吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:シャモロック
「………っ、魔力強化しそこねましたか」
目の前に広がる、巨大な穴。ティーガーに吹き飛ばされて、部屋を3つほど貫通した証は私の不甲斐なさを嗤ってるようだ。
首から下げた飾りを手に取れば、見るも無惨に砕け散っていて舌打ちの1つしたくなる。致命傷を1度肩代わりする錬金道具『
先程の影の怪物に加えて、ティーガーの裏切り。私達を排除するにしては些か乱暴が過ぎます。やるならもっと早くやっているはずですから。何かしらの繋がりがあっていいでしょう。
「ご無事ですか、主人殿!!」
「一度死にましたが、問題ありません。ハク、状況は」
「旦那様とロジェ様が影の中に沈みましたが………王宮内にて別の使い魔が姿を発見しました! アルチナ様は現在、ティーガー様と交戦中! リリィ様たちは街中に沸いた影の怪物達を我らと協力して対処しています!」
「ユニティは? 彼女も何処かにいるのでしょう?」
「王宮近くの使い魔の1人から伝言を預かっています! 『王宮はウチに任せたらちょー楽勝! でもでも魔力が足りなくてマジぴえんだから何とかして!』だそうです」
「とても頭が痛くなりそうな言葉ですが分かりました。他に何かあれば言いなさい」
「それと、関係あるかは分かりませんが………
「地下通路で?」
「はい。調べた所、恐らくは何らかの気体………睡眠の類を吸わされたと思われます。念の為、アトリエから地下に繋がる扉は封鎖しています。ですが、地下通路の内情は分かっておりませんのでもし、仮に他の場所からでも入れるようであるなら………」
「地上に漏れ出る可能性があると」
「最悪の可能性ですが」
さて、何処から手をつけたものか。王宮にクロとロジェがいるならば助太刀に向かう方がいいでしょうか。恐らくは国王陛下や王女殿下も囚われたままの筈。無事に救出出来れば、恩も売れます。
アルチナの助太刀は問題ないでしょう。ティーガーも強いですが、魔族の最高幹部を倒した剣士がそうそう負けるとは思えません。
最後は地下通路に潜り込み、謎の気体の発生源を特定する。ついこの間まで起きていなかったのに、襲撃を受けた今日になって起きるなんて余りにも間が良すぎる。地上にもしも流れ出れば、最悪でしょう。
王宮か地下通路………悩ましいところですが、
「ハク、ユニティに伝言を。王宮にいるクロとロジェの手助けを頼むと。私は地下通路に潜ります。急いで!」
「はい!」
ユニティとロジェがいるならば、クロと王族の心配はしなくてもいいでしょう。それよりも国中で戦っている者達の足を引っ張る方が不味い。地下通路の地図は4割ほどの未完成ですが頭の中には入っている私が向かった方がいい。
地下通路に降りる前に自室に寄り、額縁を傾けて開いた隠し倉庫に溜め込んでいた錬金道具を外に引っ張り出す。必要なものを全部、虚空に入れていく。私の
そのまま急いで、アトリエから地下通路へ移動。水中や真空でも呼吸できる指輪『
「………これは」
そこは普段の地下通路などではなかった。
地下通路に倒れ込むのは多くの使い魔達。私が、クロに会えない事から生み出した寂しさの形が眠っていた。
幾ら黒でカケラとはいえど、賢者の石を使ってる以上は彼らの耐性はそこらの魔物を越える。マグマに住む魚の魔物を耐火装備なしに吊り上げに行ったと聞いた時は驚いたものだ。
なのに、眠っていると言うことはよほど強い睡眠の類か、あるいは人為的に引き起こされた魔法か魔族or亜人の種族特性によるもの。
この国で裏表含めて、該当しそうな人物は………三羽鴉の残党ですか、狙いは奴隷組織がやる事だとするなら、この国ごと奴隷市場に変えるでしょうか? なら余りにも乱暴すぎる。私ならもっと穏便にやる。
恐らく、影の怪物を操っている存在と王宮にいる存在は恐らく同じ。ロジェの行動を制限する為にクロを狙ったのならば、クロが連れて行かれた理由も分かる。共に王宮に呼び出されたりする姿を見れば、ロジェにとって人質になると思ったからでしょう。
そして、ロジェに組織の面目を潰した始末をつけると同時に国に張り巡らされた地下通路に睡眠の気体を充満させ、地上にいる民達を眠らせる。その後、ティーガーを操作した何か。影による媒介かまでかは分かりませんが、それによる王国の支配が目的か。
詳細は不明だが、概ねこんな所に違いない。であれば、やはり地下通路に潜む何かを倒すか止めなくてはならない。
「敵の方がここの地理に慣れているのは事実。やはり、私が来て良かったようですね」
地下に張り巡らされた通路とはいえど、それは所謂
つまり、何かしらの目的が、規則があって作られているのだからそれを読み取ればいい。
とはいえ、地図作成依頼をされた時にも同じ事をしようとしたのだが、その時はこの地下通路の目的も意図も読み取れなかった。故に人海戦術で地図作成をしていたのだが。
「今回は違う。魔力が規則的に、何処かに向けて流れ続けている。漸く意図が読み取れた………これは『魔力を増幅させる回路』なのですね」
きっとこれがこの地下通路の本来の用途。今まで意図が読み取れなかったのは、起動すらしてないただの
それが使われた事で思惑が見えた。大量の魔力を用意する。その為の回路にして、誤魔化す為の地下通路。
それならば、この魔力の流れが1点に集まる箇所に敵がいると見ていいでしょう。脳内にある未完成の地図に今回の情報を追加していく。完成とまでは行かないが、それでも7割の完成度にはなった。末端がわからないが、中心が分かればそれで十分。
迷路のような地下通路を走り抜ける。幸い、影の怪物達は姿を見せない。地上で暴れるのに意識を割いてるならば、無駄な手間が省けて助かる。
倒れる使い魔達の姿を尻目に、中央へたどり着けば、殺風景な小部屋と見覚えのある男が寝台に足を組んで座っていた。
「ぐーぐっぐっぐ、良くぞここが分かりましたね。流石、地図作成をしていただけはある」
「貴君は、アゼル卿と契約していた小売店の!」
「ええ、三羽鴉の1人。睡眠担当のモルフェオと申す物です。以後、お見知り置きを」
「………亜人、だったのですね」
「如何にも。蝶の亜人でしてね。蟲の亜人は気持ち悪い怪物が多いですが、私は幸運にも蝶々だったので見栄えが良く奴隷として生きながらえましたよ、帝国でね」
顔は知っていた。アゼル卿と契約していた小規模な道具屋の店主だ。知らなかったのは彼の背中に生えた羽の事。蝶々を思わせる羽は鱗粉を撒きながら、通路へ風に乗って流れていく。
「聞いておきます。何故、こんな事を?」
「ぐーぐっぐっぐ。決まっているでしょう? これは総帥の命令だからです! そう………あの
「シアン? その男がこの国を脅かしている存在というわけですか」
「ええ、ええ! シアン様は凄い! 何せ、あのアゼル卿すら支配して自分の部下に置いていたのですから! 知らなかったでしょう? あの方が支配されていたなんて、ずっと前から!! 本当に素晴らしい!」
「アゼル卿までもか! どこまでこの国をコケにすれば………っ!」
「それをお前が言うのか、皇女のなりそこないよ」
両手を広げて歓喜の激情を示していた筈が、いきなり声の調子を落とす。自分の素性が知られてる事はどうでもいい。けれど、その発言をするということは、
「そうか、貴君は帝国の………」
「ええ。忌まわしき家畜牧場で生まれましてね。亜人としての力が分かるまではまあ悲惨でしたよ。言葉も分からない。知識もない。欲望に従って、子を孕ませる………母や姉、もしかしたら娘かもしれない存在へ向けて」
「………………同情してほしいのか?」
「まさか。ただ知っていて欲しい。
「それは………私には」
「関係ないと言い切れない。それが貴女があの国を変えるに相応しかった証明です。現に貴女の弟さんは『俺だったら選ばれないなら死んだ方がマシだね』と家畜牧場を見て言っていたそうですよ。まるで自分が選ばれた至高の存在だと言わんばかりに」
八つ当たりだ、とは分かっていた。関係ないと、魔法を使っても良かった。
「ぐーぐっぐっ。対して貴女はこんな国賊の戯言にまで耳を傾ける。私が嘘をついてるかも知れないのに黙って聞いている。魔法すら使わず、錬金道具も使用せず、言葉を選ぼうとしている──それはとっくにあの帝国から失われたものだ」
「………それを言われた所で、私には何も」
「出来ない? ええ。出来ないでしょうね、今の貴女はっ!! 分かっています。分かっていますとも!! 王国で名が知れた錬金術師になり、帝国すら迂闊に手を出せなくなった安全な場所で! 好きな男や仲間に囲まれて幸せに暮らす!! それが貴女の夢だと言うこともねえ!!」
だけど、その言葉に込められた熱が、目を逸らしていた現実が、
「けど、それは微睡から覚める寸前の泡沫の夢でしかないと………それは貴女も分かっていた事でしょう?」
確かな実感を持って私へと突き刺さる。薄々だけど、言葉にしたくなかったそれを目の前の亜人はきちんと言葉にして訴えかける。
「
「──戦え、と私に言うのですか」
「ぐーぐっぐっ。その通り。奴隷組織として、魔族の繁栄を後押しし………帝国の弱体を図ったように。貴女には私達のような邪道ではなく、正道を歩んでいただきたい」
「革命を、起こせと。私に帝国の………皇帝の椅子に座れと言うのですか」
男は黙って頷いた。杖を握る手に力が籠る。
身勝手な事を、と思う。我儘を押し付けるな、とも思う。
それでも、切り捨てられないのは………クロの使命を叶える上で役に立つかも知れないと思う自分がいるからだ。
クロの手紙で語られた、魔族の玉座につく異界の人間によって私達の未来が閉ざされる事を知っているから。それを防ぐ為に動いてる事も。
決めなくてはならない。今ここで。
私に流れる血から逃げるか、それとも立ち向かうか。
「モルフェオ、貴君の言い分は罷り通るわけがありません。私はモルガナ・シュレディンガー。王国に籍を置く『黒猫の錬金術師』です」
「ぐーぐっぐ。ええ、でしょうね。言ってみただけです。その為に、秘伝書を渡してまで貴女と話す機会が作ってもらいましたが………残念だ」
「話は最後まで聞きなさい」
気になる事を言いましたが、話は後です。私は場を切り替える為に杖を床に突き立てれば、がっかりしたモルフェオの目がこちらを向きますが、絶望するには早いでしょう。
虚空から5本の杖を呼び出す。五色に染まったそれと、手の平を上に向けて沢山の装飾品をその手に納める。1つずつ指輪や首飾りをつけ、指貫の手袋を口元で咥えて付けながら、
「今の貴君の言い分は聞くに値しません。
「っ!! ぐーぐっぐっ!! つまり、貴女を倒せばいいのか?」
「倒す? 今だに夢の中にいるのですか?」
言葉の意味を理解したモルフェオの発言を鼻で笑って、魔力を練り上げた。
「
「────寝言は寝てから言うんですね。二言はないな?」
「ええ、もち──」
瞬間、目の前に暴風が吹き荒れる。なので、柱と壁を生み出して防御。そのまま風に乗って横から風魔法を放つ………と見せかけて睡眠作用のある鱗粉攻撃は予想がつくので、
「『
緋色に染まった杖を一振りし、鱗粉に着火。風という炎が更に燃え盛る燃料も含んだそれは小部屋自体を吹き飛ばすほどの爆発を引き起こす。
勿論、私は小規模な小屋作成で爆発を逃れましたが、モルフェオは逆に爆風で壁に叩きつけられたようで悶えていた。
「寝言は寝てから言えと、貴君は言いましたが………」
わざとらしく、足音を立てて近づけば彼もまた立ち上がります。先程の攻撃はただ彼に火をつけてしまっただけのようで、モルフェオの羽が羽ばたきを起こす。部屋中に満たされていく鱗粉に、私は『
「逆に貴女は悪夢を見る覚悟は出来ましたか?」
「──もうとっくに見てますよ」
モルガナvsモルフェオ
アルチナvsティーガー
ロジェvsエリス・シアン・ウルタール
ヤマトvsアゼル
ファイッ!
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