鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜   作:白うに

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第22話「融解する氷と鋼鉄の絆、夜空の下の共闘」

 

二日目の模擬戦:不協和音

 

 宮廷騎士団の強化合宿二日目。昨夜の「風呂場の大惨事」の熱狂と羞恥が冷めやらぬ中、タクトたちには新たな模擬戦が課された。

 

【ルッコ・クローナチーム】 対 【ニクス・ローニャチーム】。

 

 タクトはローニャの役割を引き継ぎ、戦いの様子を記録し、観察する立場となった。

 

 この組み合わせは、感情と戦術において、極めて不協和音を奏でるタッグだった。

 

 試合開始直後から、ルッコとクローナの連携は崩壊した。

 

 クローナは、昨日のルッコに対する嫉妬心からか、過度にルッコを意識しすぎた。ルッコが【超剛力】で攻め込むと、クローナは「タクトくん以外に先制されるのは嫌だ」という無意識の抵抗から、【紅月纏】と【剛力】を発動し、単独で【ゲイルハルト】を突進させる。

 

「クローナ!無計画すぎるわ!【クリムゾンヘイト】とタイミングが合わない!」

 

ルッコが叫ぶ。

 

 一方、ニクスとローニャの「クールな頭脳派タッグ」は、冷静かつ完璧に機能していた。

 

 ニクスは、ルッコとクローナがお互いを避け合うかのような不自然な機動をしていることを即座に分析。

 

「ローニャ、敵は連携を組めてない。まず、耐久力の高いクローナから仕留める。私が囮となり、クローナをルッコから引き離す。」

 

ニクスは、【超高速】と【回避】でクローナを翻弄。クローナは「タクトくんのサポート役」としてのプライドから、ニクスに食らいつこうと必死になる。

 

 その結果、クローナはルッコの【黒血呪縛】の射程から完全に外れた。

 

「今、ローニャ。」

 

 ローニャは、【グラニテカノン】の杖銃を【ゲイルハルト】に向けて構える。そして、ニクスが囮となって引きつけた隙に、【砂塵】をクローナ周囲に発生させた。

 

「くっ!視界が!」

 

 クローナの視界が奪われた瞬間、ローニャの特大の【石砲】が【ゲイルハルト】の脆弱な背部に炸裂。さらに、孤立したルッコには、ニクスが【鋭爪】による正確無比の攻撃を脚部に叩き込み、【クリムゾンヘイト】は機動力を奪われる。

 

 クローナの【ゲイルハルト】は、ローニャの特大の【石砲】を背中に受けた瞬間、【紅月纏】による急速な回復が追いつかないほどの深刻なダメージを負った。

 

「くうっ!」クローナが呻く。

 

ローニャは間髪入れず、ニクスに指示を飛ばす。

 

「ニクスさん、クローナさんの耐久値、残存30%!トドメはまだ時間がかかります。ルッコさんを先に無力化してください!」

 

 ニクスは、ローニャの計算を信頼し、即座に【アサルトフェリス】の標的をルッコへ変更する。

 

 ルッコの【クリムゾンヘイト】は、クローナの不意の被弾により、防御の意識が逸れた一瞬の隙を晒していた。

 

「【超高速】!」

 

ニクスは【アサルトフェリス】を風の軌跡に乗せて疾走し、ルッコの【クリムゾンヘイト】の背後に回り込む。

 

一閃。

 

 ハルバートの鋭い刃が、精密機械のような正確さで、【クリムゾンヘイト】の半壊した片翼の付け根を、魔力供給ラインごと切り裂いた。

 

「うそ……!」

 

ルッコの魔力回路がショートし、【クリムゾンヘイト】の機動が完全に停止する。ルッコの「力こそ正義」というロマンは、ニクスの「効率こそ正義」というクールな論理の前に、沈黙させられた。

 

ルッコ・クローナチームの完敗だった。

 

 模擬戦後、監督役の騎士ディアナが、ルッコとクローナに厳しい講評を述べた。

 

「ルッコ、クローナ。君たちの個々の技量は素晴らしい。しかし、互いの『魔力の波長』が全く合っていない。特にクローナ、君の突進には感情的な乱れがあった。そしてルッコ、君は自分の力を相手に押し付けることに終始し、相棒の魔力の波長を読もうとしなかった。」

 

 クローナは、図星を突かれて俯いた。ルッコは、「自分のロマン」を否定されたようで、怒りに震えた。

 

「くっ……!別に、息なんて合わせる必要ないわよ!どうせ、タクトと一緒に出るゴレリンピックなんだから!」

 

 ルッコは、タクトの名を出すことで、クローナへの牽制を込めた強がりを言った。

 

タクトは、すぐに二人の間に割って入った。

 

「まぁまぁ、二人ともお疲れ様!ディアナさんの言ってることもわかるけど、ルッコのパワーとクローナの耐久力が合わさったら、絶対に最強のタッグになるって!今日の敗北は、最高のロマンを見つけるための貴重な機会だ!」

 

 タクトの無邪気なまでのポジティブさと温かい魔力が、二人の間に漂う冷たい空気を少しだけ和らげた。

 

 ルッコは、タクトの慰めに顔を赤くし、「うるさいわね、バカ!」といつものように言い返したが、内心はホッとしていた。

 

しかし、クローナは違った。

 

「……タクトくん。ごめんね。私、少し一人になりたい」

 

 クローナは、そう言ってタクトの傍から離れた。タクトの優しさも、ルッコの強がりも、今の彼女には胸に刺さるだけだった。「タクトくんを一番理解しているのは私」という根拠のない自信が、ルッコの出現によって打ち砕かれ、彼女は自己嫌悪に陥っていた。

 

 

 

 夜。合宿所の屋根の上で、クローナは丸い月を見上げていた。昨日の大惨事と、今日の敗北。全てが彼女の自信を蝕んでいた。

 

 その時、屋根の反対側から、ギクシャクした足音が近づいてきた。

 

「……いるのね、ポワポワ女」

 

そこにいたのは、ルッコだった。

 

クローナは驚いて目を見開く。

 

「ルッコちゃん……」

 

 ルッコは、悪魔族の尖った耳の先まで真っ赤にしながら、極めて遠回しな言葉を絞り出した。

 

「あのね……べ、別に、あんたの腑抜けた戦い方を心配しに来たわけじゃないわ!ただ……私が全力を出しすぎたせいで、あんたのいつもの調子が崩壊したのは、私の責任じゃないけど、少しは反省してなくもないわよ!」

 

「少しは反省してなくもない」という三重否定で謝罪を繰り出すという、ルッコらしさの極致だった。

 

 クローナは、その不器用で、正直すぎる謝罪に、驚きと感動で涙が滲んだ。

 

「ルッコちゃん……!」

 

「な、何よ!変な顔しないでよ!」

 

クローナは、意を決してルッコの隣に座った。

 

「ありがとう。でも、私こそごめんね。私はタクトくんとルッコちゃんが組んでいるのが、羨ましかったの。だから、無意識にあなたの邪魔をした。」

 

 クローナは、独占欲という醜い感情を初めて正直に吐き出した。

 

 ルッコは、クローナの正直な告白に、一瞬言葉を失う。そして、自分の心の中にあるタクトへの想いが、クローナと同じ「嫉妬」であることに気づく。

 

「……フン。タクトのロマンなんて、ぶっ壊す価値しかないわよ」

 

 ルッコはそう言い放ったが、その後に続いたのは、挑発ではなく提案だった。

 

「ねぇ、クローナ。あんたの耐久力と私のパワーが、本当にタクトのロマンについていけるのか。もう一度、二人で試してみない?」

 

 満月の光の下、人狼と悪魔の少女は、和解と共同戦線を誓い、新たな模擬戦を開始した。

 

 ルッコとクローナの模擬戦は、先ほどとは打って変わって、息の合ったスパークリングを行なっていた。ルッコが【犠牲】と【超剛力】で攻め込み、クローナが【紅月纏】と【頑丈】でルッコの攻撃を捌く。

 

 その様子を、一塊の岩の上から見つめるタクトがいた。

 

「すごいな、ルッコとクローナ……。二人とも、自分のロマンをぶつけ合って、新しいロマンを生み出し始めてる!」

 

タクトは、二人の絆が生まれたことに心底感動していた。

 

 その岩のすぐ横に生えていた太い木の上部から、ズボッと黒い猫耳とポニーテールが顔を出した。ニクスである。どうやら、木の上で夜間訓練を兼ねた観察をしていたようだ。

 

「……ルッコの攻撃性とクローナの防御性。データ上では最も効率的な組み合わせ。感情が組み合わさると、予測不能な出力を生む。興味深い……」

 

 そして、タクトが座っている岩の側面に、隠しハッチが開き、ローニャが蒸気と共に顔を出した。

 

「ふぅ……。この岩の中で、新たな魔術刻印装甲の試作品を作っていました。クローナさんとルッコさんの魔力同期率、異常上昇中です!」

 

 こうして、タクト、ニクス(木の上)、ローニャ(岩の中)という、奇妙な観客席が完成し、三人はルッコとクローナの共闘を眺めていた。

 

その時だった。

 

ダダダダダッ……

 

 合宿所の留置所(昨日の風呂場大惨事の責任でチュニが収容されていた)の方角から、何かが凄い速度で突進してくる音が聞こえた。

 

 そして、黒いタイツ姿のチュニが、留置所の壁の隙間をすり抜け「ゴルディアス王国の陰謀は、この私チュニが暴く!こんなところで止まるわけにはいかないのです!」と叫びながら、演習場を横切ろうとした。

 

 しかし、彼女の逃走ルートは、ルッコの【クリムゾンヘイト】とクローナの【ゲイルハルト】が激しく衝突する、まさにその中心だった。

 

ドゴォオオオン!

 

 チュニは、少女たちのロマンがぶつかり合う衝撃波に巻き込まれ、一つも陰謀を暴けないまま、白い泡を吹いて気を失った。

 

 すぐに、警備の騎士団員たちが駆けつけ、二度目の捕獲。

 

「またか!なぜこの女は、ゴレトル合意をしたのに逃走を試みるんだ……」

 

 騎士たちは、気を失ったチュニを、慣れた手つきで再び留置所へと連行していった。

 

 タクトチームの面々は、ロマンを追求する中で、予期せぬトラブルにも慣れていくのだった。

 

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