吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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GWに入ったので投稿頻度を上げていきたい


とりあえず寝る

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 馬車に1日乗って、王宮まで連れて行かれた吾輩は、そのままの足で謁見。ありとあらゆる言葉を尽くされて、モルガナのアトリエに帰宅して力尽きたところである。

 

「お疲れ様です、クロ」

「疲れた………もう、精神的につっかれた………」

「猫が姫様の膝で溶けてるわねぇ」

 

 今でも信じられない光景だった。国王たる存在から、貴族と同様の扱いをすると言われた時には口の中で悲鳴が漏れたくらいだ。隣に立つモルガナに肘鉄入れられなきゃ、跪く事さえ忘れていたかもしれない。

 結論から言えば、話自体はティーガー殿から聞いていた通りだった。まあ言い方に悪意はあったけれど、ティーガー殿の愛国心からしたらまあ仕方ない事かな。

 

 だって吾輩の周りの女性って帝国に関係しかない人ばかりだからね。王国の設立者がハニトラに引っかかってると思われても仕方ないよね。ぶっちゃけ、魔女たちの4/9は帝国出身だしな。これ、魔女を生み出した帝国が悪いのでは?

 

 その後はまさかの夜会である。しかも会場は城内の大広間で行われた。広間にはシャンデリア風の錬金道具の照明がいくつも吊るされており、全面にわたってかなり明るい。夜風にあたれるよう、テラスにも複数の椅子とテーブルが用意されており、なかなか良い雰囲気であった。

 

 今夜は「お茶会」を兼ねた懇親会とのことで、立食形式で酒はそれなりに、軽食はおつまみ程度に用意されているが、いわゆる晩餐は出ないため、皆、晩御飯を食べて出てきてるとは思う。その割には空腹に耐える令嬢達がいたのだが。

 

 そう、令嬢達である。夜会の出席者はおよそ30人以上。本当に簡易的な夜会かつ突発的なお茶会だというのに、その半数は女性である。しかも、大半が20後半から30前半といった女性たちで目がギラギラしてて吾輩怖い。

 

 もうね。皆さん、ガチなの。目が肉食獣超えての野獣だったの。牛が売られる童謡が似合うの吾輩。いやね? 分かるよ? 吾輩の側に30代の美人騎士がいるからね? 30代でも行ける男性!!ってもう皆さん狙って来てるのよ。

 

 本当にモルガナが隣で腕を組んでいなかったら危なかったし、何なら途中から着飾ったアルチナが護衛として合流してくれなかったら吾輩食われてたのは間違いないもん。

 

 そんなこんなで肉食獣の檻から逃げて、アトリエに帰還した吾輩はモルガナの膝の上で溶けているのである。最早、今夜はロジェの下に帰るのは諦めた。

 なので、吾輩は冷たいミルクを飲みながら精神を癒しているのである。美人に膝枕されてぐーたらするの最高だにゃあ。

 

「クロ。明日、何か食べたいものはありますか?」

「んー? モルガナが作ってくれるのか?」

「………………お、お菓子程度なら。例えば、トリハスとか」

「トリハス?」

「牛乳とワインを入れた卵液にパンを纏わせて油で揚げた甘いお菓子です」

「フレンチトーストみたいなもんか。じゃあ。それ朝食で」

「ならお昼はお姉さんが作るわぁ。この間買って来たうどんを食べてみたいのよねえ」

「なら野菜を煮て出汁を作ってからの方がいいぞ〜そのままうどんも茹でれば野菜たっぷりうどんで栄養価的にもいいからな」

 

 ぼんやりと明日のご飯に思考を巡らせつつも、疲れが噴き出て来た眠気に身を委ねて微睡む。好きなタイミングで眠れる時に微睡めるのが1番気持ちいいと思うんだよね

 

「クロ、疲れてるならお部屋で眠りましょう。今日はどちらの部屋で寝ますか?」

「自室「あー、何でか漏水工事のようですね」………モルガナの部屋」

「分かったわぁ。じゃあ、後で部屋に行くわねぇ」

「当然のように夫婦の寝室に入って来るとは感心しませんね」

「それは協定違反じゃないかしらぁ? お姉さんも第二婦人として迎え入れられてる事、忘れたわけじゃないわよねぇ?」

「分かった。じゃあ、吾輩がアルチナの部屋に行けば問題なしだな?」

「待ちなさい。夜を共にするのは夫婦として当然のことです。そして、2番目である以上は正妻を尊重すべきなのがうまくいく秘訣と言えます。つまり、私が言いたいのはですね」

「簡潔に、1言で」

「私が、クロと寝たいんです!」

「じゃあ、今日のところは吾輩は自室で寝るから。そういうのはまた今度」

 

 膝枕から頭を起こして、吾輩の言葉に何処かギクシャクとしたら反応を見せる2人。目線で先に行ってよ、貴女が行きなさい、互いに伝え合った後、アルチナが咳払いをこほんと、1つ。

 

「そういうのは、また今度って事は………つまり?」

「ああ、なるほど。そうだな………」

 

 猫のまま、いや格好がつかないか。吾輩、人間形態に変化して少しばかりの期待に満ちた2人のそわそわした空気に揶揄うように笑いかけて、

 

「また今度、気が向いたら部屋においで。待ってるから」

 

 その言葉の意味にすぐに気づいたモルガナの顔が湯沸かし器のように瞬時に沸騰。逆にアルチナは少しばかり頬を染めながら肩をすくめた。

 

「き、気が向いたらって言い方は好きじゃないですが………その、わ、分かりました」

「そこは男らしくおれの部屋に来い、くらいは言ってくれないかしらぁ?」

「しつこい誘い方は趣味じゃないしな。じゃあ、おやすみ2人とも」

 

 その夜は久しぶりにふかふかのベッドで眠る事が出来た。部屋の扉前で誰かが右往左往してるような空気があったが吾輩睡魔に勝てなかったので、努めて無視して翌朝を迎えた。

 

 朝食の席に降りれば、リリィ達がアルチナにヘッドロックされてた。なんで? 吾輩のトリハスを用意してくれてるモルガナに目線で問えば、黙って首を横に振られたので吾輩も無視する。多分、第二夫人か年齢関連でいじられたんだろうと予測して。

 

 モルガナは柔かにバゲットを使ったフレンチトーストを吾輩の目の前に置き、暖かなミルクとサラダを置いてくれたので手を合わせて頂くことに。

 なんだかんだでモルガナ自身の手料理は食べたことがないので結構楽しみなのだ。魔女達の中で本当にやばいのはティアだが、あの子も生粋のお嬢様だしな。

 

「うん、美味い! 吾輩が知ってるのとは歯ごたえとか香りが違うがこれはこれでいいな!」

「喜んでもらえて良かったです。基本は古いワインやバゲットを使って作る余り物の調理法なので、好んで人に食べさせるようなものではありませんが」

「いいんだよ。おれ達は家族なんだから、そんな事気にしなくて」

「っ! そ、そうですね。これからは本当の家族に、なるんですもんね」

 

 早速切り分けて口に運べば、さっくりとした歯ごたえと仄かなワインの香りがする。古いバゲットやワインを使ってる分、濃縮されてるとか何かだろうか? これまたリクエストしたら作ってくれるかな。

 黙々と口に運び、サラダでリセットして、食べ終わり、シナモンが香る珈琲で一息つく。さて、この後はどうしようか。出来れば昼飯を食べてからロジェの下に戻りたいところだ。

 

「そういえば、ロジェって今何してるか知ってるか?」

「ハク」

「はいな、旦那様。ロジェ殿は昨日は薬を手渡した後、ユニティ殿とうどんを食べた後にそのまま自宅で寝ておりました。今朝はアゼル卿のアトリエに呼び出されてるようです。何でもミスト王女殿下の体を完治させる方法を煮詰めると。伝言で、アゼル卿から時間があれば来て欲しいと言われております」

「じゃあ、午後からはアゼル卿のアトリエに向かうとするかな。としたら、午前中は………」

「クロ。貴方さえ良ければ、私に貴方の首輪を調べさせてもらっていいですか? 既に武器は昨夜の段階でハク達に頼んで調べさせてもらっていますが、首輪だけはクロの力が必要なので」

「確かになぁ。わかった、頼むよ。時限爆弾とか、いきなり首が締まるとかじゃ無い事を願ってるわ」

 

 何せ、この首輪というかチョーカーは吾輩が猫に変わってもジャストフィットするようになっているのだ。まるで吾輩の為に作られているかのようで、吾輩もうっすら過去に飛ぶ自身を想像してしまう。

 

 とりあえず朝食も食べ終わったので、モルガナのアトリエの地下通路に移動。何かあった時用としてアルチナもついてきたが、手には謎の本が握られている。よくよく見てみれば、【空属性魔法に対する運用 著者:シュレディンガー 共同執筆者:ユニティ・ブバスティス】と書かれていた。

 

「アルチナ、それなんだ?」

「ああ、これ? 姫様が書いた理論を本にしてユニティちゃんがまとめたらしいわぁ。ほら? お姉さんって剣は誰にも負けない自信があるけど、魔法に関してはロジェちゃんにも習得速度負けるくらいだし、ねっ?」

「アルチナはそもそも魔法の才能があまりないですからね」

「こらっ! モルガナ!」

 

 せっせと吾輩の首輪を調べつつも、ぼそっと辛辣な事を宣うモルガナ。用意された椅子に腰掛けて地下通路を爆走するトロッコ事故を眺めながら、アルチナは苦笑していた。

 

「まあ、姫様の言う通りなんだけどぉ。お姉さんも、剣の腕ばっかり磨くんじゃなくて魔法も鍛えようと思って。姫様に師事したらこれを貰ったのよねぇ。正直、おはぎ先生より遥かにわかりやすいわぁ」

「当然だろう。モルガナは賢いからな!」

「そこで素直に褒められるのが先生の美徳よねぇ」

「そもそもアルチナは『空間変化』という空属性の中でも更に稀な才能があるのに、いかんせん魔法自体の才能が低いという状態ですからね。私ならもっと上手く活用します」

「って言ってもアルチナは塑像の方が必要な状況だったから仕方ない側面もあるだろう。いい機会だし、空間ごと斬る!なんて大枚な使い方以外にも学ぶといいかもな。そしたら、救える人もいっぱい増えるぞ」

「………斬る以外に活用法なんてあるかしらぁ?」

「幾らでもあるでしょう。一度剣から離れて考えなさい」

 

 モルガナの言う通りである。現在、アルチナはモルガナが作った剣を魔法の媒介にしてるので魔法を容易く使ってはいる。

 だが、目の前で空中に手刀を振り下ろす彼女を見る限り、まだ空手で魔法を巧くは使えないようだ。時間をかけて集中すればいけるようだが、彼女の場合は踏み込んで切った方が早いのもあるんだろうな。

 

 そんなこんなでアルチナの手刀が風を斬る音と、トロッコによるドリフトを決め出した使い魔達を眺めていれば、新しい机と共に何やら良い香りがするお茶と、おまんじゅうが置かれた。

 

「軽食です。つまみながらどうぞ」

「ハクか。ありがとな。これは、ハーブティーか?」

「スイートミントという葉を煎じたお茶ですぞ。甘い香りと裏腹にすっきりとした味わいで庶民達の間では結構飲まれてます。我ら使い魔も自前の花壇から取ったこれでお茶を飲むくらいです」

「へえ。というかハク達はやっぱり飯を食べるのか? あんまり食べてる姿は見ないけど」

「必ず2食は食べております。合間におやつやらもありますし。基本的には主人殿が錬金術に必要な素材の魔物を倒して余った肉や釣った魚を料理することが多いですな。地下通路の一角で干物も作っております」

「意外と逞しく生活してるんだな………でも、ハク達って食事はいるのか?」

 

 お茶を口に含むとなるほど、ミントティーに近い風味だ。ハーブティーと似た味わいだが、これは確かに甘いお茶請けが合う。

 餡子好きなアルチナも早速、饅頭に手を伸ばしたがお茶はどうも舌に合わなかったらしい。微妙な表情をしている。

 

「まあ、娯楽としてですな。ご存知かもしれませんが我らは賢者の石………それも白い石の欠片によって生み出された人形です。統括個体となる私は黒い石を丸々使ってはいますが」

「確か、白、黒、赤の順で完成度が違うって話だよな? 白や黒は作れる人はいないでもないが………赤は違う。それこそ、モルガナが近年では初だろうよ」

「左様です。我らみたいな人形としての機能を果たすだけならば、黒で構いませんが皆様のように人間と丸っきり同じ人形を作るには赤が必要になります。それこそ、旦那様が作成した『賢者の石』『ULシリーズ』『変換器』が必要になるんですな」

「そして、私はついにその変換器を解明しましたよ」

「え、早っ! 流石はモルガナだな。まさかこんなに早くわかるとは」

「もっと褒めてくださっても構いませんよ。我が夫」

「いよいよ、その妄言が真実になるとは。我ら一同感服です」

「やっぱり姫様の夫宣言はおかしいって思ってたわけねぇ」

「残念ながら我らは使い魔なので」

「モルガナ、説明頼んだ」

 

 しみじみと呟くハクの背中に何故か中間管理職の哀愁を感じる。とりあえず切り替えようとモルガナに解析結果の報告を頼めば、彼女は頼もしく頷いた。

 

「結論から言います。クロにつけられた首輪は『魔力や衝撃などを雷に変換する』錬金道具です。他にも機能はありますが主体はそのようですね。魔力を変換する錬金道具は割と知られてはいますが………あの空の怒り、雷を生み出すとは。クロス氏はやはり凄いお方だ」

「魔力を変換する道具って結構あるのか?」

「帝国だとぉ………燃える剣とか凍てつく剣とかはあったわねぇ。あれも所有者の魔力を変換させてるんだけどぉ。あれって馬鹿みたいに魔力を食うのよぉ。少なくともお姉さんの場合は1分稼働したら、ぶっ倒れるわぁ」

「私の杖にも似たような効果を持つ物はありますが、あれは私自身にしか使えません。普通なら魔力を一気に吸われて死にますから。私の魔力量はアルチナの50倍はありますから」

「そのドヤ顔はやめな? アルチナが魔法の才に不貞腐れて横になったじゃないか」

「いいわよぉ。お姉さんには剣があるしぃ」

 

 いじけ出したアルチナには申し訳ないが事実、魔力量だけならモルガナ>>>ユニティ>ロジェ>>>アルチナではある。ロジェが平均より多いくらいなので、本当にアルチナはかつかつなのだ。設定した吾輩が悪い、すまんな。因みに吾輩はどの辺りなんだろ。地味に気になる。

 

「冗談はさておき、これが何故『死者蘇生』に関わるかは分かりません。現に今は待機状態ですから、どうやって起動するかまではこの段階では分かりませんね。何かしらの音声認識のようではありますが」

「変身!とか言ったら変わらないか? 変わらないか、だよな」

「とりあえず危険はないって事でいいのかしらぁ? お姉さん達にとって大事なのはそこじゃない?」

「問題ありません。危険がないのは保証します。ただ、これ以外の剣やら銃やらは意味がないかと………あれらは良くも悪くも美術品以上の価値はありません。使えばすぐに壊れるのが見えています。使えるのは、玩具シリーズの武装が入った『玩具箱』と乗り物らしきものだけですね」

「そう上手くはいかないってわけか。ありがと。まあ、使えるものがわかったのは助かるわ」

 

 しかし、雷ね………雷と死者蘇生。もし、もしもだ。ルドルフ・Y・クロスが吾輩であるならきっと甦らせたのは彼奴に違いない。

 伝承では成功したと聞いている。ただどうしても、疑ってしまうのだ。

 

 

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 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 死者蘇生の正確性、それはきっと吾輩にとって無視できない内容だと何故だか強く考えてしまうのだった。




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