鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜 作:白うに
第26話「世界の扉!地味な将軍令嬢と開会式のロマン」
ゴレリンピック開幕:ロマンの聖地へ
ゴルディアス王国から海路と陸路を乗り継ぎ、タクトたちはついにエクサリス聖教国の首都へと到着した。世界最大の宗教国家であるエクサリスは、その中心に巨大な大聖堂を構え、どこか厳かで神聖な空気が漂っている。
タクト、ニクス、クローナ、ローニャ、そしてルッコの五人は、開会式が行われる中央広場へと向かう。
広場に足を踏み入れた瞬間、タクトは思わず息を呑んで立ち止まった。
広場の中央、大聖堂を背にする形で、人類のゴレトル史における最大のロマンが、鋼鉄の威容をもってそびえ立っていた。
「勇者と魔王の鋼鉄闘域像」。
世界から戦いを無くしたとされる勇者のゴーレムと、彼と共に戦った魔王のゴーレムが、互いの剣と槍を交わす一瞬を切り取った、巨大なモニュメントだ。
勇者の機体は流麗な光の装甲を纏い、魔王の機体は禍々しくも力強い漆黒の装甲を誇る。
「これが……ロマンの原点か」
タクトの手に輝く指輪の青い宝珠が、像の放つ凄まじいロマンに呼応するように微かに輝いた。
ゴーレムの力を、破壊ではなく平和のために使った伝説の機体。タクトの「超高速ロマン」を駆り立てる、最高の舞台装置だった。
クローナが瞳を潤ませながら「タクトくん、この像本当に凄いね!」と感動の声を上げる一方で、ニクスは冷静に像の戦っている様子の解析を行い、ローニャは像の設計思想、背景を考察している。
ルッコは、像に目をやりながらも、タクトに聞こえないように「ふん。私もいつかあんたのゴーレムと…」と小さな声で呟いた。
開会式は、各国の軍楽隊と特殊ゴーレムによる壮大なパレードと共に幕を開けた。広場を埋め尽くす観客の熱気は凄まじく、タクトたちが経験した学園トーナメントとは次元の違う興奮だ。
各国代表チームが入場していく。
ゾルディアーク帝国の兵器型ゴーレムが放つ重厚な威圧感。スティア連合国の異形型ゴーレムが持つ不気味な存在感。そして、バルト人民共和国のチームは、プロリーグのトップランカーたちで構成されており、洗練された戦術眼を感じさせた。
ゴルディアス王国代表として、タクトたちが紹介されると、会場の一部から熱狂的な歓声が上がった。特にマリー王女の支援を受け、宮廷騎士団の合宿を終えた彼らへの期待は高い。
そして、リーグ表が発表される。巨大なスクリーンに映し出された対戦カードを見て、タクトたちは緊張した。
「第一試合、ゴルディアス王国 対 バルト人民共和国!」
タクトは思わずクローナと顔を見合わせた。初戦の相手は、プロのゴレトルプレイヤーが国政を動かす「ゴレトル偏重国家」、バルト人民共和国。その実力は未知数だが、「洗練されたプロ集団」という情報が、タクトの胸を強く打った。
「やる気出てきたぜ、ローニャ!勝率はどうかな?」
「はい!計算では互角です。彼らの戦術的洗練度は、ゴルディアスの宮廷騎士に匹敵するでしょう。幸い、試合は明日です。今日は急いで偵察をします。」
ローニャの表情は引き締まっていた。
開会式を終え、タクトたちは聖教国の町を観光しながら、バルト代表に関する情報を収集していた。
その途上、彼らは奇妙な光景に遭遇する。
裏通りに面した場所で、地味な色の軍服のような装いを纏った小さな少女が、立ち止まってぶつぶつと何かを呟いていた。
「このままでは国庫が……。あのイケメン枠の消耗品代で、今月の補助金が赤字に……。ゴレトル以外にも予算を……」
その小さな肩には、何かとても大きな苦労と責任が、重くのしかかっているようだった。
その少女を、町のゴロツキ女三人が取り囲んだ。全員が派手なゴーレムアクセサリーを身に着けている。
「おいおい、そこの地味軍服。なんか楽しそうなこと言ってんじゃねーか」
「その指輪、いいゴーレム持ってんだろ?勝負しろよ」
少女は冷静に、そして心底面倒くさそうにため息をついた。
「私は公務中です。あなたたちと無益な魔力消費をする時間はありません。」
「あぁ?逃げんのかよ!ルールは簡単だ。敗者は勝者の言うことを何でもきく、だ!」
タクトは、少女の冷静さと、ゴロツキたちの悪意を察知し、思わず助けに行こうと一歩踏み出した。
しかし、少女は一瞬早く動いた。
少女は左手の赤い宝珠が輝く指輪を、ゴロツキたちの前に静かに掲げた。
「仕方ありませんね。このリュドミラ・ヴォルゴフが、あなたたちの非効率な遊戯に付き合って差し上げます。」
次の瞬間、少女の背後に現れたゴーレムに、タクトたちは目を奪われた。
開会式の時にも居たはずだが、集中して観察しないと、すぐに意識の外へ行ってしまう様な見た目なのだ。
その機体は、黒く、地味だ。何の装飾もない、マットな漆黒の装甲は、存在を主張しない。だが、よく観察すると、その関節、内部の駆動系、魔力回路の配置、全てが極限まで突き詰められた機能美に溢れていた。
リュドミラのゴーレム、【ギアシュヴァルツ】だ。
【ギアシュヴァルツ】は、微かな起動音とともに、ゴロツキたちのゴーレムの動きの癖を解析し、最も効率的な軌道で三体の装甲の隙間を的確に貫いた。
戦闘は一瞬で終わった。
ゴロツキたちのゴーレムは、コアを傷つけられることなく、全身の駆動系が精密に停止させられ、機能不全に陥った。
「あなたたちの平均魔力変換効率は23%。非効率極まりない。」
リュドミラは、無表情でゴロツキに冷たく言い放つ。「スクワット500回。始めなさい」ゴロツキたちは泣きながらスクワットを始め、少女は無言で去る。
タクトは呆然。
「あの子、めっちゃ強い…!誰だ!?」クローナが目を輝かせ、
「タクトくん、ライバルだね!」と叫ぶ。
ニクスが
「敵のスキル、【無音】は厄介」と分析し、
ローニャが
「あの姿、確か…」とメモを確認する。
そして、ゴレリンピック試合初日。
タクトたちは、五人チームから四人を選抜し、バルト人民共和国戦のエントリーに臨んでいた。今日のメンバーは、タクト、ニクス、ローニャ、クローナだ。
会場のボルテージは最高潮に達している。先にバルト人民共和国チームが入場する。
バルトの旗を先頭に、四人の代表選手が現れた。タクトたちは、そのリーダーを見て、驚愕した。
そこにいたのは、昨日、裏通りでゴロツキを一蹴した、地味な軍服を着た小さな少女、リュドミラ・ヴォルゴフだった。
「う、嘘だろ……あの苦労人っぽい女の子が、バルトのリーダー!?」
タクトが絶句する。
ローニャが即座に情報を更新する。
「間違いありません。彼女は、バルトの王国時代の王家でもあった、ヴォルゴフ将軍家の長女。軍事国家であるバルトの実質的な最高幹部です。」
リュドミラは、地味な軍服姿にもかかわらず、その存在感は他のプロ選手を圧倒していた。
彼女のチームメンバーもまた、強烈だった。
まず、隙あらばリュドミラに拍手を贈るイエスマン女子のイェーナ・スヴァーロヴァ。リュドミラの隣で、完璧な笑顔で観客に手を振っている。
「素晴らしい試合になります!リュドミラ将軍の勝利は決定しております!」
と、既に勝利宣言をしている。彼女のゴーレム【ブラスヴィント】も同じ動きだ。
次に、トップアイドルクラスの超絶イケメン男、ガルツ・アレクシス。彼が投げキッスをするたびに、観客席の女性から野太い悲鳴が上がる。彼のゴーレムは、その名の通り白く華やかな【スタールミエール】だ。
そして、最後に無口そうな大きい太った女、グレタ・ヴェーラ。彼女は一切観客に目を向けず、ただただ巨大な体躯と威圧的な【グラヴィタス】で、タクトたちを睨みつけていた。
タクトは、緊張と興奮で指輪を握りしめた。
「やべえな、バルト人民共和国……将軍令嬢に、イエスマン、イケメンアイドル、巨体戦士って、ロマンの組み合わせが予想外すぎるぜ!」
そして、ゴルディアス王国の入場。
タクトの【アブソルトレイル】、ニクスの【アサルトフェリス】、ローニャの【グラニテカノン】、クローナの【ゲイルハルト】。
ロマンを追求する五人チーム(ルッコは今回はベンチ)の最初の試練が、今、始まろうとしていた。