吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

65 / 74
 モルガナとクロのイラストをいただきました! とっても可愛いので是非見てあげてください! 次回からまた黒猫視点に戻ります。


きっと君を救うために

「み、みっともない姿を見せてごめんなさい………」

「構いませんよ。よほど父君に愛されていたようですね」

「う、うん。そうみたい。それよりも、ミストさん? ボクが今日、ここに来たのは薬を届けに来ただけじゃなくて、その」

「分かっています。秘伝書を集めてくださったんですよね。見せていただけますか?」

「あの、でも、ミストさんが欲しかった情報は何も………」

「いいのです。私の依頼に貴女は答えてくれた。まずはそれを確認させてください」

 

 すっかり周りを忘れて泣いていたボクにミストさんは気にしないでと軽く笑うと、目配せをしてウルシュラさんが暖かなタオルを差し出してくれた。目元に当てるといい温度で、ヒリヒリした肌が溶けるようだった。

 

 ボクは約束通り、ミストさんに秘伝書を手渡したけどそこにはミストさんを人間に戻す方法は書いてなかった。あるのはボク達ルノワール一族がどうやって太陽を克服してきたかだけ。

 ミストさんはそれにじっくり目を通すと、ゆっくりと秘伝書を閉じた。その顔には絶望に打ちひしがれてる事はなく、ただ淡々と事実を噛み締めているようで。

 

「ロジェスティラ様。まずは約束を果たしていただきありがとうございます。これで私の体を治す方法はアゼル卿頼みになってしまいましたね」

「あ、でも、この間、ヤマトさんと一緒にファウストさんのとこに行ったよ! あの、肉体?のULシリーズってのは完成してて、あとは賢者の石だけだって!」

「ロジロジ〜その賢者の石が難しいんだってば。完成するにしても、あんまし時間はかけらんないよ。もう時間、ないんでしょ?」

「………魂を見れるユニティ様には全部お見通しのようですね」

「そう、なの?」

 

 こくり、と彼女は黙って頷く。そんな、とボクはユニティさんを観るけど眼帯を外した彼女の眼は悲しみに溢れていた。

 魂を見れるって事は、それだけ彼女の魂が弱っているという事だ。吸血鬼の血に汚染された彼女の肉体が。

 

「むしろ、よく持った方だと思うよ。七元徳、しかも高濃度の吸血鬼の血によく耐えたよ。貴女の苦労をウチはずっと見ていたよ………本当によく頑張ったね」

「適当な事抜かさないでもらえるかしら!? あんたがミスト王女殿下をずっと見てたわけないでしょうが!!」

「ユニティさん。今の冗談はボクも笑えないと思う」

「正論やめて。ロジロジ。なんか結構、ぐっさり来た」

 

 あいたたーとか胸を押さえてわざとらしい反応するユニティさんは放っておいて、苛ついているウルシュラさんや悲壮な決意を固めたミストさんの力になれないか考える。

 とはいえ、ボク自身に出来る事はかなり少ない。モナ姉みたいに錬金術が使えるわけでもないし、魔法だって人を治すようなものでもない。半吸血鬼の亜人だけど血を吸う事は出来ても意味ないもんね。

 

「ロジェスティラ様。気にしなくて結構です。私はもう、覚悟は決めていましたから」

「あ、諦めるには早いよ!! まだ何とかする方法が、治療まではいかなくても延命する手段だって………!!」

「無駄なのよ、ロジェ様。アゼル様の薬は肉体の汚染を抑えるだけ。元々撃ち込まれた吸血鬼の血が体内にある限り、毒素は肉体を汚染し続ける。元を断たない限りは………」

 

 ボクの悩む姿にミストさんはそう答えをかけてくれるが、納得はいかない。だって、本当に覚悟出来てるなら………そんな悲しい顔をするわけがないんだから。

 ウルシュラさんの言う通りなら、どうにかしてその元を絶てばこれ以上の進行は収まるはず。なら、ボクが血を吸えば、

 

「先に言っとくけど、ロジロジ〜? 高濃度の吸血鬼の血を吸ってもロジロジの亜人の血を流し込んだら意味ないかんね? ロジロジがまた暴走するだけなら、ウチが何とかするけどミスト王女殿下に万が一があったら洒落にならないよ?」

「となると、綺麗な人間の血が必要になるわ。いっそ、適当な奴を殺して………」

「ウルシュラ。以前も言ったはずです。誰かを犠牲にしてまで、私は生きる道を選ばないと。王族の為に民を犠牲にするのではありません。民の為に、王が道を切り開くのが上に立つものの役目です」

「別にウチとしてはどーでもよくない? 王族だからってキラキラ光る血が流れてるわけでもあるまいし、王だから〜とか平民だから〜とか所詮はおんなじ血が通った人間じゃん。ウチらみたいな亜人とは違って」

「キラキラ………光る………同じ血が通った、人間」

 

 何だろう、何か引っかかってる。こう、答えが喉の辺りまで出てきてる感じ。この感覚はそう、ファウストさんから借りた小説の終盤でまさかの序盤の味方が黒幕だった時を思い出すような………ファウストさん?

 

『血が抜かれすぎて気が散るのが嫌で………魔法で赤い絵の具を血に見立てて補給してました』

 

 直接、頭に雷が落ちたようだった。もし、これが可能なら………血を入れ替える事が出来る。肉体の汚染はどうにもならないけど、元を断つ事は出来る。

 

「ユニティさん」

「なーに? ロジロジ」

「ボクが暴走したら、取り押さえる事は出来る?」

「半殺しでいいならよゆー! ウチの切り札使うから!」

 

 懸念事項は幾つかあるけど、ボクの暴走はユニティさんが止められるみたい。本当はモナ姉やアル姉も交えてやりたいところなんだけど、今のボクじゃあ、2人に合わせる顔はないし。

 あとはミスト王女殿下の許可を得るだけなんだけど、それが一番大変だよね。やっぱり機会を改めて、

 

「ロジェスティラ様。何か案があるのですか?」

「ッ!! う、うん。でも勝手にやったら怒られちゃうし、またの機会に………」

「いえ。寧ろ、今だからやるべきです。もし、貴女が正当な手段を取ろうとすればルノワール一族の名前が邪魔になります。そう言って、私を殺す。なんて、あらぬ疑いをかけられるかもしれません」

「ティーガー様あたりはやりかねないわね。ただ、ミスト王女殿下。あたしも反対です。ロジェ様の人格に関しては統括個体から聞いてるとはいえ、成功するとは限らない。ここはアゼル卿を呼んだ方が………」

「ではこうしましょう──王女として命令します。ロジェスティラ・ルノワール。貴女が考えた案を私に聞かせなさい。実行するかはこちらで判断します」

 

 いきなり空気自体に重さが付与されたようだった。弱々しくはあるけど、しっかりこちらに圧をかけてくる姿は弱ってはいるけど、彼女も確かに王族なんだと知らしめるようで。ボクは自然と片膝をついて跪いていた。

 

「え、えっと………端的にいえば血を入れ替えられないかなって。ボクが吸血鬼に汚染された血を吸って、魔法で綺麗な血をミストさんに流すんだ」

「綺麗な血? ロジェスティラ様の魔法は血液に関わる魔法なのですか?」

「ううん。ボクの魔法は『物質を絵の具に変えてその色彩感覚を具現化する』魔法なんだけど………それを使って、赤い絵の具を血に見立てられないかなって。他ならぬミスト王女殿下が望む人間の血に」

 

 結構無茶苦茶だけだと、やる価値はあるんじゃないかなって思う。ボクが汚い血を吸って、綺麗な血を受け渡す。ボク自身がボクの血を具現化できてたんだから、ミストさんの感覚もあれば成功すると思う。多分。

 

「失敗した場合はただの絵の具が私の体を回るというわけですね」

「そ、そうだね。でも、ボク自身は自分の血を代替できたから行けると思う。ファウストさんの献血にも使ったけど、まんま血だったし」

「アゼル様が一目で見分けがつかないとすると、よほど精密に再現できているようですね。わかりました。試しにやってみましょう」

「ミスト王女殿下!? 正気ですか!? 失敗したら、死ぬかもしれないんですよ!?」

「私にとっては、それが明日かもしれませんし、今日かもしれないという話です。それに本人の体とはいえ、血を生み出してアゼル様が見ているならばほとんど普通の血液と大差ないのでしょう。であれば、まずは少ない血でいいからやってみるべきです。ロジェスティラ様、準備をお願いします」

「〜〜っ!! わかった、わかりました! でも、責任者もなしに行えません! アゼル卿を呼びます! 30分くらいお待ちください! 連れてきますから!」

 

 根負けしたウルシュラさんは叫ぶようにそう告げると、急いで部屋を出て行った。普通そうだよね。寧ろ、ミストさんがまあまあ直情型というか。今ここでやる必要はないというか。

 そんなこんなでユニティさんに作品の感想について、語り合う事30分。ファウストさんを俵を抱くようにして、駆け込んできたウルシュラさんの姿がそこにはあった。ファウストさんは何が何やらという顔をしている。

 

「ロジェスティラ君? 君、何か問題を起こしたのかね? 簡単なお使いを任せたはずなんだが」

「ち、違うよ! ただ、ボクはミスト王女殿下を治せないかって」

「冗談さ。話は軽く聞いている。血を入れ替えるんだとはね。賢者の石作成で忙しいが………それもまた興味深い。やってみる価値はあるだろう。何せ、ロジェスティラ君が生み出した血液は分析の結果、問題なかったのだから」

「い、いいんですか? あの、その、賢者の石とULシリーズの肉体は………」

「そちらは予備の案として進めればいい。すぐに治せるに越した事などないのだから。それに………魂を移動させたとして、それは本人なのか?という疑惑がないわけでもないからね」

「ウチは魂の形が肉体と同じなら本人だと思うけどね。まあ、魂が見れないならそういう考えにもなるか」

 

 と、とりあえず許可は取れたみたい。早速とばかりに清潔な杯や針を机に敷いた布の上に並べていくファウストさん。ボクはウルシュラさんに用意してもらった沸いた水に触れて赤い絵の具に変えて、杯を満たす。

 そして、ボクはミスト王女殿下の無事な方の手に触れる。指先も欠けていて、握るだけで崩れてしまいそうなアカギレまみれの指に2つの小さな傷を立てた。これで準備はいいと思う。

 

「じ、じゃあ始めます。もし、何かあったらすぐに止めてほしい」

「安心なさい。そのための立ち会いだ。失敗しても、私達の方で挽回しよう。だから全力で取り組みなさい」

「──わかりました。行きます」

 

 ミスト王女殿下の指先1つを軽く咥える。ゆっくりと血を吸い出しながら、杯を満たした絵の具をもう1つの傷に触れさせた。

 触れた矢先、絵の具の姿が変わる。暖かい色から徐々に粘り気を増して、何処か鉄の匂いがし出した瞬間、ゆっくりと指先に押し込んだ。

 

「っぐ!」

「ミスト王女殿下、大丈夫ですか?」

「大丈夫、それよりもウルシュラ………そばにいてくれる?」

「勿論です」

 

 吸って、入れて、血の味が口の中に広がっていく。まず感じたのは、舌の上でざらつくようなえぐみ。思わず吐き出しそうになるそれを気合いで飲み込み、集中を切らさずに血を流し込んでいく。

 慣れてきた矢先、今度は口の中に刃が突っ込まれたのかと思うような刺激だった。辛味は刺激だなんて言うけれど、これはただ口の中を刃で滅多刺しにされてるだけだ。

 

 結論、不味い。味だけでわかるけど、えぐみが毒素で刺激が汚染による影響なのかな? とりあえず今は意識がある内にしっかりとやっていきたい。意識がなくなる寸前には切り上げないと。

 

「むう………少しばかり、肌艶が戻ってきたか?」

「ふーん、魂はちょっとばかし、ヒビが治ってきたかな? まだ全体的に淀んでるけど効果はあるっぽいね」

 

 ファウストさんが視界の片隅で薬を投与している。きっと肉体の汚染を抑えるものだろう。こちらは何だか体が熱くなってきた。ボクの体内で何かが暴れてるみたいだ。

 以前も、高濃度の吸血鬼の血を受けた時にこんな感覚になったから体内でボクの血が負けないように頑張ってるんだと思う。

 

 暫くして、杯の中身が空になった。それをきっかけにして、ボクは指先から口を離す。唾に濡れた指を拭いてあげて、ファウストさんから渡された布できっちり保護する。

 そこまでやって、ミストさんの顔を見れば──すっかり顔色が良くなったミスト王女がいた。包帯に塗れてはいるが、無事な方の目はしっかりとした焦点でボクを見ていた。

 

「気分はどう、かな? ミストさん。体調は悪くない?」

「はい。寧ろ、今までにないくらい、体が軽いです」

 

 声も張りが出てきて、いかにも元気になった彼女は無事な腕でボクの手に触れると愛おしげに撫でる。それを見て、ボクは胸を撫で下ろすと、立ち上がった。あとはファウストさんに変わろうと思ったからなんだけど、

 

「あれ? 皆んな小さくなった?」

「べったべたな反応どうもありがと、ロジロジ。そっちがでかくなってるんだよ。見たところ16〜18歳と云ったところだね〜あん時と同じだ」

「でも、特に体に異常はないよ。暫くしたら治るかな?」

「また、あん時みたいに血を流したらいいんじゃない?」

 

 背丈と手足の長さが変わった分、慣れるまで時間はかかりそうかな。あとは微妙に足元が見えない。ボクって成長すると、結構おっきくなるんだ………クラウンはこっちの方が好きなのかな?

 

「とりあえず、ボクは帰るね。きっともう、ボクにやれる事は少ないと思うし」

「そうじゃな。後は私に任せとくれ。経過観察は任せるがいい」

「んじゃ、ロジロジ〜ご飯食べて帰ろ! その体、暴走しないとは限らないしさ!」

「うえっ!? ああ、うん、そだね………」

「ロジロジ〜! ノリ悪いぞ〜!」

 

肩に腕を回してくるユニティさんにちょっと引きながらも、部屋から出て行こうとして、

 

「ロジェスティラ様」

 

 後ろからミスト王女に呼び止められた。ユニティさんの拘束から逃れて、振り返ると彼女は笑顔を浮かべている。

 それは自分の生を諦めた笑みでもなく、死を覚悟した悲愴なものでもない。ただ純粋に、笑っていた。

 

「ありがとうございます。私を、助けてくれて」

 

 助けた。その言葉がボクの中で反芻されて、ゆっくりと腑に落ちていく。クラウンを殺してしまった怪物のボクが、今度はその怪物のおかげで目の前の人を救えた。それがボクにどれだけの衝撃を与えているか知らないまま、彼女はゆっくりと頷いて。

 

「──貴女がいてくれて、本当に良かった」

 

 もう、無理だった。ぼろぼろと、せっかく泣き止んだ筈なのに自分でも抑えきれない感情の波がまた目から決壊したように溢れていく。

 誰かに必要とされたくて、出てきたボクには余りにも勿体無い言葉だった。自分のおかげで助かった人がいる。自分の力で助けられた人がいる。

 

 その事実だけで、ボクはもうありったけの報酬をもらった気分だった。




感想、評価ありがとうございます! 励みになってます!
どしどしください! 待ってます!

魔女ハーレムは何人がいい?

  • あまり多いのは………3人くらい?
  • バランスがいいから6人!
  • 男なら9人全員だろ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。