吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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最近、モルガナとアルチナとベッドの上でイチャラブする光景が浮かびますがr18なので書けないというジレンマにかられています。

あと、GWに書き溜めたので連続投稿を金曜まで行います。よろしくです。



影の国の勇者様

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 今、吾輩達はモルガナのアトリエ前に立っている。使い魔達が吾輩達の姿を見ているし、何ならリリィ達が顔を覗かせているからモルガナにはロジェが来ている事が分かっているだろう。

 

「大丈夫か、ロジェ。無理するな。吾輩が間に入ってもいいんだぞ」

「大丈夫。ボクが決めた事だから、ボクが頑張ってみたいんだ」

 

 それでもやはり緊張しているのか、彼女の足が前に進まない。心配して声をかけてみれば、彼女は真っ直ぐに自分の気持ちを伝えてくれた。出会ったばかりの頃ならこんな言葉は出てこなかっただろう。

 

 だが、その手は震えていた。必死さが痛いほどに伝わってくる。だから、吾輩は彼女の手を取って握った。安心させるように。

 

「ッ!? あっ、手………うわ、ボク、こんなにガグガクしてる………」

 

 彼女も漸く自分の酷さに気付いたようで、こちらの手を握り返す。暫くすると、冷たい手の震えは治まり、血色を取り戻した。

 

「っ、ははは。自分で頑張りたいって言ったのに、結局クラウンに頼ってるや………」

「いいんだよ。手を握ってあげるくらい。これから先もそうしてあげるさ」

「………もう、本当そういうとこだよ」

 

 えへへ、とはにかむロジェから手を離すとゆっくりと背中を押してあげる。彼女もその意図に頷くと入り口前で待っていたハクに話し掛ける。ハクは頷くと、ついて来いとばかりに扉を開けて応接室まで案内してくれた。

 

 慣れた部屋の扉の前で、ロジェは深呼吸すると扉を叩く。どうぞ、と部屋で待つ彼女の声にロジェは失礼します、と小さく言って部屋へと入った。

 中ではソファに腰掛けてお茶を飲むモルガナとその背後に帯剣をした状態で佇むアルチナの姿だった。

 

 両者から並々ならぬ圧を感じるが、ロジェは冷や汗を流しながらもゆっくりと頭を下げた。

 

「まずは、時間を取ってもらってありがとうございます。それと、いきなり姿を消して………ごめんなさい」

「全くです。私の知らないところで色々していたようですね。それで、今日は何の用でこちらに?」

「………自分のせいで迷惑をかけた謝罪に来ました」

 

 謝罪から入った彼女はもう今までとは違った。ユニと一緒にルーフェン殿を訪れた時はもう話にすらならなかったが今ではきちんと受け答えできている。ミスト殿から教わったのか、礼儀もそれなりに出来ている。

 

「迷惑? 何のことですか?」

「クラウンを………モルガナさんの婚約者を殺しかけたこと、ミストさんに勝手な治療を施した事。1つでも歯車がズレていればきっと責任問題になったと思ったから」

「それで?」

「ユニティさんから聞いたんだ。『姦淫の悪魔』ってのがボク達魔女を襲うんだって。それなのに、下らないことで仲違いしてるのも違うって思った。仲良く………とまでは行かなくても目指す方向だけは揃えたいって」

「つまり、何が言いたいんですか?」

 

 モルガナもちょっと意地悪だ。それだけロジェを試しているのかもしれない。何せ、吃る事なくちゃんと自分の意思を口にしているのだから。暫く会っていなかった彼女からしたら驚きに溢れているのだろう。

 

「ボクを、またここに置いてくれませんか? 手伝いもします。下働きでも構いません。ボクを──また仲間として認めてくれませんか?」

 

 お願いします。と頭を下げたロジェにアルチナが困惑した顔でこちらを見てくる。分かるよ。仲違いしたつもりもないし、そもそも家出してた娘が帰ってきたくらいの感覚なのだ。

 だけれど、ユニも言っていたようにある種の罰を彼女は欲している。なあなあにして、心に蟠りを残すよりも納得のいく言葉が欲しいのだと。

 

「話は分かりました………貴女を赦します。ロジェスティラ・ルノワール」

「ッ!! モルガナさん!」

「ただし、条件があります。今日から自分の食費を少しでいいから自分で賄う事。アトリエの手伝いでも、ミスト王女殿下の護衛でも構いません。少しお金を入れなさい。それが自立の一歩で、貴女への罰です」

「そんなんで、いいの…?」

 

 モルガナはティーカップを机に置く。その目は吾輩に向けられた後、ゆっくりと目を伏せた。

 

「そもそも私は怒ってなどいません。クロを噛み殺しかけた、なんて………私の過ちで本当に死なせた事やアルチナにように斬り殺した事に比べれば些事でしょう」

「アレは別に主らのせいじゃ………」

「いいえ、クロ。それは間違いなく私達の罪なのです。だから、私達は歩みを止めない。貴方を守れなかった過去があるから、腐る事なく前に進む事ができるのです」

「………大袈裟だな。ただの黒猫にそこまで執着するなんて」

「「「あのさぁ………」」」

「あれ、いきなり俺だけ孤立した??」

 

 当たり前の事を口にしただけなのに、何故か全員してため息を吐くのはやめてほしい。まるで吾輩が間違えているみたいじゃないか。

 

「もう、前々からの計画実行すべきじゃないかしらぁ? 姫様」

「確かに………そうですね。外堀は埋まりましたし、実行に移してもいいかもしれません。ロジェは、今の肉体年齢ならともかくもう少し成長してからですね」

「どうしよう、吾輩が知らない計画が着々と進んでる」

「これも全部クラウンが悪いと思うよ」

「言うようになったな、ロジェ」

 

 わざと髪をぐしゃぐしゃにしてやるつもりで帽子の上からロジェの頭を撫でてやる。やめてよ、とか言うが知った事かとばかりにぐしゃぐしゃにしてやった。それを見て、アルチナも苦笑しながら、空いてるソファに腰掛ければ、機を狙ったようにハクが吾輩達の分のお茶を持ってきてくれた。

 

「では、お茶会にしましょう。これから先の未来の話を………」

 

 スイートミントの香り立つお茶を持ち、彼女の言葉に連なるようにゆっくりと口にして──目の前を何かが通り過ぎていった。

 理解をする前に瞬時に誰かによって後ろへ突き飛ばされた。訳がわからぬまま、ソファごと後ろに転がれば、耳をつんざくような猿叫が響き渡る。

 

「何だ………?」

「クラウン、頭下げてて!!」

「ロジェちゃん、そのまま防いでなさい!」

 

 恐る恐る顔を上げた先には、黒があった。違う。『黒い色』をしているのではない。そこだけ光が完全に死に絶え、空間にぽっかりと穴が空いたような、絶対的な虚無が存在していた。

 縁が常に陽炎のように揺らめき、凝視しようとするとピントが合わない。墨汁を水に垂らしたような、不定形の悪意はロジェに蹴られようが、アルチナに斬られようが、意味を成さない。物理攻撃が効いてないようだ。

 

「2人とも退きなさい。錬金道具『玩具の花火』!」

 

 それを見てか、モルガナの手から閃光が迸る。投げられたそれはまるで花火。だが、その光量は真夏の日差しを凌駕する。即ちスタングレネードと同意義だ。

 網膜が焼き付くほどの光を前に影の怪物は姿を消していた。影のようなだけあって、急な光に弱いらしい。とはいえ、何故そんな怪物が急にここを襲ってきたのか定かでは無いし、

 

「なんだよ、これ………」

 

 影の怪物が壊した先には、黒い煙が立ち上がっていた。まだまだ太陽は天辺で輝く時間帯の街中はいつもの喧騒ではなく、悲鳴と怒声が入り混じる戦場へと姿を変えていたのだから。

 

「何があったか、事情を聞く必要がありそうですね。立てますか、ティーガー・ミッドウェイ」

「あ、ぐが………こ、こは? シュレディンガー………そうか、お前たちの………」

「ハク。傷薬を。それと、武器を手に持ちなさい。地下通路の面々も呼び戻し、すぐに避難誘導を!」

「はい! 我が主人! ご武運を!」

「隊長!? 何だ、今の音って………! つか、それどころじゃねえんだ! いきなり街の影から変な化け物たちが出て来やがって………!」

「リリィ! 武装の許可を出すわ! 怪物達に物理は効かない以上、貴女達の魔法が頼りになる! 頼んだわよ! 私は事情が分かり次第、行動する。部隊は貴女に任せるわ!」

「りょ、了解しました! 隊長!」

 

 何が何やらの状態に訳も分からぬまま、あたふたするしかない吾輩とロジェ。その間にもハクは部屋を飛び出し、傷薬を投げていく。入れ替わるようにして、リリィがやって来てはアルチナの指示に従い、すぐさま駆け出していく。

 

 鉄火場の経験がある2人に比べて、やれる事が少ない吾輩達はとりあえずおろおろするばかりで全く役に立っていない。ほんとにすまない。

 とりあえずモルガナが先程吹き飛んできたのであろうティーガーにポーションを飲ませ、先程よりは意識がはっきりした彼女を無事なソファに寝かせる。

 

「何があったのですか、ティーガー?」

「………アゼル卿がいきなり王宮に新しい弟子を連れて来たんだ。約束もなしに珍しいと思った矢先、そいつから先程の影の怪物が溢れ出した。訳も分からぬまま、応戦していたのだが、影に沈んだと思ったら壁に叩きつけられていた始末だ。情けない」

「そいつはまだ王宮にいるって事か?」

「分からんが………ミスト王女殿下がまだいらっしゃる筈だ。ウルシュラがいるとはいえ、どこまで持つのか………くっそ、何が軍人だ。外敵を排除出来ずに何が………!」

「もう喋るのはやめなさい」

 

 悔しさを声に滲ませるティーガーをソファに寝かせ、吾輩達は顔を見合わせる。何が何やら分からないし、こんな事態は吾輩は描いた記憶がない。完全なイレギュラーだ。

 

「とりあえず何が起きたか分かりませんが………ひとまず王宮に向かいましょう。ミスト王女殿下や他の者たちもまだいらっしゃるかもしれません」

「そうね。ロジェちゃんと先生もついて来て。決してお姉さん達から離れちゃダメよ」

「う、うん! わかった!」

「ったく、本当に何が起きて──」

 

 全員がぶち抜かれた壁際に集合しようとしたので、1番遠かった吾輩もそちらに行こうとして、足が止まる。なんだ?と下を見た瞬間、足が膝の部分まで一気に影に沈んでいく。

 

「クロ! 今、助け──!」

「違っ、横だ! モルガナっ!!」

 

 吾輩に駆け寄ろうとしたモルガナ、それより早く動いたのは先程までソファで苦しげに息を吐いていたティーガーだった。あろう事か、黒い触手が纏わり付いた肉体はモルガナが防御をするより早く、その横っ面を蹴り抜き、別の部屋に吹き飛ばしていった。

 

 その目は漆黒に染まり、既に彼女の意思から離れていた。対象が消えると、彼女は次なる相手………吾輩を引っ張り上げようとするロジェへ狙いを澄ましたが、

 

「外敵、そうだ敵だ………敵がいる。帝国から来た敵だ! 敵は排除すべき! 全ては我が国の為に! 我こそが正義! 我らこそが頂点也!」

「頭がおかしくなった………訳じゃなさそうねぇ」

 

 すかさず割り込んだアルチナによって防がれた。そのまま鍔迫り合いに持ち込む2人とは裏腹に吾輩の体は既に首まで沈んでいて。

 

「うおっ、そんな事より誰か、助け! 全然体が上がっていかねえ!」

「クラウン、しっかり!! ボクの手を離さないで!」

「ッ!! 悪いことは立て続けに起きるわね!! ロジェちゃん! 先生の手を離さずにそのまま追いかけて!!」

「わ、わかった! アル姉は!?」

「私は………この闇堕ちした軍人を片してから追いかけるわ!!」

 

 そこまでは聞こえたが、その後は影の中に吾輩も引き摺り込まれてしまった。浮力もなければ酸素もない中、吾輩の消えそうな意識をロジェの手だけが手繰り寄せようとしていて。

 言葉は聞こえない。暗闇で何も見えない。何かに引っ張られるような感覚と共に、吾輩はどちらが上か下かもわからないままいきなり弾き出された。

 

「ッ、ガハッ! げほっ! なんだってんだ、一体!?」

「クラウンに付き合ってたら、本当命が足りないよ………って、ここは?」

「王宮さ。これから、俺のモノになる、ね?」

 

 いきなりの空気と光に目が眩む中、目の前の豪華な椅子に座る何者かがこちらに声をかけていた。チカチカとする瞳を無理矢理見開いて、ようやくここが王宮………それも玉座がある謁見の間だと理解する。

 

 そして、目の前にいた何者かの姿も漸く認識できた。濃い紫と黒のアシンメトリーの女の子だ。幼い顔立ちで、どこかで見たような気がしないでもない。まだ12歳の少女とも呼べる子が堂々と足を組んでこちらを見下ろしている。

 

「誰だ、お前は?」

「おいおい、俺の名前を忘れたのか? ならばもう一度耳糞が詰まったその穴を開けて聞いておけ。お前が犯した罪を忘れない為に」

 

 少女らしさのかけらも無い。歩く度に影が、闇が、夜が蠢く。誰もが恐れる原始的な恐怖を形にしたその少女は、大層にも両手を広げて宣言する。

 

「俺の名前は──エリス・シアン・ウルタール! 魔王を討伐し、聖女勇者として歴史に名前を刻んだ男だよ」

 

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 まさかの勇者が今章のラスボスな事に吾輩は言葉を失うしかなかったのだった。




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