【第1部完結】吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:あんみつ炙りカルビ

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お待たせして申し訳ない。ちょいと難産でした。
次回は結婚式予定。


結婚前に用意すべきもの

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。

 さて、モルガナとアルチナと正式に身を固める事になったわけだがロンの話からしてもやはり吾輩も何かを用意するのが筋というべきか。

 

「しかし、困った事にモルガナは優秀すぎて粗方揃ってるんだよなぁ」

「ははは。王国の英雄もそんなつまらない事で悩むんだね」

「笑い事じゃないんですよね、ガゼルさん。美人な奥さん2人も迎えるのに指輪だけってのは………しかも、魔法で生み出したもんですし」

 

 そんな事をガゼルさんに愚痴る吾輩。本日はガゼルさんから話があるからと、呼び出されてやって来た元はアゼル卿のアトリエ。

 ガゼルさんは暖かいミルクを差し出しながらも何処かしみじみと頷いていて。

 

「自分も妻を迎える時には苦労したなぁ………国家錬金術師の資格を取らないと無理と言われて、取ったら今度は自分が着る結婚式のドレスが欲しいと言われてね。普段は言わない妻の我儘だったから、なんとかしたんだけど」

「やっぱり、ガゼルさんも苦労してますね………しかし、ドレスかあ。確かに一世一代の出来事ですから、ドレスを贈るのはアリですよね」

 

 しかし、我らがモルガナにはルーフェン殿というパトロンがいらっしゃる。魔物の素材を提供すれば、それはそれは素敵なドレスを仕立ててくれるだろう。吾輩が関われるとすれば、ドレスの素材集めくらいだが。

 

「さて、雑談はここまでにして本題に入りたいんだがいいかな?」

「ああ、どうぞ。元はそれで来たので。因みに吾輩で良かったんです? モルガナとかの方が力になるとは思いますが」

「まあ、それはそうかもしれないが自分より若い娘に頼るばかりじゃ妻に怒られてしまうからね。それに部下の子達にはある程度意見を聞いてしまって詰まっている状態なのさ」

「だから、外部の意見として吾輩の力を借りようと? うーむ、あまり力になれる気もしませんけどね」

「ははは、天下の夜明の錬金術師様が何を言ってるんだい? ともかく実物を見てくれないかな?」

 

 差し出されたのは、丸っこいフォルム。取手もあり、持ち運びも出来そうだ。横についてるスイッチを押すと蓋が開き、中には釜が入っている。蓋の裏に熱を発生する石などがある事から、恐らくは熱や圧力を加えるようになっているのだろう。何故か横に爪楊枝くらいの穴があるが、つまりこれは

 

「炊飯器だ………」

「スイハンキ?」

「ああ。これは米、ある穀物を食べられるようにする道具なんだが違うのか?」

「うーん、少なくとも食べ物を入れたら溶けただけだからね。見てて貰えるかい?」

 

 ガゼルさんはそう言うと、炊飯器もどきの中に石ころを入れてスイッチを押す。暫くして音が鳴り、蓋を開くと中には澱んだ液体に満ちていた。

 詰まる所、入れたものを何でも溶かして液体にしてしまうのか。しかも、それで終わりかと思えばもう1回蓋を閉めて別のボタンを押す。

 

 すると、爪楊枝の穴からにゅるにゅると溝鼠色の蕎麦ほどの太さの麺類が生まれていく。皿いっぱい分に出来上がったそれは、夏のアスファルトのような匂いをしており、少なくとも吾輩は食べたいとは思わない。

 

「………これは?」

「『お姉ちゃん。僕のおち◯こからお蕎麦が出てきたよ〜』

「そうですか。で、これの名前は?」

「『お姉ちゃん。僕のおち◯こからお蕎麦が出てきたよ〜』」

「二日酔いの頭で考えました?」

 

 ガゼルさんは曖昧な表情を浮かべて沈黙している。だって、あれだもんね。ガゼルさんの後ろにちょっとした山が出来てるもんね。これと同じものがね。馬鹿なの? 口にはしないけど馬鹿なの!?

 

「仕方なかったんだ………! 自分が父からの引き継ぎや振り分けをしてる間に馬鹿弟子が、アトリエの予算でこんなものを………っ!!」

「何を目的にしたらこんな物が作られるんだよ………」

「レリジェーン温泉街にある採掘現場で直ぐにご飯を食べられるように………鉱物を麺にしようと思ったらしい」

「そこは採掘現場迄、直ぐに運べる屋台か簡単な栄養補食品を作るべきでは?」

 

 意表を突く事に特化した結果、本質を見失ってるよくある例な気がする。というか吾輩のオリジナル作品も似たような事を言われて没になった事があるしな。

 

 受けると思ったんだけどなぁ………『田舎の親戚の家に預けられた少年が美しい毛並みをした犬神様に婿として迎えられる話』とか。

 まあ、その犬神様は男性だったんですけどね! コンプラ違反した初代編集がドン引きしてたのは忘れられない。

 

 なお、馬鹿弟子が『黒髪スレンダーの美少女がツンデレ映画俳優を愛情いっぱいに甘やかしてくれる御噺※ヒロインは男の娘』を描いて読み切りに乗ったのも忘れられない。おかしいだろ、同じ男の娘やぞ!

 

「さて、所でものは相談なのだが」

「さーて、ルーフェン殿に吾輩の妻達のドレスを頼みにいくか」

「まあまあまあまあ! 待ちたまえよ、ヤマト君! 君はかの有名な錬金術師だろう!? 頼むよ! 亡き師匠の息子を助けると思って!! この通り!」

「それで、人差し指を立てた両腕を上げてガニ股を広げる奴を吾輩見たことないよ………で、どういう風に落ち着かせたいんだ?」

「これで話を聞くとは人が出来過ぎじゃないかい?」

 

 なら最初から真面目にやっていただきたい。さてこの道具、正式名称は長すぎるので炊飯器もどきとするがどう改造するべきか。

 まず食べ物はないだろう。石をここまで溶かすならば相当な圧力や熱がかかってるはず。そりゃ食べ物も炭化する。

 

 あと、この細麺の構造はいるのか? しかもご丁寧にパネル式で入れ替えが可能になっている。そこに気を配るよりもっと仕様に気を配った方がいいのではないかと思うのだが?

 

 要するに硬いものを溶かして麺類に変えることができるのがこの道具のようだが………幾ら硬いものを麺に変えても食べようとは思わない。よほどの貧困なら話は別だが。

 

 となれば、硬いものを麺状に変えることで何が出来るかを考えよう。石を麺、いや麺という概念に囚われない方がいいかも。こういうのは一旦、先入観を捨てて連想ゲームを始めた方がいい。

 

 麺といったらうどん。うどんと言ったら小麦粉、小麦粉といったら白い。白いといったらウェディングドレス………不味い、吾輩の頭の中でドレスを来た妻2人(予定)が笑っている!

 

 時を戻そう………麺、紐、糸。糸かぁ。ルーフェン殿に生糸を渡したらドレスとか作ってくれんのかな。せっかくの晴れ舞台だ。とびきりの素材を使いたい。吾輩だからこそと言えば、簡単に生み出せる金貨とか金の、糸?

 

「とりあえずいい考え浮かんできたからこの蕎麦らしき物質を出す道具を貰っていいか?」

「ああ! 1個くらい持っていってくれ! どうもありがとう!」

「ロジェに小説押し付けたアゼル卿と同じ顔してるなぁ」

 

 錬金道具を貰って、吾輩もアトリエを後にした。その足でモルガナのアトリエに帰還するとモルガナの部屋をノックする。どうぞ、と声がするので中に入れば、床中に散らばる図面の数々。

 

 拾ってみれば、吾輩が知る汽車の姿。魔導列車計画、その原型だろう。羽ペンを動かし続ける彼女は、吾輩の姿を見ると手を止めて伸びをする。

 

「どうかしましたか? クロ。可愛い妻といちゃつきたいのであれば、もう暫くお待ちなさい。今はいいところですから」

「悪いな。ちょっとした相談で………ルーフェン殿を紹介して欲しいんだが、待て待て待て。その目を止めるんだ。またですか?みたいな目を止めろ。吾輩を女の敵みたいに見るのは止めるんだ」

「であれば、何故紹介して欲しいのかを説明なさい。その手に持つ謎の道具も含めてです。これから夫婦になる以上、きちんと家計の管理をするのが良き妻の勤めですから」

 

 とっても楽しそうなモルガナに説明しないわけにもいかないので道具の説明を始めた。

 

「〜〜という訳で吾輩思ったわけだ。これは食べ物にはならない」

「五歳児が言ったなら賢いと褒めてあげたいですね」

「だが、発想を飛躍させて………()にはなるんじゃないかってな」

「糸、ですか?」

「うん。で、申し訳ないんだがモルガナにはこの部分を限界まで細い奴に変えられないか? とりあえずの暫定でいいんだが」

「いいでしょう。その程度なら直ぐに終わります。クロが猫の姿で私のお腹をふみふみしたらもっと早くなります」

「よっしゃ、任せろ」

 

 という訳で黒猫になった吾輩のふみふみにより、生み出された限界まで細いパネルに切り替えて、出してみれば出るは出るは金の糸。紗良と旅行で行った石川の金細工を思い出すような金糸が皿の上に盛られていく。それを黙って見ていた彼女はその糸に触れる。

 

「軽い………ですが、しなやかで柔らくもある。金属を糸に加工する技術は今までなかったというのに。この技術力は侮れませんね。ただ題名だけは何とかしたほうがいいと思いますが」

「それはそう。例えば金糸にかけて『金糸雀』とか」

「採用。ちょっとガゼル卿とルーちゃんを捕まえて来ます。本格手に権利を譲渡してもらい、我がアトリエで本格的にこちらの用途に使えるようにしましょう」

「えっ。権利までは流石にやりすぎじゃないか? 基本構造はガゼル卿の弟子が作ったものだし………」

「いいですか、クロ。相手はこれを不良在庫として抱えている状態です。つまり、いまが1番安く買い叩ける状態。ルーちゃんに金糸を渡せば豪華な布として貴族に売れる事は間違いありません」

「………利益はガゼルさんにも出るようにしろ。アゼル卿がいなくなってもファウスト家は安泰であるとした方がいいだろ」

 

 うーむ、いささか話が壮大すぎる気もするがとりあえずモルガナに任せておこうか。吾輩だと下手したら変な衝突生むかもしれないしな。

 それにアゼル卿の最期やガゼルさんにも世話になったし、せめてもの恩返しとしておきたい。

 

「わかりました。では、そのように………クロ? 金糸雀を開けてどうしたのですか? 中に入りたくなりましたか?」

「いや、金塊が行けたならこれもいけるかなって」

 

 生み出したるは宝石。ダイヤモンドとアメジスト。それを金糸雀の中にぶち込んでスイッチを入れれば、窓から差し込む光に従って糸が生み出されていく。キラキラと光を吸って輝きを増す宝石の糸。

 

「安直に『宝石糸』と名付けよう。これも売れるとは思わな………どうした? モルガナ。天啓が降りてきたような顔をして」

「クロ。貴方が私の夫で良かったと惚れ直したところです。用事が出来ました。今すぐルーちゃんの所で話をしてきます。クロは可能な限り、宝石糸を作っていてください!」

「よく分からんが、分かった」

 

 吾輩にとって宝石は無限だ。後は根気だけ。昼過ぎに帰って来たはずが、夕日が差し込む時間帯になった頃に漸く糸束が出来上がる。

 白く輝くダイヤの糸、紫に妖しく光るアメジストの糸。それらを持って黒猫の吾輩は寝転がる。猫だけに。

 

「モル。貴方の悪いところは私の都合を無視する事です。私の時間を割くような、もの………が」

 

 吾輩が毛糸玉にした宝石糸を触って遊んでいれば扉が開く音がしたので振り返る。そこにはルーフェン殿が書類片手に部屋へと入ってきて、書類全てを落とした。同時に部屋を抜ける一陣の風。

 

 振り返れば、吾輩の糸玉は奪われて、彼女はその輝きに目を奪われていた。

 

「この光沢………もしかしてダイヤモンド!? それにこの光の通り方、アメジストまで!? 嘘、うそ、ウソ!? 本当に!? 本当に宝石を糸に変えたって事!?」

「すっげえ、早口になるじゃん」

「ルーちゃんはこういうとこあります」

 

 皆んなも好きなものを語る時は押し付けないようにしよう。早口オタクはどんな集団でも浮くからな。

 そんなルーフェン殿は宝石に負けないキラキラした目をこちらに向けると、少しばかりの思案の後、ボタンを外そうとしてモルガナに頭を叩かれた。

 

「何してるんですか? えっ、本当に何を?」

「この布を売って頂こうと思ったけど、クロス様はお金には困らないと聞いてるから体と引き換えに………」

「吾輩、そんな女好きだと思われてるの!?」

「自分の胸に手を当てて考えてみたらどうですか、クロ」

「毛皮がふわふわだ」

「それは知ってます。全く、いいですか? ルーフェン。この糸は貴女に任せます。この意味が分かりますね?」

 

 モルガナの愛称ではない、本名による念押しにその意図を受け取ったルーフェンは頷くとスケッチブックを取り出した。一体何処から?

 

「この布ならさあ! もっと新機軸を使ってもいいと思うわけえ!! 頭の硬い貴族たちはそこら辺がわかってない! だから、帝国や連邦のドレスに負けるわけよ! モノづくりの国が服作りで負けるとか、誇りを汚されたも同然よねえ!?」

 

 イメージとしては現代よりもちょっと前………2000年代か? その頃のパーティードレスだ。スリットドレスとかモルガナにくっそ似合いそう。

 確かにちょいちょい夜会に招待されるようになってから気づいたが、いまだにバッスルドレスとか着てる令嬢いたしな。若者はベビードールドレスみたいなの着てたから単に時代の移り変わりだと思うけど。

 

「あっ、ルーフェン殿。糸は無料でやるから、代わりにちょっと頼まれてくれないか?」

「何でもお頼みくださいませ、クロス様。何なら足舐めます」

「絵面が狂気だからやめなさい。まあ、モルガナがいる場で頼むのも何だが………」

 

 急に名前を呼ばれた彼女が吾輩を胸に抱えて、こてんと首を傾げる。可愛らしい彼女に和みながらも、考えていた提案を口にした。

 

 

 

 

「吾輩の──妻になる2人のためにウェディングドレスを作って欲しい。宝石に負けない美しさを誇る彼女達に負けないものを」

 

 

 

 

 数秒の沈黙の後、スケッチブックが目に止まらない勢いで消費されていく。目はガン極まり、口からは不審者間違いなしの涎まで垂れ始めた。一歩、モルガナが退く。友人たる彼女も退いていた。

 

「うっひょおおおお!! たまんねええええ!! いいの!? いいんだね!? 無慈悲な月の女王みたいなモルと朝焼けの花畑みたいなアルチナさんのドレスを仕立てて!? どうしよっかな、どうしようかなぁ!? あ、待って!? いっそ、クロス様にドレスを着せるのは!? 逆にモルとアルチナさんにはパンツスタイルのドレスを来てもらうとか良くない!? いいよね!? すらりと伸びる細い美脚! のぞく白い足首! そんな彼女達に手を引かれる英雄クロス様とか、良くない!? いいじゃんね!! 今は行動力のある女性の時代なんだぜヒャッハー!!」

「ルーフェン殿こわれちゃった………」

「ルーちゃん!! クロは金糸と黒を基調としたドレスでお願いします! きっと、ぜっったい!! 耽美で儚いお嫁さんになります!!」

「モルガナもこわれちゃった………」

 

 吾輩は猫である。吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。

 その後、吾輩も含めて何故か採寸に付き合わされた………のはいいが、吾輩の女装姿に卒倒するな。滾るな。絵にするな。誰が女神だ。吾輩は男だ!

 




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