鋼鉄闘域(ゴーレムバトル)〜ホビーアニメ設定の貞操逆転異世界でオタク男子は希少種〜 作:白うに
第一試合開始!孤高のロマンと非情冷徹
ゴレリンピック第一試合、ゴルディアス王国 対 バルト人民共和国。
会場の熱狂が最高潮に達する中、8人の選手がフィールド中央で対峙した。
審判の合図とともに、試合開始。
リュドミラの暗殺者型ゴーレム【ギアシュヴァルツ】は、【静音】と【闇塵】を複合発動させ、フィールドの闇に溶け込んだ。その冷たい、無駄のない機能美は、タクトの情熱的なロマンと対極にある。
「カレン、【感知】をタクトに集中。ヴェーラ、【グラヴィタス】でクローナを的優先に無力化。ガルツ・アレクシス、あなたはその役目を全うしてください。何時もの貴方のようにで結構です。」
リュドミラの指示に、ガルツは少し嫌な顔をする。しかし、ガルツは幼稚な反論よりも、自分自身の興味を優先することを選んだ。
「待たせたね、超高速のロマンを持つ君!」
ガルツのヒーロー型ゴーレム【スタールミエール】が、純白のボディから黄金の刻印を奔らせ、フィールドの闇を切り裂くように飛び出した。
「【閃光】!そして【超高速】!」
ガルツは【閃光】を背後に向けて発動、その反動を初速に利用し、タクトの【アブソルトレイル】に真正面から急戦を仕掛ける。
二機の超高速ゴーレムの激突は、会場を一瞬で静寂から爆発的な熱狂へと変えた。
ガルツはタクトのロマンに共鳴し、誰の指示も受けず、ただ己の最強を証明するために戦う。
【スタールミエール】は【光塵】と【閃光】を背部と足元から噴射し、超高速機動中の姿勢を完璧に制御している。タクトの【アブソルトレイル】の予測軌道を、一歩上回る鋭角で切り裂く。
「すごいな、ガルツ!そのロマン、俺と同じだ!」
タクトも【爆風】ブーストを連発し、【超高速】の領域で激しい鍔迫り合いを演じる。二機の機体が交錯するたびに、爆音と光の残光がフィールドを包んだ。
「私の【スタールミエール】は、伊達じゃない!これがバルト最強の力だ!」
ガルツの【スタールミエール】から【光剣】が展開し、タクトの【アブソルトレイル】を掠める。
タクトは回避と同時に【収束】した【熱線】を放つが、ガルツは冷静に【反射】のスキルを発動。跳ね返された熱線は【アサルトフェリス】を狙う。
「ニクス!」
ニクスは冷静に【模倣】で相手の機体制御魔術をコピーし、寸前で回避する。しかし、リュドミラの【闇塵】のせいで、模倣の精度が不安定だ。
ガルツがタクトと激しくロマンをぶつけ合うその裏で、リュドミラの非情な戦略が進行していた。
リュドミラは、タクトの魔力消費量を常に監視している。
「ガルツ・アレクシス、【魅了】。対象はアブソルトレイル。」
ガルツは眉をひそめるが、リュドミラの将軍令嬢としての命令には逆らえない。【スタールミエール】の瞳が怪しく輝き、タクトの【アブソルトレイル】の動きがわずかに乱れる。
その一瞬の誤差を見逃さないのが、リュドミラから指示を受けているグレタだ。
グレタの鉄球型ゴーレム【グラヴィタス】が、【重圧】と【重力操作】を発動。凄まじい重力で、超高速機動を続けるタクトの機体制御を妨害する。
そして、無力化の対象として選ばれたのは、クローナだった。
「カレン、【ブラスヴィント】でクローナに【幻術】をかけ、援護を誘発させなさい。グレタ、【グラヴィタス】でクローナの予想される進行方向に【重力操作】を。」
カレンは満面の笑顔で「承知いたしました!リュドミラ将軍!」と叫び、クローナの【ゲイルハルト】に【幻術】を仕掛ける。クローナは、タクトが危機に瀕している幻を見せられ、無謀な突撃を仕掛けてしまう。
【グラヴィタス】の【重力操作】が、クローナの突撃経路に鉄壁の重圧を生み出す。クローナは、全速力で突っ込んだにもかかわらず、まるで泥濘に捕らえられたかのように機動力を奪われた。
その身動きが取れない一瞬。
【闇塵】の中から【ギアシュヴァルツ】が【縮地】で、最も魔力効率の良い最短距離を移動し、短剣を突き出す。
【暗撃】! ギンッ!
クローナの【ゲイルハルト】の装甲が深々と削られ、魔力供給回路が切断された。【ゲイルハルト】は戦闘不能に陥る。
「クローナ!」
タクトの叫びが響く。
「魔力消費、許容範囲内。ゴルディアス王国は、戦術の柔軟性が欠如していますね。」
リュドミラは、何の感情も見せずにクローナを撃破したデータを処理する。
その熱狂とは裏腹に、ゴルディアス王国の控え席では、ルッコが怒りに震えていた。タクトのピンチへの心配心と、自分が今戦場に立てない焦燥感が、彼女の心臓を激しく打ち付けている。
「何やってるのよ、タクトのバカ!」
ルッコは拳を握りしめ、声にならない叫びをあげた。
「あんな地味で、陰気な闘いしかできないようなゴーレムに、なんであんなに追い詰められてるのよ!クローナは何も出来ないし、ニクスやローニャも翻弄されっぱなしじゃない!情けないわよ!」
ルッコの目には、リュドミラの【ギアシュヴァルツ】が、タクトのロマンを否定する存在として映っていた。そして、「仲間との絆」が否定され、タクトの最高のロマンが封じられている現状に、強い憤りを感じていた。
(私がそこにいれば、邪魔なんてさせないのに!私こそがあんたの最強の盾で、あんたの最高の矛なのに!)
ルッコは、タクトのピンチを前に何もできない現実に無力感を覚えていた。
3対4の状況に追い込まれたタクトたち。リュドミラの冷徹な効率戦略は、タクトの「超高速と絆」を完全に上回っていた。
タクトは【アブソルトレイル】の魔力残量が10%を切ったことを確認した。これ以上の超高速機動は、機体そのものの停止を意味する。
ガルツは、タクトの絶望的な状況を見ても、手を緩める事は無かったが、その隙を突くような事もまた無かった。彼は勝利ではなく、タクトという男ながらに自分と近しい実力を持つ好敵手とのロマンのぶつけ合いを求めている。
「タクト!終わりにするには、君のロマンは美しすぎる!だが手加減するつもりはない!最大出力【爆裂光弾】!」
ガルツの【スタールミエール】が、爆発する光属性の榴弾をタクトに向けて連射する。
タクトは、魔力の残りと、仲間との絆を天秤にかけた。リュドミラが最も予測していない行動、それは「仲間との絆」だ。
ローニャが通信で叫ぶ。
「タクトさん!【グラヴィタス】が【スタールミエール】の魔術の反動を抑えています!今、グレタさんの位置が固定されています!」
ニクスが静かに付け加える。
「私の速度なら、あいつの奇襲をカバーできる。」
タクトは指輪を強く握りしめた。
「行くぜ!ローニャ!ニクス!クローナ!俺のロマン、ここで終わらせるかどうかの全てを賭けるぞ!」
タクトは、魔力残量10%の究極の非効率を承知の上で、【アブソルトレイル】の【爆風】ブーストを最大出力で起動させた。
ロマンの終焉か、奇跡の勝利か。タクトの魂を乗せた光の軌跡が、リュドミラの冷たい計算を破るため、フィールドを縦断した。