【第2部開始】吾輩は猫である。前世で描いた鬼畜リョナゲームのスピンオフ漫画の世界に転生したので贖罪の為に魔女達を救って行こうと思う。 作:あんみつ炙りカルビ
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、タンゴ、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。
翌朝、早速庭に出たが、庭というよりは原っぱとも呼べる広さにため息しか出ない。吾輩達の旅館よりも遥かに広く貴族の庭園とはこうも違うのか。
「じゃあ、今日から魔法について教えていくぞ〜」
「よろしくお願いしますわ!! タンゴ様!!」
「やめて。その呼び方やめて、もっと普通に………」
「よろしくお願いしますわ、タンゴ様」
「声量という意味の普通じゃなくてな………」
気合満々なティアの目の前に吾輩は猫の姿で視線を横にずらす。その先には剣を構えたセレナ殿にムサシ殿が指導している姿だった。慣れてるのか、気安く体に触れていてもセレナ殿が嫌がる様子はない。
政略結婚、なんて言ってはいるが実際は仲睦まじいのだろう。
「仲良さそうだな、あの2人」
「この間、テラスで手を繋ぎながら見つめ合ってましたわ!!」
「そっか。その事、誰にも言ってないよな?」
「父様と母様以外には言ってませんわ!」
吾輩、無言で十字を切る。プライバシーダダ漏れで可哀想。
「さて、ティア。まずは主の魔法を見せてくれるか?」
「
ティア。それ、主の芸術魔法の基本技。アクメビームにつけないで?
「まあ、その魔法を見せてくれ。的はあの人形な」
「すげえですわ! あれ何の魔法ですの!?」
「錬金術だ。クロス・レシピの1つ。『玩具の人形』」
吾輩が玩具箱から引っ張り出した人形を立たせる。ティアはその真正面に立つと、可愛らしく回転して胸の前で手をハートの形にする。
「これが、私の全力ですわああ!!」
掛け声と共にハートマークのビームが人形に直撃する。エフェクトにピンクのハートが飛んでる気もするが、人形に変化はない。直接的な威力はないようだ。
無機物に対しては意味をなさないというならば、有機物に当てるしかないのだが………当たったら退ける魔の人々みたいにとんでもないことになる図しか浮かばない。
「ティア。これ有機物に当てたらどうなるんだ?」
「ゴブリンに当てた時は色々汚え汁を散らかして、締め殺した鶏みてえな声を出して死にましたわ!」
「レディ、もう少し言葉を慎もうか」
キュッとティアが唇を締めた所で、吾輩は肉球に目を向ける。モルガナが言うには吾輩の魔法ならばティアの魔法を作り変えられるという事だが、本当にそんな事が可能なのか。
いや言い訳はよそう………出来ないか出来るかで言えば、出来る。
その変な確信めいたものが吾輩の中に存在している。
『ふざけてんじゃねえぞ、盗作野郎!! 人様の作品の設定を厳守せずに、自分の妄想重視の作品描きやがってよお! あ゛あ゛!? 人様の脱いだパンツでマスかいて楽しいか!?』
『無価値なものを価値あるものに変える』、なんて傲慢なのかと自嘲する。それを使わなきゃならない自分の弱さにも。こんな世界にしてしまったが故に強さを与えなきゃいけない皮肉さを。
それを隠して吾輩は笑う。苦しむのは吾輩だけでいい。
「………よし、じゃあ説明をしよう。まず、ティア。主に教えるのは『芸術魔法』と呼ばれる空属性にしか扱えない魔法だ。その中でも主に向いているのは『音楽』だろうな」
「音楽! 私も大好きですわ! こう見えて一人前の淑女としてピアノを習っていましてよ! 今度もコンクールに参加予定ですわ!」
「へえ、ピアノを習ってるんだな。上手いのか?」
「当然ですわ! 私が社交界に参加したら私が全ての噂をかっぱらいますわー!!」
おーほっほほ!みたいな高笑いに視線の片隅でセレナ殿が顔を引き攣らせている。言葉遣いを直して欲しいのだろう。今だとただのエセお嬢様でしかないしな。
「話を戻そう。主の場合なら『音楽』の魔法は光線を放つものになる筈だ。吾輩の予想なら
「………? 分かりましたわ!」
分かってない顔をして元気に返事をするティア。その元気だけは評価したい。その明るさは思い詰めやすい魔女達の中では清涼剤になるからな。
それにティアの魔法はちょっと高等物理学に足を突っ込んでる所あるしな。最終的に大気を振るわせて摩擦させることで、静電気……この場合は電磁波の一種を、さらに振るわせることで、燃焼プラズマ化させるのだから。
分かりやすく言うと、プラズマジェットで空を飛びながら光線や超音波に姿を消した上でプラズマを投下するとか言うステルス戦闘機でもそんなんやらねえぞという無双っぷりを見せるのだから。
「まずは吾輩と触れた状態でやってみるか。吾輩を抱えた状態でビームを撃ってみてくれ」
「分かりましたわ!」
「出力は限界まで下げてくれ。何かあっても、おかしくは………」
「撃ちますわー!!」
光が満ちた。けたたましい音とともに放たれたのは、一直線に伸びた閃光。世界が真っ白になるほどの変化を起こし──
「な、な、な、何の音と光だ!? 今のは!?」
「………わー、おほしさまきれい」
「しっかりするっす、セレナ!!」
人形は消え、庭が円形のトンネル状にえぐれていた。というか空の雲を一部消し飛ばして星が見えていた。ロンド殿が執務室から顔を覗かせ、セレナ殿は倒れた。とてもかわいそう(小並感)
ちょっと想定外の出力であり、吾輩はしばらく呆然自失。
いやね? 吾輩もティアの設定にさ? 魔力の出力は魔女達の中で1番って設定だよ? 桁外れの出力とはいえどここまでとは思わなんだ。
流石はこの作品に関わった者達が揃って【最強】と呼ぶべきはあると言うことか(目逸らし)
唯一の利点は使用者本人のお目目がキラキラしてる事だろう。トリガーハッピー気質な所にブッ刺さってたのかもしれない。
「………ッス、タンゴさん」
「はい。吾輩、修繕費出します」
それはそれとして、庭や垣根の修繕費は出す。責任取らないとね。
後は全力で謝罪しますね。ごめん寝で許されますか?
とりあえずムサシ殿は吾輩を爆弾みたいに土で囲んで持ち運ぶのはやめていただきたい。気持ちはわからないでもないが。
執務室につくと、ゲンドウポーズのロンド殿がいたので吾輩は可愛らしくにゃーんと泣いて媚を売っておく。
「説明を」
ロンド殿は笑っていた。吹雪を思わせる冷たさだった。
「いや、あのですね。魔法に干渉して分かったのですが………ティア殿は想像以上と言いますか。魔力の出力がずば抜けて高すぎるという感じでして」
「そうか………いや、薄々はそうかもしれないとは思っていたが」
「ご存じでしたか。それでは、
魔法に干渉という建前で設定を語ると、ロンド殿は思い当たる節があったのか神妙に頷いており、吾輩の言葉に対しても困惑を見せながらもどこか納得したような顔になる。
「それもつまり出力が高すぎる事が要因だと?」
「ええまあ。魔力をぶっ放す力に才能が全振りされているせいか、一定の魔力を維持するという力が弱いように思えます。肉体に魔力を留めるのが強化の基本ですが、お嬢様の場合はすぐに垂れ流してしまうのです」
これがティアの弱点。魔力強化ができない事。吾輩みたいな素麺ボディでも強化できれば岩を砕くくらいはできる。ロジェの肉体ぐらいになると、視認した弾丸を掴み取る事すら可能だ。電磁加速したコインを指先で止めるんじゃねえ。マトリックスでもやらんぞ。
このせいでプラズマジェットで高速移動しながら、さっきの光線をぶっ放す最高に頭の悪い戦い方は初期のティアにはできない。反動で汚え花火になる可能性が高いので。
「しかし、ティア殿は別に騎士や戦士ではない。そもそも貴族のご令嬢が表に出て戦う必要はないので………姿を隠したりすることで敵の目をくらましながら戦うという方法はありますので安心していただきたい」
「まずうちの娘を戦場の最前線に引き摺り出さないでいただきたい」
「それが可能な程にこの国が平和であればいいんですけどね」
皮肉にロンド殿の顔が曇る。正しく状況を把握してるからこその最悪の想定が浮かぶのだろう。今の平和は仮初にしか過ぎず、小さな虫の一噛みで簡単に崩れるほどにもろいものだと。
既にアニオリ主人公がいるからどこまで参考になるかは分からないが、スピンオフの黒幕は──魔族である。それも七元徳の1人、『正義』の美徳を持つ
スピンオフ時にはティアの婚約者が剣を持っているのだが、この世界ではアルトリウスが持っているかもしれない。それなら、ほら。アニオリ主人公の性格の歪さはそれのせいにできるかもだしな。
「ロンド殿。吾輩は可能であるなら、こんな魔法を使わなくても彼女達が笑っていられる環境を整えてやりたい。けれど、そうできないようになっているのがこの世界で。歪みが酷いのがこの国だ」
「ああ。その通りだとも」
「だからこそ、吾輩は彼女が
出来れば、立ち向かってほしいが。と結びで締める。けれど、もしもアルトリウスに惚れて彼の力になりたい。どうしてもだ!というならば吾輩はきっと止められないだろう。
彼女の人生は、彼女のものだ。それを邪魔するのは吾輩にも、ロンド殿にも出来ないのだから。
「ままならないものだ。人生というものは」
「そんなもんだ。ままならないからこそ、いつだって自由なんだ」
「違いない。自由の意味を履き違えてるのが帝国には多いがね」
それはそう。と吾輩は笑った。自由というか、不自由になりたくないが故に目を逸らし続けたのが帝国な所はあるしな。
そんな吾輩に、ロンド殿は目尻を緩めると貴族たる毅然とした態度ではなく、一人娘を案じる父親の顔で。
「娘に強さを教えてほしい。こんな現実に負けないように」
「ああ、任せてほしい。その為に吾輩はここに来た」
吾輩は猫である。名前はクロ、おはぎ、クラウン、タンゴ、モブガルド・ニャンディアス3世、キミリア。人間の頃の名前はヤマト。
この後も、吾輩の指導の下でティアは魔法の習得に励んだのだった。
*
常々、思う。自分の人生は自分だけのもの。人生一度きりだから後悔ないことをやる。素晴らしい言葉だ、考え方だと皆が拍手をする。
でも、誰もが気づいてる。そんなのは表面的な話だって。そんな胸焼けしそうなくらいに自分の人生を楽しめるのは、
地位、才能、美貌、富、選ばれた者達の基準は不明確だがそれでも人生を楽しむ上でやるべきことは決まっている──自分が選ぶ側に回る事だ。
地位があれば、好きな女を捕まえられるし、美貌があればより顕著だ。才能があれば人は放っておかないし、富を稼ぐことすらできる。
だからこそ人は努力する。自分が選ばれる側から選ぶ側になる為に。
だけど、同時に気づいてもいる。そんな分類は心底、しょうもないことに。
そんな考えなんて、馬鹿みたいだと笑ってやって好きに生きればいい。
「なんて、次期皇帝かつ剣術や魔法の才能に優れた選ぶ側の俺が言ってみるわけだ。これって名言になったりしないかな?」
「あははは、うーん。私はキミの意見は否定しないけどなぁ」
「何その、他の人が聞いたら変なやっかみ受けそう。みたいな言葉の濁し方」
「その解釈で合ってるんだけど」
彼女は笑う。かつて、俺が救う前よりも遥かにいい笑顔だ。ヒーコシセンター家の後継が死に、立て直しの為に彼女を剣の教育係として救ってあげた事は記憶に新しい。
なーんて、最初から剣の天才だった俺に師匠はいらなかったわけだから。彼女には真意をすぐ見抜かれて、こうして護衛という体で寝室の巨大なベッドで寝てるわけだが。
「ほら。アルくんって、カッコいいしモテるから疎ましく思う人も多いんだよ。この間も新しい魔術を開発してたしね」
「こんなにかっこよくて、さりげない気遣いも出来て運動神経も抜群で魔法も四属性使えて人望もあって、おまけにいい匂いがするこんな俺のどこに嫌う要素が!?」
「うーん。主にそういう所だと思うよ?」
彼女が擦り寄ってくる。ふにゅんと、生肌から伝わる柔らかさと熱が心地いい。とても快適な肉布団だ。量産したい、いや量産したら彼女のおっぱいが自分だけのものではなくなってしまう。生産はやっぱり中止だ。
自分の反応が薄いと思ったのか、彼女は耳元にふぅーっと息を吐き、更に胸を押し付けて、俺の臀部に下腹部を押し付けてくるじゃないか! 因みに勿論下もすっぽんぽんだから、肉感的な太ももが柔らかくて最高。これで枕を出したら永遠に寝ていられる気がする。
「それよりも、社交界行くんだよね。うーん、アルくんが行く意味は無いと思うんだけどなぁ」
「仕方ない。父さんは期待してるんだよ。俺のような選ぶ側に貴族達をまとめてほしいって。国の内部は割れてるし、挙句には英雄を祭り上げる奴らも少なくない。だからこそ、俺が上に立って、今の大好きな国を守らなきゃいけないんだよ」
ただ剣で相手を殺すしか能がない奴らとは違う。英雄擬きが怖いのは簡単に敵を殺そうとするからだ。相手が魔物だろうと魔族だろうと、普通は躊躇するのに奴らは躊躇いなく剣を振れる。
規則が何も怖くない野蛮人達を正しく管理して選ばなければ、国は滅ぶ一方だ。
「英雄擬きの………なんだっけ? カマセ・ヤローはその危険人物の1人だからな」
「うーん。印象としては合ってるけど、ムサシくんだからね。本当の名前は。気をつけてよ? 彼とは知らない仲とはいえ、何人も戦場で魔族どころか味方さえも殺した奴なんだから」
「男の名前を覚える趣味はなくてね。まっ、ゆるゆるっとこなしてみせるさ。アート。それが、この俺、アルトリウス・ドラグラウンだからなっ」
去る者は追わず、来るものは拒まず。今の帝国と同じように、自らの手で人を助けたりはしない。だが、アートのように助けを乞われたら誰よりも完璧に相手に文句の1つも出ないくらい美しく救ってやる。
俺が、俺である為にそうあり続ける事こそが俺なりの美学って奴だから。
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