吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。   作:あんみつ炙りカルビ

90 / 100
とりあえず4話は書けたので連続投稿します!
5話目は今週中に出来たらいいね!


感度3000倍ビームって即死技だよね

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。

 

「妹が言うにはね。ある時に夢を見たらしいの。その中で彼女は結婚式を挙げていたらしいわ。父親くらいの年齢で脂ぎった不潔な男。帝国貴族の原型とも呼べるようなその男に指輪を嵌められた彼女は………」

「まさか、妊娠していたとかかしらぁ?」

「アクメビームという魔法に開花していたわ」

「ごめんなさい、もう一度いいかしらぁ?」

「アクメビームという魔法に開花していたわ」

「では、アルチナ。後は任せました。私はクロといちゃつくのに忙しいので」

「逃げないでもらえるかしらぁ!?」

 

 アルチナが叫び、モルガナは溜息をつき、吾輩頭を抱えた。ロジェはもう部屋の隅っこでお茶菓子を食べる置き物と化した。

 要するに原作におけるティアさんの魔法が覚醒したわけだ。感度3000時ビーム。またの名をアクメビーム。終わってんだろ、何もかも。

 

 そもそもからして、原作者のフリーダム・メイソンは可憐な少女が大好きな男でティアは自分の好み全てを反映させたと言っていた。それはまだいい。吾輩も自分の性癖ぶち込んでるし、創作ってどれだけ性癖を綺麗に見せるかみたいな所あるからな。

 

 そんなティアの役割はメインヒロイン………プレイヤー達からはラスボスと呼ばれている。エリスを皮化して、それを被った主人公はロジェのオナホとユニのディルドソードを武器にティアを落とす為に戦いを挑む。

 

 最終的に、何故かいきなり現れた媚薬スライム(流れからして作戦の一環だったらしいが伏線は見当たらなかった)を頭から浴びたことで、ティアは敗北。漸く主人公は純愛いちゃらぶえっちを楽しむという結末だ。

 

 Q.純愛とは? デートとかしてお互いの良さを知る時間は………?

 A.そんなの、原作にはないよ………

 

 しかし、ティアの容姿だけは本当に妖精みたいに可憐なので何とか彼女に合うような魔法を考えた結果、彼女は音楽担当になったわけだ。

 だが、ティアが既に魔法に目覚めてるとは………これはもしかして間に合わなかったのか?

 

「それで? 何故、貴女達は私達に頼んできたのですか? ナツメ商会と言えば、帝国でも有数の貴族。交易都市や他国と唯一のやり取りがあり、外貨を帝国金貨に変える作業を担っている。帝国からしても大事に扱わなければならない筈です」

「あら? 貴女達には大きな貸しがある事をお忘れなの? 随分と小さな頭脳をしてらっしゃるのね」

「ククク、初手から煽るとはさすが俺が認めた共犯者っすね。ククク、アルチナ・L・キャロル。貴様も騎士なら筋は通すべきっすよね? 弱みを握って、女騎士を従わせる! これこそ帝国の騎士に相応しい姿!」

 

 アルチナの眉間に皺が寄る。彼らが言ってる貸しというのは、家畜牧場からの脱出及びモルガナ達とリリィ達の仲介の事だろう。

 確かにそれはデカい貸しだ。それに、今なお帝国三魔女の所在を黙っているのだから、力を貸せと言われてもおかしくはない。

 

「商会の娘として、貸し借りはきっちりしておかないと気持ち悪いの。貴女達にそれを果たす誠意があると言うなら、返事は決まっていまして?」

「ククク、とはいえ返事は1つしかないっすけどね」

「………少し考えさせてください」

 

 モルガナの言葉を最後に吾輩達は部屋を出る。パティやロン達も一緒だ。別の部屋に入り、モルガナによる防音の壁に変えられたところでロンが勢いよく頭を下げた。

 

「ごめん、モルガナ!! いきなり僕らの商会に現れて、脅されて、つい………」

「仕方ありません。見た所、かなり強い剣士のようです。それで? アルチナ、あの男が噂の英雄なのは間違いないのですか?」

「聞いた限りだとね………ただ、噂より悪い子ねぇ。聞いてた話だと、勇猛果敢で高潔な騎士と聞いてたのよ」

「戦場で歪んだ可能性もあるだろう。当時のアルチナみたいに過労による精神異常起こしてるかもしれんしな」

 

 ムサシ・B・ツーウンユ。吾輩が手がけたゲーム主人公。五聖騎士の1つ、『ヒーコシセンター家』の幼馴染の女の子の側にいたいと願い、騎士として手柄を挙げようとした男だ。

 

 ゲームしかり、漫画にも言えるが好感が持てない主人公には読者もプレイヤーもついてはいけない。仮に帝国にいる模範的な騎士であったら、辿る末路は原作の黒魔女と同じだったろう。

 

 なので、真面目で熱血な仲間思いの主人公にした筈なのだが………何だか斜め上に突き抜けてない?

 

「それで、どうする? 吾輩としては願ったり叶ったりの提案だが」

「断るわけには………いかないわよねえ。元を辿ればお姉さんが招いた種のわけだし」

「あの人達を逆に脅し返すのは? 脅されたんだから、脅し返すのはダメかな?」

「それで戦争の火種を産めば王国は私達を掌返しで売るでしょう。帝国が王国に喧嘩を売るのとでは私達が被る被害が大きすぎます」

「やっぱり、奴らの選択に乗るのが最良になるのか」

 

 わざわざ変装してきたって事にもきっと意味はある。それにティアの呪い………感度3000倍ビームを変える理由があるはずだ。それが分かれば吾輩達も有利に立つ事ができる。

 

「答えは1つ、だな。悪いが幾ら反対しても今回は吾輩は行かせてもらう。反論はないよな?」

「私達が帝国を訪れる事が出来ない以上、クロに頼むしかありません。ですが、約束して下さい」

 

 吾輩をぎゅっと抱きしめ直して、モルガナは言う。

 

「必ず、生きて帰って来てください」

 

 その言葉に素直に頷けない自分もいる。それでも、今の生活を手放したくないという情けない自分がいる。

 この3年間は楽しかった。今後も続いて欲しいって思うくらいに。だから、吾輩はゆっくり頷いた。

 

「──必ず帰る。約束だ」

 

 吾輩の言葉にアルチナとロジェも思うところはありそうだが、反対もなく、その足で応接室へと戻る。そこには優雅な所作でお茶を楽しむセレナの姿があった。

 

「答えは決まったようね?」

「いいでしょう。貴女達から受けた借りを返す為に、その呪いに詳しい存在を向かわせます」

「あら。それなら誰が来てくれるのかしら? 天才錬金術師と呼ばれた皇帝の血族? 五聖騎士団長の落とし子たる騎士? 帝国貴族を悩ませた義賊の末裔? 誰でもいいわよ。選択は貴女達に委ね………」

「行くのは吾輩ただ1人だけだ。異論はないな?」

 

 吾輩が机に降り立つと、露骨にセレナの口元が引き攣った。ゆっくりと紅茶を飲んで震えまくっているカップを置いて眉間を揉んで、天井を仰いだ後、吾輩の頭を撫でた。

 

「可愛い黒猫ね。それで誰が行くのかしら?」

「だから、吾輩だって言ってるだろうが」

「………スゥ」

「待て、目を閉じるな。幻覚ではないぞ」

 

 何も見てない、とばかりに瞼を閉じるセレナに溜飲が下がったのかアルチナやロジェからくすくすとした笑いが漏れる。5分の時間をかけてゆっくりと再起動したセレナは吾輩の顎下を擽る。喉を鳴らすと何故か顔を顰めた。何故?

 

「冗談で言っているのではないのよね? この黒猫が呪いを解く鍵になると?」

「少なくとも、私達の魔法は彼によって作り変えられたものです。彼さえいれば、貴女の妹君の魔法は使いやすく世間に恥じない魔法に変わるでしょう」

「「「えっ、そうなの!?」」」

「その黒猫が驚いてることに何か弁明はあるのよね?」

「クロは自分の魔法を感覚や本能で使ってる節があるので」

 

 吾輩、モルガナ達の魔法を作り替えてたの?? 何それ知らない。

 いや待て、モルガナ! それには反論できる!

 

「待て、モルガナ! 吾輩、ロジェの時は側にいなかったぞ! アルチナが魔法を教えていた筈だ! つまり、吾輩の力ではない!」

「クロはラケシス・ルノワールと知り合いであったなら、その後天的に投与する血に細工をしていた可能性があります。ロジェはそれにより作り変えられたと思っていますよ」

「なるほど、この勝負吾輩の負けだな」

「おはぎ先生が姫様と口喧嘩で勝ってる事ないでしょうに」

 

 ニヒルに笑ってるとアルチナから刺された。惚れた女に弱い男なんですー吾輩はー。

 

「はぁ、つまりこの黒猫が私の妹………ティアの呪いを解いてくれるというわけでいいのね? ならこの子を借りて行くけど構わないわね?」

「構いません。ただし、指1本でも傷つけてみなさい。その時は」

「それこそ、愚問よ。貴女達がこの黒猫を信頼するように。私もまた、私の共犯者を信じてるわ。彼がいる限り、毛皮の襟巻きにはならないでしょう。そうよね? 私の騎士」

「ククク、当然っすよ、共犯者!」

 

 空間から杖が現れ、剣に手が添えられ、骨を鳴らす音がする。それにセレナ殿の口元がヒクヒクしてはいるが、それでも大きく顔色を変えることなく、背後に立つ騎士への信頼を見せた。

 

 最後の『私の騎士』って言葉だけ凄い情念が籠ってだけど気のせいだよね? 吾輩わかんにゃい。

 

「では、交渉はまとまったという事でいいかしら。とはいえ、言葉だけでやり取りをするのは不安が残るし、貸しがあるとはいえ依頼をしたのはこちら側。ナツメ商会として、誠意はお見せしましょう。ムサシ」

「ククク、こちらをどうぞっす」

 

 机に置かれたのは小さな袋。置かれた音からして、宝石が何かだろうか。慣れた手つきでアルチナが前に出ると袋を開き、石を机に転がす。

 綺麗な石だ。シーグラスのような丸く透明感ある石。でも宝石には及ばないそれを見てアルチナとロジェは首を傾げた。

 

「「それは!?」」

 

 そして、そ(・)の(・)石(・)の(・)貴(・)重(・)さ(・)を(・)知(・)る(・)吾輩とモルガナは声を挙げた。

 

「これは帝(・)国(・)で(・)し(・)か(・)採(・)れ(・)な(・)い(・)珍(・)し(・)い(・)石(・)ですの。商会の娘とはいえ、この量を手に入れるのがやっと。本来ならば交易都市に売り込むのですが、そちらは差し上げますわ」

「正気、ですか? これほどの純度でこれだけの量ならば一財産築くのも不可能ではありません。それを何故私達に」

「先(・)行(・)投(・)資(・)というものよ。私達ナツメ商会は貴(・)女(・)に(・)期(・)待(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。賢い貴女ならこの意味が分かるわよね?」

 

 セレナ殿は所作良く立ち上がると、一礼をする。

 

「それでは皆様、ご機嫌よう。良き選択を」

 

 騎士を伴って部屋から出て行った彼女に吾輩達の評価は恐らく一致しただろう。

 

「食えない女ですね。しっかり、私達に首輪をつけていきました」

「遠回しに吾輩達のやってる事は知ってる、という証明だよな。ユニに頼んで手に入れて貰おうとしたものがまさか転がり込んでくるとは………」

「あ、あのさ。その石はなんなの? 見た感じ、あんまり高価そうには見えないけど」

「見た目はな。これは中身が問題なんだよ」

「この石の名は【アンオブタニウム】。魔力や衝撃を吸収し、自在に放出することに加えて加工しやすく、加工後の硬度も高いと夢のような金属です」

 

 ファンタジー作品によくある幻の金属というわけだ。オリハルコンやヒヒイロカネ、アダマンチウムのような扱いになるのだが、これが馬鹿にならない。

 

「吾輩が無限に金貨を生み出せるから気にはならないが、本来この量を買うならば白金貨が10枚はいる。国家予算1年分だ。どれだけ貴重か伝わるか? ロジェ」

「え!? なんでそんな石ころがそんな値段するのさ?」

「その鉱脈が尽きてるのが理由よぉ。ロジェちゃん。思い出したわぁ。魔族との戦争の理由がこれだって事にね」

 

 吾輩も知っている。帝国が魔族と戦争をする1番の理由は正義や義憤からではない。この鉱石が欲しかったからだ。譲渡や取引ではなく、戦争による侵略を望んだのは帝国だが、きっかけはこの石からだった。

 

 魔(・)族(・)の(・)住(・)処(・)に(・)は(・)手(・)付(・)か(・)ず(・)の(・)鉱(・)脈(・)が(・)あ(・)る(・)

 

 魔族には鉱石を加工する技術はない。奴らはこれを投石のように扱うしかない。そんな奴らに渡すなど勿体無いと。もたらされた情報に帝国は飛びつき、今なお続く戦争を始めたのだった。

 

 それだけの影響がある石をモルガナに渡してきた理由は1つしかないだろう。

 

「きっと、ナツメ商会が私に期待しているのは………魔導列車の開通。それによる運送の変革です。魔導列車が開通さえすれば、短期間で大量の荷物を運ぶ事が可能になる。交易都市とやりとりがあるナツメ商会からしたら是非とも食い込みたい利権です」

「だから、ナツメ商会はわざわざこの石を土産にして吾輩達に接触してきた。これがあれば今詰まってる部分は大凡解決できる。そうすれば、吾輩達はナツメ商会に強く出られなくなるだろうよ」

 

 先行投資、とはよく言ったものだ。魔導列車もまだ情報は回っていない。ルーフェン殿の領地と王国を繋いでからの話だったはずが何処から漏れたのか。

 

「ナツメ商会はお姉さん達をどうしたいのかしらねぇ。亡命したいってのは嘘だったのかしらぁ」

「分からん。嘘かもしれんし、それ以上にのっぴきならない事が起きてるかもしれん」

「単に、セレナーデさんをクラウンに嫁入りさせて全部の家督を押し付けようとしてるとか?」

 

 はははは、とロジェの思わずといった発言に吾輩達の時間が止まる。ふっと、我が妻達の目からハイライトが消えた。ロジェは音もなく姿を消した。

 じりじり近づくモルガナとアルチナ。その手には仕舞われていた筈のメイド服があった。

 

「待て、待つんだ。確かにセレナ殿は主らに負けず劣らずの肉体だったが、吾輩から口説くつもりはさらさらないんだ! 信じてくれ!」

「うんうん、そうよねえ。無自覚に口説いて沼に堕とすのがおはぎ先生だものねえ?」

「私達は分かっていますよ、貴方が押しに弱いという事も」

「「だから、貴方は誰のものかをしっかり教えないとね」」

 

 吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。

 メイド服は意外と着心地が良かったのと、主従逆転プレイは興奮した事だけ述べておく。

 

 




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