦淫の悪魔にウチらは全員慰み者にされるんだってさ。3世はそれを最悪の未来って呼んでる」
絶句した。同時にクラウンがボク達に自分が産み出した魔法を快く教えてくれる事についても。その最悪な未来を回避する為に、ボク達を強くしようとしてくれたんだ………あれ? じゃあ、何で初代はその事を知ってるんだろう。
ページを捲る。古くぼろぼろになりながらも、遺志だけは失われないと伝わる文字がボクにその疑問の答えを教えてくれた。
『拙は吸血鬼と恋をした………当時の七元徳の1人。『慈愛』のカリダーデと。拙は思った。きっと生まれる子が半吸血鬼か吸血鬼かまでは分からないが、どの道、後継は太陽を克服していた方がきっと暮らしやすいだろう。だから、拙の血を使って儀式を行い、太陽を克服しろ。そして、願わくば──拙の友、ルドルフ・Y・クロスの力になってほしい。あの楽しかった日々に報いる為に。初代、いや、こちらの方がいいか。聖女勇者御一行、斥候担当。ラケシス・ルノワールより未来に慈愛を込めて』
その名前には覚えがあった。ヤマトさんの手紙に書いてあった名前だ。夜明けの錬金術師………つまり、ボクはヤマトさんの力にならなきゃいけないって事?
あれ、でも………姦淫の悪魔はボクやユニティさんを狙ってるんだよね? って事はヤマトさんが仲間に加わるのかな? アル姉は喜びそう。モナ姉はさっさと2人をくっつけそうだなぁ。
「ルドルフ・Y・クロスは3世の本名だよ」
「──え?」
「100年前に聞いたから間違いないってば。まあ、本人はその自覚がないと思う。ウチが誤った選択をしたせいで、ね」
苦虫を噛み潰したように顔を歪めるユニティさんの言葉を元に考えると………クラウンがルドルフって人でこの国の設立者。でも、クラウンはとっくに亡くなっている。でも、ヤマトさんはアトリエの道具を起動出来た、って事はもしかして、ヤマトさんは!!
「く、クラウンの息子さんって事!?」
「どうしてそうなったん?? いやまあ、息子さんは………まあいいか。話、ややこしくなるし」
う、うわぁ。クラウンって奥さんや息子さんがいながらモナ姉に手を出そうとしてたって………いや、どっちかと言うとモナ姉が手を出そうとしていたような、クラウンの方が被害者のような気もするなぁ。うん、この考えはここでやめよ。
「そ、それにしても、初代はあの聖女勇者御一行の仲間だったんだね」
「はい。それは私も初耳でした。絵自体は残っていますが、まさかそれがかのルノワールの初代とは………つまり、ロジェスティラさんもヤマトさんと同じで勇者御一行の血を継ぐものだったんですね」
「良かったわね、ロジェスティラ様。これが明らかになれば、あんたのこの国の地位は上がるわよ」
「成り上がり者っぽくて、興奮するじゃん! ウチの物語の題材にしてもいーい?」
「い、いやだ!」
ユニティさんからの目線から逃げるようにして、ボクは最後のページを手に取る。これは今までに比べたら紙もインクも随分と新しい。となれば、これがきっと父さんがボクに遺したものなんだろう。
ボクはゆっくりと文字を読み始める。父から全てを教わったときの記憶をなぞるように。
『これが最期になるだろう。きっと秘伝書も五代目で役目を果たす筈だ。何故なら、計算して5代目が姦淫の悪魔と対峙するに違いないからだ。つまり、俺の娘が………ロジェスティラが過酷な運命に対峙せねばならない』
『既に俺の段階で太陽は克服した………が、この子を死地に送るような事はしたくない。故に彼女にも儀式を行うことにする。彼女もまた俺のように日光を浴びて元気よく笑っているのだ、必要はないかもしれない』
『だから──この儀式で全てがご破産になればいい。吸血鬼の力が強まり、日光に弱くなっても、人間の力が強まり、吸血鬼の力を失っても構わない。この牧場を出て娘に、平穏に生きて欲しいと思う俺は間違っているのだろうか』
『結果は………残念ながら成功してしまった。太陽を克服するどころか、日光を力に変えてしまう半吸血鬼の爆誕だ。耐性の次は吸収とはな。継戦能力に磨きがかかりすぎてる。日光の下であれば倒せる存在はいないだろう──平穏からは程遠くなってしまった』
『きっとこれを読むのは我が娘だと信じたい。牧場に囚われ、生まれながらにして檻に閉じ込められてしまったかもしれない。そうでなくても、初代から続く血の呪縛に縛られているかもしれない。俺の浅はかな考えで強くなりすぎた事に悩んでるかもしれない。けれどそうじゃない。そうじゃないんだよ、ロジェスティラ』
一拍置いて、目線を下にずらす。そこには予想していた言葉が確かに書かれていた。
『お前は、自由だ』
『何にだってなれる。何をしたっていい。力があるからって無理にルノワール一族の役目を果たさなくても、構わない。初代の事なんて捨てちまえ。悪事を働いてもそれは仕方ない。義賊の末裔だ、それくらいの覚悟は俺たちにだってある。誰がお前を非難しようと、俺と母さんはお前を見放したりなんかしない。ただ、幸せになってくれたらそれでいい』
『だから、好きなように生きて死んだらその時の話を聞かせてくれ。俺たちはお前を愛してる。父 レイヴン・ルノワールより』
そこまで読んだ。世界が歪むのも我慢して。落ちた雫が、手紙に跡を残してもボクはそれを破らないように大事に抱え込んだ。
父さんが言っていた、自由の意味は今のボクには果たせないかもしれないけど、それでもボクは………自分の在り方だけは自分で決めたい。
『そっか。なら、応えてくれ。特等席で見てるからな』
こんなボクを見てくれてる人がいる。こんなボクを信じてくれてる人がたくさんいる。ありがとう。父さん。ボクを愛してくれて。ルノワール一族は初代から託されて来た一族だと教えてくれて。
だから、そろそろ足踏みばかりしてないで決めなくちゃ。自分がルノワール一族や魔女の仲間じゃない──ただのロジェスティラとしてどうなりたいかを。
次回もロジェ視点。長くなったから切ってまた投稿します。
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どしどしください待っています!
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