【第1部完結】吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:あんみつ炙りカルビ
プロットが出来上がりましたが、30話くらいになりそう。とりあえずお盆休みで書き溜め頑張りますので応援ください
新婚生活3年までが楽しいってよく言うよね
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モフガルド・ニャンディアス3世、キミリア。
王国を騒がせた『陽炎事件』から3年の月日が経った。吾輩としては珍しく………本当に珍しく一度も死ぬことなく3年という年月を乗り越えられたのは大きい。
その間に色々なことがあった………国家錬金術師の資格を取ったり、モルガナといちゃらぶしたり、魔導列車に必要な線路や車輪の動作検証したり、アルチナと筆下ろしプレイしたり、宝石布による特許で吾輩の財が遊んで暮らせるくらいにはなったり。後は妻達と3Pしたり。
いや本当に色々なことがあった。特に妻からの愛情に応えるのが大変だった。
「なので、そろそろ吾輩は帝国に行かないといけないから解放してくれない?」
「「嫌」」
「そっかあ」
吾輩達の愛の巣と化したモルガナの別荘にて、部屋から出られない吾輩。『妻に許可を得ないと出られない部屋』と書かれたそれに吾輩は猫の姿で目をうるうるさせてみる。
「2人ともおねが〜い」
「ダメです。クロのお願いなら何でも聞いてあげますが、今回はダメです。貴方は王国の重要人物。同盟相手たる連邦や法国ならいざ知れず、帝国への許可など出るわけがありません」
「お姉さんも同じねえ。魔族との戦線が一旦収まったとはいえ帝国におはぎ先生みたいなチョロ猫が行けばモフモフの上着にされるわよぉ」
そう、吾輩が3年間もただモルガナやアルチナといちゃつくだけの蜜月を過ごしていたのは2つの訳がある。
まずは1つ目。吾輩の扱いは王国からしても重要人物であること。同盟国たる連邦国や法国に行くのでさえも丁重なやり取りが必須な上、数えるのも馬鹿馬鹿しい護衛が必要になるのだ。
そんな吾輩が敵対している帝国に行く事など断じて許可されておらず、素直に行きたいです!と申請したらミスト殿にやんわりと拒絶された。拒否ではない、拒絶なのが吾輩を帝国に行かせない証明だろう。
次に、魔族との戦線が続いていた事も関係している。アルチナが猛反対するくらいには魔族とやり合ってるなかで亜人の吾輩が行けば殺されるか男娼として利用されるのが関の山との事。
ただ3年間の中で、魔族の最高幹部を撃退した騎士が生まれたらしく戦線は一旦終結したらしい………が国内が荒れているのはまだ事実。この混乱を利用して帝国に魔族が潜入してる可能性が高いようだ。
そして、3つ目。これは論外なので選択肢から外しているが、
「じゃあ、仕方ないな。2人の奥様といちゃいちゃする?」
「「する!!」」
「帰ってきて早々、何をいちゃついてるのさ………」
「あ、おかえり。ロジェ」
2人の奥さんが吾輩を離してくれないのだ。特におかしな事はしてないのに、2人の愛が重たくなるばかり。
結婚してから、吾輩の方からも愛を囁いてはいるが普通の旦那様ならそれくらいするのではないだろうか。
「ロジェ、普通って何だろうな」
「よくわからないけど、パティさんやロンさん達の事じゃない?」
帽子や上着を脱ぎ、汗を布で拭うロジェ。彼女もまた3年間で成長期を迎え、16歳となった彼女はすっかり大人の仲間入りだろう。
背丈も吾輩に並ぶほどに高くなったし、顔立ちも漫画でよく見たクール系の美人に成長した。今では美人化粧士として、ミスト王女の護衛兼専属でもある上に吾輩達と喋る時には吃らなくなったしな。
「どうかした、クラウン?」
「いんや、綺麗になったなって。改めて思っただけだよ」
「ミ゜ミッキュ゛」
「ポケ◯ンいたか、今?」
代わりに吾輩が素直な感情を、ぶつけると変な奇声を上げるようになってしまった。どことなく、結婚する前のよわよわモルガナを思い出す。我が妻になった後のモルガナもたまに奇声を上げるけど。
「んんっ! く、クラウンだって成長したんじゃないかな? 昔よりは強くなったし、可愛くなったし!」
「可愛くなっても意味はないと思うんだわ。特に、最近吾輩のうなじとか太ももとか鎖骨に変な視線感じること増えたし」
「べべべべ、別にだ、だ、誰がクラウンのことなんかエロい目で見るんだよ! み、みみみみんなみんなが綺麗な目と見つめ合いながらぎゅってされたいと思うのさ!」
「だよな。吾輩をそんな目で見るのが妻以外にいたら潜在的な犯罪者だと思うわ」
特に吾輩をまあまあイケナイ目で見てるそこの義賊とか。成長して、思春期に入ったからって湯上がりの人間姿の吾輩とかを露骨に目で追いすぎである。バレてないと思ってるのか。
「因みに言っておきますが、クロの目線も一度胸を経由してから顔に行くのはやめた方がいいですよ」
「初対面の人にはそうしないようにしてるけどぉ。慣れた相手だと気が抜けてか、視線が下に偏るのよねえ。特に大きいと」
「人の振り見て我が振り直せという奴だな。話を戻そうか」
タンクトップ姿で脇下とかをタオルで拭き出したロジェに目線が行くのを抑えつつ、2人を説得にかかる。
倫理的な説明、行くことにおけるメリット、行かないと起きる事柄のエビデンスにトラブルをマネジメントしてソリューションをガイダンスする。
「〜〜という事なのでクロを帝国に行かせるわけにはいきません」
「くそう!! レスバで負けた!!」
そんな吾輩が理論構築の天才たるモルガナに勝てるわけがないんだよなぁ。ならばと武力で突破しようにも純粋な筋力ではアルチナに勝てるわけもない。
ロジェ? もうずっと前から負けてるよ。一度遊びか何かで押し倒された時に吾輩が逆らえないのを知った彼女の目は色々と怖かったとだけ言っておく。ハクが来てくれなかったら、吾輩喰われてたかもしれん。
「はい。という訳で今日もクロの負けなので、お着替えして楽しみましょうか。ここに漸くウルテマ監修のメイド服が出来上がりましたので主従逆転とかはいかがでしょうか」
「姫様。私はお嬢様より、奥様呼ばわりされる方が興奮するのだけど」
「主らの頭の中には吾輩を鳴かせる事以外ないのか」
「「鳴かせるのは貴方のほうでしょう?」」
「すいません。まだ真昼間なんですよ」
色を知った2人の「女」の流し目に吾輩のぼやきはなかったことになるが、今回ばかりは吾輩も譲れはしないのだ。
ティア・F・ナツメの物語は父親と姉が過労死した事から始まる。悪貨が良貨を駆逐する終わり散らかした帝国の経済を立て直そうとして、そのまま亡くなってしまうのだ。
その後、ナツメ商会は皇室に回収されティアは分家筋で冷遇されるが………彼女はただじゃ転ばなかった。
その不満や憤りを爆発させ、自らの中にあった音楽家としての才能を開花させたのだ。
そんな彼女は皇族の目の前で演奏する機会に恵まれ、帝城を訪れた際に床で転んだ男の子を助けることになった。
なんと、その男の子は未来の皇帝。彼女はそれをきっかけに婚約者になり、シンデレラストーリーを………歩めれば良かったのにな。
「頼む………我が妻達。ティアはこのまま行けば、
「何故、我が夫がそんな事を知っているかは分かりませんが私達とて嫉妬や嫌がらせで行くのを止めているわけではありません」
「
「あーそっか。ボク達って帝国から亡命してきてるから。ボクとアル姉は家畜牧場から逃げて来てるし、モル姉は皇帝の血族だもんね」
「そういう事です。魔女達と関わる度に巻き込まれては命が足りません。その上、貴方を守れる人がいないのであれば単独で行かせたくはないのです」
首根っこを掴まれた吾輩はみんな大好きミニスカメイド服を持ってきゃっきゃしてる姫と騎士を説得しようとするが、正論で返されてしまう。
確かに、帝国に乗り込む以上は3人はついてこれないだろう。
ユニという手段は取れなくもないが、彼女は亜人だ。下手に帝国に足を踏み入れたら最後、連邦国に対する人質として扱われてもおかしくはない。
だが、逆に言えばそれを何とかする人員がいればいいわけなのだが………そんな都合のいい人がいるわけはない。
「ご主人様。パティ様とロン様がいらしてます。対応可能ですか?」
現状に頭を悩ませていた吾輩達にハク殿がお手紙を持って部屋へと入って来た。色ボケ我が妻達は水を差されたことにじっとりとした目を向けるが、吾輩にとっては天からの蜘蛛の糸である。
モルガナからしても幼馴染2人を雑に扱う理由もないので転移扉を利用して、アトリエの応接室へと向かう。モルガナに抱き抱えられて部屋の中に入れば、8つの視線が吾輩達に突き刺さる。
4つは知っている目だ。パティとロン。モルガナの幼馴染2人は申し訳なさげな目線を向けていた。では残り4つはというと………。
「初めまして、私は旅の商人のサヨ。そしてこちらは、私の大切な護衛のバーンよ。ねえ、この度は他の誰でもない、あなた達と『宝石布』の件でお話ししたくて来たのだけれど……私の目、ちゃんと見つめて答えてくれるかしら?」
「ククク、この闇の商人たる俺たちに宝石布を売る気はないっすか? 利益は勿論約束するとしよう」
1人は気品ある森のような深緑の長髪を背中まで流したロングヘア。手入れが行き届き、絹糸のように艶めかしく揺れている。
こちらを見る目線は涼やかでありながら、すべてを見透かすような妖艶な光を宿しており、ふと見つめられただけで誰もがそのの魅力に囚われてしまうだろう。
もう1人はこちらは灰褐色の髪を無造作に整えた男だ。ゴテゴテの籠手をつけ、マントの上からでも分かる無駄な贅肉を削ぎ落とした長身かつ頑強な肉体。歴戦の場数を踏んできたことを窺わせる、圧倒的な威圧感と隙のなさを放っており、僅かにアルチナが反応した。
「失礼、貴方出身は?」
「ククク、この闇の商人たる俺の事など気にしている場合か?」
「気にもするわよ………私を殺しに来たか?」
わざとらしすぎる含み笑いにアルチナが片眉を上げた。心当たりがあるらしい。残念ながら吾輩もだ。というか………何でこいつがここに!?
「重心。僅かに左に逸れてるし、右肩まだ怪我でもしてるのかしらぁ? わざとらしい籠手なんて付けて私の目でも誤魔化すつもりだったみたいねぇ。マントの下に剣があるわね? 見せなさい」
「ククク、その必要があるのか?」
「ふふ、ないわよぉ。ただねえ、お姉さんはこの3年でよく軍人さん達と会話することが増えてたんだけどぉ………面白い話を聞いていてねぇ」
互いの空笑いの後、先に動いたのはアルチナだった。一陣の風を思わせる抜刀。迷いなき太刀筋に対して、男は籠手を………投げ捨ててマントの下から剣を抜く。
「ノヴァ流【パンタ・レイ】」
横凪の太刀を抜いた剣で滑らせるように躱すと机を蹴り飛ばし、アルチナの足を崩しにかかる。同時に彼の空いた指先から回転する物質がこちらへ飛んできていた。
「………いきなり女帝は取れないんじゃない?」
それをロジェが天井に向けて蹴り飛ばす。その間に、体勢を立て直したアルチナの剣とロジェの拳が首と腹に当たる寸前で止められ、降参とばかりに男は剣を落とした。
「受け太刀の剣に岩を撃ち出す魔法………噂通りねえ。7元徳の1人。【希望】のエスポワールを撃退した
アルチナの反応に、吾輩は思わず体を震わせた。知っているからだ。その名前を。だってその名前は吾輩が考えたのだから。
スピンオフの漫画にはいなかった。彼の名前が出て来たのは………
その題名は【魔女集会で待ってるわ〜星空の小夜曲〜】
帝国で生まれ、帝国で騎士として育った五聖騎士の若き団長。
吾輩が手がけたゲームシナリオのオリジナル主人公。そのデフォルトネームだったのだから。
「ククク、バレてしまっては仕方ない。お前たちに力を貸してほしくてな」
「ムサシ。その後は私に任せなさいな。まずは失礼な真似をしたことを謝罪しましょう。そして、是非協力していただきたいのです」
「まずは正体を明かしなさい。話はそれからです」
目線だけでアルチナとロジェを下がらせたモルガナへ向けて、サヨと名乗った商人は豊かな胸元から高価な首飾りを見せてくる。とても旅の商人が持っているようなものではないそれに、吾輩達の警戒心が上がる。
「それでは改めまして。私の名前はセレナ。セレナーデ・サヨ・ナツメ。ナツメ商会の長女。愛しい妹を救うため、その切実な願いと甘美な賭けにご協力いただけないかしら?」
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モブガルド・ニャンディアス3世。キミリア。
ティアの話もどうやら一筋縄では行かなそうだが………臨む所だ。吾輩を舐めるなよ。
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