【第1部完結】吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:あんみつ炙りカルビ

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申し訳ない、遅れに遅れました。夜勤の残業は人を殺す。
そして、ある人物を出したくて1話増えました。
次回こそが結婚式です。モルガナとアルチナで話を分けるかは悩み中。


神は試練しか与えない

 王国に於ける結婚式は主に2通りあるらしい。

 1つは貴族による華やかなもの。多くの貴賓を自分の領土に集め、盛大に何日もかけて祝う一種の祭りのようなものだ。

 

 もう1つは平民によるもの。教会へ結婚する2人の署名を出せば婚姻が認められる。その際は本人が来なければならず、下手な嘘は神聖術で見破られる上、婚姻の偽証は鞭打ちなどの罰則が与えられる。

 

 では今回の場合はどうするか。

 まず吾輩は名誉貴族である。加えて本来なら王国設立者として、王族でもおかしくないらしい。ルーフェン殿が言っていた。

 

 なので、本来であれば貴賓を領土に集めるべきだが吾輩は領土を持たないお飾り貴族である事を考慮し、モルガナの別宅とも呼べる温泉旅館で開催が決まった。

 

 加えて式自体は2日に分けて行われることになる。まずは王国の王族や貴族、つまり吾輩と縁を結びたい者達を招いた上流階級の催し。

 2日目は一般人や知人を招いたお祝いになる。こうやって分ける事で、一般人と貴族による余計な諍いがなくなるようにという配慮だ。

 

 ガゼルさんやミスト王女殿下は1日目。

 ロンやパティ、ドラゴ殿達は2日目になる。

 

 そして、せっかく2日に分けるのだからと1日目はモルガナ、2日目はアルチナを主役とした式を上げる事になった。

 特に1日目など、わざわざ法国………この世界の宗教【三神教】の総本山からわざわざ神父様が来てくれるのだから、力の入れようが違う。

 

 一方で優先順位を付ける事になり、アルチナには申し訳ない気持ちになったが事前の打ち合わせではそれで構わないと言われた。曰く、自分は亡命者でモルガナほど王国に貢献してる訳でもないからと。

 

 しかし、我慢させているのは事実。代わりと言っては申し訳ないが、吾輩お手製の腕輪をプレゼントする。婚約指輪とはまた別のプレゼントだ。スピンオフでもモルガナから腕輪をもらってたし、吾輩が代わりにあげてもいいだろう。

 

 銀細工をもとに、アルチナのイメージカラーである紫色の宝石をあしらった腕輪はまだ不慣れな吾輩が錬金術で作成したものだ。因みにモルガナは白でロジェは藍色である。

 

 なお、何故か事件解決して帰って来たロジェがモルガナの指輪とアルチナの腕輪を見て羨ましそうに見ていたのでアンクレットをプレゼントした。驚きながらも和かに、もらったアンクレットを大事に抱えてくれたので製作者本人としても嬉しい限りだ。

 

 そんなこんなで、吾輩は教会に来ている。理由はさっき挙げた通りにわざわざ法国から来てくださった神父様に挨拶するためだ。わざわざあの雪山を越えて遠路はるばる来てくれたらしい。

 

 それはそれとして、狙いすまされたタイミングすぎない? えっ、吾輩とモルガナの婚約が決まった段階で打診していた? 判断が早すぎる。

 因みにモルガナは貴族達に対する紹介状を書いてもらっている。

 

「こんにちは〜。あの、結婚の挨拶をお願いしに」

 

 王国の中心街から離れた場所にある教会。その年季の入った扉を開けた瞬間、吾輩の顔の横に何がが突き刺さった。錆びた機械のようにゆっくり首を横に向けるとそこには槌。ガベルくらいの大きさのハンマーが木製の扉に突き刺さっている。

 

「うるせぇな…こちとらヤケ酒の二日酔いで機嫌悪りぃんだよ。静かにしろ」

「あっ、どうもごめんなさい。また日を改めますね〜」

 

 その主は椅子に腰掛けたまま、吾輩の方を見る事もなく椅子に我が身を預け、褐色肌が見える右手は伸びていた。まるで何かを投げつけたように。

 なるほど、危険人物じゃねえか!! 法国大丈夫か!? 見た感じ灰皿に酒もあったし、煙草の匂いもするバリバリの不良神父!!

 

 ちょっと、カッコいいな。おい。

 

「………………待て」

 

 酒のせいか枯れた声で出て行こうとした吾輩を呼び止める神父。ゆっくり、猛獣を刺激しないように振り返れば眼前にその男は立っていた。

 恐らくはアルチナと並ぶ背丈、燃えるような赤い髪をおさげにして纏めている彼は酒と煙草の匂いを纏わせながら、吾輩を見ていた。

 

「………………マジか」

 

 小さく口を開け、愕然とした神父は緑の目を細めると懐からマッチと紙タバコを取り出し、火をつけると。

 

「どうか、ご無礼をお許しください。偉大なる夜明の錬金術師。ルドルフ殿。そして、結婚式に私を選んでくださった事を心より感謝いたします」

「あ、ああ。いや、ありがとう、ございます?」

「失礼。自己紹介がまだでした。半人前ながら此度の式を務めさせていただきます。洗礼名は………エリック。以後、よろしくお願いいたします」

 

 口調の変化、そして雰囲気の切り替えが終われば、例え煙草を吸っていたとしてもその姿は紛うことなき一人の神父である。

 いやいや、不意の真面目モードかつ、神父の格好に煙草という日本人の男子高校生であれば殆どがぶっ刺さるわ。劇薬すぎるだろ。

 

「つー訳だ。話は終わり。さっさと帰れ。俺は今、滅茶苦茶機嫌が悪りぃんだよ」

「さっきまでの真面目神父さんは何処に!?」

「そこに無ければ無えよ。なんでよりによって俺がテメェの結婚式の神父なんだ巫山戯てんのか?」

「初対面なのに口が悪い!! 別にこちらとしても貴方を選んだ訳ではないので………」

「だからそれが巫山戯てんのかって言ってんだよ理解力ねぇのかボケカス。英雄の式だからって英雄を引っ張ってくるのは当たり前だろ。ちったあ、考えろ。下半身獣野郎」

「喋る国際問題だろ、これ!!」

 

 なお、挨拶が終わった神父様はゆっくりと紫煙を吐き出すと、慈愛溢れた顔から苛立ちと不快さの顔に切り替えた。元に戻ったとも言う。

 

 余りにも口が悪すぎるし、態度も悪い。いいのかなぁ。これ吾輩じゃなかったら送り返してるレベルじゃない?

 まあ、名前や性格に容姿からして恐らくは"仮面の魔女"エリス………の子孫っぽいよな。この世界だと聖女勇者が吾輩の知るエリスっぽいし。

 

「とはいえ、だ。テメェの事は昔の先祖の手記から知っている。当時から女を誑かしていた下半身ゆるゆる野郎だってな」

「絶対誇張してる!!」

「同時に、唯一無二の相棒だったともな」

 

 何かを思い返すように煙を吐き出して、また元の席に戻ると酒を煽る。何か嫌なことでもあったのだろうか。

 

「シアンの奴とやり合ったらしいな」

「ああ、まあ? 知ってるのか」

「手記にあった。そうか。奴はご先祖の名前を騙っていたようだが、お前から見て奴はどんな奴だった?」

 

 灰皿の上には吸殻の山が出来ている。そこに更に吸い殻が追加されると、神父は残っていた酒を一気に飲み干したまま、天井を見上げる。

 

「──他責思考の小さな子供って感じかな」

 

 シアンの行動原理は自分に非がない事を前提にしていた。けど、社会で生きていく上で自分に非がないなんて騒いで他人に擦りつけるものは弾かれていくのが世の常だ。

 

「なるほど。言い得て妙だな。シアンは反省して、成長をすべきだった。いつまでもガキのままではなく、大人になるべきだったと。死してなお、自分を省みる事が出来ないとは。つくづく救えねえバカだな」

「滅茶苦茶言うな、主。よくそれで神父務まるな」

「馬鹿をいえ。神父だから優しいなんざ、ガキの夢見る幻想だ。教えてやるよ、この世に神はいねえ」

「よくそれで神父務まるな!?」

 

 神様に中指立ててるエリック神父。実は神父ではないかもしれない。普通ファンタジー世界の神父ってちゃんと神様信じてるもんじゃない? その結果、よく敵組織にされるのはあるあるだと吾輩思う。

 

「そもそも神に懺悔したくらいで罪が真っさらになるわけねえだろ。馬鹿か? 神様に人間の愚かさを尻拭いさせてんじゃねえよ、潰すぞ。ちったあ、足りない頭で考えればわかんだろ。祈るより前に悪事を起こすんじゃねえ」

「わお、正論」

「だがその事前として、相談を受けるくらいはしてやる。人は話を聞いてもらうだけでも楽になるもんだ。いるかもわからん神様に祈るくらいなら、隣人に相談しろ。俺の場合、金は取るがな」

「急に神父様みたいな事言うじゃん」

 

 しかし、吾輩は神父様に懺悔するような悪事はした覚えがない。まあ、シアンとかの話を聞く限り、ちょっと悪事をやらかしてる気がしないでもないが。今の吾輩は知らないのでセーフという事にしてもらいたい。

 

 相談も、特には………

 

「………………」

「急に思い詰めた顔になったな。いいぜ、よしみだ。ただで話は聞いてやる。言ってみろ」

「その。だな。知っての通り、吾輩は結婚するんだ。2人とも美人だし、いい子だ。吾輩には勿体ないくらいに」

「だから、怖気づいてんのか?」

「いや、そうじゃない。彼女達が吾輩を選んでくれたなら、その期待に全力で応えたいと思う。ただ、な。吾輩、こう見えて異界出身で………」

「ああ、なるほど。異界に恋人、もしくは妻でも残してきた訳か。大方、それに引け目でも感じてるってとこだな? 異界出身の奴らにはままある事だ。俺の知人も異界出身でな、そんな悩みを聞いたことがある」

 

 法国にもどうやら異界出身の者たちが流れ着いているらしい。帝国の家畜牧場から逃げ出しすぎだろと思わないわけでもないが。

 

「でだ、結論から言えば開き直って目の前の女を幸せにしろ。過去は過去、今は今。それ以外ねえよ。つか、2人も妻に迎えといて今更罪悪感なんて抱えてんじゃねえよ、クソボケ。性欲で動いてるのは事実だろうが」

「痛いところついてくるな………それがないとは言わないが」

「テメェもそうだが、大概異界の奴らも褒章みたいに女を抱えすぎなんだよ。それでも帝国貴族よりかは遥かにマシなのが笑えねえがな」

 

 繁殖道具や玩具扱いは当たり前だし、と彼は吐き捨てる。さも当然のように語るが、結局のところ元を辿れば吾輩の製作のせいである。露悪的とも呼べる所業に嫌気が刺していたファン達も多かったくらいだ。

 

「托卵、不倫、強姦は当たり前、初夜権みたいな悪法が罷り通る帝国の思想は色々な所で芽吹き始めてる。そんな奴らに隙なんざ突かれんな。大事な女がいるなら絶対に目を離すな。過去の女に焼かれた脳でも目の前で他人棒によがるいい仲の女なんざ見たくねえだろうがよ」

「当たり前だろうが。吾輩、それやられたら大回転黒猫独楽になるわ」

「ちょっと見てみてえな、その狂い姿。つか俺は正直、羨ましいくらいだ。女を囲うのにぐだぐだ悩まず、吹っ切れて楽しめばいいのに、相変わらず損な性格してんなお前」

 

 脳破壊どころか、脳滅亡すると思う。でも帝国行ったらそんなのがいっぱいだろうなぁ………吾輩の脳細胞が消えないといいが。

 エリック神父はケラケラ笑いながら、煙草を吸って吸い殻を皿に押し付けながら、皮肉気に笑みを湛える。

 

「さて、人生の墓場を目指す愚かな子羊へ。貴殿の道はきっと善意と好意で舗装されているだろう」

「それ地獄に繋がってない?」

「だが、案ずる事なかれ子羊よ。全ての道は1つの結末──死へと収束する。それは避けられないものである。だからこそ、過程を全力で楽しむべきだ」

「………過程を?」

「大金を溶かすもよし、女を侍らせよちよちされるもよし、強い相手に挑み続けるもいいだろう。墓場に入る前に楽しかった、と思える過程を歩むがいい。どうせ、死んだら碌な事にならんからな」

「やっぱり地獄に行ってるじゃねえか」

 

 ただそれでも、過程を楽しむ。というのは今の吾輩にはしっくりきた。吾輩の使命は魔女達を救う事だ。

 それでも、ほんの少しでいいから………自分が作った世界を楽しむ事は許されるのだろうか。

 

 吾輩が思い描いた優しくない世界を、見て回ってもいいのかな。

 

「………ありがとう。神父様、ちょっとだけ気が楽になった」

「止せ止せ、俺みたいなのに様付けするな。それは真っ当な神父に失礼だ」

「自覚はあるんだな」

「あぁ。直すつもりは欠片もないがな、だが困った事があればまた来い。内容によっては金をぶん取るが、これでも好評だ」

 

 エリック神父は新たに煙草に火をつけると、ゆっくりと煙を吐き出す。吾輩、煙草の匂いはあまり得意ではない………ないのだが、この甘い香り。バニラのような匂いは嫌いではなかった。

 

 彼は紫煙を細く口から吐き出すと、少し肌寒い冷たい午後の風に乗って煙はすぐさま溶けて行く。それを彼は目で追い、吾輩から目を逸らしながら、

 

「それと──結婚おめでとう、ルドルフ。当日は楽しみにしておく」

「ああ、こちらこそ宜しく頼む。エリック殿」

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。

 さて、吾輩も式の準備を始めるとしよう。過程を楽しむというのはきっとそういう事だろうから。




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