吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:シャモロック

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キリのいいとこれで連続投稿をやめていくスタイル。
この後の話から魔女達に視点が飛んでいきます。ここまでついて来てくれた読者なら魔女達の1人称でもついて来てくれると信じてます。

いよいよ、3章も終盤に入りました。後、10話以内には収めたい。


我が名は勇者エリスなり!

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 まさかの勇者によって呼び出された吾輩とロジェ、辺りを見渡せば血を流して転がる軍人達に黒い手によって縛られ、磔にされている。

 

「ミストさん!!」

「エリス………ウルタールだって?」

 

 既に占拠されてしまったのがひしひしと伝わり、ロジェが吊るされて顔色が悪いミスト殿を心配し、すぐさま駆け寄ろうとするが暴れた片鱗である瓦礫の影から怪物達がにじり寄り、ロジェはバク転してこちらに帰って来た。

 

「クラウン! 早く助けないと! ミストさんが………クラウンどうしたの? 何か腑に落ちないって顔してるけど」

「ああ、さっき彼奴が自分を聖女勇者だって名乗ったことについてな………吾輩には聖女勇者とやらの記憶はないが、エリス・ウルタールって奴には心当たりがある」

 

 何を隠そう、名前だけは知ってて当然だ。魔女ノ旅団No.6『演劇』を司る魔女にして………元男という異色の経歴。神聖術のスペシャリストにして、殿や相手を無力化する事に関しては無類の強さを誇る魔女達のジョーカー。

 ティアとはまた別の分野で戦いたくないと思わせ、原作ゲームにおいてもユニやティアと最後まで主人公に抗った女傑。

 

 最終的には、主人公により、魔法を逆手に取られて男に戻された上で皮化させられ、主人公に着られてしまう。それにより主人公は屈指のイケメンになるのだが、誰もがエリス改めエリックのビジュアルのおかげじゃねえか!と突っ込んだ。そして、唯一魔女として手を出さなかった。

 

 とはいえ、だ。エリスは赤髪褐色の翠の目をしたアラビアンな雰囲気の魔女なんだが………あまりにも見た目が違う故に吾輩も確証を持てないのだ。

 

「共有してよ。誰だか知らないけど、過去の勇者って呼ばれた人がこんな酷い真似をするなら蹴り飛ばされてもおかしくはないよね」

「随分と好戦的だが、酷いのはお前たちだろう? 過去にあった真実を捻じ曲げて、栄光に溢れた虚栄だけを信じ込む。それによって得た感動が偽りのものだと理解もせずに馬鹿みたいに憧れる。例えばそう──義賊だなんだと持て囃されてるルノワール一族とかな」

「………何だって?」

「落ち着け、ロジェ。挑発に乗るな。本当に吾輩が知るエリスならとうに吾輩達は恥ずかしい負け方をしてる筈だ」

 

 自分の一族を馬鹿にされて、今にも飛びかかりそうなロジェの肩を掴む。もし、本当に目の前の聖女勇者………吾輩の知るエリスなら戦うよりも逃げる事を優先した方がいい。

 

「聖女勇者………かはさておき、エリス・ウルタールって奴は傲慢でキザな男だ。そのせいで魔法で女に変えられて、この世界の差別に負けていたところを芸術魔法『演劇』で男になる事が出来るって話なんだが」

「聞いた話だと、単純に男の人に変わる魔法使いって事?」

「いや、違う。それは触りもいいとこだ。本来は『役割の具現化及び舞台演劇の事象化と強制』だ。端折って説明すれば、『自分の想像通りのことが出来る』魔法。勿論、制限はあるがな」

「………クラウンさぁ、どうしてそんな魔法作ったの??」

「その日は締切まで後半日かつ三徹目だったんだ」

 

 あの巻頭カラー及びアニメ化による仕事の爆増という地獄はもう2度とやりたくない。血反吐吐いたし、血尿も出た。漫画家は人を殺せると本気で思ったくらいだ。

 

「はっ! 流石に詳しいな、ルドルフ・Y・クロス! だが、悲しいかな。かつての親友といえど君こそが、いや! 俺様以外の勇者達こそがこの虚構に満ちた歴史を産んだ最大の犯罪者とも呼べるだろう!」

「何のことやら、さっぱりだな? おれの名前はヤマト。ただのヤマトだ」

「はっ、誤魔化そうったってそうはいかないよ。君のミドルネームがヤマトって事は知ってるさ。ルドルフ・ヤマト・クロス。この俺が神に誓って貴様へ罰を下す!」

「………やっぱり、Yってヤマトの事だったか」

 

 つまり、吾輩が400年前に飛ぶ事は確定したらしい。魔女達の未来も散々だが、吾輩の未来も色々ありすぎじゃないか? 吾輩が一体何をした………この作品を描いたせいか。ちょっと気落ちするな、うん。

 

「それでお前は何で王宮を占拠したんだ? そもそもどうして400年前の偉人が蘇えることが出来た?」

「はっ! 死ぬのに聞いて何になる? まあいい、冥土の土産だ教えてやる。お前の研究成果『死者蘇生』を利用させてもらった。本来この体は蘇生を行おうとした錬金術師の妹らしい。だから、魂が入る前に割り込んだのさ。やっぱり女の体は柔らかくていいものだ」

「お前、まさかアゼル卿の………!!」

「何だ? 世話にでもなった恩人か? 馬鹿だな、お前はとんだ甘ちゃんだ。奴はとんだ犯罪者だ。奴隷組織を率いて、何人もの悲劇を生み出した………だから、俺様みたいな神たる存在に裁かれるのだよ! 無駄な足掻きをご苦労様! 奴が積み上げた年月はただ神に搾取される為のものだったのさ!」

 

 ガリッと口の中で音がした。歯が砕けたような音、食いしばりすぎて鳴った音に自分の中にささくれ立つ感情がある事を認識した。

 

 落ち着け。挑発だ。今ここで吾輩が殴りかかったところで、返す刃で殺されてお終いだ。奴の正体が仮にエリスだとして、狙いは吾輩………いや、勇者達として間違った歴史を伝える者の抹殺か。

 

 アゼル卿は………悪人だ。それはきっと間違いない。何故彼が奴隷組織を率いていた理由など知らないし、知る必要もなかった。だけど、あの老人はひたすらに耐えて来た。積み重ねて来た。技術を、歴史を、悪行を。

 

「エリス・ウルタール………お前がもし、吾輩の知る彼奴だとしても。その発言は撤回するべきだ。確かにお前の言うとおり、アゼル卿は悪人だったかもしれない。自分の目論見のために吾輩達を利用したかもしれない」

 

 それでも──最愛の家族に会うという夢を果たす為に。彼はただ、賽の河原の石を積むように。夢が叶う寸前まで折れることはなかった。

 それがどれだけ辛く、苦しい旅路だったかは他でも無い吾輩もよくわかってるから、声を上げた。

 

「だけど、見ず知らずのお前があの人の頑張りを──無駄だと言い捨てていい理由にはならねえだろうが!!」

「ハッ! 馬鹿みたいに理想だけ先走って実力がついて来ねえ甘ちゃんがよく言うぜ。ここにお前に脳死で賛同するミュウはいねえぞ? お前に何が出来るか言ってみろよ!」

 

 何とも懐かしい感情が突き刺さる。吾輩が夢を語った時に受けた時によく受けたもの………嘲りと冷笑。叶うはずが無いと、夢追い人を笑う心無い奴らに吾輩はなんて言ったんだっけ。

 

『はっ、〇〇〇〇。しけた面してんじゃねえよ──ムカついた時こそ笑いやがれ。テメェの負け惜しみなんざ聞いちゃいねえってな!』

 

 脳裏に夕焼け色の緋色の髪をした女が勝ち誇ったように浮かぶので、何故だか吾輩もそれに釣られて笑いながら、

 

「──お前に勝つさ、()()()

「────ッ! その目だ。その目を止めろってんだ!!」

 

 全身を魔力で強化し、彼の影から溢れ出した手を得意技の横っ飛びで回避する。そのまま背中を向けて一目散に出口へ向かって走り出す。だが、このままでは吾輩は後ろから迫る魔手に貫かれるだろう。

 なので、すんでのところで得意技の横っ飛び。振り向きざまにわざとらしくニヤリと笑って、ポケットに手を突っ込めば奴の顔が強張る。

 

「見せてやる………最強兵器Rの力!」

「ッッ!! お前の兵器の力なんぞ知れている! 今の俺には玩具シリーズやスカイクラッドでさえ勝つ自信があるのだから!」

 

 やっぱり、吾輩をルドルフだと思ってる以上は乗ってくると思った。吾輩には奴の記憶なんて全くないが、それらしい行動をすれば相手からしたら『何か来る!』と勘違いさせるのも容易い。その隙をつく。

 

「因みに最強兵器Rってのはバフを持ったロジェによる飛び蹴りの事だ」

「は────」

 

 きっと疑問の声が口から漏れたのだろうけど、それを掻き消す勢いでロジェの勢いがついた飛び蹴りを横から喰らって吹き飛んでいった黒幕。石造りの壁を平然と貫く威力の蹴りに吾輩はびびった。ロジェも驚きで体が固まっている。おい。

 

「何で主が固まってんだ………分かってて全力で蹴り飛ばしたんじゃなかったのか?」

「し、知らないよ! ボクだってまさかこんな威力が出るなんて………」

「しっかし、よく動いてくれた。合図なんてなかったが」

「あれだけ宣戦布告したら、気を引いてるよ!って言ってるようなもんだよ。それよりも、スカッとしたよ、あの宣戦布告」

 

 ロジェの感情に呼応するように彼女の肌に描かれた絵の具達が煌めき出す。その横顔には内気で陰気な少女はいない。

 

「他人の頑張りを、努力を馬鹿にする権利なんて誰にも無い。結果が出ても出なくても………夢に向けて進んだ軌跡にはきっと価値があるんだって思うから。ルノワール一族がそうだったように」

 

 ルノワール一族5代目を名乗るに相応しい魔女がそこにいたのだから。

 

「よし。じゃあ、戦うか」

「うん。2人で一緒に、ね」

 

 瓦礫の崩れる音がする。その音の先、瓦礫に手を掛けて出てくる偽勇者様の背中から影が大きく膨れ上がっている。今にも破裂しそうなその塊はまるで怒りを耐えているようにも見えた。

 

「幾ら綺麗事並べようと、お前たちの歴史に意味はねえんだよ。どれだけ頑張っても後世には適当に伝わるもんさ。聖女勇者一行は7人いたのに、その1人がいつの間にか追放されたからと腰抜けや間抜け呼ばわりされる事もある。歴史は魔族との純愛と記されてるが、その真実はラケシスの奴は性欲に負けて吸血鬼に股を開いたクソビッチを美化しただけとかな!」

「何でそう言い切れるんだよ。本当に種族を超えた愛があったかもしれないだろうが」

「はっ! あり得るわけねえだろ。俺様の告白を無碍にして、振った挙句に少し下着を盗んだくらいで大騒ぎする勘違い女にはなぁ!! 泥棒が下着盗まれたくらいで騒いでんじゃねえよ! 黙って俺様に抱かれたらよかったんだ!!」

「こんな奴が勇者とか世も末だろ」

 

 振られた腹いせじゃねえか、と口にしようとして隣から吹き出す針を肌に差し込まれたかのような空気に言葉を飲み込んだ。

 代わりにゆっくりと、前に歩き出すのは藍色の少女だ。彼女は何も口にせずに、堂々と偽勇者の前に立つ。

 

「──訂正して」

「何をだ? ああ、ラケシスの事か。俺がずっと好きだったのに、吸血鬼なんかに股を開いた人類の敵だろ? 穢れた血筋をわざわざ義賊だなんて御名目を並べるなんてな………余程、交尾したのを後悔してるんだろう」

「──訂正しろ」

「………? あっ、もしかしてお前ルノワールの血筋か? やっぱり! 通りで見覚えがあると思ったんだ。うんうん、出るとこが出てていいね! 太もももむっちりしてて触り心地良さそうだし、服の下の谷間どころか谷底まで冒険したいくらいだ。いやぁ、それにしてもラケシスより胸元の破壊力が──」

「──3度目はないよ」

 

 すごいって言おうとしたエリスの顔にそこに白く長い足が伸び上がり、その横っ面を豪快に蹴り飛ばす。無防備にその蹴りを直撃され、苦鳴を上げながら地面に叩きつけられた。蹴りを受けた顔に靴跡がついている。

 

「おま、お前っ!!」

「ロジェばかりに気を取られすぎだ」

「!?」

 

 今度は本当に吾輩が下げていた鞄………金食い虫から、更に別の小箱を取り出す。つけられた名前は『玩具箱』、その中に入れられた2振りの小さなナイフを指の間に挟む。

 

「『玩具の魔剣』──形式:爆発」

 

 吾輩が投げたそれは投擲などやった事ないのに、吸い込まれるように偽勇者へ着弾。立ちあがろうとしてた矢先に、引き起こされた爆発。離れた吾輩にも届く爆風に受け身も取れずに吹き飛ばされ、更に隙を晒した肉体をロジェの拳が撃ち抜いた。

 

「ラケシスが何でキミを選ばなかったかまではボクは知らない。キミの性格をとやかく言えるほど、ボクも優れた人格なんてしてない。だけど、愛のために、使命の為に、未来で待つ友達の為に、研鑽を積み重ねたルノワールの歴史を──馬鹿にするな!!」

 

 連撃が繋がる。成長した肉体、それを魔力によって強化し、加えて魔法による強化が入ったその肉体はそれだけで下手な魔法をねじ伏せる武器へと変わる。強烈な打撃に偽勇者の体が左右に揺れる。

 大剣を振るおうにも、その予備動作の段階で止められて更に打撃を積み重ねられていく。血が飛び散ろうと骨が見えようと止まらない攻撃に、偽勇者は影の魔手を振るおうとしたので、

 

「ロジェ! 目を閉じてそのまま続けてろ! 『玩具の火花』!」

 

 床に叩きつけるようにして、取り出した火花を開放すればモルガナが使ったのと同じ閃光が影達を消し飛ばす。吾輩も目を瞑っていたが、開けた時にはロジェの肘鉄が鳩尾に刺さり、たたらを踏んだ所にロジェの回し蹴りがトドメとして、奴の肉体をまた吹き飛ばしていた。

 

 だが、ロジェの顔は浮かない。近づけば、拳を握っては開いて何かを確かめるようにしている。

 

「………変だ」

「何がだ?」

「幾ら何でもボクの攻撃が効いてなさすぎる。いや、効いてるんだろうけど、もうとっくに再起不能になってもおかしくないはずなんだ」

「って事は、何かしらのタネがあるな。まあ、エリスなら神聖術による回復もあり得るが………にしては使う素振りがないのが気になるな。芸術魔法も使わないなんて、よほど舐められてるのか?」

「若しくはあの肉体だと使えないとか?」

「とりあえず使わないならそれでいい。エリスの『夢想伝播』なんて使われたら、負けは確定だ」

「ユニティさんも言ってたけど、そのむそーでんぱ?って何?」

「うん? ああ、魔女達の切り札だよ。よく絵画の世界に引き摺り込まれるとか、物語に引き込まれるとか言うだろう? その具現化みたいなもんだよ」

「クラウンってさ、モル姉より説明下手くそだよね」

「モルガナが外れ値なだけだからな、それ」

 

 朦々と立ちこめる砂煙が切り裂かれ、何もなかったように歩いてくる偽勇者の姿があった。服はロジェの猛攻によって布が引っかかってるだけだが、その下の肌に傷は1つもない。

 

 芸術魔法による無敵って訳ではないだろう。それよりもさっきから扱う影の方が気になる。芸術魔法が使えないのか?

 じゃなきゃ、ロジェの攻撃に被弾覚悟でカウンターでも合わせればいい。って事は神聖術による回復か? いや、なら芸術魔法と同じで何故使わないのが気になるな。

 

 となれば死者蘇生の肉体の持ち主はアゼル卿の妹………使われてる賢者の石はきっとロジェの血を使ったものだとして、章ボスを務める上でロジェとの繋がりを考えると勇者一行だけじゃない──多分、きっと種族もだ。

 

「ロジェ、ちょっと耳を貸してくれ」

「うん。………うん、うん。わかった。離れてて、クラウン」

 

 ロジェは吾輩の提案に頷くと地面に足を叩きつけ、横一直線に滑らせて両手を合わせた。その間にも偽勇者はにやにやしている。自分が優位に立つとすぐに調子乗るのはどうなんだ。

 

「全く………俺を殴り飛ばせた事がよほど嬉しいらしい。服に傷付けたくらいで喜べるとか随分と程度が低いんだな」

「そっちこそ、手札を切りまくってるがいいのか? 影を変化させる魔法なのか、錬金道具かは知らないが国中に使ってたら、魔力切れを起こすだろ。こっちはそれを待ってればいい」

「っぷぷ。馬鹿だなぁ。俺がそんな事も考えずに魔法を使ってると思ったのかい? 学習能力がないのか?」

「そっちこそ、その言葉返すぞ。吾輩が何の為に、話してると思ってんだ──時間稼ぎだよ」

「万彩顕現!『青天霹靂』!」

 

 ロジェの後ろに飛んで退避すれば、彼女の足元から青の絵具が大きな波となって襲いかかる。色も相まって、まんま津波そのものだ。()()と言っても過言じゃない。

 もし、吾輩がメタ的な視点と使われてる素材からしてこれと二段構えの()()はきっとよく効くだろうから。津波によってこちらの姿が見えない内に、吾輩は魔力強化で銀を作ると玩具の魔剣を取り出し、塗布する。

 

「くっ! 『影奈落』!!」

 

 津波が壁状になった影へと呑まれる。やっぱり、流水を受けるのを避けたようだがそのせいで正面に注視するだろう。側面ががら空きだ。

 吾輩は壁の影の横に回り込み、銀を塗布した魔剣を投擲する。先程の魔剣と同じだと思ったのだろう。自分の肉体も踏まえた上で、そのまま甘んじて受けた。

 

 だが、受けた瞬間に勇者は膝をつく。それと同時にロジェのドロップキックが突き刺さり、地面を情けなく滑っていき、顔面に靴跡と鼻血をダラダラと流しながら何とか立ちあがる。

 

「ぐがっ!? 爆発、しないのか!? それに、これは………銀!?」

「良く効くだろう? 吸血鬼………いや、こんな日差しが入る謁見の間に堂々といるなら半吸血鬼か? 何で純人間だったお前がそんな種族に変わってるかまではわからないけどな!」

 

 追撃に魔剣を取り出し、投げつける。同時にロジェが走り出しながら、足先に銀色の絵の具を纏わせた。彼女もまた半吸血鬼ではあるのだが、再生力でゴリ押しするつもりか、苦痛を1つ漏らす事なく、踏み込む。

 

 行ける、このまま2人なら──そう思ったのが良くなかった。

 

「チィっ!! 『影縛・人影』!! 来い! ()()()()()()()!!」

 

 魔剣が弾かれる。同時に視界が吹き飛んだ。何が起きたかも分からぬまま、たたらを踏んだ瞬間、大地が抜けた。何が何だか分からないが、このままロジェと分断されるのは不味い。

 空気を足場に変えようとしたが、それすら妨げるように横っ面に衝撃。そこまでされて抗えるわけも背中から下の階に叩きつけられた。

 

 背筋を走る痛みに息も出来ない中、ゆっくりと杖をつく音の影に目を向ける。闖入者は小さな水球を浮かばせて、幾つかの眩い宝石が嵌め込まれた杖をついていた。

 見覚えがある。あって当然だ。ついこの間まで、散々世話になっていたし、この間の祝賀会で酒を飲まされ、飲ました結果、全裸で踊ってた気のいいお爺さんだったから。

 

 

「──アゼル卿」

 

 

 吾輩は人間になった猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 吾輩の目の前にはアゼル・ファウスト卿が──漆黒に染まった目で佇んでいた。




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