人造人間ハカイダー ダークヒーローの破壊旅 作:アルファるふぁ/保利滝良
主人はまだちょっと出るよ!
一歩、また一歩 踏み出すごとに、道の死骸が焔に包まれていく
まるで、使者を天へいざなう為の火葬のように
炎と共に近づいてきた
一匹目
降り下ろした腕を握り潰され、引き抜かれる
激痛に悶える暇なく手刀で叩き割られた
二匹目
頭に向けて放った爪を、首を傾けて避けられた後、いつの間にか頭を掴まれ、そのまま砕かれる
三匹目
銃を持った住人に止めを刺そうとしたとき、後ろから首を抜かれる
四匹目
頭上からの不意打ちを避けられ、カウンターのパンチが胴体を貫通してしまった
五匹目
遠距離から
六匹目
八匹目
七匹目
八匹目
九匹
十匹
十一匹
十二匹
十三
十四
十五
十六・・・・・・・・・
先程まで人間の亡骸だらけだったそこには、怪物の亡骸も転がっていた
その数、ちょうど百
夕陽も落ち、暗くなった貧民街
みすぼらしい等と言われる数多の家からは、火災が起きている場所もある
死屍累々という言葉が、今ここによく似合う
今の今まで殺戮をしていた怪物たちは、最早一匹も残らず虐殺された
だが、街が得たものは何もなかった
「お母ちゃん!お母ちゃん!しっかりして!お母ちゃん!」
死にゆく親を前に、泣きじゃくる子
「いやだ・・・死にたくない・・・こんな・・・」
死を前にして絶望する者
「ピエール!ジョリー!デニー!どこだーっ!返事してくれーっ!」
ひたすら孤独に、仲間を探す男
貧民街は見るも無惨な有り様だった
だがハカイダーは違った
その頭には、この怪物達をけしかけた連中に、検討をつけていた
あらかじめ街に近場に置いておいた
エンジンの排気ガスが一瞬吐かれ、爆音がその後に鳴る
地獄なら来たようなバイクとライダーのコンビは、貧民街を出て、街の中心へ向かった
後には地獄の光景が残ったままだった
ハカイダーには、なにもしてやれない
街の中央、薬の生産工場
そこの研究室の一つに、二人の職員がいた
一人は胸にバッジを付けた白髪のキャリアベテラン もう一人は新人とわかる若者
そして若者の方は、自動拳銃を構えている
その目は、白髪の顔をまっすぐに捉えていた
「教授、いい加減にしてもらいます」
「何がだね?」
「あの
鈍い鉄の音が、新人の手の内から響く
彼が引き金を引けば、その鉄塊から熱い鉛玉が容赦なく飛び出すだろう
「これ以上・・・ましてや、富裕層の人々の街にもバイオ生命体を解き放つ必要が何処にあると言うんです!」
「・・・フッ」
「息子さんが死んでからの貴方はまるで幽霊だった・・・だけど、あの灰色づくめの男が来てから教授は・・・狂ったように研究を始めた・・・」
「これはその成果だよ まさか貧民街のネズミに
バイオ生命体の檻の扉を管理する機械を撫でながら、教授は余裕そうに笑う
教授を睨み付け、新人は引き金にかけた指に力を込める
「・・・本当に狂ったのか・・・」
その言葉に、教授の態度は急変した
「貴様に何がわかる!貧民などに恋をし、性病をもらい、苦しみ抜いて死んだ私の息子の気持ちが!貴様らに、何が!」
「仇を討つ必要なんて、何処にあると言うんですか・・・!」
「富裕層の医者にも見捨てられ!何もできず!ただ死にゆく息子を見守るしかなかった私の気持ちが!お前らに!」
一瞬だった
教授は懐から小型拳銃を抜き、新人に放った
乾いた音が鳴るのと、鉛玉が勢いよく着弾したのは、同時だった
激痛に顔をしかめ、新人は倒れる
腹から出た鮮血が、清潔な研究室を汚す
「・・・貴様らに・・・何が・・・」
薬品生産工場
ハカイダーはギルティを降り、侵入した
地下の階段を見つけ、ハカイダーショットを片手に下りていく
階段の行き止まりのドアが力ずくで開かれる
その巨大なホールには檻があった
貧民街を襲った
ハカイダーショットが火を吹いた
貫通した弾が、爆散した弾が、直撃した弾が、掠った弾が
一発の無駄もなく、ハカイダーショットは怪物を葬り続けた
そこに一匹の怪物が飛び掛かる
タックルを食らい、ハカイダーは床に倒れた
そのバイオ生命体は他の個体より大きく、頭には日本の角が付いていた
まさに怪物のボスのような風格
先手を取ったボスは、追い討ちをかけるようにマウントをとる
腕の筋肉がしなり、そこからコンクリートをも破壊する拳が幾度も打たれた
一発ごとに、すさまじい音が響く その音量からも、ボスの怪力が伺い知れるだろう
しかし、殴られているハカイダーはまるで平気だった
逆に、右拳を醜い怪物に叩き込む
そして、その右拳こそが、決まり手だった
アームショット
ハカイダーショットと同等の威力 しかも、接射したとなれば、例え他の個体より大きかろうが、関係なかった
首から上が消えたボスが、後ろに倒れた
「バカな、全滅!?」
モニターからハカイダーの戦いを見ていた教授は、その惨劇に戸惑った
その隙は仇となった
乾いた音がもう一度響く
それは死に間際の新人が持っていた銃から出た物であった
ならば標的は決まっていた
「うっ・・・!」
胸から血を流し白髪を振り乱しながら教授は、天にいるであろう息子を、見た
幻だろうと、名を呼ばざるを得なかった
「ジャン・・・」
こうして、貧民街の住人を殺戮した張本人は、静かに死んだ
吹き飛んだ貧民街の酒場前
消えた命は戻らない 彼はそれを知っている
たがリョウは同時にその事実を、悲しんでいた
振り払うように、ギルティは走り去っていった
バイクのエンジン音が、街に残っていた
数年前のこと
酒場の主人の自室にノックが鳴る
「あら、ジャン!」
向日葵のような笑顔で、主人が男を迎え入れる
「やあ、ミチコさん」
その日の二人は、キスをした
二人は、世界で一番幸せそうな顔をしていた
数年前の、ことである
薬の街も裁かれたところで、今回は終わりです
二話もできたし、前々から暖めておいた作品を書きます
詳しくは活動報告にて(唐突な宣伝)
でも完結はさせます!それまでどうかお待ちいただければ幸いです