キング・オブ・ブレイバー   作:菌床

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第4話

 

 アリアドネが産まれたのは暗い森の中だった。

 強力なモンスターがひしめく森の中で、迷子になった子供の手を引いて歩くマスターから産まれたのだ。

 何のジョブにも就いていないマスターとティアンの子供では、モンスターと遭遇した時点で助からない。

 そんな危機的状況だった為メイデンとなったのだろう。

 だが、能力の方向性はマスターのパーソナルが強く影響している。

 マスターは多くの夢や目標を持つが、そこに辿り着くにはどうすれば良いかと悩んで迷走した挙句、段々とやる気が失せていくタチだった。

 だからこそ、目標に向かうマスターを演算し補助するエンブリオとなった。

 マスターから共有された情報を基に演算を行い、マスターの能力の範囲でそれを実行する。

 そう、自分の本質は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 マスター(英雄)を成功へ導く者、それこそがアリアドネの名を持つ自分の役割だ。

 

 どんな強敵を前にしても、可能性があるならば必ず掴み取ってきた。

 これまでも、これからも、マスターが望む到達点(可能性)へ必ず導いてみせる。

 

 ◆

 

 王国勢力と皇国勢力がぶつかる地点より後方、そこは地獄の様相を呈していた。

 

 六つの武器が宙を舞い、手に持つ二振りの剣が斬撃を飛ばす。

 八つの攻撃が同時に襲いくるが、フィガロは躱し、晒し、弾き、攻撃後の隙を突いて反撃を叩き込む。

 ヴェルゴはスキルで瞬間的に防御力を跳ね上げ、真正面から耐え凌ぐ。

 数多の特典武具をエンブリオによって強化し戦う【超闘士】。

 数多の超級職スキルによって装備を強化して戦う【英雄王】。

 

 雲を裂き、山河を砕く攻撃の応酬を繰り返すが、両者今だに無傷。

 

 全身を強力な呪いの装備で固め、装備枠とスキルの数ではヴェルゴが勝るが、装備補正によるステータスではフィガロが勝る。

 そして、戦闘技術に関しては両者ほぼ互角であった。

 しかし、その事態に困惑していたのはヴェルゴの方だ。

  【道標乙女 アリアドネ】の必殺スキル《指し示すは栄光への道標(アリアドネ)》は常時発動型のスキルである。

 マスターのレベルやステータス、スキル性能に応じて取り込める情報精度と演算能力が上昇するのだ。

 マスターが望む結末を指し示すことこそがアリアドネの在り方であり、全てを演算し切ればどんな状況にも対処出来ると言うのがメイデンとしての方向性である。

 ヴェルゴはアリアドネによる戦闘アシストや動作補助を受けており、複数の神シリーズの条件を満たせるほどの戦闘技術を誇る。

 魔法やスキル制御に演算リソースを回しているとはいえ、単機能特化のエンブリオの戦闘演算に喰らい付いてくるのだ。

 本当に人間なのかと、ヴェルゴもアリアドネも怪しんでいた。

 

 「───!」

 

 【魔眼王】の奥義で状態異常耐性を無視し、フィガロの動きを止めようとするも、発動する瞬間に踏み込みで地面を爆散させ、遮蔽物に紛れて攻め立てて来る。

 特典武具か、勘によるものか、或いはその両方か。

 僅かに驚いた程度で対処してくる驚異的な対応力に、流石のヴェルゴも舌を巻く。

 

 (おいアリアドネ! アイツ本当に人間かッ!?)

 『……80%の確率で人間です。少なくとも、【殲滅王】や【総司令官】と同質の存在ではありません』

 (20%の確率で人間じゃないのかよ……)

 

 天地を出て久しい感覚に、ヴェルゴは郷愁を感じていた。

 

 「カァッ!!」

 

 周囲の武器六本と、手に持つ双剣を振るう。

 先程の数倍以上の速度でフィガロと間合いを詰め、アリアドネの動作補助による達人の技巧で高速連撃を叩き込む。

 八つの斬撃が大地を駆け抜け、切り分けられたケーキを持ち上げるように地層が隆起する。

 対するフィガロは、その全てを真正面から迎え撃つ。

 全ての攻撃を紙一重で避けきり、装備スキルを連続発動、貫通効果を持つカウンターをお見舞いする。

 あまりにも鋭い反撃がヴェルゴの肉体を切り裂き、貫通した衝撃が周囲の隆起した地層を切断して崩落させる。

 

 「──《聖者の慈悲》」

 

 距離を取ったヴェルゴは、聖職者系統超級職のスキルを使用して抉られた内臓を再生させる。

 爆散した土砂を突き破り、正面からフィガロが迫る。

 ヴェルゴは自身の倍近い速度の攻撃を先読みし、浮遊する六本の武器と両手の剣で迎え撃つ。

 

 「クク……!」

 「フフ……!」

 

 両者笑みが溢れる。

 そこにいるのは、戦いの愉悦を貪る二匹のケダモノだ。

 チェーンソーが肉を断ち、闇が天を覆い、鎖が大地を捲り上げる。

 ヴェルゴが逆転した大地に光弾を放つと、数キロ近い範囲が爆発で吹き飛んだ。

 

 『マスター、対象のエンブリオのスキルは時間経過に応じた装備品強化ですが、装備品の限界を超えた強化は出来ないようです』

 

 フィガロのエンブリオのスキルや、方向性を解析していたアリアドネから、報告と提案がされる。

 

 『しかし、相手は<SUBM>を討伐しており、特典武具が剣であることは判明しております。その場合、強化限界は優に一〇〇倍を超えると思われます』

 (悠長にやってたらまずい訳か。まあ、こっちも様子見は終わったし……)

 

 ヴェルゴは十二枚の紙を取り出した。

 それらは符とは違い、式神を呼び出す際に使用するものである。

 ただ、その色は血のように紅く、唯ならぬ存在感を示していた。

 ヴェルゴが呼び出だすと同時に、フィガロが鎖で攻撃する。

 伝説級悪魔さえ紙切れの如く穿つ攻撃だが、同時に呼び出されていた複数の神話級悪魔が壁となって届かない。

 

 「来い! 一二神将!」

 

 その隙にヴェルゴは一二神将と名付けた式神達を呼び出した。

 干支を模った式神、そのどれもが、ローガンの強化ゼロオーバーに匹敵する力を感じさせている。

 つまり、神話級<UBM>一二体に匹敵する戦力を呼び出したのだ。

 しかし、式神はその自由度故か、同格の召喚モンスターに比べて必要とするコストが多く、数倍から十倍必要なこともある。

 神話級<UBM>に迫る式神、それも一二体など、一体どれ程のコストが必要なのか。

 ここで、この世界のスキルの話になるのだが、スキルの効果というのは、デメリットが多いほど強力になる。

 例えばチャージ時間を要する、クールタイムが長い、デバフを受けるなどあるが、その最たる例は最終奥義だろう。

 超級職が命、もしくはそれに類するほどのものを捧げて使用する最後の一撃(ファイナルブロウ)

 デメリットが大きいほど、その効果や効率も上がる。

 そう、ヴェルゴは式神に搭載可能な凶悪なデメリットを可能な限り設定することで、低コストかつ強力な式神を複数呼び出すことを可能にしたのだ。

 勿論、耐性も関係無く絶命に等しい凶悪な状態異常やデバフを山のように受ける。

 何もしなければそのまま死ぬだろう。

 

 しかし、それで良いのだ。

 

 神話級悪魔の群れを食い破ってフィガロが迫る。

 その瞬間、ヴェルゴはとあるスキルを発動した。

 

 「──《大革命》!」

 

 数多の状態異常に蝕まれたヴェルゴの体がドス黒い繭に包まれた。

 あれを放置しては不味いという直感に突き動かされたフィガロの攻撃は、一二体の式神によって防がれる。

 式神を突破し、ヴェルゴに攻撃を通そうとした時──。

 

 「……ッ!」

 

 瞬間、フィガロは全力で防御態勢を取って居た。

 それは歴戦の直感が成せる技であり、僅かに遅れて特典武具と鎖が反応する。

 それとほぼ同時に、フィガロでさえ辛うじて視認出来るほどの何かが飛来した。

 フィガロは装備したグローリアαで迎え撃つが、その刃が硬質な音と共に弾かれる。

 それだけに止まらず、強靭な耐性を持つフィガロの皮膚が焼け爛れて、臓腑が蝕まれる。

 

 「───へぇ!」

 

 衝撃で吹き飛ばされたフィガロが見たのは、異形の存在だった。

 三メテルを超える巨体、捩れた大角に強靭な四肢、蝙蝠の翼、大蛇の如く畝つ金髪。

 体表は鎧のような外殻に覆われており、紫黒の肉体の上を回路のような赤い紋様が走っている。

 更に、全身から超高温の熱波を放ち、熱によって気化した【極毒】が周囲に広がっていく。

 魔王、否。

 大魔王とでも呼ぶべき存在。

 周囲の環境を猛毒渦巻く溶岩地帯に塗り替え、その中で佇む炎と毒の化身、その姿まさに地獄の王。

 

 「待たせたな」

 

 フィガロは本能で理解した。

 眼前の存在は、かつて戦った三極竜を凌駕すると。

 

 「──さあ、第二ラウンドの始まりだ……!!」

 

 

 ◆

 

 突如として、巨大な地震が戦場全域を襲った。

 王国と皇国の戦争に参加していた者達は、何事かと思いながら体制を立て直すと、皆一様に空を見上げた。

 ほんの束の間、戦場全体の動きが停滞する。

 王国に攻め込んできた皇国軍の後方、国境線があった方角に視線が集まった。

 

 それは災害だった。

 

 大地から噴煙が昇り、空を覆い尽くすように広がっていく。

 しかし、その直後に凄まじい爆風が吹き荒れ、噴煙が積乱雲の如く一塊となる。

 突如として地上に現れたそれに、多くのマスターはとある作品を思い浮かべた。

 

 「竜の巣か!?」

 「ラピュタは本当にあったんだ!」

 「バルス!」

 

 などと言っていると、噴煙を圧縮した積乱雲が光出し、極光が空間ごと砕かれたことによって引き裂かれ、周辺に撒き散らされ大爆発を引き起こす。

 その衝撃は凄まじく、押しのけられた空気が戦場全体に広がり、真空になった爆発地点に戻ろうとする空気によって多くの部隊が吹き飛ばされる。

 

 「誰だバルスって言ったのは!?」

 「何かに掴まれー!!」

 「あ、ヤバいこれ無────」

 

 幸い、王国側には大した被害は出なかったが、皇国側のマスターはその多くが吹き飛ばされていた。

 王国側のマスターやティアン達は、彼方の空で引き起こされている光景を見て顔を引き攣らせる。

 

 「なんだあれは!? 何が起こっているんだ!」

 

 幾つもの巨大な光が明滅し、相反する色同士がぶつかり合う。

 太陽の如き火球が落ちた大地は溶解し、雷の柱が乱立しては凍結し、暴風が全てを巻き上げる。

 氷の巨人は砕かれ、無数の神話級悪魔が現れては堕ちてゆき、極光が全てを薙ぎ払う。

 まるで五行相剋を体現するかの如く喰らい合う、概念の食物連鎖がそこにはあった。

 

 「……あ、あれは。ふぃ、フィガロだ!? フィガロが凄い禍々しい奴と戦ってる!」

 

 観測に特化したエンブリオのマスターが声を上げる。

 その声に驚いたのはマスターとティアン両方だった。

 

 「──なんだと!? フィガロは戦争への参加を断ったのでは無かったのか!」

 「ずっとダンジョン潜ってるから、こういうの興味無いのかと……」

 「どんな風の吹き回しだ?」

 

 王国の決闘ランキング一位であるフィガロの参戦に喜ぶ声もあったが、戦争に参加しないと言っておきながら、何故今頃になって参加したのか疑問に思う者の方が多かった。

 一部のティアンや決闘ランカーを除いて、フィガロの弱点を知る者は居ないため多くの者が困惑している。

 そんな時、一人のティアンが口を開いた。

 

 「──もしかして、周囲を足手纏いだと感じたのでは?」

 

 その言葉に、周囲の者達は納得した。

 山々が捲れ上がり、天を覆う極彩色の攻防、莫大な自然魔力によって巨大なアクシデントサークルが頻発している。

 遥か彼方での戦い、あれがフィガロの全力戦闘だというならば、周囲に自分たちが居たところで足手纏いでしか無い。

 近づいただけで消し飛ぶこと間違いなしだ。

 故にこそ、誰とも歩調を合わせず、単騎で皇国軍に挑んだのだろうと。

 

 「あまりにも強すぎるが故に、一人で戦っていたのか……! あれが超級、あれが王国の決闘王者……!!」

 

 聖騎士の一人が、フィガロの強さと自分達の不甲斐なさに打ちひしがれる。

 ただ人と合わせて動くのが苦手というだけなのだが、あまりの戦いに周囲は勝手に勘違いしてしまった。

 

 ◆

 

 皇国と王国の軍勢が衝突するその遥か上、地上100kメテルを超える地点にて、二つの流星が空を切り裂く。

 一方は【超闘士】フィガロ、《空中跳躍》を可能とする装備品を使用して空を駆け抜ける。

 一方は【英雄王】ヴェルゴ、飛行魔法によって推進力を発生させることで飛翔する。

 

 フィガロを追いかけるヴェルゴだが、その姿は悍ましく変貌していた。

 

 武器の類は無くなっているが、そのかわり体長は五メテルを超え、筋肉が膨張し肌はドス黒くなっている。

 頭からは捻れた大角が、背中からは蝙蝠のような翼が生えていた。

 

 ──その姿は【英雄王】どころか“大魔王”と言った所か。

 

 ヴェルゴは全身から神話級金属さえ溶解する程の熱波を放ち、先ほどまでとは比べ物にならないほどの規模の魔法を乱射した。

 莫大な数の光線がフィガロへ放たれ、大陸西方の空が白く染められる。

 本来は全方位に光線を放つ【光王】の奥義である《光環》だが、その威力は一発一発が超級職奥義に匹敵しかね無い威力を有していた。

 フィガロはその姿に、かつて戦った三極竜を連想したが、感じる力はそれを凌駕する。

 しかし、かの三極竜と違い、その輝きが消えることは無い。

 光線の乱射が終わらないのだ。

 まるで無尽のリソースを持つが如く。

 

 ──その理由は【英雄王】の奥義《大器晩成》で集めた超級職スキルにある。

 

 ヴェルゴは式神で設定できうる限りのデメリットを盛り込むことで性能を上げ、それを【嫉妬魔王】の固有スキル《大革命》で反転させることで莫大なステータスとバフを獲得。

 超級職最終奥義に匹敵する状態異常を複数受けた現在のヴェルゴのステータスは、STR・AGI・ENDは数十万、HP・MP・SPは数千万を優に超える。

 近づけば《プロミネンス・オーラ》と、体表から漏れて気化した【極毒】で敵を蝕み、遠距離から様々な属性の超級魔法を無限に放つ怪物が、神話級<UBM>相当の式神を従えているのだ。

 もっとも、件の式神は上空に昇る途中で全て倒されたのだが。

 

 「■■■■■──!!」

 

 フィガロが弾幕を回避しながら複数の装備スキルを発動させ、神話級悪魔さえ穿つ攻撃でヴェルゴに傷を与えるも、即座に回復されてしまう。

 ヴェルゴは仕返しとばかりに耐性さえ貫通するオリジナルの超級魔法で弾幕を張り、それをフィガロが複数の特典武具で迎え撃つ。

 炎には冷気が、光には闇が、拳には剣が、空が極彩色に染め上げられる。

 それはまさに頂上決戦。

 贅を尽くした殺し合い。

 地上で行われれば、大陸の形さえ変えるだろう。

 二人の戦いは遥か極東の島国、天地からも観測された程であった。

 世界はこの日、理解することになる。

 〈超級〉という存在のもつ力を。

 これからの戦争は、如何に超級を運用するかが重要となることを。

 

 「「ハッ……、ハハッ! ──■■■■■■!!!」」

 

 自分以上のステータスと無尽蔵のリソース、莫大なスキル連結による飽和攻撃。

 自分の完全上位互換とも言える存在。

 

 だが──【超闘士】は超えていく。

 

 弾幕を掻い潜り、自身の倍以上の速度で振るわれる近接格闘スキルの隙をついて攻撃を叩き込むのだ。

 フィガロの投擲した戦鎚がヴェルゴの体に突き刺さる。

 しかし、貫通することはなく、その巨体を遥か彼方の海へへ撃ち出した。

 海面に着弾したヴェルゴによって周囲の海水が瞬時に蒸発し大爆発を引き起こす。

 そこにすかさず、フィガロが追撃として《極竜光牙斬》を放つ。

 鬱陶しそうに《大嵐》で周囲の全てを吹き飛ばしたヴェルゴは、弓の如くのけぞるような体勢から拳を振り抜く。

 

 「──《破壊の鉄槌(ワールド・ブレイカー)》!!」

 

 これこそ、【破壊王】の最終奥義である《破壊の鉄槌(ワールド・ブレイカー)》。

 その極まった攻撃力によって空間さえ叩き壊す究極の一撃。

 空間ごと砕くだけで無く、砕けた空間が元に戻ろうとする力によって強度に関係なくあらゆる物を破断させるのだ。

 しかし、自身の肉体が発生地点でなければならないため、必ず自分も巻き込まれ、歴代でこのスキルを使用したティアンは全員死亡している諸刃の剣。

 しかし、【英雄王】は違う。

 

 ──空間の破壊が、前方にのみ広がっていくのだ。

 

 【衝神】の奥義を始めとした空間干渉系のスキルに、アリアドネによる動作補助によって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 空間断裂によって極光が捻じ曲げられ、《大嵐》によって剥き出しとなった海底に降り注ぐ。

 大爆発によって互いを見失い、ヴェルゴが周囲の空間ごと出鱈目に壊しまくる。

 しかし、空間断裂の中を駆け抜け背後を取ったフィガロが攻撃を仕掛け、ヴェルゴの肉体を切り裂き周囲の溶岩が吹き飛ばされる。

 

「───ッ!!」

 

 しかし、ヴェルゴの肉体は切り裂かれた瞬間に癒着再生する。

 あまりにも早すぎる再生速度、それは【龍帝】にさえ迫るものだった。

 その理由はヴェルゴが使用した《大革命》と《運命》にある。

 《運命》は対象を溶解させる性質を持つ【極毒】放つ最終奥義、僅かでも触れれば全身を侵され骨も残ら無い。

 今のヴェルゴは、この【極毒】を《大革命》で反転強化しているのだ。

 全身の細胞を纏めて消し飛ばすほどの攻撃でなければ、まず死ぬことは無いだろう。

 もっとも、体表の【極毒】は熱で直ぐに気化し、広範囲を蝕む代わりに濃度が低下しているため、フィガロの耐性を突破出来ないが。

 フィガロはヴェルゴを殺しきれず、ヴェルゴはフィガロを捉えきれない。

 

 ──ここに来て、戦いの天秤は拮抗していた。

 

 海が凍りつき、振動によって海底がひび割れ、極光が空間ごと砕け散り多くの島が創り出される。

 

 ──しかし、その天秤そのものを破壊しかねない存在が盤面に迫っていた。

 

 『──マスター!! これ以上は〈境界海域〉を超えてしまいます! 今すぐ引き返して下さい!!』

 

 ヴェルゴの脳内にてアリアドネが最大級の危険を警告する。

 僅かに驚いたヴェルゴだったが、その一瞬の隙を見逃さなかったフィガロの攻撃がヴェルゴを更に弾き飛ばしてしまう。

 そうして二人は一線を超えた。

 

 「マズった……! コイツはヤバい──!」

 「これは……、──そうか……!」

 

 それは海そのものであり。

 それは世界の壁であり。

 それは最大、最強にして、──最古の存在。

 

 「大陸から離れすぎたな」

 「夢中になりすぎたね」

 

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