A:そうだね、洗脳だね!
一回死んで生まれ代わり、再び死んでまた生まれた。
もっとも、一回目を私は認識しておらず、この世界が所謂前世のゲーム『女神転生』の設定に極めて近い、パラレルワールドだと知ったのは、高校時代の脳開発セミナーで、「魂の解析」を耐えきったことによる、副次的な作用に由来する。
魂の解析とは、メシア教会が合成人間を製造する為の工程の一つである。
人間は、非物質である魂と、半物質である霊、物質である肉体にスタンスが分かれる。
このうち、「自我の確立」「他者から見た自己の認識」を司る、半物質(サブスタンス)。
霊を人間から引っこ抜く。
そうすると、人間は魂と肉体とに、綺麗に分割できる。
「魂」は生命の根本原理であり、神様の奇跡の本質である。
「肉体」とは、つちくれと血の穢れから膿だされる人間の原初の罪であり、人間を産み出された直後に神様の愛から切り離す、肉の容器である。
基本的に、メシア教会の天使も人間も、魂を直接改造することはできない。
赦されていない、と言った方が正しい。
何故なら、人間が「稼働式ダッチワイフ」ではなく「人間である」と定義、保証してくれるものが、この魂と言う神様の息吹だからだ。
コレに手を着ける、と言うことは、「神様の奇跡を手垢で汚す」=「神様の神秘性の否定」に繋がる。
古来、悪魔との契約と言えばヒトの魂と言うのがテンプレートだった。
それはそうだろう。
特に重要でなければ、悪魔が欲しがる訳がない。
魂とは、「神様の奇跡」であり、「神様の分身」であり、ひいては「神様の存在証明」そのものなのだ。
それが即物的な悪魔との契約のリソースとして消費され、その多くはいまだに地獄の底に、吐き捨てられたガムのようにこびりついて脱出できていない。
そもそも天の門が狭いと言う問題が有るが、「神様の存在証明」を行う魂の過半数以上が、現世と地獄に偏っている、と言うのは、いかにも悪魔が好みそうな、最高に冒涜的な皮肉であろう。
さて、そんな訳で、直接的に人間の魂を改造する手段は、基本的には無い。
「じゃあ直接的じゃない手段を使えば改造してもイイんだな」と考えた、そこのキミ。
キミは頭メシアンなので、メシア教会に入信するように。いいね?
実のところ、魂を改造する手法については、11世紀から16世紀にかけて、秘密裏に研究されており、1990年代現在、既に確立されている。
その手法こそが、メシア教会に古くから隠匿されし秘法、「魂の解析」。
通称「モザイクアート」である。
「健全なる魂は、健全なる肉体に宿る」
なら肉体を意図的に歪ませれば、魂も歪む。
例えば、ここに『麻葉 雷光』という酒がある。
ラベルが霊、容器が肉体、中身の酒が魂。
まずラベル(霊)を容器から引っ剥がす。
続いて、中身(魂)を容器から抜いて、保管しておく。
残った容器は粉々に砕いて、極めて原始的なガラス材に還元したら、今度はプラスチック、セラミック、金属を混ぜて溶かし、新たに「強化された容器」を造る。
更にそこへ、「これはメシアンのnew麻葉 雷光です(本物ですよ)」と書き替えたラベルを貼り付ける。
最後に保管してあった中身、魂を容器に封入すれば。
おめでとう。麻葉 雷光は、メシア教会のテンプル騎士「new麻葉 雷光」に生まれ変わったのだ!
………なにも変わってない?中身?
いや、確かに変わったよ。
だってラベルに「new」って書いてあるじゃあないか。
そもそも、new麻葉 雷光を「製造」する過程で、一度容器を開封している。
「開封された飲料」と「未開封の飲料」は異なる。
自販機でペット飲料を購入して、それが開封済みだったら?
普通は廃棄するだろう。剛の者ならそのまま飲むかな。
まあそれはまた別の話だ。
要は、悪魔との闘いにおいて、「魂の価値」などどうでも良い、と言う、身も蓋も無い話なのだ。
人の命とは掛け換えのないモノだ。
しかし同時に、戦闘で最も信頼できる武器は人体である。
人が人を殺し、人に殺される。
それはこの世で最も忌避される、人倫に悖る惨状だろう。
だが、敵は悪魔だ。人間ではない。
なら此方も人間である必要はない。
「兵器」としての人間の価値を限界まで高め、代償として「生命」としての人間の価値を極限まで貶める。
「モザイク」とは、詰まりは『人知の冒涜』なのだ。
今回短いね。ごめんね。